セブルス=スネイプの啓蒙的生活   作:亜希羅

68 / 80
 前回は、評価、お気に入り、ここ好き、誤字報告、ありがとうございました。

 新年から不快なお話かもしれませんが、外伝をやります。以前アンケートでお聞きしたピーター視点の外伝です。

Q.前書きと後書きが長すぎでは?

A.書きたいものを書きたいようにやります。あなたの都合は知りません。
 ・・・と答えられたらいいんですけどね。
 どうにも余白が気になってしまう質なのです。

 今年もよろしくお願いします。いつか完結できますように。


【カプリッチオ6】スキャバーズラットの思い出話

 

 スニベルスの癖に生意気だ!

 

 そう嘲笑うジェームズの黒い目が嗜虐に歪むのを、ピーター=ペティグリューは確かに見た。

 

 陰気で小汚いスリザリン生に、スニベルス(泣き虫)なんてあだ名をつけたのはシリウスで、ジェームズはそれを手をたたいて絶賛した。

 

 ろくに櫛も通してなさそうなべっとりした黒髪に、歯磨きもしてなさそうな黄色いガシャガシャの歯並びの悪い歯に、大きめのダボついた制服を体に合ってなくてみっともないと言ったのはリーマスだ。(彼は折に着けスニベルスのことを臭い臭いと言っていたが、それは彼が人狼で常人よりも鼻が利いたせいだろう。もっとも、それは4人組の間でしか言わなかったが)

 

 きっとあいつ、風呂の入り方も歯の磨き方もろくに知らないんだぜ!汚い奴!とシリウスがあざ笑い、だから闇の魔法なんて手を出すし、リリーも騙されるんだ!とジェームズは憤慨する。

 

 だから、ちょっとやそっと痛めつけても問題ない。だってあいつは臭くて汚くて、闇の魔法にも精通してる、犯罪者予備軍の嫌われ者なんだから!

 

 ピーターはうんうんもっともだ、とそれに追従していた。

 

 その小汚いスリザリン生は、ある日突然学校を出て行った。誰に何を言い残すでもなく。

 

 ざまーみろ!ああ、清々した!

 

 そう笑い合って呵々大笑した若き日々。・・・周りから自分たちがどう見られているか、気にも留めずに。

 

 今となっては遠い昔の話だ。ネズミのスキャバーズは、そんな青い春を転寝のはざまに思い返す。

 

 青い春など、学び舎を一歩出てしまえば色あせてしまい、もはや跡形もない。自分のこの指一本欠けた手も血にまみれてしまった。その手が思い出を壊す一助を担ったのは確かな話だが。

 

 ネズミに身をやつして間もなくは、よく悪夢に見た。自分が吹き飛ばしたマグルたちが、帝王に殺されたジェームズが、母子ともども自爆したというリリーとハリーが、アズカバンにぶち込まれたシリウスが、人狼のコロニーに潜入していたというリーマスが、恨めし気にこちらを見やってくる夢を。

 

 だって仕方ないじゃないか。それに、僕だって今惨めなんだ。

 

 いつだってスキャバーズになっているピーターは誰にともなく言い訳した。

 

 人殺し、人殺し、人殺しの裏切り者。

 

 直視したくない自分の立場を思い返すたびに、スキャバーズの中のペティグリューは胃の腑の中身を吐き出したくなる。

 

 それでも、死ぬわけにはいかなかった。

 

 行き倒れていた路地裏で拾ってくれたのは、ホグワーツ在学中に駆け落ち結婚したと名高いアーサー=ウィーズリーだった。

 

 こんな薄汚いネズミどうするんだろう?と思ってたら、アーサーは自分を物心ついて間もない三男のパーシーのペットにするのだという。

 

 おいおい、いいのか?こんな出自も怪しい、ともすれば病気を持ってそうなネズミをペットにするなんて。

 

 けれど、パーシーの嬉しそうな顔に、ペティグリュー・・・否、スキャバーズはすっかり逃げようという気概をそがれてしまった。餌を与えて、「食べた!」と嬉しそうにするパーシーに、ほだされてしまったのだ。

 

 どうせピーター=ペティグリューは死んだのだ。ならばここからはスキャバーズとして生きなおそう。そう思った気持に嘘はない。

 

 ただ、時々スキャバーズの中のペティグリューがうなされてうんざりするのだ。だって仕方ないじゃないか。ペティグリューは人間だ。人間ならば不満を持つなというのが無理なのだ。

 

