感想と誤字報告について、ちょっと物申したいことがあります。詳しくは、3月10日付の活動報告をお願いします。
・・・親切心からされてくださったのでしょうけど、ちょっとカチンと来ましたので、改めてお知らせさせていただきます。
関係ない方には申し訳ありません。
話は変わって本編の方ですけど、何度も言うようですけど、ここまで出張ってくるとは思いませんでした、エイブリーさん。
まあ、ルシウスさんがクソ忙しいので、彼に代わって魔法界のことを語れる人物が欲しかったんですよ。レギュラスさんは動けませんしね。
というわけで続きです。
原作と違ってかなり早い段階ですが、種明かしといきましょう。
案の定、だった。
エイブリーはため息を吐いた。
何考えてんだよ、クソクラウチ。
彼の感想はこれに尽きる。否、おそらくルシウス=マルフォイや魔法省の役人も、あれを知ればそう思うに違いない。
魔法省に勤める、役人の知り合いから聞いたことだった。
クラウチが書類偽装をしようとして、そこから芋づる式に数々の問題が発覚した。
順を追って説明する。
まず、クラウチが偽装しようとした書類について。
これは、魔法省からホグワーツへの人員出向に関する書類で、今年は“闇の魔術に対する防衛術”教授として闇祓いのニンファドーラ=トンクスが担当することになっており、それについての認可を求める書類だった。
ところが、何を思ってかクラウチは、その書類を偽装しようとした。
関連部署からどうやってか盗み取り、書類を偽装、ないはずの魔法省への一時出頭命令をトンクスに出そうとしていたのだ。
あらかじめエイブリーから声をかけられ、不審視していた者がひそかにクラウチに対して目を光らせていたから見つかったが、そうでなければ見つからなかっただろうとのこと。
何しろ、仕事こそ我が人生と座右の銘にしてそうな、仕事魔人のあのクラウチである。
仕事だけはできる(それ以外の取り柄が思い当たらない)人間がまさか書類偽装するとは、誰もが思い当たらなかっただろう。
発見した奴は、クラウチを取り押さえながら「マーリンの髭!」とぼやいたそうな。
で、クラウチの取り調べをし始めたのだが、どうにも言動がおかしい。
これは“
とはいえ、“
“服従の呪文”は確かに強力であるが、効果中の人間は多幸感に支配され、呪文をかけてきた魔法使いの命令に有無を言わず従うことになる。結果として、その人本来の個性や守って当然のルールを軽視して動くようになる。これが、“服従の呪文”がかかっているか見分けるポイントとなる。
ゆえに、闇の魔法使いであろうとその魔法の腕がよいものほど、“服従の呪文”を頻繁には使わない。必要最低限とし、むしろ権力や利益提示・恫喝などを用いた策謀方面へとシフトするのだ。
で、クラウチはそのまま拘束しておく(でないと“服従”中の彼は、それでも仕事して、書類偽装を続行しようとする)として、次の問題には当然、誰がクラウチを“服従”させたのかという話が出てくる。
クラウチ自身も呪文に抵抗しているのか、取り調べ中に混乱しながらもどうにかこうにか話そうとはしているらしい。
支離滅裂な中、かろうじて分かったことによると、こうである。
クラウチ氏は息子を“管理”していたが、“例のあの人”と指名手配中のピーター=ペティグリューが押しかけてきて、息子を“管理外”にされた。そして、自分が“服従”させられていたのだと。
息子ってどういうことだ?アズカバンで死んだのでは?あと、“管理”って何ぞや?
さらに詳しく、辛抱強く聞き出してみれば、眩暈のしそうな実態が明らかになった。
なんと、病床にいた妻の生前の要望で、ポリジュースを用いて妻と息子を面会の際に入れ替える形で、クラウチJr.を脱獄させていたのだ。
つまり、アズカバンで死んだのは、収容されてなおこっそり持ち込んだポリジュースを飲み続けて容姿を誤魔化し続けたクラウチ夫人であったのだ。
そして、クラウチJr.は“服従の呪文”をかけられ、透明マントをかぶることを義務付けられ、クラウチ邸に軟禁されていたらしい。
以上の経緯を聞き終えたエイブリーは、思わず貴族らしくもなく、こう吐き捨てていた。
あほがクズがロクデナシのくそったれが。くたばれクソクラウチ!
百歩譲って、息子を脱獄させるまではいいだろう。誰だって我が子は可愛いし、病床の妻の今際の頼みであったなら、何としてもかなえたいとは思うだろう。(普通なら)
だが、そこから先がいただけない。
なんだ、“服従”させて透明マントをかぶせて軟禁って!しかも、それを“管理”というか!
