コメントもありがとうございました。おかえりなさいといってくださって、感謝の極みです。(そんなこと言われるほど放置するなという話でもありますが)皆様の優しさがとっても嬉しい・・・!
Q.投稿ペースがえらい早いけど大丈夫?週一ペースに戻せそう?
A.馬鹿言っちゃいけませんぜ、旦那(誰?)。今は余裕があって勢いもあるから、鉄は熱いうちに叩けているだけですもの。できないことは言わない主義ですのでね。
というわけで続きです。
Q.薩摩ホグワーツは参戦しますか?
A.レガシーはやってないからそれが何なのかがそもそもわかんにゃい。それが欲しい人は自分で書きましょうね!私も、(ブラボ狩人スネイプ先生を)書いてるんだからさ!
きれいに飾りつけされたクリスマスツリーがキラキラ輝く大広間。
ホグワーツのクリスマスパーティーだ。食事用長テーブルはよせられて、ダンスのスペースが確保されたそこは、今年はホグワーツの制服ローブの黒ではなく、色とりどりのドレスローブとドレスが行きかっている。
ハリーJr.は、黒地にエメラルドグリーンのアクセントが入ったドレスローブをまとっていた。これは、ダンス実習をするとなった時、自分用に一着持っておいた方がいい、と休日にスラグホーンを引率に他の生徒たちと訪れたマダム・マルキンの店であつらえてもらったものだ。(貸衣装屋とかないの?というハリーJr.の質問に、あるにはあるけど生徒が大勢でいっぺんに押し掛けるわけにはいかないし、貸衣装屋は成人した魔法使いでないと利用できない、とスラグホーンが説明してくれた)
貴公子然としたドラコと並ぶと馬子にも衣裳感がするな、とハリーJr.自身は思っていたが、そのうち慣れるだろうとも思った。
癖のある黒髪(正史と比べるとだいぶマシ)の矯正も考えないでもなかったが、下手にいじると残念なことになりそうだったので、櫛で梳いて軽くスタイリング剤でまとめる程度にしていた。
・・・なお、彼は正史と違って虐待されておらず、幼少の成長に必要な栄養が十分とれていたため、血縁上の父親と並ぶくらいに背が高い。14歳なので、まだ伸びしろもあったりする。
ゆえにドレスローブも、学生用のあとでサイズの手直しできるようなものにされていたりする。
ちらっとハリーJr.は懐中時計(ドレスローブに合わせた小物をそろえる時に一緒に用意した)を取り出してみる。マグルの腕時計はドレスローブには不似合いだからつけてこないように、と言い渡されていたためだ。
「お待たせしました」
アステリアが淡い若草色のドレスに編み込んだ黒髪を揺らしながらやってきた。白いかんばせには薄化粧が施されている。ふわりとかすかに香るのは香水だろうか。
アステリアは見事、ハリーJr.のパートナー役の座を射止めたのだ。
誘ってきた他の女子生徒たちに対し、ハリーJr.自身が、それまで話したこともなかったり、低学年のころに陰口叩かれたりしてた相手だと知っていたので、やんわりと断りを入れてアステリアの申し出を受け入れてくれたのだ。
「きれいなドレスだね。よく似合ってるよ」
「ありがとうございます」
家で父が出版社関係のパーティーに行く前に母に言ってたことを思い出しながら言ったハリーJr.(鈍感なので特に深く考えていない)に、アステリアは嬉しそうに口元を緩めた。
正史であれば、この時期は
そもそも、
ちなみに、ドラコはパンジーの押しの強さに根負けしてしまい、やむなく承諾。今回は彼女をパートナーにしている。
ハーマイオニーは、グリフィンドールの監督生と踊ることとなった。(正史であればダームストラング生のヴィクトール=クラムに誘われるのだが)
ネビルはといえば、双子のパチル姉妹の片割れとなるパーバティと組むことになった。