 そんな風に行き場のない感情をためつつも、それでもスキャバーズは拾ってもらった恩を返そうと、ウィーズリー家のペットの一員という立場に甘んじていた。

 

 やがてパーシーは成長して、ホグワーツに入学した。寮はもちろん、グリフィンドール。ウィーズリー家なら当然だろうな、とスキャバーズは思う。

 

 そうして、パーシーが4年生になった年だった。

 

 「お前たち!どうしたんだ、その頭は?!」

 

 「スネイプの罰則だよ」

 

 「見た目凄いけど、そんな不便じゃないぜ」

 

 「そーそ。大げさなんだよ、パーシーは」

 

 仰天するパーシーに、双子の弟であるフレッドとジョージは肩をすくめた。その頭に乗せた円筒形の檻をそのままに。

 

 談話室の暖炉のキャビネットの上で転寝していたスキャバーズは、パーシーの金切り声に目を覚まし、思わず二度見した。

 

 スキャバーズの中身ことペティグリューが在学中でもそんな罰則を科してくる教師はいなかったというのに。

 

 そして、双子の口にした名前に、スキャバーズは何だって?!と黒い目をしばたかせた。

 

 スネイプ?いや、まさか。あいつは死んだっていうじゃないか。そうだ。

 

 スキャバーズの中のペティグリューは思い返す。

 

 

 

 

 

 ペティグリューがやむなく死喰い人に名を連ねることになった時、実はスネイプもいるかもしれない、とこっそり探したのだ。

 

 協力してもらうため?否、身を隠すためだ。自分が彼の立場だったら、仕返しの一つや二つしている。そうでなくとも、ジェームズやシリウスという強者抜きに誰かとことを構えようというつもりはペティグリューにはなかった。

 

 だが、セブルス=スネイプの名前はついぞ聞かなかった。

 

 ジェームズやシリウスは死んだに違いないなんてろくに調べずに言っていたが、これは本当にそうかもしれない。あんな恥ずかしい目に遭ったら、死にたくなってもおかしくない。

 

 そう思い至った時、ペティグリューは震えが止まらなかった。

 

 自分が、殺した。直接でなくとも、死に追い込んだ。殺しと何が違う?!ジェームズやシリウスなら気にしなかったかもしれないが、ペティグリューはそこまで図太い神経は持ち合わせていない。

 

 だが、まもなくそれもおさまった。何をいまさら。もはや自分も死喰い人(人殺し)の一員だ。

 

 一人殺すも二人殺すも一緒だ!自分は選んだ。母の安寧を。ならばせめて、最後まで彼女のために。

 

 彼女の安寧のために。そして・・・自分をこんなところまで引きずり落としたジェームズとシリウスに一矢報いてやるために。

 

 そうして、その果てにペティグリューはスキャバーズになった。何をいまさら。

 

 

 

 

 

 ともあれ。

 

 スネイプなんて珍しい名前だ。詳しく話を聞いて回れば、今学期からスラグホーンが後継者として雇い入れた魔法薬学の助教授らしい。珍しい魔道具の自立人形を従えているのだとか。

 

 その名前を聞いたスキャバーズは日ごろの怠け癖をどこへやったのか、飼い主であるパーシーの目を盗んであちこちを走り回って情報収集をした。

 

 曰く、変わった黒い服に、黒髪と黒い目をしている。不愛想で厳しい。

 

 ミーハーな女生徒などは、セイウチ髭のスラグホーンよりも、ちょっと陰のあるイケメンの方がいい!と目を輝かせていた。

 

 そして、ついにスキャバーズは見てしまった。

 

 廊下を歩く漆黒の男を。

 

 猫背はぴんと伸ばされ。油っぽかった黒髪はさらさらで首の後ろで無造作にくくられ。だぼだぼだったホグワーツの制服ローブは体に合った奇妙な衣装(インバネスコートという呼称をペティグリューは知らない)で、黄色くてガシャガシャだった歯並びは、八重歯が目立つもののきれいなものとなり。それでも、鉤鼻気味の顔立ちは確実に以前の面影を残していた。

 

 間違いない。セブルス=スネイプ!あいつだ!

 

 思わずスキャバーズは二度見どころ三度見したし、もう一度執拗に情報収集して回ったが、間違いなくペティグリューの知るセブルス=スネイプ本人だった。

 

 いったい何があればあんな変わりように至るのだろうか?

