「今月のインデックスの滞在は延長するのかしら?」
「ああ。もちろん。インデックスらは、この学園に必要だからな」
そう問答する彼ら。
一人は最大主教、アークビショップと呼ばれるローラ=スチュアート。
長すぎる頭髪を結っている淑女かと思いきや、日本語の古語と現代口語訳を
交互に使っているらしい魔神。
もう一人は、この学園都市の総括理事長、アレイスター=クロウリー。
ビーカーの中でさかさまに浮いている過去の偉人。
内情はこんなことになっている。
「しかし、ローラ=スチュアート。まさか貴女の日本語がここまでまともになるとは。
この李白の目をもってしても、見抜けなかったよ」
「……(リハクって何?)、わたくしも日々成長しているのですよ。
最近は英国も、日本との貿易関係を強めていっているようですし?」
「ほほう? 世情を知っているようで何よりだ。
で、その成長は一体、誰の為なのかね?」
「さ、さあ、そんなこと露知らずですわ」
「フム……あの男か。やはり女性は、男性により変わるものなのだな」
「その言いようは、経験かしら。それとも見てきたのかしら?」
「私は今もなお、あなたからそう感じ取っているのだが?」
話が経済やら腹の探りあいから、恋愛談義になってきていた。
少なくとも二人は、人の世界にいるのだ。
基本的なところに興味津々になるのは、当然のことなんじゃないだろうか。
「やはりアウレオルスか」
「違うわよっ、あ」
「ほほう?」
おっとぉ?
にやりとするアレイスター。黒い微笑みに、ローラはまずったと顔をしかめた。
「そうかそうか、あなたのような鉄面皮が、ロリコ――いや、児童性愛者に
心奪われるとは!」
「なっ!? あ、あの人はそんな人じゃないわ!」
ローラの謎の焦りが、ますますアレイスターの心を愉快にさせていく。
そんなことを全く思わず、自身の行動を省みずに暴走する彼女。
これを愉快と表現せずして、何が愉悦か。
「こりゃあいい! インデックスに和装させてアウレオルスと婚約させようそうしよう!」
「やめなさい! 宗教戦争になるわよ!」
「それもまた重畳! 外交的屈辱? 戴冠式? そんなのはどうでもいい、
学園式で色々と危ない結婚式を執り行おうではないか!」
くはははと笑いながら、おちゃらけるアレイスター。
彼はローラの焦る姿を見て、大いに楽しんでいた。
必要悪の教会、読みをネセサリウスというが、これの長が取り乱す。
愉快、非常に愉快であーる!
「はあっはあっ、何が御望みなの?」
「はて、のぞみとは?」
「ここまでわたくしの弱みを握っておいて、まだ白を切るつもり!?」
「何を仰るんだ。私の望みはすでに達成せしめられている」
「何?」
「そう、ハーレムイチャイチャ学園生活計画!
上里および上条が、どれだけの女児や男子をひっかけまわすか、盛大な人生ゲームを
執り行うのだ!」
「ふざけないで! それにアウレオルスがどうかかわっているというの!?」
激昂する恋する乙女。大言壮語なのか馬鹿なのかよくわからないくらいに盛り上がっている
アレイスターに、ローラは突っかかる。
そりゃ思い人が関係すれば、焦ってしまうだろう。
「インデックスと結婚してもらう」
「はあ!?」
「何をいうか! 学園都市は一部を除き非常に治安がいいし、無駄に行水をして
寒暖差アレルギーを引き起こすこともない。
更に美容品や医療・食料・電化製品等、全てにおいて整っているのだぞ!
殺人やすりが横行している貴国とはくらべものにはならないだろう!」
「こっちにだって優美な観光施設や豪華絢爛な建物が、所狭しと並んでいるものよ!
生活水準も国民総中流で、犯罪なんてめったに発生しないし」
「だが別宗派が入り乱れ、それらによりテロを起こされているじゃないか」
「あら奇遇ね、わたくしもそう思っていたのだわ、アレイスター」
そうして、罵詈雑言のお子様のようなののしりあい合戦が開幕されてしまった。
あーあ、もう滅茶苦茶だよ。
こんなことになってしまっても、結局インデックスをアウレオルスとくっつけるのは
決定されてしまった。
「何でこんなことに!?」
「おい、ローラ=スチュアート。なぜ頭を抱えている」
「なによ、ステイル。乙女の思考に邪魔しないで」
「乙女(笑)」
「インデックスがアウレオルスと結婚するんだけど」
「是非協力させてくれ」
「やったぜ」
ちなみにステイルは、アウレオルスがローラに恋心を抱いている事は知っている。
というか、昔孤児院のインデックスの授業参観の時、アウレオルスが
延々と当時12歳のステイルに理想の女性像を話しまくっていたのだ。
(あの人のローラ推しは、まさしく本物だ。
絶対にインデックスとくっつかせてはならない。
むしろあの子は、上条にこそふさわしい。
ちなみに俺は、神崎が好きだから包容力関係には大賛成……!)
それとステイルは、年代の差から神崎の事をひそかに想っていたりする。
だから理想の女性像がわずかに合致していたのだ。
おかげでアウレオルスの覚えがよくなったのかは不明だが、
学園都市へのホームステイとその護衛に、ステイルと神崎火織が選抜されたのだ。
「それで、次の件ですが――」
「最大主教。なぜ英語を使わないんだ?」
「……わざわざアレ取って、を”I want you to catch that.”って云う?
主語を省いても通じる日本語のすばらしさを知る事ね」
「日本語は知るよりもわかる方が大事と聞くが、意を酌むのがどんなに難しいか
全く分かってないな?」
ニュージーランド語、ドイツ語、楔文字、ヒエログリフ。
最難関文字はここらへんだろうなと思う昨今。
ステイルとローラは、作戦を切り詰めていく。
ここで大事なのは、上条とインデックス、そしてアウレオルスの関係だ。
現状でアウレオルスとインデックスの関係は、友人のようなもので恋人のそれではないことは明白。
愛情があったとしても、それは父親のようなものとして、判断しても大丈夫だろう。
「で、あの子は?」
「上条がマスターベーションを欠かさないくらいには、非常に親密です」
「素晴らしいわ。神崎とは取り持ってあげるから、びしっと行ってらっしゃい」
「畏まりました」
皮肉の言い合いとかもあるが、基本的に仲がいいのだ。
まあ利用しあうという言葉が、正しいのかもしれないがその方が信頼できるだろう。
「私はアウレオルスのために」
「俺は神崎のために」
「じゃあ、よろしくお願いね」
「ええ、また」
お互いの好きな人を確認しあって、お互いにうなずく。
そしてステイルは戦場に向かう。
己の行先に、想い人がいると信じて。