ロナルドはドレスアップしたハーマイオニーの美しさに見とれつつも、ダンス実習に参加しない生徒たちがいるグリフィンドール寮の談話室(こちらでも小規模のパーティーが行われている)に向かった。彼とて出来れば参加したかったのだが、実家から送られてきたドレスローブ(栗色のフリル付き)のあまりのみっともなさに、断念を選んだのだ。
・・・繰り返すようだが、今回のダンスパーティーはあくまでマナー講座の実習的な側面が強く、講座に参加していない学生はもちろん、参加していても無理に出る必要はない。このダンスパーティーは元々隔年――数年ごとに実施となり、卒業までに1回でも参加できたらいいぐらいの感覚であるのだ。(卒業後の本格的参加の前の練習や、空気感を学んでおくようなものだ)
参加資格のあるのは4年生以上ということで、3年生未満の学生はパートナー申請があったならともかく、自主参加することはない。
・・・つまり、誘われてしまったら3年以下の低学年でも参加は可能である。
ジネブラ=ウィーズリーは、シェーマス=フィネガンとジャスティン=フィンチ=フレッチリーの両名に誘われていたのをうっかりそのままにしてダブルブッキングを起こしていたのは、さらなる余談である。
ファーストダンスは、スリザリンの上級生やマナー講座では指導役となる純血貴族たちから。さすがというべきか、華麗なステップを披露して見せる。翻るドレスやローブの裾が美しい。
ドラコはすでに実家でマナーを修めていたためか講座では指導役となっており、このためファーストダンスをも踊ることになっていたが、完璧なステップを見せた。
パートナー役となっているパンジーも自信たっぷりな笑みを崩さず、それについて行っている。
ああいうところを見ると、口だけじゃなくてさすがだな、とハリーJr.は思う。
実は、入学直後、ハリーJr.は純血のマルフォイのそばをちょろちょろするマグル育ちの半純血と、にらまれたのだ。
パンジー=パーキンソンはそういった連中の主に女子生徒の筆頭で、マルフォイの品位が下がると、ぶちぶちとドラコがいないところで嫌味や文句を言ってきたりしたのだ。
もっとも、その後ハリーJr.の言動を見て、ボディーガードとしてなら・・・と不承不承友人づきあいを認めたようなのだが。
口先だけではない、実力を伴うからこその言動がある。ドラコも、パンジーも、純血貴族だからこそ、がんばっているんだな、とハリーJr.は思う。
・・・ハリーJr.は知らない。うっかり、彼が「ドラコは貴族だからって時々偉そうにしてるけど、頑張ってそれに相応しいようにしてるんだから。偉ぶりたいなら頑張って当然じゃないか。みんなの見本みたいなものなんでしょ?」とポロッとこぼしたことが、ほかの純血貴族たちの耳に入ったことなど。
みんなの見本。だから偉ぶって当然だし、それに見合う努力をする。さて、目からうろこが落ちたのは、どのくらいいただろうか。少なくとも、パンジーはその一人であったということだ。
もちろん、今でも純血主義は重んじている。ただ、だからこそ勉強や魔法の修練を積んでいる。魔法界の頂点に立つ、魔法使いたちの見本となる純血貴族らしく。
さて、その後は、高学年から順々に決められた順序でダンスを披露する。
「ファーストダンスお疲れ様」
「ふん。たいしたことじゃない」
笑いながらハリーJr.が差し出したゴブレットを受け取り、中のジュースに口づけるドラコ。
その視線が、セカンドダンスに向かったグリフィンドール監督生とハーマイオニーのペアに向けられる。
「ハーマイオニー、すごくきれいになったよね」
「・・・馬子にも衣裳だな」
話しかけたハリーJr.に、ドラコが答えたが、その言葉はいつもよりも覇気が少ない。
ハーマイオニーは桃色のドレスをまとい、いつもの癖っ毛はスリーク・イージーの直毛薬(実はハリーJr.の祖父にあたるフリーモント=ポッター氏の発明品)で抑えてポニーテールにし、化粧をしている彼女は実に美しかった。(併せて出っ歯気味であったのを、自ら魔法で矯正したらしい)
だから、さっさと誘えばよかったのに、とハリーJr.は少し思ったが、いまさらである。
