早速やらかすシリウスさんですが、彼のやらかしはこんなもんじゃないです。
見せてみろ、奴のやらかしを。
というわけで続きです。
(ボソッ)どんなに優れたシステムでも、管理者がポンコツだと意味がないんですよねえ。
その日の夕方、セブルスは『必要の部屋』にいた。
昼間は満月が近づいて体調を崩したルーピンに代わって“闇の魔術に対する防衛術”を臨時に担当したが、ブーイングがすさまじかった。
一応、事前にルーピンから聞き出したカリキュラム通りに進めたが、あとからルーピン先生がよかった、と言われまくった。
自分だって好きでやったわけではない。文句はルーピンに言え。
カリキュラムを無視して、強引に人狼についてやらなかっただけありがたいと思え。
メアリーから受け取った“忍びの地図”を用いて周辺チェックを行い、念のためルーピンの所在も確かめてから、再び『必要の部屋』に来たのだ。
さて、セブルスが分霊箱を探す方法だが、このだだっ広い雑多ながらくた置き場じみた部屋からお目当てのものを探すのに、一つ策を用意していた。
ヒントは、分霊箱は大体の魔法を受け付けない、ということだ。
まずは、結界魔法と組み合わせた上位者の力を少々応用して、『必要の部屋』を空間隔離する。大きな音を聞かれないようにするためと、部屋全体に力を波及させやすくするためだ。
次に、セブルスは右手に杖を持つ。普段使いなら手に持たなくてもいいのだが、魔法を最大出力で放つ場合は手に持った方がやりやすいからだ。
そうして、彼は全力全開の浮遊呪文を部屋の中に使った。対象は、部屋の中にあるものすべて。すべてだ。
ただし、分霊箱は魔法を受け付けない。するとどうなるか。
ガラクタの山が天井付近に一斉に移動して、埃まみれの床の方ががらんどうとなるはずだ。
ただ一つ、埃まみれの髪飾りがぽつんと床に残っていた。薄汚れたせいで灰色にも見えるくすんだ銀色をしてて、サファイアのような楕円形の青い宝石がはめ込まれている。
“灰色のレディ”に聞いた、レイブンクローの髪飾りの特徴と一致する。間違いない。
セブルスは浮遊呪文を維持したまま、それに歩み寄って拾い上げる。そうして、もう一度入り口付近に戻ってから浮遊呪文を解除した。
同時にがらくたが床に落下して轟音を立てる。一部の装飾品は破損して、酒瓶は壊れ、がらくたが粗大ごみとなっていたが、どうせ取りに来る者もいないだろうとセブルスは歯牙にもかけなかった。
そっと地面に下せばよかったかもしれなかったが、いくらセブルスの杖が破格の性能を持っているといっても、広大な部屋の大量のガラクタを一気に浮遊させるのは、骨が折れるのだ。そっと下すのも大変なのだ。だからこそ、問題ないようにあらかじめ空間隔離しておいたのだ。
そうして、セブルスは血の遺志収納から取り出したノコギリ鉈で、髪飾りを真っ二つにした。
ロケットの時同様、黒い靄のようなものを吐き出しながら簡単に砕けたその残骸を拾い上げ、ノコギリ鉈ともども血の遺志収納に収納したセブルスは、後始末にとりかかる。
といっても、空間隔離を解除して“忍びの地図”で外の人通りを確かめて、外に出るだけだ。
これで大体の分霊箱は片付いただろう。
「これを」
数日後、セブルスはレイブンクローの寮付きゴースト“灰色のレディ”と向かい合っていた。
セブルスが差し出したそれは、
「時間はかかりましたが、確かに見つけ出しましたぞ。
もっとも、かつての効果そのままかは保証しかねますがね」
セブルスの言葉に、“灰色のレディ”はじっとその髪飾りを見つめている。ややあって、彼女はゆっくりと首を垂れた。
『・・・あなたに、感謝を。まさか本当に見つけてくださるなんて』
「かまうことはないでしょう。先も言ったように、私にも目的がありましたのでな。
あなたの願いはもののついでです。
これはどうしたらよろしいですかな?」
『では・・・』
