「当麻君、インデックス。明日は博覧百科に遊びに行こうか」
「「博覧百科?」」
「そう。博物館・美術館・動物園・植物園・水族館がある複合施設で、
13区にあるんだそうだ」
「へー知らなかったな」
「面白そー」
やってきました上条の部屋。
あの騒動から数日が経過した週末。
明日は13学区にある、色んな体験施設が凝縮された一大エンターテインメント施設、
博覧百科に向かうとのこと。
ああ、読みはラーニングコアだぞ。
ルビ振りと当て字が違うのは、よくあるこった気にすんな!
「何時に行くんだ?」
「10時にでもするかい? ごはんは驕ろう」
「いいのか!?」
「勿論だとも。当麻君も女性を誘う時は、昼食等を驕って甲斐性を見せるんだぞ」
「今の上条さん的に難しいです、ハイ」
目線をそらす上条。
今の無能力ぶりでは、資金がほぼないに等しい。
というか彼らが大人になったらどうするのだろうか。
無能力だからこそ、外に放り出しても問題はないだろうし。
やはり学園都市にとって、無能はほとんど必要ないのだろうか。
それでも大人になっても、スキルアウトという無頼漢や
いろんなところで肉体労働をしている人たちもいるし、何とかやっていけそうだな。
なお、英国の支援。
自分のお金でなかったら、インデックスとアウレオルス達との異文化交流ということもあって、支援金がたんまりある。
だがそれを自分のモノとして扱うのは、上条本人が許していないようだ。
「じゃ。その日ということで、いいかな」
「「いいともー!」」
というわけで、支度をすることになる。
支度といっても、腕時計程度でそこまで必要ない。
そもそも日帰りなので、重厚な装備は必要ないのだろう。
次の日になって、予定時刻に出発したのだが……。
「先生って私服持ってないのか?」
「一応仕事としてこっちに来たようなものだからね。
持ってないんだ。買うべきだったのだが、なんてこった」
「次からは私服で頼むぜ。なんか気が休まらないからさ」
「善処するよ」
「むー当麻さん!」
「おっと」
アウレオルスと上条が会話していると、のけ者だと感じたインデックスが
彼らの間に入る。
間に入るといっても、抱き着くのは上条だけなんだけど。
「ここに博覧百科の案内地図があるが、二人で見てごらん」
「サンキュー」
「わー凄い。当麻さんこの動物園、行ってみたいです!」
「面白そうなイベントもやってるし、いいかもな!」
二人は博覧百科の案内地図を見て、予定を立てている。
モノレールに乗って二十分。
ようやく到着し、その場所に来た。
ほとんどが屋内施設だというのに、その規模は非常に大きい。
ほぼすべてが効率的に作られており、最新のぎじゅつにより外化
中かまったく判別ができないくらい澄んだ空気になっている。
「「「おー」」」
入場チケットを購入して中に入ると、確かに学園都市で一番大きく人気がある施設だ。あまりの大きさと設備の雄大さに見とれてしまい、なかなか行動に移せない。
しかしそうしていると、多くの人の流れができてしまいうかつに動くことができなくなってしまった。
「なんてことだ。インデックス、当麻君!」
これはとあるイベントのための大移動で、フロアの移動で常にこの数が発生しているのだ。
元旦の雷門前なんて目じゃないくらいだ。
家族連れもそうだが、彼氏彼女のカップルや研究者たちがたくさんいる。
こんな流れでは、到底人を見つけるなんて不可能に近いだろう。
「私がついていながらっ」
己の不明を恥じるアウレオルス。
しかし彼は信じた。彼ら二人が一緒にいることに。
云えば現実がそうなるということを知っているアウレオルスは、
言葉に出さず心に秘めた。
だが結果で言えば、インデックスだけしか見つからなかった。
「アウレオルスー寂しかったんだよー」
「そうかそうか。すまなかったな、一人にしてしまって」
「ううん、大丈夫。いつか、アウレオルスがわたしを救ってくれるって、
信じてるもん」
「そっか、ありがとうな、インデックス」
この世界に転生して来てから、アウレオルスはどんな人間なのか分らなかった。
しかしインデックスという存在をローラ=スチュアートから教えられた時、
胸がはちきれんほどまで高鳴った。
”そうか、ここがとある魔術の禁書目録なのか!”
