プランク先生が、セブルスさんのお部屋にロナルドを連れて行ったのに、?となられた方も大勢いたと思います。
あれ?本来なら、寮監のマクゴナガル先生のお部屋に連れて行くべきでは?と。
実はマクゴナガル先生、予言の後ぶっ倒れて医務室行きになってました。(第5楽章でやろうと思ってたので、描写を省いておりました)
後、セブルスさんのお部屋の方が近かったってのもありますし、プランク先生が劇中でも言ってる通り、ロナルドの状況的にピーターがらみなのは明白なので、的確なことが言えそうな(ピーターの人質云々の事情を見抜いてたのは、彼くらいでしたし)セブルスさんのところに連れてきたってのもありました。
メアリーのおやつ目当てでは?という意見もありますが・・・そういう可能性もあります。書いてないだけで、教師の皆さんも、メアリーのおやつとかおすそ分けしてもらったりしてますから。
すみませんね、描写不足で。そのうち本文の方にも追加描写しておきます。
メタな事情を言えば、セブルスさんが主人公で、学生サイドのハリーJr.も絡んでない部分で、ロンの問題がいつの間にか解決してましたってのは、どうかって部分があったんですよ。
ロンを単なる問題児で済ませたくなかったんです。根っこの部分ではいい子なんですから。
という言い訳をグジグジとやったところで、本編です。
前回の終わり方から、不穏な雰囲気あったし、いきなり事件か?!と思いきや、ほのぼのパートからです。
【1】ヘザー、悪夢を告白する
セブルスは支度を終えた。
漆黒のインバネスコート・・・は、季節外れの上、これから行く先には着てくるな、とリリーに釘をさされているので、いつぞや購入したマグルの黒服を着用している。
「では、行ってくる。帰りは遅くなるだろう。先に休んでおくように」
「・・・わかりました」
セブルスの言葉に、メアリーはいつも通り淡々とうなずいたが、どこか寂しそうに見えた。
ホグワーツでのにぎやかな時間を知ろうとも、『葬送の工房』の静かなひと時の方が好ましいのか、メアリーはゆったりと過ごしていたが、ホグワーツにいた時よりのびのびしているようにも見えた。
とはいえ、やはりセブルスがいないのは寂しいのだろうか?
そういえば、イギリスに帰国してから初めて彼女を現実に呼び寄せた時、一等うれしそうな様子を見せた(表情こそ変えなかったが)。あれもやはり寂しかったのかもしれない。
・・・あまり寂しがらせないようにしよう、とセブルスは思う。
連れて行くのも考えたのだが、今回は場所が場所なのだ。
残念だが、彼女には留守番を頼むしかない。
ボンネット越しにその頭を一撫でし、セブルスは工房を出た。
今年はクィディッチのワールドカップがイギリスで開催される予定である。
魔法省は、ホグワーツにおける吸魂鬼の暴走で純血貴族の面々の怒りを買い、貴重な寄付金を大幅に削減された。しかしながら、意地を張ることにおいては他の追随を許さない英国の魔法界である。さらにはクィディッチ好きの資産家魔法族がいたこともあり、どうにか開催自体はできた。
魔法省の役人たちが、この事態の原因となったピンクのガマガエルと、彼女の暴走を看過したファッジに、陰湿な嫌がらせと怨嗟の声を浴びせまくったのは言うまでもないだろう。
ともあれ。
これにはクィディッチ大好きのドラコとハリーJr.は大盛り上がりで、一緒に見に行こう、決勝戦に勝ち進んだアイルランドとブルガリアのどっちが勝つかと楽しみにしていた。
もちろん、仲良くしているハーマイオニーも誘って、3つの家族ぐるみで見に行くことになり、ルシウス=マルフォイのつてでチケットも取り寄せ(代金は自分たちで払ったが)、予定を立てて楽しみにしていた。
その3日前にヘザーが突然、行きたくない、行っちゃダメ、と言い出すまでは。
以前も記述したが、ヘザーは特化型スクイブであり、予知じみた直感能力を持っている。
ドラコと出会うきっかけになった誘拐事件を察知したのもそうだし、いつだったか、メイソン一家が家族旅行に出かけようとしたとき、ヘザーが妙に嫌がったためやむなく延期してみれば、搭乗予定にしていた飛行機が事故を起こして乗客の大半が死亡ということもあったのだ。
その件以降、メイソン一家において、ヘザーが嫌な予感を理由に嫌がったら外出は絶対中止、もしくは延期、と暗黙のルールで定められることになったのだ。
つまりは、クィディッチのワールドカップ決勝戦でも、何か良くないことが起こる可能性が高いわけだ。