ためらい交じりに“灰色のレディ”が口を開いた。
翌日、レイブンクローの談話室の片隅に、破壊不可呪文のかかったガラスケースと、その中におさめられた銀色の髪飾りが出現することになる。
これは何だ?と首をかしげる生徒たちに、憑き物が落ちたようにすっきりした笑みを浮かべる“灰色のレディ”は、ただ寮監のフリットウィックに『私の大切なものですので、触らないでいただければ』とだけ言った。
その後、レイブンクローの髪飾りが談話室にあり続けられたかは、寮監と歴代レイブンクロー生、そして寮付きゴーストのみが知っている。
今更だが、検査の結果、問題なしとなった贈り主も宛先も不明の
われ先に使いたい!というクィディッチ選手が出てくるが、フェアじゃないだろうと別の選手が反対する。珍しく処分を渋ったマクゴナガル(彼女はクィディッチ関連になると途端に見境がなくなるのが珠に瑕である)をよそに、セブルスが
残しておくと禍根にしかならない。
大いにブーイングが出たが、セブルスは「こんな送り主不明のものにすがらねば勝てぬほどクィディッチ選手は技量不足のものが多いようですな。では、今年もスリザリンが優勝ですな。確か去年を除けば7年連続になりますな」と言い放ち、見事に黙らせた。
もちろん、セブルスは
・・・贈り主が知れば、おのれスネイプ!と歯ぎしりするどころか、てめえ!と杖を振り上げられかねない所業である。
もちろん、そんなことをされようものなら、セブルスも反撃する。相手が冤罪であろうと凶悪犯であるというのは実に都合がいい。内臓を引きずり出しても何一つ問題はない。
ついでに揉み消す方法も山のようにある。道端に首を一つ転がしておけば、凶悪犯はなにがしかで死んだで解決、である。
そんなある日のことだった。
いつかのハリーJr.の忠告が、ついに現実となった時が訪れた。
ハーマイオニーとネビルによる報告によって、マクゴナガルがカドガン卿に直談判したにもかかわらず、絵画の中の頑固な騎士卿は合言葉変更の条件限定を拒否。
曰く、合言葉を複雑にしてさらには頻繁に変更すれば、いかな凶悪犯といえど入ってこれぬに違いない、と。
・・・それを言い出した本人が、取り出した紙っぺらに書かれている合言葉をつらつら読み上げるだけの人間を、何の疑いもなくすんなり通したのだから始末に負えない。
ロナルド=ウィーズリーが目を覚ました時には、ナイフを振り上げたシリウス=ブラックが、ベッドの上にいたのだ。
絶叫しても無理はなかった。というか、よく絶叫だけで済んだものだ。僕なら失禁して、夜尿症になってたかも、数日魘されただろうな、というのは同室のディーン=トーマスの声なき感想である。(そして、どさくさ紛れにシリウス=ブラックは逃げた)
これにはグリフィンドールは上を下をもひっくり返しての大騒ぎとなり、他の寮でも緊急で叩き起こされて談話室に集合して異常のないか点呼、教授陣始め、監督生と教職に加え、ゴーストたちは大至急ホグワーツ城内を捜索し始めた。
「貴公の友人だろう。何を考えてるか、ぜひわかりやすいように皆に説明してもらえんかね?
夜中にグリフィンドールに押し入って、無関係だろう生徒にナイフを振り上げた正当なる理由を、ぜひ我々にも理解できるようにしていただきたいのだが?」
セブルスの嫌味半分呆れ半分のセリフに、リーマス=ルーピンは引きつらせた顔をもって返答とした。
・・・ちなみに、ハリーJr.の忠告以降、ネビルは合言葉をメモするのは羊皮紙のきれっぱしのようなこまごましたものではなく、祖母に送ってもらった分厚い日記帳にメモするようにしており(かさばるけどこれならなくさない!)、メモを盗まれたのはグリフィンドールの1年生だった。
生徒たちから苦情と警告を受けていたにもかかわらず改善しなかったから!それでも、あからさまな不審人物を通す奴があるか!何のための合言葉制度だ!
