ルーピンさん、悪い人じゃないはずなんですが、原作でちょっと気になったところを追求したら、図々しい人になってしまいました。
まあ、かっこよくて人生の先輩のお手本にしたいルーピン先生はきっとよそ様がされているでしょうから。
森番前任者のやらかしは、もうどうにもなりません。
というわけで続きです。
すいません、前回の予告で、第2回突撃☆脱獄犯シリウスを今回やると言いましたが、それは次回になります。
ちなみに、シリウスさんの突撃は全3回になります。
さて、不安な一夜は明け、結局ブラックの行方は分からず、ホグワーツは日常を取り戻すこととなった。
肖像画の中を逃げ回った太った
代わりに、ずんぐりした灰色ポニーにまたがった鎧姿のカドガン卿の肖像画がかけられた。(彼以外の肖像画たちは、ブラックを恐れてグリフィンドールの合言葉番を引き受けたがらなかったのだ。誰だって切り刻まれたくない)
「あの人狂ってるわ!」
というのはハリーJr.、ドラコ、他数名の同級生たちと図書館で勉強会をした際のハーマイオニーのコメントからである。
ハーマイオニーをはじめグリフィンドール生が言うには、カドガン卿は誰彼構わず決闘を挑み、非常に複雑な合言葉を編み出すことに余念がなく、さらには1日2回は合言葉を変更するらしい。
ただでさえも全教科受講(聞いた話によると占い学のトレローニー教授と相性が悪いらしい)でピリピリしているハーマイオニーは、さらに神経をとがらせる羽目になっていた。
付け加えると、合言葉覚えが苦手なネビルは半泣きになって、合言葉のメモを大量に持ち歩く羽目にもなっていた。
忘れん坊且つ紛失の多いネビルに、ハリーJr.が「今の時期は気を付けた方がいいよ。うっかりメモを落として、ブラックに拾われたら大変だよ」と忠告していた。
これにはうっかり耳に入れてしまった他のグリフィンドール生は顔をひきつらせた。
・・・あまりに頻繁に合言葉変えをするカドガン卿のせいでメモを持ち歩く羽目になっているのは、なにもネビルだけではないのだ。
「ああ、もう!ネビル!今からでいいからマクゴナガル先生に抗議と報告に行きましょう!このままじゃ、夜中にナイフを持ったブラックが枕元に立ちかねないわよ!」
青ざめた顔をしたネビル(どうもすでにメモをいくつか紛失した後らしい)に、ハーマイオニーが立ち上がっていった。
「こ、抗議?」
「肖像画を何とかしてもらうの!せめて合言葉の長さか変更期間の先延ばしのどちらかを何とかしてもらえるようにするべきだわ!
どちらか飲み込んでもらわないと私たちの方がまいっちゃうわよ!」
目を白黒させるネビルに、ハーマイオニーは鼻息荒く言った。
「ありがとう、ハリー!今言ってくれたことをマクゴナガル先生にも言ってみるわ!」
ぱたぱたと軽い足音交じりに図書館から出ていくハーマイオニーに、ハリーJr.は「大丈夫かな」とぽつりとつぶやいた。
ハーマイオニーは神経をピリピリとがらせて、はた目にもあまり顔色がいいと言えないのだ。
強く心配していると言うと、ますます頑なになりそうで、やんわりとしか言えないのだ。
「倒れたらそれまでだな」
つっけんどんに言い放つドラコだが、ハリーJr.は知っている。