「あ、もちろんパンジーもすごくきれいだったよ!」
「とってつけたように言ってるんじゃないわよ!覚えてらっしゃい!」
わきで睨まれているのに気が付いたハリーJr.が慌てたように言ったが、パンジーはジト目をそのままにうなるように言った。
「う・・・ごめん・・・そんなつもりはなくて・・・」
「そろそろだぞ。行ってこい」
「うん。あとでね」
「パーキンソン、あとでラストダンスを踊ってやる。
・・・別に、お前がきれいじゃないなんて言ってない」
「ドラコ・・・!」
ドラコになだめられたパンジーが目を潤ませる。
そんな二人をよそに、ハリーJr.はアステリアの手を引いて大広間の前に進み出る。
ハリーJr.たち4年生たちの出番はかなり後の方だが、それでもその時は緊張した。
「ハリー、笑顔です。ダンスは表情も見せるんですよ」
「ご、ごめん。緊張しちゃって」
「わかります。私も緊張していますから」
こわばった表情のハリーJr.に、アステリアが笑いながら答えた。もちろん、ゆったりしたワルツに合わせて踊りながら。
その様子をアステリアの姉になるダフネがじーっとにらみつけるように見ていた。
マルフォイとつながりを持つなら、確かにハリーJr.はいいかもしれない。アメリカ出身ということで血筋がはっきりしないのがマイナスではあるが、本人曰く半純血ということらしいし。(純血ではないが、マグル生まれよりはマシだ)
このまま闇祓いに就職できれば、さらによし。
性格的にも悪くない。軟弱者に見えて、やるときはやるというのは去年の吸魂鬼騒動が何より証明している。
だが、ダフネは気に入らない。かわいい妹を、ポッと出のマグル育ちに渡すなど!少しでも妹を傷つけて見ろ、生きてることを後悔したくなるようにしてやる!と、彼女はハリーJr.をにらみつけていた。
・・・まあ、卒業まで、妹を泣かさずに支えてくれたなら、その後の付き合いも、考えなくもない。
妹が頬を染め、ハリーJr.も穏やかにダンスを踊っているのを見ながら、ダフネは内心で一人、そうごちた。
さて、クリスマス休暇明けのホグワーツである。
朝食の席で、姿を現した黒一色の男に、まず今年入学した1年生たちがいぶかしげな顔をし、続き去年の衝撃が最も大きいであろう2年生たちが顔を引きつらせる。
それでも、スリザリンの学生たちはいっせいにほっとしたような顔を見せていた。
纏ったインバネスコート。首の後ろで束ねた黒髪。やや鉤鼻ながらも影のある整った顔立ちの男。
傍らにたたずむのは、ボンネットをかぶりショールをまとった白皙の美女人形だ。
「本日から復帰することになった、セブルス=スネイプ教授だ!私に替わって魔法薬学とスリザリンの寮監を担当する!
こちらにいるのはメアリーだ!スネイプ教授の補佐と、スリザリンの寮母を務めてくれることになる!
みんな、二人と仲良くしてくれたまえ!」
スラグホーンの紹介に合わせて、セブルスは狩人の一礼を、メアリーはぺこりと頭を下げてみせる。
ほっと表情をほころばせているのはハリーJr.のみならず、ネビルもそうだとロナルドも気が付いた。
クリスマス前に出版されたザ・クィブラー(信憑性の低い幻の動物などの特集をしている三流雑誌扱いを受けている雑誌)で特集されたセブルス=スネイプ教授に対する弁護・反論記事のおかげもあり、反発は低そうだ。
余談になるが、あの記事を載せた雑誌だけは、ほかの雑誌と違いバカ売れした。バックナンバーがないか問い合わせも来るくらいだった、と編集長の娘となるルーナ=ラブグッドは語る。
それにしても。
朝食をとりながら、ハリーJr.は改めてセブルスを見やった。
なんだか、おじさん、かっこよくなった気がする。何がどう変わったというわけではない。だが、なんというか、目が惹きつけられるというか。
謹慎中に何かあったのだろうか?新しい魔法薬を作って、その実験をしたからとか?