強権発動しなかった自分を悔やむマクゴナガルは、ひとまずその1年生はお咎めなしとし、代わりにカドガン卿の絵画を元のさびしい踊り場に戻した。
太った
なお、このトロールたちは豚っ鼻ではない。
この事件で、セブルスはひそかにグリフィンドール寮塔内にシリウスに味方するスパイがいるのでは?と考え始めていた。
というのも、シリウスがどうやってメモを手に入れたのか?ハリーJr.の忠告を受けて、全員メモの管理を相応にしっかりし始めただろうから、かなり難しいと思われる。
加えて、シリウスが男子寮に侵入したこと。シリウスの狙いは、世間一般には死んだはずのハリー=ポッターで(両親がグリフィンドール寮の出身である)、アズカバンに投獄されていたシリウスはその死を知らないから、というのが有力視されている。
しかし、ハリー=ポッターはいない。にもかかわらず、グリフィンドール寮に侵入した。そうしなければならない理由がある。
加えて、セブルスはシリウスが冤罪であり、彼の真の狙いも察している。
となれば、ロナルド=ウィーズリーの周囲に何かあるのでは?
そしてウィーズリーが狙いならば、彼の部屋をシリウスに教えた共犯者がいてしかるべきなのだ。
そう思いはしても、どうにもまだ、確信が持てずにいた。
さて、イースター休暇である。
ハーマイオニーはある日とうとうトレローニーに激昂して占い学の受講を辞めた。とはいえ、それでも彼女がたくさんの科目を受講しているのは変わらないので、相変わらずピリピリして疲れたような顔をしていた。
もちろん、それはハーマイオニーだけではない。
3年次から選択教科も入ってくるので、彼女のみならず、ハリーJr.もドラコも、休みどころではない勉強三昧の日々だった。
加えて、去年は“秘密の部屋”騒動で中止となったクィディッチの寮杯をめぐって、どこの寮も熱量が暴発寸前に高められていた。
特に、決勝戦まで勝ち進めたグリフィンドールとスリザリンは、寮生間で小競り合いを頻発させた。選手を狙ってひそかな呪いの掛け合いは当たり前。お互いに選手たちはガードするのが日課となっていた。
学生たちはそんな感じであったが、セブルスはといえばハリーからの連絡を受けて、リトルハングルトンという村に向かっていた。
少々時間はかかったが、ハリーは見事にトム=リドル氏の居所を調べ上げたのだ。
かつて、この村に居を構えていた地主の息子が見知らぬ女にたぶらかされ、周囲の心配をよそに女を囲ったが、やがて我に返ったか、身重の女を化け物の悪女と称して叩き出したのだと。
60年以上昔のことであり、年代的にも一致する。
その地主の息子こそ、トム=リドルというそうだ。
そのリドル氏も、50年近く前に自宅で倒れているのが発見され、そのまま帰らぬ人となったそうだ。持病の類はなかったはずだが、心筋梗塞だろう、という見方がされている。(セブルスとしてはヴォルデモートが手にかけてもおかしくないと思っている)
リドル氏は高慢なところがあり、村人たちからはあまり好かれておらず、身寄りもいなかったために村の共同墓地に埋葬ということになったそうだ。
一緒に行こうか、というハリーの申し出が記された手紙に、一人で大丈夫という断りと調べ上げてくれたことの感謝の返信をして、セブルスは出立した。
リトルハングルトンの共同墓地に、夜中一人降り立った彼は念のため周囲にマグル除けを張り巡らせると、黙々と墓を暴き出した。
なお、万が一にも目撃されては面倒なので、今のセブルスは墓暴きのローブ姿をしていた。真白の布地に、細かな刺繍が施されたそれは、聖職者が着ているものに近いだろう。深々と被ったフードで顔も誤魔化せる。
とはいえ、これを着ていた連中が実際にやったことといえば、地下遺跡に潜ったことだ。要するにビルゲンワースの連中と同じ穴の狢であり、聖職者とは月と鼈並みに別物である。
実際、ビルゲンワースの連中が神の墓を暴いたことこそが、ヤーナムの異状におけるすべての発端といえるわけで。
さて、セブルスが掘り出したのはもちろん棺だ。そういえば、最近は墓地の埋葬面積の問題などから火葬が広まってきており、墓地に併設で火葬場も設けられているらしいが、このような片田舎ではやはり土葬が主流であったりする。
まあ、セブルスとしては骨壺だろうが棺だろうが、中身が死んでいると確約されているならどうでもいい。ヤーナムであれば棺を鎖でがんじがらめにして錠前まで施していた。あの街は街で下水道から大通りまで、棺を積み上げて放置していた。・・・そのうち中身が獣にでもなると思われていたのだろうか?
