Q.6巻の内容、ほぼ覚えてないんですけど?!
A.安心せい!儂もじゃった!というわけでざっと斜め読みで読み直して、細かなところどうだっけ?って調べながら書いてる。脳内プロットはあるけど、書いてく内に増えたりキメラになったりしてる。何でや工藤。
というわけで続きです。黒歴史発掘の前にもうちょっとお話があるのです。
ところで、ホグワーツの教員たちも、揺れる魔法界に影響を受けざるを得なかった。
先の魔法省の会議にマクゴナガルとスラグホーンが出席していた。彼らの言からも察しが付くだろうが、『不死鳥の騎士団』の変質が自然と彼らにも伝播しつつあったのだ。
とはいえ、ここ数年のホグワーツにおける不祥事により、実はダンブルドアの求心力は低下しており、伝播されても信用に値しないと判断するものが大半だった。マクゴナガル自身がそうであるように。
ダンブルドアから怪しい“お守り”を渡された彼女はそれにかけられた偽装魔術を見抜き、それを会議のほか出席者たちに警告したわけだが、実はもう一つの効果については報告していなかった。
マクゴナガルは察知できなかったのだ。
その“お守り”を身に着けていると、不意に思ってしまうのだ。亡き夫のアーカートや、かつて恋い慕ったドゥーガルが、生き返って自分に会いに来てくれるかもしれない、と。
都合の良すぎる妄想だ、自分は仕事に生きると決めた、とマクゴナガルは切って捨てようとした。魅力的だと思わなかったといえばうそになる。けれど、マクゴナガルはそれにすがるほど弱くはないつもりだった。
そして、彼女はその怪しい“お守り”を持つようになってから、その妄想をするようになったと気が付けなかった。ただ、世間的に不穏な空気が満ちているので、その影響で弱気になった影響だろうと思ったのだ。
それでも、最近信用が暴落していたダンブルドアが、この期に及んでこんなあからさまな偽装アイテムをよこしてきたことに、マクゴナガルはひどく失望した。ゆえに、身に着けたのは最初数日だけであとは保管しておいて会議終了と同時に、その“お守り”をさっさと処分したのだ。(会議の報告のために保管していたのであって、それがなければ即座に処分したかった)
彼女は会議で聞いた、クラウチJr.が行おうとしていた恐るべき儀式とその背後にあるカルト宗教と、それにダンブルドアがかかわっていることを確かに聞いたが、その宗教の恐ろしさまでは認識できてはいなかった。
しかし、マクゴナガルは教師であり、生徒たちの健全健康な学生生活を守る立場にある。そして、それに怪しいカルト宗教は必要ないと、即断即決した。
ゆえに、彼女はセブルス=スネイプが渦中のカルト宗教と関わり合いになっていたとはみじんも思わなかった。
セブルスも、ホグワーツへ出勤が遅れる旨の連絡は入れたが、その理由については親しい友人一家と後見人を務めるその子供たちが非常に危険な状態になって、その助力のために遅れるということは書いたが、そこにカルト宗教が絡んでいることまでは報告していなかったのだ。
そうして、やっと出勤してきたセブルスの報告に、マクゴナガルをはじめホグワーツ教授陣は絶句した。
ルシウス=マルフォイが告げた“シリウス=ブラックが、例のカルト教団にホグワーツ生の家族を売って、巻き添えが出た事件”の渦中に、まさかセブルスがいたとは。
セブルスからさらに詳細を聞き出しながら、マクゴナガルは思いを巡らす。
以前から家族ぐるみで親交のあった一家の長女が、カルト宗教で生贄にされて家族そろってイギリスに逃げ込んできて、セブルスはそれを知ったうえで付き合っていたらしい。
その長女の一つ下の弟が、スリザリン寮のハリー=メイソンJr.である。
マクゴナガルとて、教師歴は長いのだ。ハリーJr.は仕草や表情はまるで違うし、眼鏡もなく髪質も異なれど、瞳の色を除けば亡きジェームズ=ポッターにそっくりなのだ。
教員採用直後のセブルスの言葉から、彼がリリーを大事に思っていたのは知れ渡っている。そこにジェームズと生き写しのような少年の出現と、彼がセブルスとプライベートの親交があるとなれば、おのずと答えは出るというものだ。
マクゴナガルが沈黙を選んだのは、それを暴いてもいいことなど一つもないからだ。
痩せてガリガリの小汚い、明らかに虐待されているような状態ならば違ったかもしれないが、心身ともに健やかに成長しているようだった。(あのクィディッチの腕前に関しては、グリフィンドールに入ってほしかったけれど)
性格に関しても、あのジェームズ=ポッターの息子とは思えないほど穏やかで思いやりがある。
守るべき教え子でそこに問題がないならば、マクゴナガルが言うべきことはない。黙してこそ守れることもあると、彼女は知っていた。
しかし、マクゴナガルが気が付くということは、ほかに気が付くものがいるということだ。シリウスがそうであったように。おそらくは、ダンブルドアも気が付いていることだろう。『不死鳥の騎士団』に入団したシリウスを野放しにするようにその行動を黙認しているのだ。おそらくは、そういうことだ。
なにしろ。
「セブルス。あなたは日刊預言者新聞を読みましたか?」