そのような事情ももちろん、マルフォイ家に説明し、メイソン一家とマルフォイ一家は、急遽ワールドカップ行きを中止。表向きは、ヘザーとナルシッサの両名が体調を崩したことにし、何も知らないグレンジャー夫妻と、マルフォイ家と付き合いのあるお偉いさん方にはそのようにした。
ただし、ハーマイオニーにはハリーJr.とドラコが手紙越しに説明をした。ハーマイオニーは3年次に受講した占い学のせいで予知や予言といったものに対してはかなり懐疑的になってしまっているが、友人二人の言葉に怪訝そうにしつつも一応信じてくれた。
とはいえ、仕事上の付き合いというものもあるので、いやいやマルフォイ氏だけワールドカップの試合に顔を出した。ただし、試合開始前に各方面や要人へのあいさつ回りを終えて、彼はそそくさと帰った。病気の奥方が心配という言い訳をつければ、家族大好きの愛妻家で通るマルフォイ氏を引き留めようとする声はほとんどなかった。
そして。試合開始から5分後。それは起こった。
クィディッチ選手たちがユニフォームカラーの閃光となって飛び回るピッチのど真ん中に、それが投げ込まれた。
それは、死体だった。ずぶ濡れの、全身がむくんで腐敗しかけの、水死体だった。
どこから、誰が、何の意図をもって投げ込んできたかは意図不明だったが、一つ、おかしな点があった。
水死体は魔女らしく、同じくずぶ濡れのローブをまとっていたが、むき出しにされた二の腕に、奇怪な数字が刻まれていた。
『12121』
その数字が意味するものを知る者は、少なくともそこにはいなかった。
いずれにせよ、ピッチに死体が投げ込まれたことで、試合会場は阿鼻叫喚となり、試合は前代未聞の中止となった。
マルフォイ氏はそそくさと帰ったため難を逃れたが、実はこの後に騒ぎを起こそうと目論んでいた輩がおり、この騒ぎによって駆け付けた魔法省旗下の役人たちにお縄にされるのだが、それは余談である。
誰かが言った。13年前の事件の続きだと。
別の誰かが言った。あの事件の犯人は死んでいる。模倣犯の仕業だと。
日刊預言者新聞がいつものように面白おかしく憶測・推測を交えて書き立てる中、誰もが思ったことだろう。陰鬱で悍ましい何かが始まった、と。
かくして、メイソン一家、マルフォイ一家、グレンジャー一家の3家はどうにかトラブルを逃れ、本日はお流れになってしまったクィディッチワールドカップの埋め合わせのためのバーベキュー会である。
場所はマグル界のキャンプ場である。
セブルスも誘われ、メアリー手製の菓子を手土産に、参加と相成ったのだ。
適当な人通りの少ないところに“姿現し”をして、そこから徒歩と交通機関を駆使し、到着した。
「おじさん!こっちこっち!」
待ち合わせ場所近くについたセブルスを見たハリーJr.がニコニコ笑いながら大きく手を振った。
すでに始まっていたらしく、肉が焼けてバーベキューソースの食欲をそそるいい香りがそこらに漂う。
珍しそうにそわそわとバーベキューコンロを見やっているのは、一応マグル服を着ているマルフォイ一家だ。
一応、平静を装おうとはしているが、一家して物珍しそうなのと、美形であるせいでどうにも溶け込み切れていない。
野菜や肉の下ごしらえをするリリーとグレンジャー夫人とハーマイオニーに、バーベキューコンロの前で火の強さや焼き具合を見るのは、ハリーとグレンジャー氏である。
「遅れてしまったかね?」
「今始まったところだよ!」
セブルスの問いかけに、ハリーJr.はにっこりと笑った。
「先生!ご無沙汰しています」
「うむ。夏休みは楽しんでいるかね?Mr.マルフォイ」
「はい。先生もご息災で何よりです」
セブルスの到着に気がついて駆け寄ってきたドラコが礼儀正しく挨拶するのにもこたえ、セブルスは視線を巡らせた。
・・・一人足りない。
「・・・ヘザーはどうしたのだね?」
「・・・あそこ」
セブルスの問いに、ハリーJr.は顔を曇らせてから、視線を少し向こうへやった。
キャンプ用のテーブルセットの向こうだ。木の下でぼんやりと座り込んでいる、金髪の少女がいた。うかない顔をしており、元気がないように見える。
「それがね、僕が帰宅してからずっと、元気がないんだ。
理由を聞いてみても、本人もはっきりとわからないみたいで」
「僕やグレンジャーには誤魔化そうとしてきますし。
・・・そんなに信用ないのか、僕らは」
「それは違うよ!ヘザーって意地っ張りなところがあるから、心配させたくないんだよ!僕にだって、最初誤魔化そうとしてきたくらいだし!