そう思ったアウレオルスは、自分の名前を再確認して行動を移すことにしたんだ。
まずはインデックスの境遇の改善と教育、一般常識や現代世界の科学水準を満たすように、徐々に教えていく。
流石に一文無しではだめだったので、今までの実績である三沢塾講師としての能力を発揮した。
そして彼は常に信じた。
信じた結果が三沢塾の上場と、アウレオルス=イザードの会長就任だった。
それから行動は早い。
日本と英国の学習環境を整え、お互いに科学的な同盟を結び勉学の習熟を行った。
これによりたった数年で、三沢塾に関連する人物が世界中でその才能を使って飛躍した。
これらは良くも悪くもアウレオルスを引き立て、ついには英国で栄誉賞を賜った。
この時ローラ=スチュアートも関係しており、凛とした姿でたたずんでいた。
一際異彩放つ姿は、アウレオルスの目を引くことになる。
そして必要悪の教会という組織に、インデックスが所属することになったときにも、
彼はローラ=スチュアートに会うことになる。
”まさに、私の理想!”
そう信じてしまい、彼女に気に入られるように行動を移していくが、
あくまでもインデックスの幸福のために抗い続けた。
”なぜそこまでしてインデックスに肩入れするのかしら?”
”独りぼっちは寂しいもんだからだ。
必然。それは、貴女も無関係ではない。
貴女がいかに周囲から悪魔だろうが、魔神コロンゾンだろうといわれようが、
私は貴女を女性として扱う”
”わたしは憐れむに足る人物かしら”
”憐れんでなどいない、私は貴女を信じているに過ぎない”
”あらあら、利用しちゃうわよ?”
”どうぞ、ご随意に”
”そう……”
彼は信じた。
インデックスは上条当麻の元で、幸せになるべきだと。
彼は信じた。
ローラはアクマでも魔神ではなく、女性であると。
彼は信じ、想い込んでしまった。
「ねえ、アウレオルス」
「なにかな?」
「……わたし、今、すっごく幸せだよ?」
「そうか、幸せはいいもんだぞ?」
「むーごまかさないでほしいな」
「ごまかしてはいないさ。ほら、インデックス」
「っ うん」
「?」
唯一の味方。唯一の真実を見つけ出してくれた人。
悪意も善意も悉く利用する、悪魔も天使も恐れない科学にも侵されていない
潔白の人。
アウレオルスは、インデックスの手を取って檀上へ導く。
そこから見える、イルカやシャチ・アシカ・セイウチ・ペンギンのショーにくぎ付けになる。
ジャンプしたり、かわいらしい仕草をするたびに拍手が湧く。
「ねぇアウレオルス」
「なんだい?」
「わたしって今、魅力ある?」
「勿論、かわいいよ」
「それ、他の女性の前で言ってないよね?」
「言ってないよ。いうのは、インデックスだけさ」
うそつき。すているとかおりから聞いたんだよ、ローラ=スチュアートに
歯に衣着せぬ言葉を言いまくってたって。
音声も聞いてたけど、あんなのはずかしくなるよ。
なんで、わたしには言ってくれないの?
何で気づいてくれないの?
わたしはただ、アウレオルスがとう―麻さんに嫉妬して、もっと私に構ってもらうためにやってるだけなのに。
わたしの4000冊は教えてくれた。
黄金錬成(アルス=マグナ)は、言葉の通りに現実をゆがめるモノじゃないんだって。
アウレオルスは、わたしの心を無視してまでとう―麻さんとくっついてほしいの?