面倒見れないなら、最初から脱獄させるな!妻から息子の記憶を“忘却”させとけ!
息子の方にしても、せめて金持たせて国外にたたき出す程度にしておけ!イギリスに帰ってきたらいけないって、“破れぬ誓い”でも結ばせとけばいいだろうに!
大体、クラウチ氏が事故や急病で早死にしたら、クラウチJr.がどうなっていたと思う?そんなことまで考えつかないのか?!これだから仕事魔人は!
そんな中途半端にするから、余計なのが釣り上げられるんだ!
おそらく、エイブリーが感じていた違和感――クラウチ氏が、誰か存在しない人物を世話しているような印象は、他にも感じていたものがいたのだろう。
人間が生きていくには、様々なものがいるのだ。食事・衣服、他もろもろの手配が、どうしてもいる。そこを補おうとすれば、自然とゆがみが出る。エイブリーが感じたように。
人の口に戸は立てられない。闇の帝王は、失脚してもそのコネクションは健在だ。ペティグリューが一緒ということだったから、実務はそちらにやらせ、より忠実で役に立つ手足を求め、クラウチJr.の存在をかぎつけたというところか。(最近増えた余剰分の野菜の消費先にも説明が付く)
魔法省の役人たちは、クラウチ氏の言動を“服従の呪文”による錯乱で、信ぴょう性は薄いと判断し、“例のあの人”が居合わせているということを信じていないようだが、エイブリーはクラウチの言動は事実だと察していた。
ペティグリュー一人でクラウチJr.の存在をかぎつけられるとは思えない。彼は手足には向いていても、ブレインには向いていない。クラウチJr.の存在を察することができる能力を持つものが、彼のそばに必ずいるはず。
そして、現状でそれに最も適しているのは――。
すでにクラウチの屋敷には魔法警察と闇祓いの強制捜査が入っているようだが、芳しくないらしい。
曰く、屋敷はそこらじゅうから変な臭いがする(大元は完全封鎖された寝室らしい)うえ、もぬけの殻である。
おそらく、ペティグリューは逃げ出してしまったのだろう。昔から逃げ足だけは速かったのだから。
まずいのでは?
エイブリーは素早く計算して、そう結論を出した。
ペティグリューははっきり言って、エイブリーの観点から見ればせこいが、機転は利いているのだ。
小物と言ってしまえばそれまでなのだろうが、小物は自覚をもって自分にできる範囲をわきまえていれば、大事を成す一助になれる。
ペティグリューがもし、お得意の危機察知能力で、さっさと帝王を連れてそこから逃げ出したのだとしたら、次の潜伏先を見つけたということになる。
冗談ではない。
ペティグリューも、何を律義にあんな死に損ないに手を貸しているのだ。さっさと見限ればいいものを。ああ、小物だからこそ、自分一人では何もできないと察しているのか。それはそれで哀れなものだ。
まあ、エイブリーには関係ない。元死喰い人仲間?ペティグリューなんぞ、ポッターどもの次に帝王についた、こうもり野郎だ。学生時代のことを、奴は「ポッターとブラックに命令されて!」と言い訳はしたが、謝罪などは一言もなかった。
大体、エイブリーが何も知らないと思っているのか?あの、ザマーミロ、闇の魔法使いめ!と呵々大笑するポッターとブラックのそばで、ペティグリューが気弱気にしながらも、こちらを嘲る目をしていたことを!誰が助けてやるものか。
つまりは奴に、こちらの慈悲は不要ということだ。だから、エイブリーも手など貸さない。
奴もいい年なのだ。自業自得というのは身に染みていることだろう。
闇祓いは総力を挙げて逃げたペティグリューを追っているらしいが、その足取りはまったくつかめていないらしい。
まずいだろう、これ。
と、エイブリーが額を押さえていると、クラウチ氏についての情報の続報が入ってきた。
「はあ?!クラウチJr.は自殺してるだと?!」
『そういうことらしい。まだクラウチ氏も錯乱中だから、正確なところは分からないんだが』
暖炉から突き出た知り合いの生首(煙突飛行ネットワークを用いた、簡易通信である)に、エイブリーは眉を顰める。
魔法使いにおける自殺とは、はっきり言って名誉あるものとはいいがたい。死んで花実が付くものか。ついでに、利益と名誉を重んじる純血貴族ほど、それを厭う傾向がある。
クラウチJr.も純血貴族の一員としての教育を受けたならば、そういう傾向があるはずというのに。
そもそも自殺するならば、もっと早く――例えば捕まえる前などにしてもよかったというのに、なぜ今更?