ドラコが心配してるってのは、伝わってるはずだから!」
「別に僕は心配なんて・・・それは、その・・・少しくらいは・・・」
じゃれあう二人を眺めるセブルスは、頬を赤くするドラコを生温かな目で見やった。素直になり切れないドラコだが、問答無用で否定していた1年次と比べると、若干素直になったように見えないでもない。
「おじさん、後でいいから、ヘザーの話、聞いてあげて」
「なぜ私が?」
「だって、おじさんだし。パパからも聞いてると思って。違った?」
「どういう理屈だね、それは。後者については否定せんがね」
などと言いながら、セブルスは二人を連れて一同に歩み寄った。
セブルスがあいさつを済ませたところで、ちょうどよく焼きあがったバーベキュー串を取っていいことになった。雑談を弾ませながら、銘々串を口に運ぶ。
「えー?!ハーマイオニー、マグル学辞退しちゃったの?!え?でも、テストでも100点突破してなかった?」
「ええ。でもいいのよ。あれを落とせば、通常の時間割に戻せるしね。さすがに
ハリーJr.の言葉に、ハーマイオニーがジュースの入った紙コップを手に苦笑した。
「
首をかしげるハリーJr.をよそに、それを聞いたドラコが顔を引きつらせる。
「一定の時間を巻き戻す魔道具だ!
よく使用許可が下りたな!あれは本来、一学生が使用していい魔道具じゃないだろう!」
「ええ。だから、使用上の注意をよくよくされて、絶対悪用しないって魔法契約も交わしたの。万が一そうしたら退学するって」
「あー・・・ハーマイオニーだから、許可が下りたのかも。だって、1年からずっと首席だったし、そんなひどい校則破りとかもしてないでしょ?だからじゃない?」
「なるほど。そうかもしれないな」
「私以外でも、過去に12フクロウを取った人とかも利用されてたみたいよ?
