セブルス=スネイプの啓蒙的生活   作:亜希羅

9 / 68
 8話目投稿時点の私「連載続きそうだし、チラ裏から出してみよっと」

 同日お昼頃の私「・・・まあ、受け付けない人は多いだろうな」

 しばらく仕事でアクセスできなくて感想返信のためにアクセスした私「評価バー真っ赤?!しかも日間ランキング入り?!何のドッキリ?!」




 感想・評価・しおり・お気に入り・ここ好きなどなど、お付き合いありがとうございます!

 ご期待に添えられるかわかりませんが、気ままにやっていきますので、どうかこれからもよろしくお願いします!


 誤字報告、ありがとうございました。

 あと、人名表記の「=」は別に間違いじゃありませんので、訂正はされなくて大丈夫です。ご親切にありがとうございました。


【2】セブルス=スネイプは、再会を果たす②

 「・・・ひとまず、我が家に案内しよう。

 

 子連れならば、“姿現し”より、ポートキーの方がいいだろう」

 

 “姿現し”は、未熟な魔法使いがやれば、ばらけることがあるので免許制になっている。いくら魔法使いの子供と言えど、負担がかかる可能性を考慮すれば、ポートキーの方が確実に安全だろう。

 

 「ま、待って!スネイプ!あなたも“死喰い人”じゃないの?!」

 

 叫んだリリーに、セブルスは軽く頭痛を覚える。

 

 こんなに彼女は頭が悪かっただろうか?いや、セブルスが勝手に彼女を聡明に評価していただけか。

 

 はたまた。

 

 「Mrs.ポッター」

 

 セブルスは呼んだ。思っていたより、平坦な心地で、その名を口にした。かつて殺したいほど憎んだ男のファミリーネームを名乗ることになった、最愛の女性を。

 

 「君は、いつまでホグワーツに在校しているのだね?」

 

 「え?」

 

 「いい加減卒業したまえ。私はとっくに、そこから抜け出したぞ。

 

 そこにいるレギュラスもな」

 

 言いながらセブルスは、左手の手甲を外し、グローブを取る。

 

 あらわになったのは、男らしく骨ばった手だ。魔法薬の調合のために少々かさついて、爪は短く整えられている。

 

 傷跡の類はない。幼少のものは服に隠れるところにしかなかったし、ホグワーツ入学後は、優秀な校医のおかげで残らなかったのだ。

 

 だが、それだけだ。“死喰い人(デスイーター)”の証である、死の刻印(デスマーク)――どくろと蛇を組み合わせたそれは、そこにはない。

 

 死の刻印(デスマーク)は、マグルの刺青のようにそう簡単に消すことはできない。実際、レギュラスの左手にはくっきりとそれが刻み込まれたままだ。

 

 彼が闇の帝王から離反した今でさえ。

 

 要するに、左手を見せることが、手っ取り早い証明になるということだ。

 

 セブルスが、“死喰い人”ではない、という証の。

 

 

 

 

 

 つまるところ、リリー=ポッターは、見た目と環境はともかく、中身――精神状態は、学生の頃から何一つ変わってない。

 

 彼女の中では、セブルスは情けなく小汚いいじめられっ子で、闇の魔法に夢中で闇の帝王に魅了されている、スリザリン生のままなのだろう。

 

 いくらセブルスが見た目がかなり変わっているといえど、レギュラスとの会話でやっと気づくなど、あんまりではないだろうか。

 

 そして、見た目が変わっているなら、中身も相応に変わっていると、なぜ思わないか、セブルスには不思議でならない。

 

 子育てと、追われていることによる精神疲労で、気が付かなかったのだろう、というのは、セブルスの願望が多々入った希望的観測だろう。

 

 朱に交われば赤くなる、という言葉の通り、愚か者と交わったことで、彼女もまた愚かになったのかもしれない。

 

 だが。それがどうした。

 

 それでも、彼女がセブルスの人間性を支えてくれたのは事実だ。

 

 幼少の白黒の日々を、リリーの赤毛とエメラルドの双眸が、笑みと無償の優しさにあふれる言葉が、美しく色づかせてくれた。

 

 地獄のヤーナムを、彼女への思いを糧に、駆け抜けきることができた。

 

 それだけで、十分なのだ。

 

 今の彼女がどうあろうと、それは今のセブルスには、まったくもって、関係ないのだ。

 

 

 

 

 

 「あ・・・」

 

 小さくつぶやいて、セブルスの左手を凝視するリリーに、適当なところでセブルスは手袋を戻し、懐をごそごそと漁る・・・ふりをして、血の遺志に変換収納しているものの中に、ポートキーに変化させるのにちょうどいいものはないか検索をかける。