「いいえ。先ほどもお伝えしたように、ここしばらくの私はそれどころではありませんでした。
何かありましたか?」
首を振ってから問い返したセブルスに、マクゴナガルは無言呪文で
『生きていた英雄?!』という大見出しとともに、その写真は鮮烈に見せつけていた。聖マンゴの病室と思しきドアの隙間からベッドの上で上体を起こしたリリー=メイソンの姿を。隠し撮りらしく、こちらに視線は合わず、リリーはドア陰に隠れている何者かに話しかけているようだった。
・・・魔力欠乏で倒れて療養中のリリーは、変装用の眼鏡をしていなかったのだ。
ご丁寧に16年前の写真を提供したものがいたらしく比較写真も載っている上、息子のハリー=ポッターも生きているならホグワーツに在学しているはず、という話まで載っている。
黙り込んで眉間にしわを寄せるセブルスに、マクゴナガルは言った。
「今、魔法界は揺れています。“例のあの人”に加えてダンブルドアもおかしい。
ゆえにこそ、安心に足る象徴が必要だ、と考えたものがやったのでしょう」
マクゴナガルは言いながら、おそらくダンブルドアや『不死鳥の騎士団』が行ったとは思えない、と内心で付け加える。
昔からダンブルドアはこの手のマスコミは相手にしていなかったし、その傘下となる『不死鳥の騎士団』もそれを軽視する節があった。マクゴナガルも人のことは言えないながらもそうだ。
だが、耳を貸して目を向けるものは少なくないのだ。特に、今の情勢では。
まあ、日刊預言者新聞の下世話ぶりから、単に居合わせた記者が某行方不明女性記者のごとく後先考えずにやらかした可能性もなきにしもあらずなのだが。
それはセブルスも分かったらしく、無言でマクゴナガルのほうに視線を向けている。マクゴナガルは新聞を折りたたんでわきに置くと、嘆息した。
「残念ながら、今年の学校でもこの影響は出るでしょう・・・いいえ、すでに出ています」
言外に、ハリー=メイソンJr.の出自も自動的にばれるぞ、といえば、セブルスは苦々しげな様子ながらも「でしょうな」とうなずいて見せた。
「一部の保護者から“暴力教師を英雄の子供に近寄らせるな”“邪神の手先が教師なんて言語道断!”と罷免要請が出されました。
もちろん却下しました。あなたにはすでに停職という沙汰を下しましたし、“邪神の手先”なんて根も葉もない言いがかりが過ぎます。いいえ、これはもはや名誉棄損です。すでに知っているかもしれませんが、一部ではあなたに対して懸賞金や指名手配同然の扱いをしているそうですが、魔法省は公式にはそういった声明は出していません。
まったく。あなたが邪神の手先なら、我々ホグワーツの教職員も邪教の司祭やその仲間も同然です。
それ以前に、我々魔法使いはマグルたちでいうところの神の教えに反するものであるはず。それを忘れて、どの面で邪神だのなんだの。
もちろん、信教の自由というものはありますが、神聖なる学び舎にまでそういったことは持ち込まないでほしいものです。
どちらが子供たちに対して悪影響になるのやら!」
半ば愚痴になってしまったが、ぶちぶちとマクゴナガルが言えば、少し意外そうにセブルスが口を開いた。
「では、私は教師を続けてもよいと?」
「言ったはずですよ。少しでも申し訳なく思うなら、その分ビシビシ働くこと。いいですね?と」
「・・・わかりました。ありがたく、引き続き職務に励みたく思います」
「よろしい」
歯切れよくマクゴナガルはうなずくと、話題を変える。
「では改めて、本年度に入っての連絡事項を通達します」
通常、こういった連絡事項は出勤翌日の職員会議で、一番に通達されることなのだが、セブルスは肝心のそれに参加できていないので、ここで改めて通達ということになったのである。
ちなみに、去年の学期末に“禁じられた森”に不法侵入した挙句、巨人と一緒に潜伏していたハグリッドは、魔法省襲撃の際のどさくさで再逃亡した。『不死鳥の騎士団』経由でダンブルドアに文句を言っても、知らぬ存ぜぬされたそうな。
ゆえに、ホグズミードなどは問題なく生活できているらしい。・・・今のところ。
話を戻すが、セブルスは渡されたスケジュールの書かれた羊皮紙や、今年度からの変更事項、確認事項を聞かされる。しかし、ある項目でセブルスは「は?」と思わず声を出していた。
「私が魔法薬学の担当から“闇の魔術に対する防衛術”の担当に変更?」
「すべてをやれというわけではないのです」
至極申し訳なさそうに目を伏せるマクゴナガルは、すぐに顔を上げて続けた。
「しつこいようですが、昨今の情勢の不安定化に伴い、闇祓いたちもホグワーツばかりに目を向けているというわけにはいかなくなりました。
森番の業務も最小限にとどめ、魔法省に引き上げることになります。
一応、外部から“闇の魔術に対する防衛術”教授の新任の募集はかけたのですが・・・」
マクゴナガルは歯切れ悪く言葉を詰まらせた。
ぶっちゃけ、ろくな人材が来なかった。明らかにダンブルドアのシンパと彼が浸り始めた宗教の信者は却下だ。ロックハート並みの胡散臭い詐欺師や、某ピンクガエル並みの人格破綻者も論外。出禁を言い渡してやりたかったほどだ。
・・・して・・・どうして・・・!