もう返しちゃったけどね」
「12フクロウ?」
「12教科全部のO.W.L.試験をパスしたってことだろう。
凄まじい人だな」
「ふえー・・・天才かな? 凄いね・・・」
「ハリー。きっとその人、すごくいっぱい勉強したと思うわ。それを天才で片付けるの、どうかと思うわ」
「あ・・・。
えっと、そういうつもりじゃなかったんだけど。気に障ったならごめん。
でも、きっと、僕たちが入学する前の先輩だよね?どんな人だったんだろ?」
「さあな」
窘めるハーマイオニーに、ハリーJr.は気まずげな顔をした。
肩をすくめたドラコに、わきで聞いてたセブルスは少々遠い目をする。
「知り合いかい?」
目ざとく気が付いたらしいハリーの問いかけに、セブルスは静かにうなずいた。
「ホグワーツの、一つ下の後輩だ。私よりも・・・別の後輩の方が親しかったがな」
言いながら、セブルスは摩耗した思い出を引っ張り出そうとした・・・が、どうもそういう人物がいた、ということは思い出せても、名前や顔までは思い出せなかった。
セブルス個人に付き合いはなかったわけで、知り合いの知り合いぐらいの人間は、おおむねこんなものである。100年ヤーナムで過ごせば、こうもなるだろう。(そしてこれでもまだましな方だろう)
「バーテミウス=クラウチだったか。
優秀であっただけに、惜しい男だった」
子供たちの話を聞いていたルシウスがぽつりと言った。
ああ、そういえば、そんな名前だったか。
「ご友人だったんですか?」
「確か、セブルスの一つ下のはずだ。見込みもある優秀な男だった」
「そういえばそんな男もいたような気がしますな」
尋ねたハリーに、ルシウスはうなずいたが、記憶がおぼろげなセブルスはやはり思い出せない。名前は思い出せても顔が思い浮かばないのだ。
「・・・前々から思っていたが、お前は学生時代のことに関して疎い部分がかなりあるな。・・・まあ、いい。
本名は、バーテミウス=クラウチJr.だ。
レギュラス=ブラックの友人であったのだから、私よりお前の方が知っていると思ったのだが?」
呆れた様子でため息を吐くルシウスに、セブルスは眉間のしわを一つ深くしたが、思い出せないものは仕方がない。
おそらく、顔を見たら思い出せるのだろうが、レギュラス本人はともかく、その友人とはあまり親しくなかったのだ。
「申し訳ありません」
「君らしいね」
セブルスの謝罪に、ハリーが苦笑した。興味がないことにはとことん淡白なセブルスらしい話だと思ったのだ。
「クラウチか・・・」
ぽつりと言ったのは、ルシウスだった。
難しげな表情で視線を落としたが、すぐさま首を振る。今となっては、終わってしまったことだ、と言葉にも出さずに思ったのだ。
そうして、彼は視線を子供たちの方へ向けた。
ようやく加わったヘザーも、談笑に加わって年相応の笑みを浮かべている。
ようやくビデオ販売されたという映画の話をはじめ、それを聞いたドラコが戸惑ったような顔をしていたので、今度一緒に続編の映画を見に行こう、その前にビデオの上映会だ!と盛り上がっている。
「先日は助かった。改めて礼を言わせていただきたい」
「いえ・・・ヘザーのおかげですよ。
・・・もっとも、喜ばしいとは言い切れませんが」
表情を曇らせたハリーに、ルシウスはどういうことかと問いそうになるが、すぐに口をつぐんだ。
未来を知ることは、必ずしもいいことばかりではない。自分の死に方を知ったものが、周囲に災いをもたらすことだってある。少し古い伝承を紐解けば、見当たる話だ。マグルの伝説にもあるほどなのだから。
いつか、ヘザーがその能力故に苦しむことになるかもしれない、と案じているのだろう。ルシウスとて、もしドラコがそのような力を持ち合わせたなら、何をやっても息子の力になろうとしただろうから。
「・・・魔力が成長と同時に大きくなるように、ヘザーの力もまた、増大しているのでしょうな。近く、制御手段を用意した方がいいかもしれませんな」
「できるのかい?」
「さて。やってみないことには何とも」
どこかすがるようなハリーに、セブルスは肩をすくめたが表情は真剣だった。
加えて、ヘザーにはもう一つ、問題がある。引き継いでしまった神の因子だ。今はまだ何事もないが、ヘザーの体が熟達すれば、再び活性化してもおかしくない。
早めに何とかするべきなのだろうが、下手に手を出せばサイレントヒルの再来になりかねない以上、現状では静観するしかないわけで。もどかしい限りである。
「ハリー!おしゃべりばっかりしないで!バーベキューコンロの炭の追加をお願い!