お昼休みにかこつけて、ドラコがハーマイオニーに「うちから送られた余りものだ!」と言いながら、高級菓子の包みをいくつか押し付けているのを。
頭の働きには甘いものがいいんだって、というハリーJr.の言葉を受けた翌日からだから、間違いない。
口ではきついことを言うけど、実は友人思いなところがドラコのいいところだ。
ハリーJr.が数日でさじを投げたクラッブ&ゴイルの脳みそトロールコンビに、口ではひどいことを言いつつも勉強を見てやっているところとか、実は面倒見がいいのだ。
「あ、ごめん、ボクもそろそろ」
ちらっと腕時計を確認すれば、そろそろ約束の時間だ。
ハリーJr.は勉強道具をまとめてカバンに押し込むと立ち上がった。
「じゃあ、あとでね」
「ああ。課題はしっかりやっておけよ」
「もちろん」
ドラコの言葉に、ハリーJr.はうなずいた。
さて、それから数十分後。
魔法薬学教授室の応接用ソファーに、ぐったりしたハリーJr.があおむけに倒れこむように座っていた。
「ふむ。それはロングボトムのみならず、グレンジャーであろうと大変であろうな。合言葉を管理する肖像画に関しては、グレンジャーの言うように合言葉の変更条件を制限し、
いずれにせよ、このような余波を引き起こして素知らぬ顔をするか。こんなことも予想できずに、その場の癇癪で肖像画を引き裂くなどするから、無関係な学生が苦労するのだ。あの愚か者め」
そう言いながら優雅にソファに腰かけて紅茶をたしなむのは、セブルス=スネイプ魔法薬学教授である。
なお、ハリーJr.は図書館で何があったかについては一言も口に出していない。口には。
本日は特別課外授業として、スネイプ教授監督のもと閉心術の会得に挑戦しているのだ。
といっても、閉心術は開心術と表裏一体の魔法らしく、とにかく開心術をかけられまくるのが、身に着ける一番の近道らしい。
その開心術をかけられるのも、相当な負担になる。
セブルス曰く、「熟練の開心術士になれば、目を合わせただけで表層思考やつい先ほどの記憶などを無言呪文で読み取れるものだ。呪文を唱えて開心される感覚を覚えれば、無言呪文による開心術も察知できるようになろう」とのこと。
それを覚えるまでどのくらいかかるのか。ソファの上でぐったりして息を切らしながら、ハリーJr.は考える。
閉心術を覚えなさい。
自分の出生について聞かされた直後、母親であるリリーから言い渡された第一声である。
閉心術って?と尋ねたハリーJr.に、リリーは丁寧に教えてくれた。
心の中を探る魔法を開心術という。マグルはよく読心術などというが、複雑怪奇な人の心は書物のように読むものではない、開くものなのだと。
そして、ハリーJr.が出生について知ってしまった以上、開心して勝手にそれを探ってきて、さらにその情報をもとに好き勝手されかねない。
その筆頭候補であるダンブルドアは停職予定だが、あの老人にはシンパが大量にいるし、さらには“闇の魔術に対する防衛術”教授席が空席になったことで、そこにその手先がねじ込まれても不思議ではない、とリリーは語る。
『戦うなとは言わないわ。ママだって以前は“不死鳥の騎士団”に所属していたもの。
でも、それは卒業して一人前の魔法使いになってからのことよ?