マクゴナガルが常用している胃薬の服用量が、その面接期間中は一段と跳ね上がっていたのは言うまでもない。
そして、こんなろくでなしどもを雇うくらいなら、内内でどうにかしたほうがはるかにまし、と結論を出した。
そうして、白羽の矢が立ったのがセブルスである。
「急ごしらえで申し訳ありませんが、カリキュラムに関しては前年度まで用いていたものを流用してください。
引継ぎ書類も渡します」
「今まで私が担当していた魔法薬学は?」
「ホラスと、彼が校長代理に専念できるように去年から雇っていた助手と分担して行います」
セブルスは若干怪訝そうにしている。
おそらく、スラグホーンの助手と言われてぴんと来ないのだろう。それはそうだろう、去年の彼は、それどころではなかったのだから。
・・・スラグホーンの助手も、セブルスの極寒不機嫌の前におびえて近寄りたがらなかったし、何なら魔王の行軍*1を目の当たりにした彼は、口が裂けても近寄らないと決めたようだった。
わずかにセブルスの眉間が不機嫌そうに寄せられているのは、急な話であることと・・・おそらく、入学から面倒を見ていた子供たち――それも
それでも、彼は大人らしく不満は言わずに静かに「承知しました」とうなずいて見せた。
「ビシビシ働けとは言いましたが、無茶をして体を壊しては元も子もありません。
いいですか、セブルス。何か不満や不安、不足があったらすぐに言うんですよ」
ほっとしてマクゴナガルはそう付け加えると、「はい」とセブルスはうなずいた。
* * *
何度か記したが、去年からホグワーツ6年は新しく入学する1年生向けのオリエンテーションを企画・実施している。
去年の6年生が準備してくれた内容を、新しく進級した6年生が実行し、改善点をまとめて、来年の6年生に申し送りする。
そのために、6年生たちはわざわざ1日早くホグワーツに来るのだ。
ハリーJr.は黒に戻した髪と制服ローブを揺らし、重たいスーツケースを引きずって歩いていく。
彼は事情が事情なので、ホグワーツ特急には乗らず、セブルスによって付き添い“姿くらまし”でホグワーツに来たのだ。
「いた!」
「ハリー!」
「ドラコ!ハーマイオニー!」
大広間の手前の廊下でほかの学生たちと合流できたハリーJr.は、ほっとした様子でドラコとハーマイオニーのところに駆け寄った。
手紙で無事は報告していたが、実際にお互いの顔を見ることができるのはまた違う。
ドラコは「心配させるな!」と口ではきついことを言いながらも、明らかにほっとした様子だったし、ハーマイオニーも嬉しそうに口元をほころばせている。
何かあったの?と怪訝そうな他の学生たちは、促されて取り始めた夕食の席で、自然とハリーJr.とドラコとハーマイオニー、三者の話を聞くことになった。
入学式であれば寮ごとに分かれるし、席順も決まることになるのだが、今は学期開始前で、他学生が不在であるため、席はガラガラで好きに座ることができた。
自然とおしゃべりも控え気味になり、3人の話に耳が行くことになる。
曰く、ハリーJr.とそのマグルの姉、ドラコとハーマイオニーの4人がマグルの商業施設に遊びに行ったら、なんだかやばい事態に巻き込まれた。それを引き起こしたのは
おかげでハリーJr.の実家のメイソン家は、姉がその宗教の邪神の生贄にされかけ、父は大けがで生死の境をさまよい、母はその治療で魔力欠乏から倒れ、と滅茶苦茶なありさまだったらしい。
当のハリーJr.はもう済んだこと、とけろっとした様子で切り分けたミートパイを口に運んでいる。
「もう済んだことだよ。ヘザーを生贄にしようとした人はやっつけたし、母さんも回復して、父さんも完治・・・あ」
「なんだ?まさか何かあったのか?」
話を促すドラコに、ハリーJr.は視線をさまよわせ、少し心配気味に答えた。
「いや、父さん、けがの療養中に別の病気が見つかったとかで今療養が継続してるんだよね」
ちなみに、メイソン氏の癌については子供たち二人には病気として詳細は伏せられている。・・・数年後に発覚して、子供たち二人が悲鳴を上げて、隠していたことを非難することになるのは言わずもがな。