Mr.マルフォイと、スネイプも、こっちに来て!オレンジを剝いたから、食べましょう?」
ここでリリーに声をかけられた。
いささか暗い内容になってしまった話を打ち切り、男たちは家族の下へ向かった。
腹も膨れ、とっぷりと日もくれたところで、銘々それぞれのテントに引き上げた。
ちなみに、グレンジャー一家とメイソン一家は普通のマグル製のテントだったが、マルフォイ家のそれは見た目は普通のテントでも、内部は別荘並みの豪奢な内装になるような魔法がかけられたものだった。さすがはマルフォイである。
寝袋の中にいたヘザーはひゅうッと大きく息を吸い込んで目を覚ました。じっとりとにじんだ嫌な汗で全身が気持ち悪い。
またあの夢だ。きっとそうだ。
夢の残渣を振り払うように首を振って、ヘザーは寝袋から抜け出した。眠っている家族を起こさないように、そうっとテントを抜け出る。
キャンプ場は静まり返っていた。
「眠れないのかね?」
急に声をかけられて、ヘザーはぎくりと肩をはねさせた。
「おじさん・・・」
折り畳みの椅子に掛けるセブルスが、ヘザーを見ていた。
明かりはない。焚火の類も消されていて、真っ暗だ。
夜闇に黒服のセブルスは溶け込みそうなほど目立たないが、その不思議な宇宙色の双眸だけは目立った。
きれいで引き込まれそうだけれど、どこか寒気も感じる目だった。けれど、ヘザーはその瞳が好きだった。おじさんのどこが一番好きかと言われたら、一番に挙げるくらいには好きだ。
大きくなったらパパと結婚する!と無邪気に言ってたヘザーが、パパはママと結婚してて、結婚は一人としか駄目なのよ!と友達に言われたとき、じゃあおじさんと結婚する!というくらいには、おじさんのことが好きだった。もちろん、親愛という意味で。
「今夜は星がよく見える。宇宙は空にある。とても簡単なことのはずだが、なかなかに気が付くのは難しいことだ」
「? それ、当たり前のことでしょう?まさか地下にあるなんて誤解する人、いないでしょ?」
雲一つない星空を見上げるセブルスのそばに歩み寄って、ヘザーは首をかしげた。
どうにか夜闇に目も慣れたヘザーは、空いている椅子を見つけて、おじさんのそばに腰かける。
ヘザーの言葉に、セブルスがくつくつと肩を揺らして笑った。
「当たり前か。そうでもない。ある場所にいた学者たちは、宇宙は地下遺跡にこそあると探求していたのだ。まあ、その探求はことごとくが無駄骨に終わったがね」
それこそが、医療教会の上位組織“聖歌隊”の発祥につながったわけだ。
「地下遺跡?変なの」
「そうでもない。人智や我々の見解を超える存在――一種の神、上位者がそこから見つかったならば、あるいはそここそが、彼らの存在すべき場所、すなわち宇宙と考えうる。それだけの話だ。彼らが最初からそこにいたかは、考えもせずにな。
だからこそ、ウィレーム先生も嘆かれたのだ。“我々は思考の次元が低すぎる。もっと瞳が必要なのだ”とな」
「そんなに瞳なんて必要?一杯眼があっても、虫みたいになるだけじゃない。気持ちの悪い。人間には二つも目があるんだから、それで十分でしょ?」
「虫扱いか。ヤーナムの連中が聞けば、怒り出しかねんな」
首をかしげるヘザーに、セブルスがククッと笑う。どこか苦笑にも似た笑い方だ。
脳に瞳を。思考の次元を引き上げ、高次元の存在へ。それを求めたヤーナムの者たちが、ビルゲンワースの学徒たちが、どうなったのか。
希求と渇望の結果、引き起こされた数多の惨劇と狂気の所業。
それらすべてを、一蹴して見せたヘザーを、セブルスは潔く、そして好ましく思った。
「・・・怒った?」
恐る恐るヘザーが尋ねてくる。
ヘザーにヤーナムのことを明確に語ったことはないのだが、それでもこの少女は時折、核心をついてくる。
セブルスが、脳に瞳を宿した上位者であることを薄々感づいているかのように。
「いいや。貴公の言うことはもっともだ」
人間は、その枠のうちで満足すべきだった。思考の次元など引き上げずとも、その手元にあるものを大事にすべきだった。