いや、何か根本的なものが違う気がする。
何かあったのかな?よくわからないが、元気そうにはしてるみたいだし、また折を見て会いに行こう。
ハリーJr.は首をかしげたが、一つうなずいてそう決めた。
さて、今年のクィディッチであるが、実はスリザリン寮の戦績はあまり芳しくなかった。(クラウチJr.潜伏の報を受けて中止になったが、死体発見によって無事再開となったのだ)
去年キャプテンを務めたフリントが卒業したというのもあるのだが、セドリック=ディゴリー率いるハッフルパフ寮が目覚ましい勢いで活躍しているためだ。
今年こそ、ハッフルパフが優勝する!と言わんばかりの猛攻で、それまで他の追随を許さなかったハリーJr.は、ついにディゴリーにスニッチを奪われてしまったのだ。
ホグワーツそのものの方針転換もあって、スリザリン寮でもラフプレーは控えようとなっていた矢先のことだった。
ハリーJr.本人はもちろん落ち込んだが、それよりも他寮で「やはりスリザリンはラフプレーしないと勝てないんだ」という見方が出てしまうのは必然ともいえた。・・・それまでラフプレーしまくっていたスリザリンの自業自得と言えばそれまでなのだろうが。偏見を払しょくするのはだいぶ先の話になりそうだ。
そんなハリーJr.はさらに練習には打ち込んでいたが、気になることがあった。
彼だからこそ気が付いた、ともいえるかもしれない。
セドリック=ディゴリーの様子がおかしい。
どこか上の空で、顔色が悪い気がするのだ。はた目には普段通りのさわやかな好青年という感じではある。
方針転換したスリザリンのクィディッチチームとの試合後も、馬鹿にすることなく「いい試合だったよ」と笑いかけてきて、他のチームメイトの悪口をたしなめるほどなのだ。
ハリーJr.はひそかにセドリックに対して、劣等感を覚えている。
それは、試合で初めてスニッチを奪われたというのもあるし、おそらく初恋の相手になるだろうレイブンクローのシーカー、チョウ=チャンと付き合っているのもあるからだ。
セドリック=ディゴリーとチョウ=チャンが付き合っているのを、ハリーJr.が知ったのは偶然だ。
校庭の木陰でこっそりキスしてたのを見かけてしまったのだ。
クィディッチの試合で初めて対戦して、それからどうにも気になって彼女を目で追ってしまっていたハリーJr.はそこではっきりと自覚した。一目ぼれしていたこと、それから、失恋というものを。
なお、ドラコは親友の恋に即座に気が付いたらしいが、有色人種として差別されまくっている(イエローモンキー、チャイナに帰れ、など)チョウと親しくなると、さらにトラブルを抱え込む可能性があると、あえて何も言わなかったらしい。
美男美女で成績優秀なベストカップルだよね、と寂しそうに笑いながら言ったハリーJr.に、ドラコは実家から送られた菓子をいつもより多く分けてやった。「ほかにもいい女性はいるだろう。別にチャンにこだわる必要はないだろう」と、幾分か普段よりやんわりと言いながら。
・・・ついでに言えば、実家のコネクションの関係でグリーングラス家とのパイプを持った方が有用だと判断したドラコは、アステリアの恋をひそかに応援している(ダンスのパートナーに推薦したのはドラコだ)。姉のダフネににらまれているが、それで親友の失恋が癒されて利益につながるなら、どうということはない。
話を戻す。
ともかく、恋のライバル(というには一方的だが)であるディゴリーについて、ハリーJr.は他の学生よりも、無意識によく見ていたらしい。
様子がおかしいな、とうすうす思っていた。
けど、卒業も間近の魔法使いで成人済み(魔法界では17歳で成人扱いされる)なのだ。まして、成績優秀で人格もパーフェクトのディゴリーが、誰にも何も言わないというのも変だし。
何より、ハリーJr.はスリザリン4年生、ディゴリーはハッフルパフ7年生なのだ。
・・・ハリーJr.が指摘しなくても、恋人のチョウがきっと気にかけていることだろう。(これを考えたハリーJr.はずしんと気分を重くした)
ゆえに、ハリーJr.はそれを誰かに言ったことはなかった。
のちに、盛大に後悔することなど、つゆ知らずに。
ハリーJr.がそんな小さな異変を感じつつも、表面上は数字付き連続猟奇殺人事件も収束し、改革中のホグワーツは平穏な日常を取り戻していた。
・・・ここ数年の日々がまるで嘘のように、というのは言いすぎか。
ともあれ、セブルスとメアリーの復帰に伴い、改めてスラグホーンは校長代理に専念することになった。