 

 ポートキーは、簡単に言えば、接触することで、対象を設定した地点に転送する、魔法式の転送装置だ。見た目は、マグルが興味を持たないように、がらくたにかけられることが多いが、ポートキー作成呪文(ポータス)をかければ何でも(すでに魔力を帯びている魔道具の類を除く)変化させることができる。

 

 神秘を帯びていたり、冒涜的なものを除外し、取り出したのは。

 

 「何ですか?それ」

 

 「栄養ドリンクだ。マグルの健康食品だな」

 

 レギュラスの問いかけに、しれっとセブルスは答えた。

 

 サイレントヒルで手に入れ、そのままうっかりしまいっぱなしにしていたものだった。サイレントヒルでのそれは、傷を癒し体力を回復させるぶっ飛んだ効果があった。あの町の特異性を考えれば、不思議でも何でもないのだが。

 

 だが、セブルスには無用の長物に近かった。

 

 何しろ、セブルスは狩人だ。栄養ドリンクなどグビグビせずとも、輸血液を太腿にブスッとすれば、傷は治る。あるいはリゲインしてもいい。呪文を唱えるよりも、こっちの方がお手軽で、戦闘の片手間にできる。

 

 輝く硬貨があれば、それが一番よかったのだろう(聖杯ダンジョンに潜っていると、自然と貯まる)が、あれは換金しやすいので、ある程度貯まったらマグル側の質屋に持っていくことにしており、今は手元にないのだ。

 

 マグル側の質屋が一番アシが付きにくい。

 

 魔法界側の質屋は、解析系の魔法もあるし、金品が絡むとがめつさで有名なゴブリンが出てくるので、面倒なのだ。

 

 とにかく、これでいいだろうとセブルスは部屋の片隅にあった流し台に中身を捨て、空き瓶にするとそれにポートキー作成呪文(ポータス)をかける。

 

 行先は、“葬送の工房”の少し前にしておく。結界の中に直通にするのは、結界そのものをいじる必要があって、面倒だからだ。

 

 「すみません、先輩、先に戻っていてください。僕は宿のチェックアウトをしてから行きますので」

 

 「大丈夫かね?」

 

 「ええ。家で会いましょう」

 

 ニコリと穏やかに微笑むレギュラスは、次の瞬間冷たい目でポッター母子を睨みつける(先輩に何かしたらただじゃ置かない、という恫喝の目だった)と、外しておいた変装の品を身につけ始めた。無言で控えていたクリーチャーも彼に追随するつもりらしい。

 

 「では、行くとしよう。あと30秒で起動する。触りたまえ。」

 

 多くのポートキーはタイマー式になっており、既定の時間に起動することになっている。

 

 急ぎ、リリーはサイドテーブルに置いていたショルダーバッグを肩にかけて、腕の中でぐずるハリーを抱きなおすと、セブルスが持っている小瓶に指先を当てた。

 

 ずいぶんと小さな荷物だ。ほとんど着の身着のまま逃げた、というかのような。

 

 日刊預言者新聞の号外では、リリーはダンブルドア率いる“不死鳥の騎士団”に保護されているはずだ。

 

 それがなぜ、単独の様相でいるのか。追われている、とも言っていたらしい。誰から?いや、何から?

 

 不審に思いながらも、セブルスは手の中のポートキーとなった薬瓶に目を落とした。

 

 最悪、あの男の元に逃がすか。帰国してからだが、手紙のやり取りをしていて、まだ親交はある。お人よしの部分もあるので、事情を知れば受け入れてくれるかもしれない。イギリス国内よりは、しがらみは少ないだろう。

 

 などと考えているうちに、ポートキーが起動した。臍が内側に引っ張られるような独特の感覚とともに、視界がぐにゃりとゆがむ。

 

 ヤーナムの隠し街ヤハグルにあった、転移水盆を思い出す。あれは自分が地面に沈み込むような感覚はするくせに、胃の腑には奇妙な浮遊感があって、好きになれない。

 

 視界が整い、平衡感覚が正常化する。

 

 どうやら、ポートキーによる転送は無事成功したらしく、“葬送の工房”の門前に来ていた。

 

 早速セブルスは、無言呪文を使う。まだ手に持ったままだった栄養ドリンクの空き瓶に解除魔法をかけて、ポートキーを解除する。それから、工房にかけられている結界を緩める。

 

 「あがりたまえ。・・・その子は離乳済みかね?」

 

 「え? ええ」

 

 「離乳食はメアリーは用意できないが、必要なら台所くらいなら貸そう」

 

 「メアリー?」

 

 「・・・同居人だ」

 

 どう答えたものか一瞬悩むが、とりあえずセブルスはそう答えた。

 

 

 

 

 

 かつて、メアリーと名付けられる前の人形は言った。

 

 『造物主は、被造物を愛するものでしょうか?