エンバーミングされてミイラのようになっている礼服姿の死体をしばらく無感動に眺めたセブルスは、ややあって中身に手を付けた。
死者に対する冒涜や倫理など、くそくらえだ。そんなもの持ってても、ヤーナムでは糞以下だった。
なお、魔法族でもその手の感情があるかは怪しいところである。何しろ、クィンタペット(元人間疑惑のある魔法生物)のはく製を平然と作成できるのだから。
そうして、ややあって元通りのミイラ状の死体に見える細工を終えた中身入りの棺を土の中に戻し、魔法で土をかぶせてから、できるだけ元通りに見えるように植物の生長を促す魔法薬を撒いておく。
数日もすれば元の荒れた草地となって、墓が暴かれたことなどわからなくなるだろう。
利用されなければそれでいい。万が一蘇生に使われたら・・・その時が今から楽しみだ。
そんなこんなのイースター休暇が終わってからまもなく。
クィディッチ杯の決勝戦、グリフィンドールVSスリザリンが開幕となった。
セブルスはクィディッチには興味が持てないものの(そもそも箒が好きになれない)、寮監の務めの一環として寮の試合の時は必ずスタンドに詰めていた。
ちなみに、メアリーはさすがにここにいない。
一度だけ生徒たちに誘われてセブルスとともに来たのだが、終了後にどこか疲れたような様子を見せたので、それ以降は誘わないように生徒たちに言いつけている。
彼女はもともと静かな“狩人の夢”にいたし、そのあとも“葬送の工房”であまり変わらぬ生活をしていた。
それがセブルスの都合でいきなりとはいえ、ホグワーツに連れてきてしまった。授業だけでも多くの人に接することになるというのに、騒がしさと興奮のるつぼのようなクィディッチ場は、かなり精神的ストレスになることだろう。
本人形は、無人に近くなったホグワーツ城を散歩したり転寝したり、菓子を作ったりして、存分に羽を伸ばしているので、そちらの方がいいらしいことは明らかだった。
ただし、廊下をうろつこうものなら、三度侵入したブラックと鉢合わせして破壊されかねないので、教授室から出ないように、としっかり言いつけておいた。
確かにメアリーは破壊されてもすぐに元に戻る。だが、それでセブルスがいい気分がするかは別問題である。
メアリーに傷一つつけようものなら、あの男が無実だろうと、正当防衛にかこつけて内臓を引きずり出す所存である。命乞い?駄犬が何をしゃべろうと理解できるわけがない。セブルスは犬が嫌いなのだ。
誰だって散々追い回されて、武器を構えようとした手に嚙みつかれて、抵抗する間もなく押し倒されて、そのまま――生きたまま腸を貪られたら嫌いになるだろう。しかも、一度や二度どころではない。
豚よりはましだが。犬は許せる。豚は許さない。ただし、どっちも殺す。
ともあれ。
ピッチに入場したクィディッチ選手たちがユニフォームローブをなびかせながら、箒にまたがって空中に舞い上がる。
満を持して試合スタートだ。
余談だが、正史とはハリー=メイソンJr.の所属寮が違うので、当然クィディッチチームのメンバーも異なっている。
グリフィンドールチームは、シーカーをジネブラ=ウィーズリーが担当。
スリザリンチームは、前述したがシーカーをハリー=メイソンJr.が、ビーターをドラコ=マルフォイとヴィンセント=クラッブが、それぞれ担当している。
他のチームメンバーに変化はないので、そこは省かせてもらう。
双子のウィーズリーは、さすがにクィディッチの時はセブルスに頼んでメンシスの檻を脱いでプレーしていた。(双子には地図の借りがあるので)
ついでに言っておくと、ハッフルパフVSグリフィンドールの試合(ハリーJr.が偵察に行って気絶した試合)では、ジネブラは箒から落下事故は起こしていない。普通にセドリック=ディゴリーにスニッチを奪われた。