肝心のセブルスは2年生(つまり去年のセブルスの凶行のインパクトが一番強い学年)には、初授業でだれにも目を合わせてもらえず震えられた。
なお、実質初対面となる1年生のレイブンクロー生が「先生、日刊預言者新聞の記事に書かれてあったことって本当なんですか?」と好奇心で質問を投げたが、遠い目をしたセブルスに「ふむ。Mrs.ポッターとは幼馴染でな。一番見られたくないみっともないところを見られてしまった八つ当たりだったな。情けない限りだ。ちなみに、記事にはブラック一人がやったように書かれていたが、実際はジェームズ=ポッターとリーマス=ルーピン、ピーター=ペティグリューの4人がかりだったな。貴公らのご両親に確認してみればいい。4人がかりで一人にいろいろやってくれたのだ。いや、実に勇猛果敢とは彼らのための言葉ですな」とシレッと答えた。
正史であれば激高して大量減点と罰則を科していただろうが、すでにシリウスはじめ
授業においてはそんな感じであったが、寮の方では歓迎姿勢がとられ、「お帰りなさい」と「またお願いします」と頭を下げられた。
メアリーの方も同様に歓迎されたらしく、「寮の皆さんが、お帰りなさい、またお願いします、とお声がけしてくださいました」とどこか明るい調子の声でセブルスに教えてくれた。
ちなみに、復帰したメアリーは新しいショール(色合いは同じ地味なものだが、チェック柄の幾分かかわいいもの)を羽織るようになった。フィルチからの復帰祝いのプレゼントらしいが、当のフィルチは「いつまでも同じ服ばかりで見苦しいからな」と吐き捨てながら渡していた。
また、ウィーズリーの双子はセブルスの復帰と同時に早速やらかした。待ち伏せしていた彼らは、セブルスが廊下に出ると同時に、大鍋を大砲代わりにして巨大なクラッカーのように色とりどりの紙吹雪と紙テープをまき散らしたのだ。
「「復帰おめでとうございます!教授!」」と声をシンクロさせる双子に、セブルスは減点をもって返礼とした。
去年双子が口走ったセリフから、これ以上のメンシスの檻はまずそうだと判断したので、頭にかぶり物をするのは授業外でも禁ずると言い渡し、ショックを受ける双子にマグル式の鍋磨きを言い渡した。大変がっかりされたが、至極当然である。
なお、後日双子は片手を直立させ、もう片方の手を水平にするいわゆる“交信”のポーズをとることを思いつき、実践。「頭が冴えるような気がする!」「脳の奥に何か芽生えそうな気がする!」と言いながら、自作のいたずらグッズ制作に精を出していた。
・・・セブルスは見ていなかったが、もはやこの二人は檻をかぶらなかろうが、セブルスが手を出さなくても、何かが芽生えているのかもしれない。
とまあ、そんな感じで少なくともイースターの休暇明けまでは平穏に過ごせていたのだ。
ぐったりと魔法薬学教授室の来客用ソファにもたれかかるのはハーマイオニーだ。
セブルスは何事か言いかけたが、やがて口元を引き結んでティーカップを持ち上げる。
閉心術の訓練を付けてほしい、と申し出てきたのはハーマイオニーの方からだった。
去年、ハリー=メイソンJr.の出生事情を聞いた彼女は、夏休み開始と同時にハリーJr.を通じてリリーに相談して習得を決めたらしい。定期的にリリーに自宅に来てもらって習得訓練をしていたのだ。(メイソン宅は秘密の守り人の関係でハーマイオニーは立ち入れないため)
すでにドラコは両親によって訓練を開始しており、出遅れたくない、と彼女は思ったのだ。
魔法界での初めての友達のために。
だが、やはり夏休み中での習得には至らず、続きはハリーJr.がそうしたようにホグワーツでセブルスに頼もうとハーマイオニーも決めていたのだ。
セブルスの謹慎というアクシデントのせいでストップしたままだったが、復帰に伴いようやく再開できるようになったわけだ。
「あの・・・」
「・・・何か言ってほしいのかね?」
「いいえ!」
先ほど読まれてしまった記憶と心情に、息を整えて身を起こし顔を赤らめるハーマイオニーに、セブルスはぶぜんとしたままだ。
思春期の子供の色恋沙汰に、何をどう言えというのか。セブルス本人はリリーへの執着と馬鹿ども4人組とのあれこれに青春の思い出は全ぶりされている(それ以上にヤーナム以降の血なまぐさい思い出が濃すぎる)ので、経験豊富というわけでもないし。
加えて言えば、ハーマイオニーの意中の相手も、まんざらではなさそうだというのをセブルスが口にするのは無粋が過ぎるというものだ。
「色恋沙汰は結構だが、学業も大事にしたまえ。
貴公はレポートは満点以上だが、実技に甘い部分がある。