 

 私は、あなた方、人に作られた人形です。

 

 でも、あなた方は、私を愛しはしないでしょう?

 

 逆であれば分かります。

 

 私は、あなたを愛しています。

 

 造物主は、被造物をそう作るものでしょう・・・』

 

 彼女を作ったのは、おそらくは老ゲールマンだろう。モデルを考えれば、彼が本当は誰を愛したかは自明の理だ。

 

 だが、老ゲールマンはセブルスに、人形の存在は伝えようと、頑なにそれのいる方には行こうとしなかった。それが、彼の答えだ。

 

 たとえ、人形そのものが、彼に対してどのような感情を抱いていようと、真に欲した相手の愛が得られぬならば、無意味であるとしたのだろう。

 

 セブルスが、人形に対する見方を変えたきっかけとなったのは、彼女のこぼした涙だった。自我のないようにも見える、淡々とした人形であろうと、涙を流したのだ。

 

 ゲールマンが残していたであろう、小さな髪飾りを胸に、血晶石を秘めた真珠色の石として、こぼした。

 

 その涙を見たセブルスは、思ったのだ。

 

 彼女は人形ではあれど、心まで無機質ではないのだ、と。

 

 地獄のようなヤーナムの中で、彼女の柔らかな声音が数少ない癒しの一つとなっていたので、それもあったのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 セブルスの、人形(メアリー)に対する感情は複雑で重厚だ。

 

 あるいは母のように慕い、あるいは娘のように守りたい、あるいは妹のように導きたい、あるいは恋人のように伴いたい、あるいは妻のように添い遂げたい。

 

 だが同時に、どこまでも人形でしかなく、被造物でしかいられない彼女を、哀しく思い、憐れんだ。

 

 だから、メアリーという彼女だけの名前を付けて、夢の外にまで連れだしたのだ。

 

 そして、わずかな保身もあった。彼女は、彼女だけは、何があってもセブルスを裏切らず、慕い続けてくれるのだ、と。

 

 

 

 

 

 「家政婦をしてもらっている。少々変わった見た目だが、悪いものではない」

 

 端的にそう言って、セブルスは工房の扉を開けた。

 

 「おかえりなさいませ、狩人様」

 

 「今戻った」

 

 恭しく頭を下げるメアリーにうなずいて、セブルスは彼女にお茶の用意(直に帰ってくるレギュラスの分も含めて)を言いつけ、インバネスコートを脱いでコート掛けにかける。

 

 物珍しそうに周囲を見回していたリリーは、現れたメアリーをまじまじと見た。

 

 

 

 

 

 そう言えば、彼女はマグル出身で、動いてしゃべる自立人形がまともな魔道具でないという前提知識がないのだったか。

 

 まあ、それを言うならば、ホグワーツの組み分け帽子も、動きはしないが歌ってしゃべって考えられるのだ。あれを知っていれば、そういうものか、と魔法界の道具に対する認識が大分違ってくる。

 

 とある魔法省の窓際職員は「どこに脳みそがあるかわからないのに一人で考えられる道具は危険だ、信用してはならない」と言った。それは、闇の魔道具に分類される、危険な魔道具を見分ける一つの基準である。

 

 まこと、無知は危険である。

 

 

 

 

 

 「彼女がメアリーだ。ホグワーツ中退後に、大陸で手に入れた由緒ある品だ。元は別人の所有物だったが、譲り受けて今はここにいてもらっている」

 

 メアリーの背を目で追うリリーに言ってセブルスは定位置にしているお気に入りの一人掛けのソファに座った。

 

 「座りたまえ。そして、何があったか、何に追われているか、話したまえ。

 

 少なくとも、巻き込まれた私には、聞く権利があると思うがね?」

 

 言ったセブルスに、おずおずとショルダーバッグを下ろしてから、カウチに腰かけたリリーは、ついに大声で泣き出したハリーをよしよしとあやしだした。

 

 「ごめんなさい、スネイプ。その・・・ちょっと、ハリーのおむつを交換していいかしら?」

 

 「・・・客間に案内しよう。掃除してないからいささか埃っぽいだろうが、そちらで頼む。ここは食事もするのでな」

 

 言って、セブルスは立ち上がる。

 

 ちなみに、最初に担ぎ込まれたレギュラスも客間を使っていたが、居候が決まってから、彼は適当な空き部屋を自室に改装してそこを使っている。

 