 

 相変わらずどこか陰気そうではあるが、学生時代とは異なりどこか凛とした気品を感じさせる。

 

 ボンネットとショールを身に着けた、球体関節の手を持つ女性――あれがうわさの自動人形か――に微笑みかけ、質問に来た生徒にぶっきらぼうながらも返事をしている。

 

 ネズミとして這いつくばっている自分とは大違いだ。

 

 それ以上見ていたくなくて、スキャバーズは身をひるがえして大急ぎでグリフィンドールの寮塔に向かった。

 

 あれ以上見ていたらきっと、今以上に自分が惨めになる。なんで自分ばかり、なんであいつだけ、と。

 

 

 

 

 

 それから、2年ほど経った学期末にほど近いある日、双子がグリフィンドールの談話室で頭にかぶった檻を床に打ち付けながら爆笑しているのが目撃された。

 

 あまりの品のなさにパーシーが監督生として嗜めようとしたら、双子が大声で笑いながらばらしてきた。

 

 「今日のロックハート見たかよ?!あの頭!取り繕ってはいたけど、あれ、どう見たって、ブククッ!」

 

 「ありゃ傑作だったな!おい、ジョージ!あのタイミングの脱退呪文(デパルソ)!最高だったぜ!」

 

 すると、双子と一緒に授業を受けていたらしい同級生が、一斉に吹き出して身を震わせる。

 

 ロックハートのファンだったらしい女生徒まで、口元を押さえてそっぽを向きながら肩を震わせる始末だ。

 

 双子はまたしても笑いの発作に襲われ、床を転げまわって爆笑している。

 

 切れ切れに白状してきた情報では、双子はロックハートの頭が鬘であることを見抜き、いつもの自慢話の隙をぬって、呪文を直撃させて吹き飛ばした。

 

 急ぎ鬘を拾ったロックハートだが、それで受講者が見たものがごまかせるわけもなく。

 

 ロックハートは双子に減点と罰則(ファンレター返信の手伝い)を言い渡したが、それで双子が反省するわけもなかった。

 

 “闇の魔術に対する防衛術”教室でも笑いまくったが、また思い出し笑いで爆笑していたのだ。

 

 廊下でロックハートの甘いマスクを見かけていたスキャバーズは、うっかりその麗しき金髪が鬘であることを想像してしまい――そのままひっくり返って、腹部をけいれんさせた。人間であったら大爆笑していた。

 

 「あれ、絶対スネイプが何かやったよな?」

 

 「バレンタインに、あんな激怒してたもんな!

 スネイプの方がバジリスクみたいだったぜ!」

 

 「お前たち!スネイプ“先生”だろう!」

 

 違う。パーシー。注意すべきところはそこじゃない。

 

 ひっくり返って腹部をけいれんさせたまま、スキャバーズは内心で思った。心の中のいたずら仕掛け人が、ナイス!とサムズアップしているが、それどころではない。

 

 というか、ロックハートのハゲの原因がスネイプ?あいつ、何をやったんだ?

 

 ・・・思えば、この時点でスキャバーズはスネイプの危険性を察知しておくべきだったのだ。

 

 スネイプは学生時代以上に鋭く、気の付くようになっていた。スキャバーズこと、ペティグリューはそのことに気が付かなかった。

 

 気が付いた時にはすべてが手遅れだった。

 

 

 

 

 

 シリウスの脱獄を知り、ウィーズリー家から出る決意を固めた。

 

 かわいがってくれたパーシーやロンを裏切るのに罪悪感がなかったといえば嘘になる。こんなにお世話になったのに、後ろ足で砂をかけるように出て行くのだ。

 

 それでも、このまま居座るわけにはいかなかった。

 

 ガリオンくじ当選の記事を新聞に載せたいからと写真を撮られたのがまずかった。エジプト旅行帰国から間もなく、耳に挟んだシリウスの脱獄。

 

 ばれた。即座に悟った。シリウスはペティグリューのことを――動物モドキ(アニメーガス)のことを知っている。

 

 そして、同時に思った。このままのんびりしていたら、確実にシリウスはウィーズリー家に押し掛ける。

 

 ウィーズリー家の邸宅――“隠れ穴”は各種魔法で守られている。魔法使いの家は、大体どこもそうだ。

 

 だが、魔法は完ぺきではない。何かしら抜け道がある。

 

 そして、シリウスは一種の天才だった。奴ならあっさりそれを見つけるだろう。何しろ、こうやると決めたら、奴は絶対確実にあきらめないのだから。

 