今のあなたはまだ学生なの。守られて当然の子供なの。お願いだから、無理をしないで。十分力をつけて、魔力も責任も一人前になってからにして。
またあなたが目を覚まさないような危ない目に遭ったら、今度こそ私たちもどうにかなってしまうわ』
心底心配そうにそう言ったリリーは、続けてダンブルドアやその手先たちがハリーJr.のそういう事情をくみ取らずに「魔法界の平和のために!」というおためごかしのために危険にさらしかねないのだ、と語る。
頼りないかもしれないけど、学校には教授方がいる。スネイプおじさんだっている。まずは彼らを頼りなさい。戦うよりも、一人前になるのが学生の本分であり、自分たちの願いだ、とリリーは締めくくった。
確かに、とハリーJr.は素直に賛同した。
ハリーJr.の中で、あの怪物邸との出来事はかなり衝撃的な出来事になっているのだ。
あの夜に見た大人たちの動きと最低でも同じことができるようになる、というのがハリーJr.の目標だ。理想はその上をいく。
それに、“闇祓い”を目指すならば閉心術は習得しておいて損のない技術だ。
引っ越しが落ち着くなり、ハリーJr.は母の指導を受けたものの習得には至らず、ホグワーツが始まってからの続きはセブルスが指導することになったのだ。
ちなみに、正史のハリー少年のように分霊箱となってないので容易に他人とつながるということはできず、ハリーJr.の開心術・閉心術の適性は可もなく不可もなく(つまりは本人の努力次第)、というところである。
グワングワンと揺れる視界と、激しくなった動悸を落ち着けようと必死に酸素をむさぼるハリーJr.は、ふと思いいたる。
そういえば、母が出生のことを語ってくれた時に、ブラックのことについても語っていた。
シリウス=ブラックは、ハリーJr.の血縁上の父であるジェームズ=ポッター(実父という言い方はしない。家族に“実の”も“偽の”もない。家族は本物でしかないからだ)の親友であり、母であるリリーとも懇意にしていたという。
そして、巷で報道される凶悪犯というのは冤罪であるということ。
ただ。
それを語る母はひどく複雑そうにしていた。
『こういうことを言うのは失礼かもしれないけど、シリウスにとって私は徹頭徹尾、“
悪い人じゃなかったのよ。それは本当。
でも、スネイプおじさんの前であの人の話はしないでね。
ママも人のことは言えないけど、あの人はおじさんに対して本当にひどいことをやってたから、きっとスネイプおじさん、今でもあの人のことはあんまり好きじゃないと思うわ。
今思えば、おじさん以外でもあちこちで恨みを買ってると思うのよ、シリウスとジェームズは』
と、母はすごくやんわりと言っていた。
けれど、先ほどの言い草から考えて、ハリーJr.の想像以上にシリウス=ブラックはセブルスに嫌われているらしい。
「さて、一休みできたかね?」
「・・・はい。お願いします」
ようやく息が落ち着いたハリーJr.が、ピンと背筋を伸ばして姿勢を正して答えると、「よろしい」とセブルスはうなずいた。
「では、続きだ」
右手をかざすセブルスに、ハリーJr.は意識を集中させる。教わった通り、感情を抑制して、心を空にするように努める。
開心術を受けた後は、精神的にひどく摩耗して、立つどころか座っていることすらおぼつかなくなる。
だから、セブルスはハリーJr.をソファに座らせて行っているのだ。
3年には早すぎる魔法であるというが、自分がきっかけで周囲をトラブルに巻き込んだり、父母や姉に悲しそうな顔をさせるのは嫌だ。
ハリーJr.はそんな決意をも締め出して、セブルスの行う開心術に抵抗をつづけた。
加えて、ハリーJr.には習得に向けて必死になっている魔法がもう一つある。
吸魂鬼対策の守護霊呪文である。
吸魂鬼はホグワーツの敷地内には入ってこないから大丈夫、という甘い見通しがダメになってしまったのだ。