 ゆえに、客間はまた空いているのだ。

 

 

 

 

 

 余談となるが、魔法界のおむつは総布製である。マグル製のそれのように吸水ポリマーが組み込まれた使い捨てのものなど、存在しない。

 

 大体、魔法で何とかなってしまうので。

 

 

 

 

 

 セブルスが案内した客間にリリーが入ったところで、玄関の扉が開いた。

 

 「ただいま戻りました。メアリー、お菓子を買ってきたから、お皿を出してくれるかい?」

 

 「お帰りなさい、レギュラス様。ちょうどお茶を淹れたところです」

 

 ティーサーバーとティーカップをテーブルに並べ、メアリーは答えた。

 

 そうして、彼女はお茶を淹れてから、レギュラスの買ってきたターキッシュデライトを、キッチンからとってきた皿の上に広げる。

 

 世界的にも有名になった某ファンタジーでも取り上げられたこの菓子は、まるで宝石のような光沢をしている。

 

 「綺麗だろ?小さいころ、どの色のを食べるって、兄さんと取り合いになったな。結局、兄さんの方がお気に入りの色の奴を多く食べてたけど。

 

 先輩は、どの色が好き、とかありますか?」

 

 「・・・特段こだわりはない」

 

 話を振られたセブルスは、定位置の一人掛けのソファにつきながら答えた。

 

 そもそも、幼少の彼にとって、菓子などそう簡単に食べられるものではなかった。リリー=エバンズがたまに分けてくれただけだ。ターキッシュデライトなど、そこにはなかった。粉糖をまぶされた、宝石のように美しい、口に入れればほどけるような甘味を、小汚い幼馴染の少年に分けるのも、もったいなかったことだろう。

 

 そうしているうちに、リリーが戻ってきた。

 

 おとなしくなってまどろんでいるハリーを抱っこしながら、再び書斎を兼ねたリビングに現れた彼女は、レギュラスが戻ってきているのに気が付いていたのか、彼から距離を取るようにカウチの反対側に恐る恐る腰を下ろした。

 

 ここで、レギュラスは立ち上がると、呼び寄せ呪文(アクシオ)でダイニングのいすを引き寄せると、自分はそちらに座り直した。

 

 「抱っこしたままって大変でしょう?よかったらハリーはそこに」

 

 「・・・ありがとう」

 

 お礼を言って、リリーはレギュラスが座っていたところに、そっとハリーを下ろした。

 

 ベビーベッドのように柵がないので、寝返りで落ちないように注意しなければならないが、ハリーはだいぶおとなしそうなので、まず大丈夫だろう。

 

 そうして、やっと落ち着いたところで、切り出したのはレギュラスだった。

 

 「それで?何で逃げ回っているんです?そんなに困っているなら、大好きなダンブルドアにでも泣きつけばいいじゃないですか。

 

 偉大なる魔法使い、光の象徴たるダンブルドア御大でしたら、いかようにでも助けてくれるでしょう?

 

 よりにもよって、僕はともかく、スネイプ先輩にも一言もなく、あっさりと頼ることにするなんて。不遜で偉大な“不死鳥の騎士団”員は、恥ってものがないんですか?」

 

 「レギュラス」

 

 あまりの毒舌と嫌味に、セブルスは窘めた。

 

 別段、セブルスは怒ってない。むしろ、あの頃よりも無様になった自分を、彼女に見せなければならない現状の方が、申し訳ないほどだ。

 

 「・・・君が気にすることは何もない。君が怒るのは当然のことだ。失言した私がいけないのだから。あれは、どのような時であれ、言うべきではなかった」

 

 ここでセブルスは言葉を切ると、ひたとリリーを見つめながら続けた。

 

 「君も、許せなかったから、私の謝罪を受け取らなかったのだろう?」

 

 無言でリリーはスッと目をそらした。

 

 「あなたは!」

 

 「レギュラス。

 

 ・・・構わない。本題に戻そう。どういう事情だね?」

 

 本人よりもむしろいきり立ったレギュラスを再度窘め、セブルスは本題に戻した。

 

 我が事のように怒ってくれるのは嬉しいが、セブルスの事情は、今は関係ないだろう。

 

 「・・・」

 

 おずおずと、リリーは口を開いた。

 

 

 

 

 

 “例のあの人”、“闇の帝王”、“死の飛翔”など、拗らせた自己特別視を極限まで高めたような異名の数々を持つ闇の魔法使いヴォルデモート卿からの襲撃を辛くも逃れたポッター母子は、夜明けごろにようやくやってきたダンブルドア率いる“不死鳥の騎士団”に保護された。

 

 そこまでは報道されていた通りだ。

 