50点だ。
グリフィンドールが優勝するには、その点差をスリザリンに着けて、なおかつスニッチを取る必要がある。
逆にスリザリンはその点差をつけさせなければいい。
とはいえ、しょっぱなからマーカスの体当たりで、グリフィンドールのアンジェリーナが箒から転落しかけるなど、スリザリンは文字通り見境がなかった。(いつものことではある)
スリザリンのプレースタイルはルール違反すれすれのラフプレーだ。さすがにハリーJr.はそこまでやみくもに、とはやらない。
そんなことしなくても、勝つ自信ならあるからだ。
そして。
点差が開いて、ジネブラがスニッチをつかもうとそちらに向かって飛来しようとしたその瞬間、ハリーJr.は宙返りするように箒の穂先でスニッチをたたき落としていた。
ここでスニッチをつかんでも確かにスリザリンが勝つ。だが、どうせ狙うならばパーフェクトゲームを狙いたい。点差は40点以内に抑えて、スニッチをつかんで勝つ。ラフプレーをしているからには、そのくらいできなければ。
スニッチが見えなくなる。
「卑怯者!」
ジネブラが顔を真っ赤にして箒の上で怒鳴るが、ハリーJr.は「君もチェイサーの方に突っ込んでただろ!スニッチはあそこになかっただろ!」と言い返した。
グリフィンドールの応援スタンドからもブーイングが飛んだが、スリザリンはいいぞもっとやれ、と言わんばかりだ。
審判のフーチは難しい顔をしていたが、注意でとどめて見逃してくれることにしたらしい。
ハリーJr.の箒の腕前は血縁上の父親譲りだが、負けん気の強いところはきっと母親似なのだろうな、とセブルスは思う。
直後、双子のこん棒にはじかれたブラッジャーがハリーJr.に向かうが、それを打ち返しながらドラコが怒鳴る。
「よそ見はするな!お前はスニッチだけを追ってろ!」
「うん!」
叫び返して、ハリーJr.は懸命に視線を巡らせた。
あった。金のスニッチ!
点差はチェイサーたちとキーパーのみんなが頑張って、どうにか40点内に縮めてくれた。
ここからはハリーJr.の仕事だ。
「クラッブ!正念場だ!ハリーに奴らを近寄らせるな!」
「応!」
双子のウィーズリーが「「邪魔だぁぁ!」」と棍棒でブラッジャーをたたきこんでくるが、ドラコとクラッブが懸命に打ち返す。
そして。
クィディッチ場を揺るがしたその歓声は、ホグワーツ城の魔法薬学教授室で転寝していたメアリーが目を覚ますほど、大きく轟いた。
スニッチをつかんだ手を大きく振り上げるハリーJr.と、こん棒を投げ捨てて彼に抱きつくドラコをはじめ、万歳と叫ぶチームメイトたち。
フーチの試合終了のホイッスルが響く中、スリザリンの応援スタンドからは大喝さいが轟いた。
ハリーJr.とドラコからしてみれば、初めてのクィディッチの優勝杯だ。
メアリーに祝いの菓子を焼くように言わねば。もちろん、二人だけでなく、チームメイト全員分。
はしゃぎまわるクィディッチチームを見やって、セブルスは穏やかな顔をしていた。
それを驚いたような顔で見てくるルーピンがいたことなど、彼は知らない。
さて、クィディッチの興奮も徐々に冷め、どんなに厭うてもやってくる学年末テストのために、生徒たちは必死に勉強していた。
ハーマイオニーはいくら占い学を辞めたといっても、それでも大量に科目を受講しているだけあって、かなり神経質かつヒステリックになっていた。
そして、このころにようやく、ハリーJr.は知った。ハーマイオニーがぎすぎすしているのは、なにも多すぎる科目とその勉強のためではなかったということに。
で、その問題は彼一人では解決しきれず、やむなく彼は決意した。
セブルスおじさんに相談しよう!