「そうか・・・しかし、早めに見つかってよかったな。手遅れになっていたら元も子もなかったぞ」
「そうね。治る見込みはあるんでしょう?」
「うん」
ドラコとハーマイオニーの言葉に、ハリーJr.はうなずいた。
もし、メイソン氏の病気がもっと重篤なものであれば、ハリーJr.はもっと暗い顔をしていたことだろうが、今は大丈夫そうだ。ひとまずは。
「父さんも母さんも無事だし、ヘザーも大丈夫だよ。居場所は口が裂けても言えないけど」
「だろうな」
「そうよね。ヘザーを生贄にしようとした、どう考えたってカルト宗教がダンブルドアとつながってるらしいし、挙句の果てに『不死鳥の騎士団』も一緒になってあなたたちを追い回していたんだもの!
うちにまで押しかけてきたんだから!」
短くうなずいたドラコに対し、ハーマイオニーは憤りを隠すことなく、むしろぶちまけるように叫んだ。
「え?!どういうこと?!」
「言った通りよ!
あの人たち、うちのパパの病院*2にまで押しかけてきて、診療中だっていうのに家探ししようとしたのよ!
あなたたち一家をかくまってるんじゃないか、何か手掛かりがあるんじゃないかって!
イギリス魔法界を救って“例のあの人”を倒すのに、ヘザーの力がいるとか、大罪人のハリー=メイソンを差し出せとか!
じゃあ、そのためならうちを荒らすのも仕方ないっていうの?!歯が痛い、口をきれいにしたいっていう患者さんや、うちのパパの仕事と、働きに来てくれてる職員さんのことも、どうでもいいの?!
マグルの家だからってバカにしないでよ!」
かんかんになっているハーマイオニーに、ハリーJr.とドラコは二人とも自分が怒鳴られたわけでもないのに、青くなって黙り込んだ。
「なんか、ごめんね。巻き込んじゃって」
「ハリーが謝ることじゃないわ!万が一知ってたとしたって、自分に忘却術をかけてでも言わなかったわよ!
気にするべきは、あの人たち!何よあれ!」
申し訳なさそうに言ったハリーJr.に、ハーマイオニーは首を振って見せた。
ハーマイオニーは言わなかったが、実は後でポリジュース薬で変装したリリーが、荒らしまわった『不死鳥の騎士団』の後始末で片づけに来たのだ。(私たちのせいでごめんなさい、と頭を下げたリリーを非難する者はいなかった。グレンジャー一家以外の他の者は記憶を消したとはいえ)
リリーは、16年前のポッター家襲撃からの脱走雲隠れの余波が姉のペチュニアの家庭を滅茶苦茶にしたことをかなり気にしており、自分たちを追う者たちがまた周囲に迷惑をかけては、とかなり気を配ったのだ。
ペチュニアのいるダーズリー一家にも、ブラックウッド氏の郵便越しにすぐにイギリスを離れるように、と事情を併せて記載した手紙を出したのだ。
おかげで、ダーズリー一家は家長たるバーノン=ダーズリー氏の海外支社への出張についていく形で海外渡航し、難を逃れている。
それは余談だが。
「・・・最近の『不死鳥の騎士団』、おかしいんだ」
ぽつりと言ったのはネビルだ。
「何ていうのかな。まともじゃないというか、元々ダンブルドアがいれば大丈夫、みたいなところがあったんだ。それは、グリフィンドールやホグワーツそのものも同じ感じだったけど。
でも、なんか、最近はダンブルドアが言うなら、みたいな盲目的な感じが強くて。何を言っても自分の都合のいいようにしかみんな受け止めない、みたいな」
たどたどしく、考え込むようにネビルは言った。
「僕の家にも来てね。変な魔除けを置いて行ったんだ。
これがあれば・・・パパもよくなるって。
でも、ばあちゃんが様子がおかしいし、騎士団を名乗る不審者なだけかもしれないから、捨てろって。
・・・僕も、そう思って捨てた。聖マンゴにいるママは嫌がってたけど、あのお守りを置いてる方が、パパはうなされるから、結局捨てたらしいよ」
「・・・私のところもそうなの」
「僕も」
ネビルが言えば、ぽつぽつと同意をするような声が上がる。
「ハッ。耄碌狸爺がとうとう化けの皮がはがれたんだ。
ザマァないな」
勝ち誇っていったのはスリザリン寮のノットだ。
「それ、“例の何とかさん”も同じでしょ」
口をはさんだのはハリーJr.だ。
「魔法省の襲撃をした時、恐ろしい化け物に変身したんでしょ?