この間、クィディッチの試合の見物にハリーJr.もドラコとハーマイオニーとともに行った。この日はグリフィンドールとハッフルパフの試合で、大雨の中の強行であった。(延期すればいいのに、とハリーJr.はひそかに思った)
敵チームのコンディションや戦術の観察・研究も、クィディッチチームに所属するメンバーには当然のことだ。他寮同士の試合は絶好の偵察機会なのだ。
だが、その時に別のことが証明されてしまったのだ。
クィディッチの試合による生徒たちの興奮に、感情を食らう吸魂鬼たちは我慢できなくなり、敷地内に侵入してきてしまったのだ。(彼らからしてみれば、ただでさえも据え膳状態であるというのに、そこに大量のごちそうを並べられた状態にされたのだ。我慢もできなくなるだろう)
試合場に入ってきた吸魂鬼のせいで、ハリーJr.は昏倒。これがもし試合中であれば、箒から落ちて大惨事になっていた可能性がある。
なお、これには烈火のごとく怒り狂ったマクゴナガルが猛抗議をし、吸魂鬼たちはさらに敷地から距離を取らされることになりはした。
そして、ハリーJr.の昏倒を聞きつけたスリザリンチームのキャプテン、マーカス=フリントも危険を指摘して、きちんと対策できないと試合に参加させるわけにはいかない、と強く言ってきた。
別に意地悪で言っているわけではない。箒から落ちて一生ものの障害や怪我をさせる方がいけない、と心配してくれているのだと、ハリーJr.にはすぐに理解できた。
そこで、“闇の魔術に対する防衛術”教授であるルーピンに相談したハリーJr.は、
ちなみに、この習得訓練でセブルスに相談しなかった理由としては、ただでさえも閉心術の訓練をしてもらっているので、これ以上入り浸りまくるとひいきに見られるかも、という理由からである。
ハリーJr.は、お父さんの次にセブルスおじさんを、大人の男として尊敬している。おじさんがえこひいき教師として見られるのは嫌なのだ。
そんなこんなで、ハリーJr.も全教科受講のハーマイオニーと同じくらい、多忙な学生生活を送っていた。
学生たちはそんな感じであったのだが、セブルスの方はといえば、相変わらず監視のごとく付きまとうルーピンの目をかいくぐって、『必要の部屋』に出入りして、分霊箱を探り当てて破壊する必要があった。
一応、何度か足を運んで地道に探してみたのだが、とてもではないが一朝一夕で見つかるものではない。どうにか、もっと効率的に探す手段はないのだろうか。
分霊箱の探索については一つ策ができたので、どうにか試そうと思っているのだが、ルーピンのせいで思うようにいかないのだ。
ならば次の満月に試せばいい、という意見があるかもしれないが、実はルーピンには新型の改良版脱狼薬の治験を実施しているので、満月の間はルーピンを見ておかねばならないのだ。しかも、本人がしょっちゅう忘れるので、セブルスがせっつく必要がある。別にルーピンが人狼に変身しようが誰を食い殺そうがどうでもいいのだが、それで生徒に被害が出る方が困るのだ。
どうしたものか、と悩むセブルスに打開策をもたらしたのは、どこか困った様子のメアリーだった。
「セブルス様。ご相談したいことがあるそうです」
「こんにちは!教授!」
「お邪魔しまーす!」
彼女に続いて入ってきたのは、もはやシンボルとして定着してしまった節すらある、メンシスの檻をかぶったウィーズリーツインズだった。
「教授!ご相談なんですが、先日、どこに行かれてたんですか?」
「何の話だね?」
・・・先日といえば、分霊箱探しのために『必要の部屋』に再挑戦したばかりだ。
「とぼけないでくださいよ。俺たち、知ってるんですよ?」
にやにや笑う双子に、妙に嫌な予感を覚えつつ、セブルスは話を促した。
「何を?」
「先生、バカなバーバナスとトロールの壁掛けタペストリーの近くで、隠し部屋を見つけたでしょ?」