「先生、今お時間、大丈夫ですか?」
ノックをして顔をのぞかせたハリーJr.に、セブルスはうなずいた。
余談だが、ハリーJr.は魔法薬学の成績は可もなく不可もなく、というところだが、セブルスが「闇祓いを目指すならば、上級魔法薬学の受講は必須ですな。ちなみに、私は
とはいえ、まず材料の下処理がおおざっぱなので、そこから何とかしていくべきなのだが。
話を戻す。
「先生、魔法界のネズミって10年くらい長生きするんですか?」
「は?」
カウチについたハリーJr.は、メアリーがお茶を淹れるのをしり目にそう切り出してきたため、セブルスは瞠目した。
なぜいきなりネズミ?魔法薬の治験の検体にでもするのか?
「あ、ごめんなさい。ちゃんと順を追って説明するね」
と言って、ハリーJr.は話し出した。
ロナルド=ウィーズリーはネズミを飼っている。名前はスキャバーズ。前足の指が一本欠けているのが特徴。
兄のパーシー=ウィーズリーからのおさがりであるし、ロナルドも口では散々に言うが、ちゃんと世話をして面倒を見ているらしい。
そのネズミの様子がおかしくなった。毛並みも悪く禿げた場所もあり、食欲もなくなって元気がない。ロナルド曰く、「エジプトの水が体に合わなかったのでは?」とのこと。
さらには、そんなネズミのためにダイアゴン横丁にあるペットショップで見てもらおうとすれば、クルックシャンクスにロックオンされ、さんざんに追い回された。そしてそれはハーマイオニーがクルックシャンクスを買い上げてホグワーツにも連れてきてしまったため、さらに続くことになった。(グリフィンドールの談話室でもされたのだ)
(ロナルドが言うには)ストレスでネズミはさらに弱り、ある日クルックシャンクスの毛数本と引き換えに寝床からいなくなったらしい。
あいつに食われたんだ!とロナルドは大いに嘆いて、ハリーJr.にまでそう言ったが、ふとハリーJr.は思った。
え?スキャバーズってネズミ?パーシー(ロナルドより4歳年上)のお古?え?ネズミってそんなに長生きしたっけ?
ハリーJr.はプライマリー時代の友人がハムスターを飼っていたため、ネズミの寿命が短いというのを知っていた。愛玩種で普通のネズミよりも長生きだろうハムスターでさえせいぜい2~3年なのだ。これが品種改良もされてない普通のネズミならば、もっと短いのでは?
ロナルド曰く、スキャバーズは年寄りネズミで、魔力のかけらも見せないどんくさいやつなんだ、とのこと。
じゃあ、魔力を寿命方向に全ぶりしているのかな?ネズミじゃない、ネズミに見える新種の魔法生物とか?
一応、ハリーJr.はロナルドに尋ねた。
ロナルドはハリーJr.から提示された可能性に目を白黒させつつ、首を振った。(少し目が輝いていたのは、ただのネズミじゃない新種の魔法生物の可能性!かっこいい!僕のペットって実はすごかったんだ!という一種の期待からだろうか。ハリーJr.は何も言わなかった)
だが、肝心のスキャバーズそのものがいなくなってしまったわけで。
ハリーJr.はお人よしである。確かに1年次の彼はロナルドと仲が悪かったが、2年次の秘密の部屋騒動の時に、決して悪い奴じゃないとハリーJr.が見直し、さらにはロナルド本人もエジプト旅行の際にあった兄にいろいろ相談して考え直したこともあって、どうにか関係修復・・・正確には再構築しかけていたらしい。
自分だって、ペットのヘドウィグに何かあったら何とかしてやりたいと思うと、ハリーJr.がおせっかいをすることにしてしまったのだ。
スキャバーズの本当の生物名がわかれば、あるいは行動パターンなどを割り出して捕まえることもできるかもしれない。生きている可能性だってあるのだから。
ハリーJr.がそう言うや、ロナルドが一念発起した。よし来た!プランクに聞いてくるよ!ありがとう、メイソン!