確かに僕はマグル育ちで、魔法界に入って日も浅いから、その恐ろしさをよく知らないよ。
だからって、他の人間を餌のように食い殺す化け物を、王様だ!ってひれ伏そうって気にはなれないよ」
「っ! お前!よくもそんなこと言えたな!穢れた血の入った半端者のくせに!」
「穢れた血が入って何が悪いんだよ!頭の中が穢れてるよりはるかにマシだよ!
純血が偉いなら、今すぐこの事態を何とかして見せろよ!」
「やめろ、二人とも」
にらみ合うハリーJr.とノットをたしなめたのはドラコだ。
「食事中に怒鳴りあうな。不作法が過ぎる。
どっちもどっちだ」
ウっと二人は言葉を詰まらせて視線をそらした。
「ごめん、ドラコ。みんな。言い過ぎた」
「かまうな。お前が怒るのも理解できる。いつまでも血を誇るだけの口先だけと一緒にされるのは心外だが」
「ごめん、て!」
頭を下げて情けない顔をするハリーJr.に、ドラコは一つ鼻を鳴らす。しかし、その視線は柔らかく、言葉ほど怒っていないらしい。
それを見て、ハーマイオニーは少し肩から力を抜いてくすくすと笑う。
と、ここで、バタンと大広間の扉が開いた。ぜーっはーっと肩で息をするのは、ロナルド=ウィーズリーだった。
「ロン!どうしたの?」
「何でもない・・・ちょっとね・・・」
目を丸くして話しかけるネビルに、ロナルドはのろのろと席について、現れた夕食をかっ込みだした。
ちらっとその目がもの言いたげにハリーJr.に向けられ、続けて忌々しげにノットをにらんだが、すぐに食事に向けなおされた。
その顔を見て、ノットがチッと舌打ちしたのをハリーJr.は聞き逃さなかった。
何かあったのだろうか。
両者を見比べて首をかしげるハリーJr.を、ドラコは首を振って言葉なく制した。
今年のハリーJr.は、去年以上に注目の的になってしまっている。日刊預言者新聞の記事と、主に『不死鳥の騎士団』による勝手な指名手配のせいだ。
そして、ホグワーツでは噂は勝手に独り歩きして、尾ひれ背びれと何なら翼もはやして変形合体事故を起こす。
今、ここで話しかけて話をするのがいいとは思えない。ドラコはそう判断したのだ。
そして、それはハリーJr.も思ったらしく、彼はおとなしく食事の続きを再開した。
普段なら、ホグワーツに到着すれば大広間で入学式となるが、今年はそのまま夕食をとって、入寮して就寝。
明日、入学式があるまでの間に、オリエンテーションの打ち合わせをしておくのだ。
去年の6年生たちがまとめた内容を改めて確認し、オリエンテーションの練習をしておく。実際に校舎を歩き回って、仕掛けに対する注意や、図書館・医務室・寮からの大広間への道などの案内のシミュレーションをしておくのだ。
朝から練習を一通りやって、一息ついたのは昼頃だった。
監督生あるいは決められた少数の者がいっぺんにすべてをするというわけにもいかないので、担当区分や役回りを決めて練習をし、そこから細かな修正をする。
銘々休憩をしている学生たちをよそに、ハリーJr.とドラコはひそかに彼らから離れ、空き教室へ向かった。
そこにいたのは、ロナルド=ウィーズリーとネビル=ロングボトムの二人だ。
朝早く、フクロウによる手紙という迂遠な方法ながらも「話がある」と呼び出しをしてきたのはロナルドだ。「お昼ごろに、この場所で」と時間帯と場所指定をしたのはハリーJr.である。
一人で行動というのはよくないので、お互いに仲の良い友人を連れて行く、ということでネビルとドラコが同席することになった。
そして今に至る。
「ごめんね、待たせた?」
「ううん。僕らも今来たところ」
ハリーJr.の言葉に、ロナルドは首を振って見せた。
ハリーJr.は素早く杖を振って盗聴防止となる
「それで、話って?」
「うん・・・その・・・」
早速促すハリーJr.に、ロナルドはもの言いたげに口をもごつかせ、ややあって思い切ったように口を開いた。
「メイソンが、“ハリー=ポッター”って本当なの?」
「!」
問いかけに、ハリーJr.は大きく目を見開いたが、すぐに普段の落ち着いた表情に戻る。