 問題はここから、母子の今後の行く末を決めようとなった時、ダンブルドアが言い出したのだ。

 

 二人にはすまないが、別々になってもらおう。ハリーはマグル界の、リリーの姉のマグルの元へ預けよう。リリーは赤毛だから、ウィーズリーあたりに親族として匿ってもらえばいい、と。

 

 リリーはもちろん猛反対した。

 

 ハリーは、純血貴族の当主たるジェームズ=ポッターと、ホグワーツでも上位成績のリリーの子供で、当然魔力がある。今までも、泣きわめいてポルターガイストじみた魔力暴走を何度も引き起こしていたのだ。

 

 それを、ただのマグルである姉のペチュニアに預ける?ただでさえ、自分が“不死鳥の騎士団”に参加ということで、距離を取らざるを得ず、両親の面倒を一身に見てもらっているというのに、この上さらなる労苦を強いるというのか?

 

 いくらリリーでも、そこまで恥知らずにはなれない。何よりも、大事な一人息子を、父親亡き後に引き離されねばならないのか。

 

 “死喰い人(デスイーター)”たちの報復があるかもしれないから、身を隠すというのは分からないでもない。

 

 だが、わざわざハリーをマグル界の、マグルとしての力量しか持たないペチュニアに預けるなど!

 

 リリーは、訴えた。自分は絶対ハリーを手放さない。ハリーをマグル界へやるというなら、自分も一緒に隠れ住む、と。

 

 だが、そんなリリーにダンブルドアが行ったのは、杖を向けることだった。

 

 忘却術(オブリビエイト)は、術者の技量次第で忘れさせる範囲を指定できるが、下手をすれば、あらゆることを丸ごと忘れさせることができる。

 

 リリーが無事だったのは、彼女を溺愛するジェームズが、彼女に家宝である防御アイテムの指輪を預けており、リリーはそれを鎖に通して首にかけていたからだ。

 

 その指輪は、禁じられた呪文以外なら、大体の呪いは無効化する特性を持っている。忘却術も例外ではなく、リリーは無事だった。

 

 忘却術にかかったふりをし、閉心術でもって必死にとぼけ、隙を見て彼女はハリーを奪い返し、逃避行に出たのだ。

 

 そして、彼女は現状で唯一自分を助けてくれる可能性があるだろう、シリウスを訪ねようとしたところで、レギュラスと会ってしまった、というわけだ。

 

 なお、彼女は“不死鳥の騎士団”によって保護という名の軟禁状態に置かれていたため、シリウスがアズカバン行きになったスキャンダルは知らないままである。

 

 そして、ゴドリックの谷の家にかけられていた忠誠の術の事情――セブルスの懸念通りの事態(ピーターこそが“秘密の守り人”であり、裏切り者であるということ)も、ダンブルドアにしか話していないらしい。

 

 

 

 

 

 聞き終えて、セブルスは額を押さえた。

 

 世間一般では偉大な魔法使いと呼ばれているし、マーリン勲章勲一等やら、ウィゼンガモット主席魔法戦士やら、たいそうな称号が目白押しだが、実はダンブルドアも、啓蒙が低かったのだろうか。否、在学時代のあれこれを加味すれば、啓蒙低くて当然かもしれない。

 

 「何考えてるんですか、ダンブルドア・・・」

 

 呆れかえった様子でレギュラスも呟いていた。

 

 

 

 

 

続く

 




【栄養ドリンク】

 サイレントヒルに落ちていた栄養ドリンクの小瓶。

 その中身は、服用者の傷を癒し、体力を回復させる。

 悪夢の主たるアレッサにとって、生は苦痛でしかない。

 だが、悪夢の中を切り抜け、終わらせる希望を持つものを導くことも、彼女にしかできない。




 リリーは赤ん坊のハリーを連れて“不死鳥の騎士団”から逃げるので精いっぱいで、忠誠の術関連のこと(要はペティグリューの裏切り)は、最初に顔合わせたダンブルドアにしか話せてないよ!

 他にも裏切り者がいるかもしれないと思ったのも原因かもね!

 ルーピンさんは、人狼コミュニティに潜入中で、連絡できなかったよ!仮にできたとしても、ダンブルドアにチクられるとリリーさんは警戒してやらなかったよ!

外伝(ポッター家周辺惨殺現場、予言、シリウス裁判関連のあれこれについて。ブラボ要素はほぼ皆無)を読んでみたいですか?

  • もちろん!すぐに!
  • サイレントヒル2編の後で!
  • 第1楽章終了後で
  • むしろプリンス家関連の話の方がいい
  • 興味ないです
  • その他!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。