悪い奴じゃないんだよなあ。ちょっと向こう見ずで思い込み激しいところがあって。素直なんだろうけど。
そう思うハリーJr.もまた、父からセブルスが世界各地を旅してまわったという話を聞いており、おじさんなら何か知っているかも、とテスト勉強の合間を縫って尋ねてきたのだ。
「バカなことを言うな。ネズミの姿で、ろくに魔力の片りんも示さんくせに寿命だけはあるだと?そんな都合のいい生き物」
聞き終えてセブルスは切って捨てるよう言いかけて、不意に黙り込んだ。脳の瞳がささやいている。
いる。そんな、都合のいい生物が。
通常、生き物は体の大きさと寿命が比例する。心肺機能の関係もあるが、小さな生き物は寿命が短い分多産である。
体の大きさと寿命は比例し、出産する子供の数は反比例する、と言ってもいいだろう。
ただし、それは人間を除くうえ、さらには魔力を持たない通常の生物の場合に限定される。
そう。人間は体の大きさの割に、寿命が長い。魔法族であればさらに長生きする。魔力を持つというのは、それだけで寿命を延ばすのだ。
それは他の魔法生物にも適応され、魔法生物に関しては体の大きさと寿命は必ずしも比例はしないのだ。
そう。その条件に当てはまる、都合のいい生き物が、いるのだ。
何を隠そう。
「先生?」
「・・・Mr.メイソン。ここから先の話は他言無用だ」
急に険しい顔になったセブルスにハリーJr.は目をしばたかせるが、重々しい言葉に戸惑いながらもコクリとうなずきを返した。
「そんな都合のいい生き物はただ一つだ。人間だ」
「え?」
「
聞いた途端、ハリーJr.はさっと顔色を変えた。
夏休みに付け狙われて引っ越す羽目になったハリーJr.は、その後事情を知ったハーマイオニーによって、
例の黒犬に限ったことではない。ひょっとしたら、他にも
「え?で、でも、スキャバーズって、すでに何年もウィーズリーのところで飼われてるって・・・え?」
かわいがっていたペットが、まさかの人間。おっさんだかおばさんだか不明だが、中身はいい年こいた人間。不審人物と一緒にご飯を分け合って、ベッドを一緒にして・・・うっかり、ハリーJr.はそんな現実を想像してしまった。
「ど、どうしよう・・・そんなこと、ウィーズリーに言えない・・・」
青ざめてうめくハリーJr.をよそに、セブルスは脳に宿す瞳の瞬きを感じていた。
啓蒙が高まった時の感覚にも似ているそれは、俗にいう閃きというものかもしれない。
「Mr.メイソン。ウィーズリーがネズミを飼っているのを知っている者は、貴公のほかに誰かいるかね?」
「え?ええっと・・・ホグワーツ生・・・ううん、多分、不特定多数が知っていると思います」
「不特定多数だと?」
「あれ?先生、ご存じないですか?今年の夏に、ウィーズリーのところ、ガリオンくじに当選してそのお金でエジプト旅行に行ったって、日刊預言者新聞に載ってましたよ?