投下された爆弾に、セブルスは危うく表情を動かすところだった。
見られていた?否。あの部屋に出入りするときは、周辺察知呪文を使用するので、周囲に人がいないのは確認済みだったはず。どういうことだ。
「俺たちもわからない隠し部屋があったなんてな!わかった時驚いたよな、兄弟!」
「ああ!まさかあんな所にあったなんてな!」
和気あいあいと話す双子に、セブルスは無表情を装ったまま、どうするべきか猛スピードで思考を巡らせる。
誰かにしゃべっているか?双子の性格的に、十分あり得る。情報が拡散する前に忘却術をかけるべきか。
生徒に手をあげるなど、最終手段にしたいものだが、背に腹は代えられない。
万が一、億が一にも生徒が『必要の部屋』に入り込んで分霊箱を手にしようものなら、去年の秘密の部屋騒動に似通った惨劇が起きかねない。
被害を出さないためならば、仕方がない。
「教授!コソコソされてるってことは誰にも知られたくないんですよね?それにぴったりのものがありますよ!」
「教授にはジニーを助けてもらいましたからね!メアリーさんにもお菓子のおすそ分けとかしてもらってますし!教授には特別!出血大サービスで、ご進呈しましょう!」
思わずセブルスがメアリーに目をやると、彼女は淡々と「道に迷ったときに案内してくれましたので、そのお礼にお分けしました」と答えた。なるほど、そういうことか。
セブルスが納得していると、「ジャジャーン!」などと言いながら、ジョージかフレッドか、とにかく双子の片割れがローブのポケットから何か取り出した。
羊皮紙のきれっぱしのように、セブルスには見えた。
「・・・何だね、それは」
「これぞ、俺たちの大先輩の傑作!“
聞くやセブルスはピクリと眉を動かした。
・・・あの馬鹿ども、何を残しやがった。
詳しく聞いてみれば、これは一見すると羊皮紙のきれっぱしに見えるが、特定の呪文を唱えて杖でたたくと、ホグワーツ城の地図(隠し通路の詳細付き)と人物配置が浮かび上がるという、とてつもない地図だった。
・・・あの馬鹿どもが、ある時期を境にセブルスの位置を手に取るように把握していたのには、これのせいか。
無駄に有り余っている才能を、こんな形で発揮するんじゃない。
ちなみに、これの出所について聞いてみれば、双子は拝むように手を合わせて「そこはどうか!」と言ってきた。・・・セブルスのところに持ってきたのだ。そこに免じ、聞かないでおくとしよう。
「・・・それで、何が望みだね?」
「さすがはスネイプ教授!」
「話が早い!」
うんうんうなずいて、双子は切り出した。
例の隠し部屋に入る手順とセブルスがそこに出入りしているのを黙っておく代わりに、地図とその操作のために必要な呪文を進呈する。
セブルスには、去年に妹のジニーを救ってもらったし、よくイタズラを自己処理と引き換えに見逃してもらったりしているし、メアリーにもお菓子を分けてもらっているから、そのお礼だと双子は笑う。
・・・頭に檻をかぶせているのは、たいしたことにはカウントされてないらしい。いいのか?
「貴公らは構わないのかね?」
「俺たち、もうこの地図は頭に入れてますしね!」
「先生なら、俺たちのことも見逃してくれるでしょう?!」
ニカッと笑うウィーズリーツインズに、セブルスはおかしな信頼を寄せられていることにため息を吐いた。
「一応、私は教師で貴公らを諫める立場にあるのだが?」
「何を言ってるんですか、先生!」
「我ら、二代目
「「何者も我らを捕らえ止められぬのだあ!」」
一瞬、セブルスは獣狩りの短銃を取り出しそうになった。すんでのところで堪えた。
おかしい。あの檻はセブルスがオリジナルをもとに魔法で再現しただけのレプリカなので、あれに何か憑いてるとかはないはず。
なぜ、双子がミコラーシュのセリフを知っているのだ!