「・・・死体はどうしたって?」
『有り合わせの材料に魔法をかけて作った棺に入れて、庭先に埋葬したらしいぞ。
どうした?顔色が悪いぞ?』
気遣ってくる知り合いに、エイブリーは首を振った。
すでに彼は、セブルスから“21の秘跡”という魔術儀式について聞き及んでしまっている。
エイブリーは聞いたことのない儀式だが、闇の魔術の深淵に至るようなおぞましい術式であったり、海外の術式であればわかるはずもない。(セブルスもイギリス国外で知ったと語っていたのだ)
クラウチJr.はすでに死んでいる。だから、その儀式にかかわっている可能性は低いと思っていたが、もし生きていたのだとしたら、話は根底から覆るのでは?
「馬鹿が!いいか、すでに死んだふりを成功させている奴だぞ?!忘却術や錯乱呪文の併用で、父親に死んだと思い込ませて逃げ出してたらどうするんだ?!
またブラック兄みたいに逃げ出した先でトラブル起こして、魔法省の恥をさらすことになるんだぞ?!」
そう。儀式の続行の可能性もそうだが、一番はそれだ。クラウチJr.が生きて逃亡した帝王に傅いている可能性もあるのだ。
ただでさえも、再編でごたついている魔法省に、これ以上のスキャンダルは不味い。
『やばいな・・・その可能性があったか。よし、あんまり気乗りはしないが、死体を埋めたという場所を確かめてみよう』
「頼む」
『気にするな。スクリムジョールは青ざめててんてこ舞いだ。奴に貸しを作っておくチャンス、逃がしはしねえよ。
じゃあな』
ニイッと笑って、暖炉の中から消えた生首を見送ってから、エイブリーはすぐさま書斎に取って返し、羊皮紙の便せんを手に取った。
何か起きている。クィディッチワールドカップのことといい、クラウチのことといい。
家を再興したばかりのエイブリーにできることなど、たかが知れているが、それでも友人たちに情報を伝えて共有することぐらいはできる。
適材適所だ。ここから先は、他のメンツに任せた方がいい。
書き上げた手紙をフクロウたち(純血貴族は、仕事の都合もあってフクロウを複数所持していることが多い)に持たせ、フクロウ小屋から飛び立たせる。
まったく、冗談じゃない。
エイブリーはこんな面倒にかかわっている場合ではない。新しい野菜の栽培方法や、品種改良、それを使った新商品の開発、他いろいろ考えること、やりたいことは山のようにあるのだ。
そうして彼は、踵を返した。
さて、そのころ、セブルスは三度、僻墓から例の異世界に潜っていた。
一度、“虫”の始末のために潜った聖杯ダンジョンを出たとき、いくつかの手紙を受け取り、その返信だなんだをやったので、少々時間が空いてしまった。
・・・ついでに、そろそろ味変気分転換で今回は少し衣装を変えてみた。
普段のインバネスコートタイプの狩装束が一番のお気に入りなのだが、たまにはいいだろう。檻やアルデオはそんな気分ではない。梅干し頭も一瞬迷ったが、やめにしておく。
よし、これにしよう!
煤けた狩装束だ。デュラの盟友が纏っていた衣装である。普段使いのインバネスコートよりもボロボロで煤に塗れたような風情ある味わいだ。
頭部は、黒フードをかぶっておく。今は装備の関係で、あまり顔をさらさない方がいい状態なのだ。(セブルス本人は気にしないが、レギュラスなどの異世界に迷い込んだ人間が驚きかねないので)
そもそも衣装替えしなければよいのでは?という意見は、セブルスの中にはない。
気分転換は誰でも必要だろう。
その結果、サイレントヒルで化け物虐殺の挙句、アルフレートばりの快哉&絶叫も、仕方がないのだ。(あの衣装は、どうにもああいう気分になって仕方がない)
そうして、異世界の重苦しい空気の横たわる、古びた街並みを歩いていたセブルスは、一つ眉をひそめた。
「うわあああああっ!た、たす、たすけっ!あひゃあああああああっ!」
聞こえてきた悲鳴は、確かに聞き覚えのある声だった。
一瞬セブルスは聞かなかったことにしようかと思ったが、この空間に引きずり込まれた人間は儀式の生贄であるので死んだらまずいという意識の方が勝り、仕方なく・・・本当に、仕方なく駆け出した。
右手に装備するのは、分厚く長大で杭のように鋭い二股の爪を腕に括り付けたような、武骨で野蛮な武器だ。獣の爪。それがこの武器の名前だ。
その名の通り、獣の爪のようにふるって戦うのだ。この武器の真価は、とあるカレル文字との組み合わせと、獣性が高ぶった時にこそある。
駆け抜けながら振りかぶられた獣の爪は、鋭い突き攻撃となって、対象を穿つ。
ゴムのようにぶよぶよした頭を持つ、ヒト型だ。セブルスは一瞬、実験棟の梅干し頭どもを思い出してしまったが、あれとどちらがマシであろうか?