渇望と希求は、人類の進化・技術の発展の根本にあるものだが、追い求めすぎれば身を蝕む毒となる。多くの伝説で語られる教訓であるのに、人間はいつまで経っても学習しない。哀れなものだ。
「眠れてないと聞いた。どうやら、本当らしいな」
セブルスは話題を変えた。
というより、セブルスとしてはこれが本題のつもりだ。
「・・・そういうおじさんこそ」
「今夜は星がよく見えるからな」
ジト目で見てくるヘザーに、セブルスは飄々とそう言った。
上位者であるセブルスにとって、よほどのこと(以前にやった予言の破壊のような)がない限り眠りは必要ない。
とはいえ、人間だったころのくせで、休む時は休むのだが。眼を閉じて横になるだけで、だいぶ違ってくるわけで。
一応、セブルスも今夜は一人用のテントで形だけでも休めるように準備だけはしていた。
もっとも、今、そこは空っぽなのだが。
「何か飲むかね?」
「・・・いいの?手間じゃない?」
恐る恐る尋ねるヘザーに軽く首を振って、セブルスは血の遺志収納から、あらかじめ収納していたものを取り出した。
少し変わった台座のついた鉄輪と、ケトルらしい。
地面に直接置いた鉄輪の上に、
「魔法の火だ。この火は便利でな。瓶に入れて持ち運びもできるし、指定物以外を燃やすことはない」
「へー・・・便利ね・・・」
「貴公の父親にも見せたことがある。さすがに粉ミルクの持ち合わせはなかったがね」
「父さんも・・・」
まじまじと見やるヘザーに、セブルスは冗談めかしてそう言った。
昨日のことのように思い出せる。サイレントヒルを這う這うの体で脱出し、無人の道路を歩きながら、さすがに疲れて休憩していた時、セブルスが見せたのだ。
インスタントのスープやコーヒーくらいしか持ってなかったので、そのくらいしか入れられなかったセブルスに、ハリーは気にしなくていいよ、と笑っていった。
当時、まだ生まれたばかりのヘザーを抱いたまま。
破壊不可魔法で強度を上げ、保温魔法もかけているマグも取り出す。このマグは丈夫で割れにくく、中に入れた飲み物の温度が下がりにくいのだ。
入眠前のお茶はあまりよくないだろうが、リラックス効果もあるハーブティーにするとしよう。夏とはいえ、イギリスの夜は冷える。温かいものの方がいいだろう。
マグの中にお湯を注いで、ティーバッグを浸す。ふわりと広がるのは、ラベンダーを中心とした、心地よい香りだ。
「火傷せぬようにな」
ややあって、ティーバッグを引き上げてからマグを渡すセブルスに、ヘザーは「ありがとう」と一言言って受け取る。
「いい匂い・・・」
目を細めてつぶやくと、ヘザーはふーッと息を吹きかけて、マグに口づけた。
その間にセブルスはリンドウ色の火を消す。温度が下がったら、鉄輪とケトルもしまうつもりだ。
「・・・嫌な、予感がずっとしてて」
一口飲んだヘザーが話し出した。
「何がどうとか、全然わからないの。今までのだったら、あそこに行くのは危ないとか、今日は出かけたらいけないとか、誰かが危ないとか、すっと分かったのに、今回のは全然。
この間のことは、ジュニアたちには悪いことしたなって思ったけど、クィディッチワールドカップって言葉を聞いたら、嫌な予感が強くなったから。
それでおしまいかなって思ったのに、嫌な予感は全然収まらなくて。
で、そうしているうちに、夢を見るようになって。
起きたら思い出せないんだけど、でも嫌な夢を見たってのは覚えてるの。
ごめん・・・何の役にも立てなくて・・・」
本人も戸惑っているように、取り留めない様子で話をするヘザーに、セブルスは黙ってうなずいた。
「謝ることはない。ただ、貴公のことを気に掛けるものは、貴公が思っている以上に大勢いるということだ。
貴公の父母も、心配していたのではないかね?」
「うん・・・。
今日のキャンプも、先延ばしした方がいいかなって言ってくれたんだ。
私が無理やり、大丈夫って言ったの。今日行かないと、またずるずると先延ばしにしちゃうだろうからって」
沈んだ調子で話すヘザーに、セブルスは言った。