ドラコは眉一つ動かさず、ネビルは「言っちゃった!確かに気になるけど!」というかのように、おろおろとハリーJr.とロナルドを見比べている。
「・・・それを知ってどうするの?僕を『不死鳥の騎士団』に引き渡す?」
「違う違う!そんなことしないって!」
少し低い声で問いかけたハリーJr.に、ロナルドは慌てた様子で首を横に振った。
「えっと、日刊預言者新聞に載ってたから気になってさ。別に知ったからどうしようってわけじゃないんだ!本当だよ!」
ぎくしゃくと叫ぶロナルドに、ドラコは深くため息をついた。浅はかな、という副音声が付きそうだった。
対するハリーJr.はその反応に相好を崩して、くすくすと笑った。
「うん。知ってる。君がそんなことするわけないもん。
その質問の答えだけど・・・
ハリーJr.の言葉に、ロナルドはもの言いたげな顔をしたが、ややあって「・・・そっか」とうなずいた。
「話ってそれだけ?」
「違うよ!いや、それも気になったから聞いたんだけど、もっと大事な話があってさ」
首を大きく振ったロナルドは、真剣な表情になって切り出した。
「スネイプに伝えてくれよ。ノットに気をつけろって」
「え?」
きょとんと緑の目をしばたかせるハリーJr.に対し、ドラコは眉を寄せ、ネビルもどういうことかとロナルドを見やった。
「ノットか。確かに、あいつは元々死喰い人の家系だ。
去年の夏休み、闇の帝王が復活したとその筋では噂が流れていてな。
すでに足を洗っていた父上に、逃げる手伝いをしてくれ!と泣きついてきた純血貴族が何人かいたんだが、ノットの家はそこにはなかったはずだ」
「何ていうか・・・元々、僕のことが気に食わないのかな?結構突っかかってこられたんだよね。
・・・気のせいかもしれないけど、ノットの奴、今年から左腕を変に隠したがってるように見えるんだよね。
気をつけろってどういうこと?」
視線をさまよわせながら言ったドラコに、ハリーJr.もうなずいた。
純血貴族が多く、内部でパワーゲームが展開されがちなスリザリン寮では、ハリーJr.はドラコ=マルフォイという友人にして強力な後ろ盾がいたので、比較的安穏に過ごせていた。
しかし、それでもそりが合わず反目する相手はいたのだ。それが、セオドール=ノットである。
「僕、ホグワーツ特急で聞いたんだ。あいつ、スネイプに何かする気なんだ。コンパートメントの外を通りかかったときに、クラッブとゴイル相手に何か言ってて、スネイプの名前だけかろうじて聞き取れたんだ。
でも、そのあと聞いてるのがばれて、全身石化呪いで動けなくされて、透明マントをかぶせられて放置されてさ」
「あ・・・それで、駅でいくら探しても姿が見えなかったの?!」
「迂闊にもほどがある。昨今の情勢で、死喰い人の家系に近寄るなど。ましてお前は光の勢力でも名高いウィーズリーの一員だ。
仮に内容が聞けてない通りすがりだったとしても、見つかれば危害を加えられるに決まっている。
少しは賢くなってきたと思っていたんだがな。これだからウィーズリーは」
「まあまあ。無事に済んでよかったし、こうして危険を知らせてくれたんだからいいじゃないか。
不用心なのを心配してるんでしょ、ドラコも」
「誰が!足を引っ張られて僕らまで危険な目に遭いたくないだけだ!」
笑いかけたハリーJr.に、ドラコは吐き捨ててそっぽを向いた。
その言葉に、むっとしているロナルドと、まただよと言いたげに苦笑するネビル。
「ウィーズリー、どうやって抜け出したの?状況的にロンドンに引き返すホグワーツ特急に乗りっぱなしになっててもおかしくなかったと思うけど」
「荷物下ろし中に発見してもらってさ。魔法を解いてもらって、大急ぎで下車して、そのままホグワーツまで送ってもらったんだ。
正直、僕も生きた心地がしなかった」
ハリーJr.の問いかけに、その時のことを思い出したらしくロナルドは青ざめた顔でうめいた。
ともあれ。
「スネイプ先生が危ないって、具体的に何されるかわかる?」
「ごめん。そこまでは聞けてないんだ。でも、絶対ろくでもないことだろ。
昨日、寮の部屋でみんなから聞いたけど、メイソンも夏休み大変だったんだろ?