ノックバックして、あおむけに倒れる異形だが、次の瞬間ずるりとのけぞるように立ち上がる。きりきりと痙攣するような奇妙な動作が、生理的な嫌悪感を掻き立てる。
「あ、ひ、だ、誰?」
尻もちをついて、涙と鼻水塗れの情けない顔で、セブルスを見上げるのは、小太りで薄ら禿のみっともない小男――ピーター=ペティグリューであった。
セブルスは、ペティグリューなど一顧だにせずに、ぶよぶよ頭めがけて、獣の爪を振りかぶる。
殺せ。殺せ。そこに化け物がいるならば!己が狩人ならば狩らねばならない!
高ぶる獣性のまま、セブルスはのけぞり、肺の奥の空気をその口腔から解き放つ。
秘儀“獣の咆哮”。背教者イジーの手になる禁じられた狩道具の1つで、忌まわしい不死の黒獣、その力をごく一時的に借りる触媒であり、圧を持った獣の咆哮により、周囲のものを弾き飛ばすのだ。
ダメージを与えることはできずと、一時的に敵の動きを止めたり、体勢を崩してノックバックさせたりするくらいはできる。
ぶよぶよ頭がふらついたのを見逃さず、セブルスは踏み込んだ。獣の爪を振りかぶり、その異形を滅多打ちにした。
ビシャリッと、その返り血が呆然としているペティグリューの顔にまで飛んだ。・・・ついでに、彼はその股間の色を変えて、地面を湿らせ――早い話、失禁していた。気絶しなかったのは、そうしたら確実に死ぬ、と確信していたからだ。
ペティグリューは確信していた。次に何かあったら、今度は自分がそうなる!
異形が動かなくなり、セブルスが姿勢を正すと同時にペティグリューは動いていた。
「ああっ!ありがとう!ありがとう!」
飛び上がるように、早くも血塗れになったセブルスの足元に駆け寄るや、土下座してその煤臭いズボンに額をこすりつけ、ブーツのつま先に口づけた。(衣装も変えているので、おそらくセブルスと気が付いてないと思われる)
瞬間。
「ぎゃああああああっ?!」
破裂音と同時に右肩に走った激痛に、ペティグリューは仰向けに吹っ飛び、転げまわっていた。
セブルスの左手には、装備したままのエヴェリンが握られ、硝煙を噴いていた。
水銀弾は、ペティグリューの右肩の肉をごっそりと抉り取っていた。ただでさえも高威力のエヴェリン、しかも獣に使うことを前提にした狩武器だ。そんなものを人間に向ければ、どうなるか。これでも、セブルスは掠る程度に狙いを甘くしていたのだ。命中か所が違ったら、ペティグリューの頭蓋が吹き飛んでいただろう。
「離れろ、愚図め。慈悲深きデュラの盟友の衣装を汚すな」
衣装が汚れたと言わんばかりに裾を払って(後で念入りに洗浄魔法をかけねば!)セブルスは、肩を押さえたままうずくまってめそめそとすすり泣くペティグリューを見やった。
痛い痛い。助けてください。何でもします。何でもしゃべります。どうか。どうか。
そんなブツブツという命乞いのような呻きが聞こえてきて、セブルスは再び獣性が引き上がりそうになった。
この男は、とことん我が身がかわいくて仕方がないらしい。らしいといえばらしいのだろうが。
一瞬、見捨ててレギュラスとの合流を優先しようかと思ったセブルスだが、脳についている瞳がチリチリとささやいてくる。
次の生贄のテーマは、“憂うつ”。ピーター=ペティグリューには、少々不似合いでは?
舌打ち交じりに、セブルスは獣の爪を一度血の遺志収納に収め、持ち替えた菩提樹の杖を振った。
止血用に回復魔法をかけてやったのだ。“聖歌の鐘”?回復用の魔法薬?両方とも、一応持ち歩いてはいるものの、こんなクソネズミ相手にはもったいなすぎる。
「ありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございますありがとうございます・・・」
平身低頭這い蹲って涙声で礼を言うペティグリューに、セブルスは舌打ち交じりに歩み寄り、その胸倉をガシッとつかんで引きずり上げる。
夏休み直前の、トレローニーの予言の一節だ。
“崇拝者は召使を連れた闇の帝王のお力により自由の身となる・・・”
もしやと思うが、こいつが闇の帝王と何かしら余計なことをして、クラウチJr.が儀式を再開できるきっかけを作り上げてしまったのでは?