素材の下処理をもっと丁寧にしたまえ。
教科書を鵜吞みにするな。試行錯誤もまた魔法薬学には必要なことだ」
「・・・はい」
悔しげにうつむいて力なく答えたハーマイオニーに、セブルスは内心でまた言いすぎた、と苦虫をかみつぶしながら続けた。
「Mr.メイソンに進呈した魔法薬学の書籍がある。初心者向けだが、材料下処理のコツについても書かれている。
参考にしたまえ。
それから、希望すれば調合の自主練習も行える」
「! 本当ですか?!」
「一部のスリザリン生やレイブンクロー生が、時々行っている。
使用した材料と作成予定の薬についての申告を行うこと。ただし、身の丈に合わない薬の調合については物申させてもらう。
もちろん、仕上がりによっては加点も行おう」
加点、と聞いてハーマイオニーの目がキラキラ輝き始める。やる気が出たようだ。
「では、そろそろ続きだ」
「はい。お願いします」
さて、それからしばらくしたとある休日のことだ。
意気揚々と魔法薬学教授室を訪ねてきたのは、ハリーJr.とドラコ、ネビルとロナルドの4人組だった。
珍しい組み合わせに、セブルスは軽く目を瞠った。
何しろ、ドラコとロナルドの犬猿の仲は、セブルスも聞き及んでいるのだ。去年あたりから表立ってのいがみ合いはなくなったようだが、それで関係が完全に改善されたわけでもないだろう。
大方、ハリーJr.とネビルがクッション役をしているというところか。
「失礼します!魔法薬調合の自主練習をしたいんですが、教室を使わせてもらえませんか?」
「かまわぬ。何を調合するのだね?」
「頭冴え薬です。
・・・あの、調合のコツとかありませんか?」
最後の方だけ恐る恐る尋ねてきたハリーJr.に、セブルスは冷たく言い放った。
「板書を羊皮紙にとっておけば問題ないはずですがな?」
「それはそのう・・・はい・・・。
どうしても、色が暗くならないんだよね・・・」
「ハリーはまだいいよ・・・僕のは緑色になるんだ。なんで?」
がっくり肩を落として呻くハリーJr.に、ネビルも自身の調合の悲惨さを思い出して寂しそうにつぶやいた。(これでも大鍋を溶かさないだけだいぶマシである)
ちなみに、口をつぐんだままだが、面白くなさそうな顔をしているロナルドの調合もうまい方とは言えず、以前授業でやった結果は紫色だった。
「だから自主練習するんだろう。まあ、僕にとってもいい復習になるからな。さっさと終わらせるぞ」
言いながら、ドラコはさっさと生徒用の材料棚に足を向けた。
口ではひどいことを言うこともあるが、こうやって練習に付き合ってくれるのだから、ドラコも面倒見がいい方なのだ。
ロナルドもまた、以前なら文句の一つも言っただろうに、ハリーJr.とネビル二人のとりなしもあってか、ぶぜんとしつつも了承して付き合ってくれている。
ちなみに、ハーマイオニーがいないのは、彼女は別の科目の勉強をほかの女子生徒たちとやっているためだ。
「材料の下処理について、もう一度見直したまえ。Mr.マルフォイ以外、全員おおざっぱすぎですな。
刻み根生姜は、切り方に注意したまえ。
アルマジロの胆汁は胆のうの一部などの不純物が混じっていることがある。そのあるなしでは仕上がりが大きく違ってくる。
イモリの脾臓もそのまま加えず、一手間かけたまえ。
あとは自分で考えるように」
そして、板書しただろうと言いつつも、こうしてアドバイスしてくれるのだから、セブルスおじさん、もといスネイプ先生もやはり優しいのだ。
ハリーJr.は急いで言われたことを羊皮紙にメモする。
ネビルもまた教科書と、以前板書した羊皮紙を取り出しながらコクコクうなずいた。
ロナルドはそれをしり目に、黙々と大鍋や秤などの器材の準備をする。
そうして、教壇近くの椅子で監督しながら他の学生のレポートを採点するセブルスをしり目に、4人はあーでもないこーでもないと調合を始めた。
「おい、根生姜はもっと細かく刻め。分厚すぎる。皮も剥け。そんなこともできないのか」
「何だと?!」
「ドラコ、言い過ぎだって。
ウィーズリー、そのナイフ何とかした方がいいよ?さすがにその錆と刃毀れまみれなのじゃ、うまく切れないと思うな。今回は僕のを貸すから。
ネビルネビル!ナイフの持ち方が怖いから!あと猫の手!素材を押さえる手はこう、猫みたいな手で!」
一言多いドラコと、睨み返すロナルドの視線が火花を散らし、ハリーJr.がそれをたしなめようとするが、ネビルの危なっかしい手つきに悲鳴を上げる。
「こ、こう?」
「そうそう。ドラコ、僕のも切れたけど、どうかな?」
「ふん。やればできるじゃないか」