じゃあ、たぶん、スネイプが死喰い人たちから指名手配されてるのも知らないんじゃないかって思って」
ハリーJr.の問いかけに、ロナルドは首を振った。
「あー・・・それは、スネイプ先生本人から聞いたんだ。
なんか、『不死鳥の騎士団』と闇の陣営の両方が指名手配してるって」
「あのね。僕、その意味が分からなくて。
ええっと、“例のあの人”を倒した・・・その、関係者のハリーがそうされるならまだわかるんだけど、なんでスネイプ先生がそうされたのかなって。
『不死鳥の騎士団』に至っては“邪神の手先”とか意味の分からない言いがかりつけてるし」
不思議そうなネビルに、ハリーJr.とドラコはどう説明しよう、と顔を見合わせた。
ハリーJr.もドラコも、双方父親からセブルスがヴォルデモート卿を倒し、その復活の場に居合わせてしまったことを聞いている。
さらに先日の教団騒動の渦中にいたことも、知っている。だが、口の軽そうなロナルドにどう説明したものか。
「えっと」
「ハリーの事情が分かったなら、その関係もわかるだろう?
ハリーとそのお母上に当たるメイソン夫人を死亡偽装して匿って、今の家族と暮らせるようにされたのがスネイプ先生だ。
闇の帝王がそのことをわからないはずがない。
『不死鳥の騎士団』の方に関しては、僕よりハリーの方が詳しいだろう」
どう説明しよう、と口をもごつかせるハリーより早く、ドラコが口を開いた。
その言葉を受けてから、ハリーJr.も口を開いた。
「夏休みのうちの騒動について聞いたよね?僕の姉さん、昔も生贄にされかけたんだけど、父さんとおじ・・・先生が救出したんだ。
でも、それって、宗教の連中からしてみたら神聖な儀式を邪魔したとんでもない大罪人だってことで。それで、うちの父さんともども目の敵にされてるんだ」
「「意味が分からない・・・」」
「え?ごめんね、説明へたくそで・・・」
半ば呆然とつぶやいたロナルドとネビルに、ハリーJr.が悄然とつぶやくと、二人は「そうじゃない!」と大きく首を振った。
「生贄なんて、どう考えても禁忌の、危ない闇の魔術でしょ?!
そんなの仕掛ける方が悪いのに、なんで邪魔した方が悪い奴呼ばわりされてるの?!」
「そんなもの使う奴らと『不死鳥の騎士団』が結託してるのも意味が分からない。
ダンブルドアだったら、絶対許すはずがないって思ってたのに・・・。
パパもママもおかしくなって・・・挙句の果てには、無理やりジニーを連れて行こうとするし」
ぶつぶつといったロナルドに、ハリーJr.はすかさず反応した。
「ジニーを?理由は?」
「わかんない。『魔法界を救うため』とか『ダンブルドアが言ったから』しか言わなくて。
肝心のジニーじゃなきゃいけない理由は言わないんだよ」
「それで、どうしたんだ?言われるがままにしたのか?」
「そんなわけないだろ!
あんな様子がおかしいパパとママに、理由抜きでジニーを託せるもんか!
結局家から逃げたんだ。ジニーはパーシーのところに任せて、僕はフレッドとジョージのところでバイトしてた」
ドラコの問いかけに、ロナルドは突っかかるように言い返す。
それを聞いたハリーJr.はこわばった顔をした。
まさか。
「ロン。絶対に、ジニーをご両親・・・ううん、『不死鳥の騎士団』のところに連れて行ったらだめだ」
「ハリー?」
「僕の姉さんがそうされたように、生贄にされるかもしれない。姉さん、儀式のせいで生きたまま焼き殺されそうになったんだ」
「「ええ?!」」
「! ・・・そういえば、以前一緒にキャンプした時、ヘザーは焚火にはあまり近寄りたがらなかったな。それでか」
「僕も、この間の時に初めて聞いたんだけどね」
素っ頓狂な声を上げるグリフィンドール生2人と、大きく目を見開いたもののすぐに納得した様子になったドラコ。
ハリーJr.は真剣な様子を崩すことなく、ロナルドとネビルを交互に見ながら言った。
「僕の姉さんは、生贄にされるのを拒否した。
生贄を捧げることで、あのカルトの神を呼び込んで、世界を救ってもらうために。
一度逃げた姉さんを、何年もしつこく追いかけてたんだ。
そう簡単にあきらめるはずがない。姉さんがだめなら、他から生贄にする人材を調達しようとしているのかも」
途端にロナルドはさっと顔を青ざめさせた。
代わりの生贄。それが誰になるか、わかってしまったのだ。
「嘘だろ?!ジニーを?!生贄になったら生きたまま焼き殺されるんだろ?!パパとママが?!ダンブルドアが?!それを許すって?!ありえない!」