「何でもと先ほど言ったな?では聞かせてもらおう。何をした?」
「な、何って」
「バーテミウス=クラウチJr.だ。奴について知ってることを聞かせてもらおう」
「ば、バーティ=クラウチ?!な、何であいつのことを?!」
ペティグリューが目を白黒させるのに、セブルスは早くも問答に飽いてきた。
いっそ、開心術で強引に記憶をこじ開けてしまった方がいいのでは?
「わ、私は知らない!!」
セブルスの雰囲気の変化を鋭く察知したか、ペティグリューが叫んだ。
とにかく、知ってることを話さなければ何をされるかわかったものではないと思ったらしい。
「あ、あのお方だ!闇の帝王!あのお方が、クラウチのところに行くと言われて!
それで!」
あわあわと、たどたどしくペティグリューは説明しだした。
しゃべりだしたところで、セブルスは手を放す。少々しゃべりづらそうだったからだ。
ケホッと軽くせき込んで、改めてペティグリューは話し出した。
少々長くなるので要約させてもらうが、ペティグリューの説明によるとこういうことである。
(おそらくホグワーツを逃げ出した後のことだろう)ペティグリューは、闇の帝王の下に馳せ参じ、その御意向のままに動いていた。
・・・あの霧霞のような残骸じみた状態から、どうにか動けるようにはなったらしい。分霊箱を作るくらいなのだ。そこから動けるようになるすべくらい、あらかじめ用意していたのだろう。
そして、闇の帝王のご指示のまま、クラウチ邸に押し入り、不意打ちでクラウチ氏を“服従”させることに成功。一緒にいたハウスエルフは、(帝王のご命令もあって)さっさと殺した。誰ぞに密告されても面倒だったのだ。
そのまま、クラウチ氏に“服従”させられていたクラウチJr.を救出した。ついでに、便利な拠点も手に入り、彼らはそのままクラウチ邸に潜伏した。
ついでに、クラウチ氏にどうやって息子をアズカバンから脱獄させた?などということも聞き出した。(聞いたセブルスはもちろん、呆れた)
クラウチJr.は自力で“服従”を破りかけていたのだろう、数日も経てばはっきりと自分の意識に基づいた行動ができるようになっていた。・・・なお、この間、どうもペティグリューが食事の支度などの雑事を片付けていたらしい。
そして、クラウチJr.が完全に自我意識を取り戻した時だった。
『ご覧ください!我が君!今!聖母様の奇跡の御業をお見せいたします!!』
そう叫ぶや、彼は自らの杖先を喉笛に押し当て、呪文を放った。
弱っている状態の闇の帝王も、“服従”させられてぼんやりしているクラウチ氏も、あまりの異様さに絶句していたペティグリューも、どうすることもできなかった。
闇の帝王は怒り狂った。
新たな忠実なる手駒とするべく、救ってやったというのに!だというのに!こいつはその温情を無碍にし、バカバカしい“聖母様”とやらのために、死んだのだ!とんだ役立たずだ!!
ならば、息子の無能は父親に返上してもらうとしよう!