ともあれ、一瞬硬直してしまったが、申し出自体は悪くない。
・・・加えて、もしここでセブルスが断ろうものなら、『必要の部屋』の情報が漏えいされ、さらにはいくらでも悪用できそうな“
ここでセブルスが引き取っておくのが上策というものであろう。
さすがに、これだけの条件では釣り合わないので、セブルスはメアリーに言って、双子たちに今年度のみ一月に一度、メアリー手製の菓子をふるまうことを約束した。
それから数日後、その地図はセブルスが必要とするとき以外はメアリーが持ち歩くようになった。これで彼女の迷子が少しは改善されるといいのだが。
忍びの地図はセブルスが解析系魔法と上位者の力を総動員して解析&フル改造し、起動に必要なふざけた呪文は破棄して、啓蒙があれば視認できるようにした。(つまり啓蒙のないごく普通の学生にはただの羊皮紙のきれっぱしにしか見えない)
加えて、セブルス自身は地図の効果(現在位置の表示)から除外されるように仕向けた。
・・・なお、解析中に羊皮紙に実に腹立たしい文言の数々(ムーニー、パッドフット、プロングズ、ワームテールなどの人物たちが慇懃無礼に罵倒してくる)が浮かび上がったので、徹底的に改造してその手の文句は浮かばないようにした。
もっとも、それも改造中に罵倒文句が文字化けしていき、徐々に意味のない文字の羅列になって、挙句浮かび上がることもなくなったが。
あんなものは必要ない。
さて、クリスマスである。クリスマス休暇に入るため一部の生徒は帰宅して、そこでクリスマスを祝う。それはハリーJr.並びにドラコ、ハーマイオニーも同じである。
この三人は、大体そうしていた。ドラコのみは去年はマルフォイ夫妻の都合でクリスマス休暇をホグワーツで過ごすことになっていたが、それでもクリスマスは家族と過ごすことにしていた。
つまりは、ハリーJr.は不在であった。にもかかわらず、それは起こった。
通常、クリスマスプレゼントは寮の自室、ベッドの下に届けられるのだが、その年のクリスマスは違っていた。
朝食の席で、細長い包みを持ったフクロウの群れがどうしようかとお広間の天井付近を右往左往した挙句、ここでいーや!とばかりにグリフィンドールの席のど真ん中にそれを投げ落とす珍事が発生したのだ。
何事か、と残っていた学生たちがその包みを開けてみれば、そこには最新鋭の箒“
何じゃこりゃ?
どよめいて騒ぐ学生たちをしり目に、セブルスは無表情の下で舌打ちしていた。
こんな後先考えないバカをやらかす人間など、彼の思い当たる限り一人しかいない。何をやっているのだ、あの脱獄囚は。
というより、どうやって手に入れたのだ。金庫から金を引き出すにも、箒を購入するにも、その手の協力者が必要なはずなのに。
その差出人も宛先も不明の箒は、マクゴナガルが質の悪い呪いがかけられているかもしれないから、と没収して箒の検査に回すことにしたらしい。呪いがかけられてなかったらどうするのだろうか?
そして、クリスマス休暇明けの授業後、セブルスから事情を手紙で知らされたハリーJr.はドラコとハーマイオニーを伴って、彼の教授室に駆け込んだ。
いつものようにお茶と茶菓子を用意してくれるメアリーをしり目に、ハリーJr.は話し出した。
これ以上二人には隠せない。隠したくない。
そう言ってセブルスに事情説明の許可を求めるハリーJr.に、セブルスは好きにしたまえ、ただし両親にはちゃんと自分で報告するように、と言った。
そうして明かされたハリーJr.の出生事情に、ハーマイオニーが何事か言いかけた。
「バカバカしいことだな」
それをさえぎって、一言のもとに切って捨てたのはドラコだ。
「お前の生まれなんて関係ない。いつも余計なことばかり言って、余計なことまで心配する奴があるか。
それで僕たちの関係が何か変わるのか?