「ルシウスは貴公に感謝しているようだったがね?何か言われてたようだが?」
「うん。この間はありがとうって、改めてお礼言われたわ。
うちにお菓子送ってきたから、気にしなくていいのに」
「貴公の父親から聞いたと思うが、今、マルフォイ家は闇の陣営から抜け出したばかりだ。疑わしきことが起これば、即座に立場が危うくなる。
危ういことに近寄らずに済んだのだから、そのきっかけを作ったものには感謝をするものだろう」
「それだけでもないと思うけど」
言ったヘザーに、ほう?とセブルスは軽く片眉をあげた。
鋭い。もちろん、その通りだ。ヘザーの能力が有事に役立つと証明されたのだから、これからもよろしくという意味合いもあるのだ。保身に動きがちな純血貴族のマルフォイとしては、そういうことなのだろう。
むろん、それは両親であるハリーとリリーの二人はとっくに悟っていることだろう。しょうがないな、と苦笑しながら。
人間はきれいごとだけでは生きていけない。酸いも甘いも、清濁も併せのんで生きていくしかない。守るべきものがあるならば、なおのこと。大人二人はそのあたりをしっかりとわきまえていた。
「・・・理由は?」
「んー・・・勘、かな?」
ヘザーがそのあたりまでわかっているのかは不明だが(あるいはわかっていてとぼけているのか)、とりあえず彼女はそう言って、あいまいに笑う。
「そうか。いずれにせよ、その感覚は大事にしたまえ」
「そーする。パパもママも、ルシウスさんは悪い人じゃないけど、善意だけじゃ人は動いてくれないとも言ってたしね」
ここで、ヘザーはマグの中のハーブティーを飲み干したらしい。
「ごちそうさま。そろそろ戻るね」
「そうしたまえ。寝不足はよくない。寝付けないなら言いたまえ。薬ぐらいならば処方しよう」
「ありがとう、おじさん」
微笑んで、ヘザーはテントに戻った。
おじさんはばれてないつもりかもしれないけれど、ヘザーにはバレバレだ。
あのハーブティーの中に、安眠効果のあるハーブが入っていることなんて。多分、悪夢を見ずに済むような種類のものだ。
寝袋に潜り込むと、すぐに眠気が襲ってきた。
すとんとヘザーは眠りに落ちた。
開かない。開かない。内側から鍵をかけられ、鎖と錠前で頑丈に施錠された扉を何度も叩いた。
誰にも気が付いてもらえない。まるで、この部屋だけ外界から隔離されてしまっているかのように。
誰か気がついてくれ!ここにいるんだ!閉じ込められているんだ!助けてくれ!
何度も何度も扉をたたいた。声を張り上げて叫んだ。杖を振り上げて、
すべて無駄骨に終わった。
閉じ込められてもう3日経っただろうか?この部屋の内側では、不思議と腹が減ることはない。それだけが救いだった。
だが、同じ部屋に閉じ込められ続けて、誰にも気が付かれず、気が狂いそうだ。もう限界だ。だれか。だれか。
そんな時だった。気が付いたら開いていた、壁の大穴に、怪しみつつも彼は身を滑り込ませた。
精神的に、限界に来ていたのだ。
続く
【スネイプのリラックスハーブティー】
セブルス=スネイプが作成したハーブティー。ラベンダーを中心とした心地よい香りが特徴。
ラベンダーに、ジャーマンカモミール、ジンジャー、リンデン、他数種類のマグル界のハーブに、ピースローゼル、ゴブリンジンジャー、フェアリータンなど他数種類の魔法界産のハーブを組み合わせている。
使用すれば、発狂ゲージ・獣化ゲージの回復速度を少しだけ速める。
魔法界産のハーブ、それらを用いた魔法薬開発の過程で生み出されたもの。
血と獣性の香りの中では、ハーブの香りなどかき消されてしまう。狩人には、不要である。
次回の投稿は・・・すみませんね、ストックがだいぶ少なくなってきておりまして、再来週にさせていただけますか?できるだけ描写不足ガバを少なくしたいので、推敲もしたいのです。(前回、それをさぼった結果が、あれです)
内容の方は・・・狩人セブルスさんによる裏世界探検!+α!その時、彼は見た!
うっかり、ウォルター=サリバンをどつき倒しちゃったハリー=メイソン氏とのお話会も添えて。
お楽しみに!