取り乱したロナルドは叫んだが、言葉ほど否定的ではないらしく、嘘だと言ってくれと言いたげな様子でハリーJr.を見た。
「・・・ウィーズリー。アーサーおじさんとモリーおばさんがそんなことをするなんて、僕も信じたくないよ。
『秘密の部屋』の時、拉致されたジニーのことを心配して駆けつけてくれた二人が、そんなことを許すとは思えない。
でも・・・」
「でも?」
「あのカルトは、自分の都合のいいことを都合よく信じさせる力――妄想を妄信させる力があるみたいなんだ。」
「そうなのか?」
「・・・この間のあれの原因になったのはシリウスだけど、あの人も途中からいよいよ様子がおかしくて。いくら何でもって思ってたら、どうもそういう感じらしくて」
問いかけたドラコにうなずいて、ハリーJr.は目を伏せた。
姉とおじさんを殺そうとしてハリーJr.の記憶をいじろうとしてきたシリウス。化け物になって襲い掛かってきて、でも最後の最後で正気を取り戻して謝ってくれたシリウス。
イギリスに帰ってきてから、セブルスおじさんがホグワーツに連れてくる際に教えてくれたのだ。
シリウスがおかしくなった原因と、その力を持ったお守り。シリウスだけが持っているとは考えにくいので、気を付けるように。もし学校で見かけたり押し付けられそうになっても、決して受け取らず壊すように、と。
「ロン、ネビル。二人とも気をつけて。それから、ハーマイオニーのことも気をつけてあげてほしいんだ」
「え?!」
「はあ?!」
目を丸くするロナルドと、声を上げるドラコに、ハリーJr.は自分はそんなに変なことを言っただろうか、と首をかしげた。
「だって、僕とドラコはスリザリンだから、いざというとき駆けつけるのが遅くなるかもしれないでしょ。四六時中目を光らせるわけにもいかないし。
ハーマイオニーも自衛はできるかもしれないけど、やっぱりほかに見ておく人がいたほうがいいと思って。
もちろん、ハーマイオニーだけじゃなくて、ほかの女子生徒も同じだけどさ。
アステリアとかのスリザリンの子たちにも、警戒を呼び掛けとかないと。生贄扱いなら、むしろ邪魔者が減って一石二鳥って狙われるかもしれないし。
そう思って、グリフィンドールのほうを頼んだんだけど。
僕、何か変なこと言った?」
「あー、うん!そうだよね!
妙に友達であることを強調するネビルに、ハリーJr.はますます首をかしげた。
対するロナルドは、なんだか気が抜けたような落ち込んだような調子でつぶやくように言う。
「あ、いや、うん・・・そう、だよな・・・」
「それ以外に何があるんだ?まったく!非常時にうがった見方をする奴があるか!」
「なんだよ!じゃあ、そっちだってなんでさっき変な声出してたんだよ?!」
鋭くにらみつけるドラコに、すぐさまロナルドは勢いを取り戻してかみつき返した。
「落ち着いてよ!ハリーだって他意があったわけじゃないんだし!今、それどころじゃないんだから!」
仲裁に入るネビルをよそに、ハリーJr.はさらに首をかしげた。
なんで、ハーマイオニーの心配をしたら、ロナルドとドラコが過剰反応をしたのか。鈍チンの彼は意味が分かってないのだ。
「とにかく、そろそろ戻るぞ。いい加減戻らないとノットやザビニに勘繰られる。
行くぞ、ハリー」
「うん。
ロンとネビルも気を付けてね。いろいろ教えてくれてありがとう。みんなをよろしくね」
「こっちも、教えてくれてありがとう。二人も気を付けてね」
「じゃあな、二人とも」
そうして、この話はここで終わり、4人は2人ずつのバラバラで教室を出たのだ。
続く
【透明になれるマント】
全身をすっぽり覆うことで、所有者の姿を他人の目から不可視にするマント。
ポッター家に伝わる死の秘宝とは異なり、不可視効果は時限性である。また、音や匂いは消せず、いくつかの魔法生物や魔道具には不可視効果が通用しない場合がある。
『死』を受け入れたイグノタスを見たある魔法使いは閃いた。魔法生物デミガイズの毛を織って作ったマントをまとったその魔法使いは、半年もせずに『死』に捕まってしまったという。
Q.セブルスさんの黒歴史は?!
A.それはまた次回やります。お待ちください。ぶっちゃけ、第6楽章がピンクガマガエルのあれそれに全振りした感があるので、他にも語ることがあるのです。
次回の投稿は来週!内容は、新学期スタート!そして、ハリーJr.と黒歴史の教科書(リトゥンバイプリンス)。お楽しみに。