確か、新聞にも写真が載ってて、そこにペットのネズミを肩に乗せたウィーズリーも映ってたと思います」
「原因はそれか!」
「え?」
額を押さえて天井を仰ぐセブルスに、訳が分からないとハリーJr.は目をしばたかせた。
ウィーズリーの家が何年ネズミを飼っているのかは定かではない。
だが、ここにきて出てきた、異常に長生きの指が一本欠けたネズミ。
脱獄したシリウス=ブラック。
シリウスの狙いが、ポッター一家を売ったペティグリューへの復讐ならば。
マグルを虐殺し、指一本を残して自身も被害者に偽装して逃げおおせたペティグリュー。
ペティグリューはどこに逃げたのか。
他の死喰い人たちが、帝王の復権に備えて身を潜めているのと同様に、奴もまた復権に備えて、準備を整えられる環境を選んだのだとしたら。
ポッター母子は自爆したが、そうでないなら経過はどうあれ、いずれホグワーツに入学する。そうなったときに真っ先に接触できるポジションを取るべきだ。
指一本残して消えたペティグリュー。
指が一本欠けたネズミ。
夏休み初めに脱獄したシリウス=ブラック。
エジプトから帰還してから、弱り始めたネズミ。
ようやく点は出そろい、線で結びあい、物事の輪郭があらわになってきた。
続く
【修復されたレイブンクローの髪飾り】
ロウェナ=レイブンクローが自身の象徴的アイテムとして作り上げた髪飾り。
サファイアのような楕円形の石がはめ込まれており、身に着ければ知恵が増すともいわれている。
この髪飾りはロウェナの娘ヘレナが盗み出し、ロウェナはその事実を他の創立者たちにも隠した。
この世ならざる身の上になり果てたヘレナは、今なお髪飾りを求めてやまない。
闇の帝王に奪われて分霊箱にされたのち、セブルス=スネイプによって修復されたそれを目の当たりにした彼女は、何を思うのであろうか。
[おまけ~メアリーさんのお祝い~]
クィディッチでスリザリンが優勝した。
お祝いの菓子を焼くようにセブルス様に言われたメアリーは、少し考えてから取り掛かった。
イギリスの菓子の方がいいかもしれないが、少し変わり種の方がいいかと思い、ブロワイエにすることにした。フランスの郷土菓子の一つだ。
ホグワーツの厨房を訪れたメアリーは、ハウスエルフたちに断りを入れて、エプロンを身につけて袖をまくったアームバンドで止めると、さっそく調理を始めた。
ローマジパンとバターを混ぜ、粉糖を入れてからさらに混ぜ、薄力粉をふるって入れてから切るように混ぜる。
混ぜすぎない程度にまとめてから、冷蔵庫で冷やす。
よく冷やしてバターを落ち着かせてから、打ち粉をしてから生地を麵棒で広げる。
そうして、型抜きをする。余った端の生地も集めてから、小さめの型で抜く。
もう一度冷蔵庫で冷やしてから、卵液を塗り、フォークで溝をつけて飾りを描く。
あとは、180度のオーブンで30分焼き上げる。少し焼き過ぎと思われるほど、しっかり焼き色を付けるのだ。
オーブンから出したら、しっかり冷ます。
少し遅くなってしまったが、メアリーはスリザリン寮の談話室に、焼きあがったブロワイエを持って行った。
「うわー!ありがとうございます!」
「バターのいい匂い・・・おいしそう・・・」
テーブルの上に広げられた大きな円盤状の焼き菓子に、寮生たちがワイワイと集まる。
「大きいビスケットみたいね・・・どうやって食べるんですか?」
「こうします」
女子生徒の質問に、メアリーはブロワイエの上に布巾を置いてから、「失礼します」と持ってきていたトンカチを振り下ろした。
「ブロワイエとは、フランス語で砕くという意味があるそうです。お祝い事の際に、こうして砕いて、その破片をそれぞれとって食べるのがフランス本場での食べ方のようです」
布巾を取って、いくつかの破片に割れた焼き菓子を前に淡々と言ったメアリーに、生徒たちはちょっと引いている。
「ありがとうございます、メアリー!フリント先輩!先輩は来年で卒業だから、大きいのをどうぞ!」
最初に声をあげたのはハリーJr.だ。
「あ、ああ・・・悪いな、メイソン」
「なら、次はメイソンだ。お手柄だったぞ、シーカー!」
「なあ、俺、こっちのもらっていいか?」
「おい、ずるいぞ!」
「まだブロワイエはほかにもあります。そちらも今割りますので、皆様でお分けになってください」
ワイワイと銘々ブロワイエを手に取って食べ始めた学生たち。杖でテーブルをたたいて、ココアやお茶といった飲み物を出す生徒たちもいる。
みんな楽しそうで、おいしそうに食べてくれている。
空っぽの胸の奥がむずむずするような気がした。嫌な感じではない。
あとでセブルス様にお伝えしよう、とメアリーは思った。
もちろん、ブロワイエとお茶を一緒にお出しして。
サプライズ!人形ちゃん可愛いヤッター!
次回の投稿は、来週・・・と見せかけて、明日!本編はいったん置いといて、外伝をやります!
以前、アンケートでお尋ねした、ハリーJr.、ドラコ、ハーマイオニー3人組の学生生活です!時系列は1年次のものとなりますので、あしからず。
お楽しみに!