 その執念できっと、抜け道を見つける。そうなれば、奴は誰がどこにいようが、周りにいるのが悪いとばかりに襲い掛かってくるだろう。

 

 ウィーズリー家を巻き込むわけにはいかない。ネズミとして惨めではあったけれど、それでも優しくしてくれたのは、確かだったのだから。

 

 だから、ペティグリューは断腸の想いでウィーズリー家を出て行く。死亡を偽装すれば、きっとあきらめてくれるはずだ。

 

 あとは、学期終了まで学校に潜伏し、誰かの荷物に紛れてホグワーツ特急に密航、駅到着と同時に逃げてしまえばいい。

 

 最悪、マグルに紛れて国外に出るべきか。

 

 ともあれ、それはまたおいおい考えていけばいい。

 

 今、スキャバーズと呼ばれていたネズミはホグワーツの厨房にいる。大勢のハウスエルフたちが、指を振り、魔法を使って料理やお菓子を作っている。

 

 ここならしばらくは食いっぱぐれずに済む。

 

 物陰に隠れ、時々食材の端っこや出来上がった料理の一部を頂戴していた。

 

 そうして気づいたことがある。

 

 スネイプが持っているという、あの美女人形もここにきていろいろ作っているらしい。

 

 朝夕の食事はもちろんとして、ティータイムの茶菓子も作っているらしい。

 

 「おいしそうですね、お人形様!」

 

 「ありがとうございます。セブルス様がお気に召されればいいのですが・・・」

 

 「きっと喜ばれますよ!」

 

 焼き上げた焼き菓子を前に、かすかにほほ笑む人形に、キイキイと話しかけるハウスエルフたちを見上げながら、スキャバーズと呼ばれていたネズミはまた惨めな思いが込み上げてきた。

 

 自分はこんなところで盗み食いして食いつないでいくしかない。

 

 なのになんだ?スネイプは。あの臭くて小汚くて陰気なスリザリン野郎は。こんなかわいい人形に美味しいものを作ってもらって、ぬくぬくとベッドで眠って。

 

 スニベルス(泣き虫野郎)のくせに。自分たちに痛い目見せられて、満足にやり返すこともできなくて、みっともない灰色パンツで、幼馴染であるはずのリリーにまで暴言を吐き捨てた差別野郎の癖に。

 

 どうして奴ばっかり!

 

 ほんの少しの仕返しのつもりだったのだ。

 

 人形とハウスエルフの目を盗んで、焼き菓子をくすねるのは簡単だった。

 

 一口かじれば、サクサクの触感。アーモンドの豊かな香りと砂糖の甘味。実に、美味だった。ホグワーツのおやつには出てこなかった。(スキャバーズと呼ばれていたネズミは知らなかったが、それはまだバタークリームやジャムをはさんでないマカロンだった)

 

 やっぱりスネイプはずるい。こんなにおいしいものを毎日食べているなんて!

 

 自分だって大変なんだ。だったら少しくらい!

 

 スキャバーズと呼ばれていたネズミは忘れていた。古くからの人類の共通認識。食べ物の恨みは怖いということを。

 

 

 

 

 

 失敗した。

 

 失敗した失敗した失敗した。

 

 失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!!!

 

 誰か助けてだれでもいい解放してください誰かだれかだれか!!!!

 

 スキャバーズと呼ばれていたネズミは、灰色の毛並みをぶるぶると震わせた。

 

 完全に油断していたのだ。

 

 厨房に置かれていた見慣れない菓子を、スネイプのティータイム用茶菓子だろうと思ってかじりついた。

 

 そのまま即効で意識を失い、次に気が付いたらスネイプの手の中にいた。おそらく、菓子の中に薬が入っていたのだろう。うかつにもほどがある。

 

 スネイプは陰気さはあまり変わってないようだったが、あの頃の小汚さをどこかに落としてきたかのように、奇妙な美しさを身に着けたようだった。

 

 あまり動かさない表情の中で、黒い目が冷酷な光を放っている。

 

 あの頃は確かに出ていた嫌悪や怒りという表情は鳴りを潜め、ただただ温度のない無表情がスキャバーズと呼ばれていたネズミに向けられている。

 

 このまま暴れたら首の骨を折るという脅しに、ネズミはやむなくおとなしくしたが、怖くてたまらない。

 

 ネズミの中身であるペティグリューは知っている。スネイプの、リリーに対する執着を。ジェームズやシリウスにどんなに嫌がらせされても、それでもリリーと離れようとしなかった。

 