そうして、帝王はバーテミウス=クラウチを傀儡として、動き出した。だが、そこからはペティグリューは知らないらしい。何事かクラウチ氏に命じていることは分かったのだが。(このあたりを話すペティグリューは非常におどおどしてて、ここだけは嘘のようだとセブルスは思ったが、今はそれどころではないのでとりあえず捨て置く)
クラウチJr.の死体については帝王が捨ておけと吐き捨てたが、さすがに放置というわけにもいかないし、何より脱獄までさせた亡きクラウチ夫人を気の毒に思ったペティグリュー(自身の母親が重なったのかもしれない)が、クラウチ氏と一緒にありあわせの材料で棺を作り、庭に埋葬した。
だが、順調に感じていたのは、そこまでだった。否、おそらくクラウチJr.が自殺したあたりからすべてがおかしくなっていたのだ。
クラウチJr.を埋葬した翌日、クラウチ邸の廊下に血の跡が見つかった。ポタポタと続く連続した滴のような血痕だ。
クラウチJr.の自室から家の外まで続いているようだった。帝王がまた何か恐ろしいことでもされているのかもしれないと思ったペティグリューは、必死に見ないふりをして、
そして、変な臭いがするようになった。明確な出どころは・・・おそらく、亡き奥方の寝室であろうが、固く施錠されているうえ、クラウチ氏はそこを永久粘着呪文でがちがちに施錠(というか物理封鎖というべきか)してしまっているので、侵入不能であった。
このため、ペティグリューは苦手な魔法薬を帝王に罵られながら調合する羽目になり、屋敷中に臭い消しを撒く羽目になった。そして、それでも臭いは消えず(それはそうだ。大元がそのままなのだから!)、悪臭の中我慢するしかなかった。
なお、この間“服従”中のクラウチは、いつものように仕事に行って帰ってを繰り返していた。いっそここまで平常運転でいられたら、逆にうらやましいかもしれない。
ちなみに、魔法界を現在騒がせる遺体に数字の刻まれた猟奇殺人については、一言も言及がなかった。
まあ、ペティグリューも帝王も潜伏生活真っただ中であるならば、そんなものに気をやる余裕はないのだろう。
そして今朝。気が付いたら、ペティグリューはここにいた。この、異様で異質で、おぞましい異世界に。
うごめく化け物ども、重苦しい空気、悪臭。この世の邪悪を煮詰めて流し込んだ先のような悪夢の岸辺を、ペティグリューは必死に逃げ回った。
化け物どもは、ペティグリューを逃がすまいと追い回してくる。ネズミに変身しても、追い回してきたほどだったのだから。
そうして必死に逃げ回っていたところで、セブルスと出会ったというわけである。
事情を聴き終えたセブルスは、ちっと舌打ちした。
やはりこいつは、職員室で殺しておくべきだった。ガラシャの拳なんて生ぬるいことはせず、獣狩りの散弾銃で耳障りな言い訳をさえずる喉笛を吹き飛ばしておくべきだったのだ。
どう考えても、ペティグリューは闇の帝王の暗躍に手を貸し、そのまま(意図してなかったとはいえ)クラウチJr.の儀式の再開も手助けしてしまったとしか思えない。
おそらく、このまま帝王を野放しにすれば、奴は何らかの手段をもって完全復活するのだろう。
・・・さて、あの(究極の自己特別視&自己陶酔型)帝王閣下が、自身の父親の遺体にされた細工に気が付くか、見ものである。(気が付かなかった時が楽しみで仕方ない)
それはさておき。
やはり、クラウチJr.は自殺していた。
クラウチJr.はアズカバンの収容で衰弱し、脱獄してからは“服従”状態であったならば、自殺などしたくてもできなかったのだろう。
不死身の解除方法はハリーが手紙で知らせてくれたが、(リータ=スキーターを“処分”して、一度庭に出た直後に手紙を受け取ったのだ)難しいかもしれないとセブルスも考えている。
レギュラスと一緒にいた時に襲ってきた黒ローブ姿の『バーティ』は、おそらく偶像の肉体・・・本体ではない攻撃端末、あるいは影のようなものだ。
それは、いくら攻撃しても無意味だろう。
とりあえず、異世界の探索を続行するしかない。どうにか奴の真の肉体とやらを探り当てなければ。
分霊箱をも破壊できるセブルスの武器ならば、あるいは何とかなるかもしれない。
そうして、セブルスは重苦しい空気の漂う路地裏を進もうと一歩踏み出した。
「お、お待ちください!どこに行くんですか?!」
「・・・先に進む」
「私を一人にされるつもりですか?!どうかお連れしてください!!後生です!!」
再び哀れっぽくすすり泣きながら、ペティグリューはセブルスのズボンにしがみついてきた。
やはりこいつはここで挽肉にすべきでは?