「やった!じゃ、はい。ウィーズリー」
「ああ、ありがとう」
ナイフを貸し出されたロナルドもまた、根生姜を刻み始めた。
「それにしても、こういうのをやってると、いっそのことピーラーとかスライサーが欲しくなっちゃうな」
「ピーラーとスライサーって何?」
「ああ、マグルの調理器具だよ。
ピーラーってのは、こう、手にもって野菜に滑らせると皮が剥けるんだ。手を切る心配もない、安全な器具だしね。
スライサーってのは、こう、板に刃が付いてて、野菜を滑らせるとスライスされるんだよ。刃の形で輪切りになったり千切りになったりするんだ。こっちは気を付けないと手が切れちゃうけど」
身振り手振りで説明するハリーJr.(授業外だからこそできる雑談である)に、純血魔法族3名はいまいちピンと来てない様子だった。
ちなみに、ハリーJr.は実家で家事手伝いをしているので、調理器具などもそれなりに扱えるのだ。(母のリリーは魔女であろうと、姉のヘザーや父のハリーは魔法が使えないので、当然調理器具はいる)
なお、ロナルドはマグルグッズ大好き父親の影響で、ひょっとしたら見たことはあったかもしれないが、実際の動かし方などを見ていないので、ピンと来ていないのだ。
「それって、気電パルグとかはついてるの?」
「ええっと、もしかして、電気プラグのこと?ピーラーとスライサーはなくても動くんだよ。大きなお店とか工場だったら、電気で動くやつもあるかもしれないけど」
「へー」
「なんでもいいが、手を動かせ。
根生姜を刻むのが終わったら、次はアルマジロの胆汁だ。
ボトルから計量するとき、ろ過してるか?」
「「ろ過って何?」だ?」
「ちゃんと教科書読んでるのか?!」
「まあまあ。ろ過器は必須ってわけでもないから準備物に入ってなかったし。
僕もこの調合で使った方がいいってのは初めて知ったから。
スネイプ先生、時々こういう基本的なこと説明を抜かすよね」
言いながらちらっとハリーJr.がセブルスに視線を向ける。当のセブルスは小さく鼻を鳴らしただけだ。
基本用語は初級の教科書にも載っている、知らん方が悪い、と言わんばかりだ。
「でも僕もそうだけど、ろ過器持ってないんだよね。どうすればいいかな?」
「予備のクリスタル瓶はあるか?素材棚の端に、ガーゼがあるだろう。あれをこの口にかぶせて、そこに胆汁を流し込むんだ。
一気に流し込むなよ。ちょっとずつだ」
ドラコの指示に従い、作業を行うハリーJr.は、やがてクリスタル瓶の中にたまる胆汁が幾分かさらさらしていることに気が付いた。
「おおっ!すごいね!ドラコ、よく気が付いたね!」
「別に、大したことじゃない」
つんとそっぽを向くドラコ。
同じように作業するネビルとロナルドだが、クリスタル瓶に胆汁が徐々にたまっていく様子を見るロナルドはじれったそうだ。
「あー、こういうちまちました作業、もっと何とかならないのかな?いっそのこと、不純物を
「駄目だよ、ロン。魔法薬学の最初の授業で、杖を使うのは禁止だって言われたじゃないか」
「気持ちはわかるけど、それやったら胆汁が丸ごと消えそうだからやめといたほうがいいと思うな」
ロナルドの言葉を、ネビルとハリーJr.が二人がかりで嗜める。
などと学生がやっていると、教室の扉がノックされた。
魔法薬学教授室の方には扉に『地下牢教室にいます。用がある方はそちらへどうぞ』という掛札をしてきたのだ。
「入りたまえ」とセブルスが促すと、「失礼します」とは言ってきたのは、セドリック=ディゴリーだった。
おや、とセブルスは軽く目を瞠る。
すでにイースターの休暇も終わり、生徒たちは学年末に向けて猛勉強をしている。特に、
それは目の前のディゴリーも例外ではないはず。
ディゴリーが授業外で魔法薬学教授室を訪ねてくることがないといえば嘘になる。
面倒見のいいディゴリーは低学年の子の補習の送り迎えをすることもあれば、他の学生の自主練習に付き合うこともあるのだ。
レポート提出のついでや授業の終わり際などに質問をしてくることもあり、やる気が伝わってきてセブルスもディゴリーは嫌いではない。(教師ならば誰だってやる気のある生徒の方が好ましく思えるはず)
とはいえ、ディゴリーは魔法薬学に関しては大きな問題はないはず。ハーマイオニーほどとびぬけてはいないが、秀才の名に恥じぬ満点に近い成績を誇るのだ。就職に関しても父親と同じく魔法省に内定している(ハッフルパフ寮監のスプラウトが自慢していた)。
そんな彼が、なぜスリザリン寮監にして魔法薬学教授であるセブルスのところに来たのだろうか?