 あの失言だって、思わずとっさに言ってしまったという感じで、すぐに取り消そうと、むしろ発言した本人の方が慌ててたくらいで。

 

 もし、ペティグリューがリリーが死ぬ原因を作り上げたとスネイプにばれてしまったら。

 

 絶対に、殺される。ただじゃすまない。

 

 大丈夫、ばれはしない。そう内心で言い聞かせても、震えが止まらない。

 

 スネイプの手の内で、スキャバーズと呼ばれていたネズミは恐怖からくる寒気を振り払うように震えるしかできない。

 

 噛みつくことができないように首元を押さえられているのだから仕方ない。下手に暴れ続けたら首の骨を折るというのだ。おとなしくしておくしかない。

 

 こうなったら、できるだけ相手の機嫌を損ねないように命乞いするしかない。何なら靴を舐めたっていい!・・・自分がスネイプの立場だったら、絶対聞き入れてもらえない、とチラと思ってしまったが、何もせずに黙って死ぬより万倍マシだ。

 

 職員会議に連れて行かれるらしい。これはチャンスだ。たとえスネイプが殺しにかかってきても、他の先生方がいたら止めてくれる可能性が高い。(ペティグリューは、スネイプがホグワーツ赴任直後にダンブルドアに対してやらかしたことを知らなかった)

 

 ダンブルドアがいてくれたらきっと助けてくれただろうに、どうしてこういうときに限っていないのだ!

 

 ロンは連れて行かないでくれ!せめて職員権限で締め出してくれ!ペットがおっさんだったなんて残酷な事実、知らせなくていいじゃないか!

 

 内心でネズミの中のペティグリューが歯噛みするのをよそに、職員会議が始まった。

 

 その後のことは怒涛だった。

 

 居合わせたルーピンは、案の定、いつもの役立たずを披露しただけだ。“不死鳥の騎士団”の任務と、死喰い人の任務の合間を縫って稼げるからとやっていたクイックスペルの講師の仕事を、友人のよしみで紹介してやったというのに、その恩を忘れたように相変わらず他人面で非難して気の毒がるだけだ。

 

 だが、まさか。まさかスネイプがペティグリューの事情を見抜いていたとは思わなかった。

 

 わかってくれると期待したのもつかの間、ごつい鉄の塊でぶん殴られるとは思わなかった。

 

 ホグワーツを出奔したスネイプは死んでなかったが、小汚さと引き換えに野蛮な暴力性を身につけて帰ってきたらしい。

 

 発言に気を付けなければとペティグリューが自省したのもつかの間、うっかり鎌かけに引っかかり、予言の密告についてしゃべってしまった。

 

 しまった!ペティグリューが青ざめた時には、スネイプは再び左手に先ほどの分厚い鉄の塊を装着していた。

 

 他の教職員が一斉に耳をふさいで目をそらすのを、ペティグリューは視界の端に確かに見た。

 

 おお、マーリン。自分は確かに彼にひどいことをしましたが、こうまでされる謂れはないのではありませんか?お慈悲を!!

 

 

 

 

 

 ピーター=ペティグリューが、根本的なところでセブルス=スネイプの異常に気が付くのは、この先の話になる。

 

 

 

 

 

 続く




マーリン「慈悲はない!」





 リハビリがてら書いてみました。元々脳内プロットはありましてね。

 まあ、この後彼は本編通り、恩仇返却ムーブの挙句、マッド・アイ化するわけですが。

 ・・・正直、初代いたずら仕掛け人たちの胸糞言動を書いてるのは苦行でした。

 ルーピンさんがこんなこと言うはずがない?読み直した原作で、ルーピンさんはボガートの化けたスネイプ先生に女装させて笑いものにして、“忍び地図”のムーニーもスネイプ先生の格好を馬鹿にする言動をしてたので、ああ、人格はともかく見てくれは馬鹿にしてたんだな、とちょっと思ったので。

 スネイプ先生の生い立ち(虐待児はお風呂の入り方を知らないなんて珍しいことではありません)なんて、私たち読者もハリー少年と一緒に“憂いの篩”の中で初めて知るわけじゃないですか。いたずら仕掛け人が知るわけありませんし、だからこそ平然と馬鹿にできるわけです。

 気分を悪くしたならすみませんでした。





 ちなみに、タイトルは実写映画にもなった絵本のウサギさんをオマージュしたつもりです。

 次回こそ本編の更新ができたらいいですね。
 予定は未定ですのでね。本当に申し訳ありません。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。