セブルスはとっさに獣の爪を振り上げそうになるのを必死にこらえた。
別にペティグリューは殺しても構わないのだ。だが、いかんせん場所がまずい。
この異世界で人間が死ねば、あの徘徊する異質なゴーストども、あるいはサイレントヒルのような
そうなれば、文字通り魂の一片まで救いはない、永遠の地獄にとらわれることになる。
セブルスとしてはペティグリューがそうなってもいいのだが、そうしたら先に進むのを妨げる障害が増えることになる。それは面倒だった。
・・・というか、いまだにペティグリューはセブルスが誰なのか気が付いていないらしい。
彼は自分が今必死に憐れみを見せて縋り付こうとしている相手が、かつて自分が散々虐げ、それを眺めてせせら笑っていた男である(ついでにホグワーツで散々殴りつけてきた男)とは夢にも思ってないのだろう。
あるいは、それをわかっていてもなお、縋り付いたのかもしれない。
「勝手にするがいい。邪魔をすればどうなるか・・・覚悟しておくことですな」
振り向きもせずに吐き捨て、セブルスはすたすたと歩きだした。
「はいぃぃ!」
へこへこと腰を低くするペティグリューがその後に続いた。
さて、こちらはいよいよ新学期がスタートしたホグワーツである。
事前に推し進めていた通り、すでに何人かの教職員が新しくなっている。
例えば、占い学のシビル=トレローニーは某純血貴族の喫茶店付き占い師になるのと引き換えに退職し、代わりにダイアゴン横丁で街角占い師をしていた女性占い師が採用された。
後は、飛行術のロランダ=フーチも箒制作会社の箒試乗部署への再就職と引き換えに退職し、代わりに元クィディッチ選手の男性とマネージャー経験のある女性の夫婦が採用となった。
なお、フーチは飛行術指導とクィディッチ審判がないときは、フィルチではやりきれない学校の雑事をしていたので、後任の夫妻もそちらを引き継ぐことになる。
予定通り、“闇の魔術に対する防衛術”の教授には今年はニンファドーラ=トンクスが就くことになり、未経験の彼女は戸惑いながら前任のルーピンに手紙でアドバイスを受けながらどうにかこうにかカリキュラムを頭に叩き込んだ。
ついでに、森番は引き続き魔法省の“禁じられた森”捜査チームが担当(代表はトンクスから別の闇祓いに交代した)。被害状況は把握できたのだが、引き続き有害危険魔法生物の駆除となれば、アクロマンチュラのコロニーのようにはいかず、時間をかけて徐々にやっていくしかない。もうしばらくかかることだろう。
話を学校システムの方に戻せば、各寮に寮母が付くことになった。
これは実は、セブルスがメアリーを連れてきたことによる副産物である。
セブルスは魔法薬学の授業補佐以外でも、寮監としての業務を問題ない部分はメアリーに一部任せていた。さらには、メアリーは何かお祝い事の時やセブルスのお茶菓子の余りや試作品をスリザリンの談話室に差し入れていた。
で、スリザリン生たちの自慢を聞きつけたほかの寮生たちからずるい!という苦情が殺到。(公明正大のマクゴナガルからも何とかした方がいいのでは?という声が上がった)
さらには、十代前半の多感な思春期の学生たちである。第二次性徴に戸惑う子供たちも少なくなく(マグル界ならば保健体育もあるのだが、ホグワーツにその手の授業もないわけで)、これまでは寮の先輩方からその手のことは教わったり、あるいは教え合ったりしていたのだが、その手の相談員がいてもいいだろうということで、寮母をつけることになったのだ。
子供たちが学校を卒業して、暇を持て余している専業主婦魔法使いなどが応募してくれた。募集資格に、お菓子作りの経験ありとして、さらには出身寮へ配属としておけば大体はすんなり採用となる。
寮母たちの業務はメアリーが担っていたことを参考に、それまで寮監が担っていた業務の一部を正式に担当することになり、このため寮監の先生方(マクゴナガル、スプラウト、フリットウィック、セブルスは停職なので復帰まではスラグホーン)の業務が楽になったと喜ばれることになった。
なお、これに伴い、メアリーもスリザリンの寮母として正式採用されることになる。・・・一応、セブルスの所有物となるので、彼が復帰してからの話となるのだが。(スリザリンは純血貴族が多いので、他の寮母候補が見つからなかったのだ)
とりあえず、今年決まっているのはここまでである。
順次改定ということで、来年からはさらに低学年と高学年で授業の担当教授を分け、合同授業における寮の組み合わせの変更(特にグリフィンドールとスリザリンは相性が悪すぎるので、引き離すだけで揉め事がかなり少なくなるはずである)や、新入生向けに入学式の翌日は高学年によるオリエンテーション(学校案内)などが予定されている。
まだ計画段階ではあるが、3年次からの選択授業の代わりにマグル式の通信教育講座を入れ、希望学生は卒業と同時にマグル側の大学受験資格と引き換えに魔法界のことを口外しないという魔法契約を結ぶという制度や、新たに魔法界の法律を学ぶ授業なども設立予定である。