自分のところに来るぐらいなら、他の勉強をしていた方がいいのでは?
少々怪訝に思いつつも、採点中のレポートをおいて立ち上がったセブルスのところに、ディゴリーが歩み寄ってきた。
どこか顔色が悪いように見えるが、今の時期は追い込みの猛勉強で似たように疲れた顔をしている生徒はたくさんいるだろう、とセブルスは大して気にしなかった。
「すみません、先生。この間提出したレポートなんですが、不備があったようで。訂正してきました。再提出させていただけないでしょうか」
ぼそぼそと言いながら羊皮紙の束を差し出すディゴリーに、セブルスははて、とさらに眉を動かした。
ハッフルパフ7年生に課したレポートなら今まさに採点しているところだ。まだディゴリーのものは見ていないが、今までディゴリーがレポートにおいてミスらしいミスなどしていたことは見たことがない。どうしたというのだろうか?
怪訝に思うセブルスは、それでもディゴリーから羊皮紙の束を受け取ろうと手を伸ばした。
直後のことだった。
「すみません、先生」
ひどく、申し訳なさそうな声で、ディゴリーが言った。
何のことだ、とセブルスが問い返すより早く、ディゴリーは自身が右手に着けていた腕輪をセブルスに押し当てた。
同時にぐにゃりとセブルスの視界がゆがむ。臍が内側に引っ張られるような独特の酩酊感。
たたらを踏んで、セブルスは姿勢を正す。
そこはもはや、ホグワーツの地下牢教室ではない。どんよりと曇った空、いくつも墓石が並ぶ、寂れた墓所。
ポートキーによって、飛ばされたのだ。
セブルスは振り返って、ディゴリーを問いただそうとした。
だが、その時にはディゴリーが青ざめた顔で杖を振り上げたのが見えたため、急ぎ身をひるがえした。
セブルスが先ほどまで立っていた場所に、
「おとなしくしてください、先生・・・殺しはしませんから・・・!」
「貴公、言ってることとやってることがめちゃくちゃではないかね?」
震える手で杖を構える青ざめたディゴリーに、距離を取って身構えたセブルスは気が付くのが遅れた。
背後に突然現れた影が放った、赤い閃光に背中から射抜かれた。
吹き飛ばされたセブルスは、そのまま地面をバウンドして気を失ってしまった。
続く
【錆びたナイフ】
ロナルド=ウィーズリーが魔法薬調合に用いる、錆びて刃毀れしたナイフ。素材の下処理に用いるが、極めて切れ味が悪い。
上の兄弟たちの手を渡ってきたお古の中のお古のナイフをロナルドは恥じたが、親友のネビルは笑わなかった。
刃の研ぎ方を教えてくれたのはハリーJr.であり、研ぐのにも根気がいった。
二人の友人のために、ロナルドはあまり興味のない魔法薬学の自主練習に参加したのだ。
次回の投稿は・・・未来!(つまり未定ですね!)
内容は、拉致されたセブルスさんと、復活の帝王様。やっとここまで来れました。大丈夫?リスキルされません?大丈夫、その前に演説が入りますから。
ムービーシーンの狩人様は基本的におとなしくするものですよ!ええ!
予想以上にサイレントヒル4 The Room編が長引いたからしょうがないね!