まあ、話してくれたことについては、黙っておいてやる」
「・・・えへへ。ありがとう、ドラコ」
つんとそっぽを向くドラコの頬が赤くなっていることに気が付いたハリーJr.がほっとしたように笑った。
それを見たハーマイオニーは、本で読んだ!知ってる!と言いかけたのを飲み込んだ。そうだ。彼女の知っているハリーJr.は本の中にいる死んだハリー=ポッターではないのだ。生きて、ハーマイオニーを助けて、ともに切磋琢磨する友達だ。
「・・・話してくれてありがとう、ハリー。私も黙っておくわ」
ゆえに、ハーマイオニーはこの一言で締めくくった。
「ありがとう、ハーマイオニー。そうしてくれると嬉しいな。僕だけじゃなくて、ヘザーや両親も迷惑になるかもしれない話だから」
うなずいたハリーに、もちろんよ!とハーマイオニーは大きくうなずく。
やっぱりこの二人は最高の友達だ、と彼女は思った。突っ走りそうになるハーマイオニーを、ドラコがきつい言葉ながらもいさめてくれるし、ハリーJr.がそのフォローをやって、笑って許してくれるのだから。
だが、温かな話はここまでだ。ここから先は、この先のことを考えなければならない。
「でも・・・だとしたら、あなたが生きていると知ってる人がほかにもいるってこと?」
「知っている者は限られる。メイソン夫妻と私以外では、ルシウスと、Mrs.メイソンをアメリカに逃がす手伝いをした私の後輩くらいなものだろう」
「それと、ヘザーもね。ボクが知らされた時に、一緒に聞いたんだ」
不安そうに切り出したハーマイオニーに、答えたのはセブルスとハリーJr.だ。
「だが、勘づく者はいるだろう。何しろ、Mr.メイソンは最近特に、血縁上の父親の方によく似てきたからな」
実際、ダンブルドアにも見抜かれてしまったわけで。このことについては当のメイソン一家とルシウス、レギュラスに一応報告して情報共有を行っている。
「ええっと・・・そんなに?」
「くせ毛にして眼鏡をかければな」
「じゃあ、ひょっとしたらほかにも気が付く人もいるってこと?」
困ったように聞き返すハリーJr.にうなずけば、ハーマイオニーが口をはさんできた。
「うむ」
セブルスはうなずくと、ハリーJr.が尋ねてきた。これこそが、彼にとっての本題であったのだ。
「・・・おじさんは、その包みの送り主について心当たりがあるんだね?」
セブルスは沈黙をもって返答とした。
答えたくない、というそれは消極的とはいえ、肯定と同じである。
「・・・“
「うーん・・・ほしくないって言ったらうそになるけど、今はいらないかな」
代わりに投げられたセブルスの問いに、ハリーJr.は少し視線をさまよわせたが、ややあって首を横に振った。
「どうして?」
「ボクはハリー=メイソンJr.だし、スリザリンだからね。チームおそろいの箒だってあるもの。
一人最新鋭の箒で勝つより、みんなおそろいの箒で勝った方がかっこいいでしょ?」
ニッコリ笑ったハリーJr.に、ドラコは「当然だ!父上から贈っていただいた箒だぞ!」とドラコがツンと顎をあげて言った。
「確かにかっこいいけど、グリフィンドールだって負けてないわよ!クィディッチに関しては、私はグリフィンドールを応援させてもらうわ!」
「ふん!望むところだ!今年こそスリザリンがクィディッチ杯ももらうからな!」
「ボクたちも負けないからね!」
それを穏やかな眼差しで眺め、セブルスは紅茶に口づけた。
できるなら、彼らには学生時代の自分と同じ轍は踏んでほしくないものだ。
続く
【改良された忍びの地図】
一見するとボロボロの羊皮紙の切れ端だが、啓蒙あるもののみ視認することのできる魔法の地図。
隠し通路まで網羅したホグワーツ城の詳細な地図に加え、生活する人々の所在まで記されている。
初代いたずら仕掛け人が創造したその地図を手に入れたセブルス=スネイプ教授の手によって改良されたもの。ムーニー、パッドフット、ワームテール、プロングズの名前も削除された。
道具に必要なのは利便性であり、人を小ばかにする罵詈雑言の類は必要ない。
次回の投稿は、来週!内容は、『必要の部屋』攻略完了!今度こそ第2回突撃☆脱獄犯シリウス!
クィディッチ杯決勝戦から、ネズミの話。
お楽しみに!