・・・ちなみに、いずれも草案はあったのだが、とある人物がここぞとばかりに伝統あるんだから必要ないじゃろう?今までも何とかやってこれたんじゃから、というお言葉で却下されていたのだとか。
急に増えた教職員たちに、2年生以上の生徒たちは戸惑っていたものの、校長代理として立ったスラグホーンと副校長として復帰したマクゴナガルが「これはまだ試験運用の段階だから、問題あればまた改良するので、申し出てほしい」と告げたことで、どうにか受け入れられた。
・・・さて、いつでもどこでも妄言を真に受ける人間というのはいる。
入学式の翌日の朝食の席では、さっそくフクロウに届けられた吼えメールが教職員の席に落され、『あんな暴力教師!さっさと首にしてちょうだい!』だの『イギリス一の名門!ホグワーツにあんな男!ふさわしくない!』だの『ダンブルドアもマクゴナガルも何をしてるんだ!!あんたらの目は節穴か?!』だのと好き放題喚き散らすことになった。
マクゴナガルはようやっと回復した胃壁がまた蕩けそうな顔をしながら、朝食代わりに胃薬をかっ込んでいた。
スラグホーンは、校長代理なんて安請け合いするんじゃなかった・・・と言わんばかりの後悔してそうな顔をして、朝食をフォークでつつきながら吼えメールを聞き流した。
なお、吼えメールは開封しないとひどいことになるので、結果的に開封した方がまだマシなのだ。
ちなみに、森番のやらかし&ダンブルドアの停職の翌年(つまり去年)は、さっさとダンブルドアを復帰させろカスども!!という感じの吼えメールも送られた。まあ、真逆、さっさと首にしちまえ!お前らそろって無能か!!という感じの吼えメールもあったのだが。
さて、吼えメールの罵声について、一部の新入生がしたり顔でうんうんうなずくのをよそに、大半の生徒(特に上級生)が去年の惨状知らねえだろこの手紙の送り主、と言いたげな呆れた顔をしていた。ハーマイオニーをはじめとした一部の学生は新入生に、あの新聞でこういうこと言われてるけど、実際こうだったからね、と説明している。
ブラックが無実?ペティグリューの取り逃がしといい、大広間への
スリザリンの席では、早くも恐ろしいほど無表情になったハリーJr.にドラコが震え上がりながら、必死になだめを入れていたのは言うまでもない。
グリフィンドールの席では、去年の夏前よりも少しやせた様子のロナルドがバカバカしい!と言わんばかりにふんと鼻を鳴らして、オートミールを勢いよくかっ込んでいた。
そして・・・ロナルドのところから少し離れたところで、一人で座っていたコリン=クリービーは、自分が吼えメールを受け取ったわけでもないのに、びくびくと肩を震わせており、その様子を一部の学生が疑わしげににらんでいた。
続く
【スネイプへの手紙】
エイブリーが友人たるセブルス=スネイプへ宛てた手紙。
魔法省におけるクラウチ氏の書類偽造に端を発した異常の発覚についての概要と、バーテミウス=クラウチJr.の脱獄・生存の可能性について書かれている。
その手紙は、イギリスでは珍しくもないモリフクロウが運んできた。
エイブリーは、自分が純血貴族であると自負はしているが、それ以外何一つ特別でないことを知っている。だからこそ、闇の魔術に魅せられたのだ。
Q.あれ?ウィンキー(クラウチさん家のハウスエルフ)、死んじゃったんです?ってか、帝王さんたち、いつ押しかけてきたんです?
A.帝王&ペティグリューは、正史と違ってバタフライエフェクトもあって、クラウチの家に早い時期に押しかけてきています。
で、ウィンキーはネズミに化けたペティグリューの陽動で気を取られたときに、帝王様に殺されました。(何気に正史よりもひどいことになりました)
そして、それによって“服従”を完全に破ったクラウチJr.が自殺してしまいます。これで、“21の秘跡”が再始動、第2の啓示に移行します。
クィディッチワールドカップにおける空席ですが、すでにクラウチJr.は死亡、クラウチは“服従”中、帝王&ペティグリューはチケット云々の事情は知らないので、キャンセルすることもありませんでした。(つまり、正史と違って、本当に空席のままでした)
ああ、もう!視点を固定すると、こういう偏りができてしまうんですよね!どうしたもんか。
Q.あれれ?ペティグリューが異世界にいるってことは、帝王様は?
A.次回以降にやることになると思いますんで、この場では割愛させてください。
Q.じゃあ、帝王様たちが企んでることって?
A.だ・か・ら!次回以降にさせてください!
Q.セブルスさんの装備、“獣の爪”で、顔を隠してるってことは・・・?
A.お察しの通りです。
次回の投稿は、時期は未定ですが内容は決まっています!
異世界にて、セブルスさんとレギュラスさん。ペティグリュー?知りませんね、そんな汚物。
ホグワーツでは、新しい催し物をめぐって、ハリーJr.、ドラコ、ハーマイオニー+αが一悶着!
お楽しみに!