あの言葉はなんだったの?
一人にしないって、いつまでも一緒だって。
言ってくれたじゃない。
なんで、あんな人じゃない人形に、心奪われてるの?
返してよ、返して―――
「お、当麻君だ。おーい」
「えっ、まって」
やだ。やだ。わたしは、アウレオルスと一緒に居たいのに。
「おーい、インデックス! 先生!」
わ、わたし、私は――アウレオ、先生が……と……当麻さんが、【好き】。
そうして走ってきた上条は、何者かも一緒に連れてきてしまった。
「あらぁ? いつぞやのインデックスちゃんじゃなあい?
まだウブ力発揮してたのかしらぁ☆」
「ちょ、食蜂!?」
「操祈さんじゃないですか。以前言ってた母性力は、当麻さんには効かないようですね?」
「言葉は選んだ方がいいわよお?☆」
「かってに発情する猿には、言葉は必要ありませんよ。
さあ、当麻さん。一緒にショーを見ましょう?」
「ちょちょ、二人とも、当たってる……!」
わざと当ててんだよ。いい加減わからされろ、主人公。
なお、その場の空気はリア充よりも、かかわりあいたくない人でいっぱいだ。
(((修羅場だこれ!?)))
「先生っって、どこいった!?」
「先生は野暮用ですって。当麻さん、お邪魔ムシはいません。
一緒に楽しみましょう」
「それはいいわねえ。でも、体も未発達なお子様は、最前列で子供たちと一緒にはしゃいで来たらぁ? もしかしなくても、濡れ透けすれば当麻君は振り向いてはくれるかもぉ、知れないわぁ☆」
「操祈さん、それやっちゃってもいいんです?
きっと操祈さん程度の覚悟じゃ、当麻さんのエッフェル塔を扱えませんよ」
「あらあら、ほざくわね。私くらいの包容力なら、東京タワーでもスカイツリーでも
扱って見せますわ」
「外を知らないお嬢様風情が、でしゃばらないでくださいませ」
「大人力を知らない小僧が、娑婆にでてくるんじゃありません☆」
(何でインデックスと食蜂は、こんなにもいがみあっているんだ!?)
いつもの言い争いで、結局インデックスはシャチのお帰り海水でびしょぬれになってしまった。
そして彼女の白地の修道服と金色の刺繍が縫われた、【歩く教会】はインデックス
の性徴途中の四肢を遍く全てを当麻の目に焼き付けた。
腰やお尻、胸といった男の弱い所を、はだかよりも恥ずかしい状態で見せつけ、
最後には腕を取り胸に手を置かせるというものだ。
「ふふっ、当麻さんのために恥ずかしい思いをしているのです。
私の覚悟、わかりますよね?」
「っ」
「インデックスちゃんには負けないっ、私だって胸はあるんだゾっ☆」
今度は上条の左手を取って、胸に手を置かせる。
なおインデックスは下着の類を付けていないので、公開処刑レベル。
そして食蜂操祈は、ブラジャーをしているので本来の柔らかさを味わえない。
パッドの圧倒的防御が光る……!
色々発展しそうになった時、それらは動いた。
「アンチスキルです! 容疑者はどこに!?」
「こっちです!」
「やばっ!」
食蜂はすぐに気づいた。
人払いなんてしてないし、状況を作り出すためにわざと人の意識は放置していた。
それが仇になってしまった。
己の不明を嘆くが、今捕まればレベル5といえど上条を豚箱から解放することなんてできない。
そういうわけで、食蜂は上条とインデックスを連れて逃げることにした。
「こっちよ!」
「待ってくれ、インデックスが」
「足遅いわねえ……!」
「俺が背負う。食蜂、頼んだ!」
「全く、しょうがないんだからあ!」
なぜか能力が効かないことに焦る食蜂は、道先案内をする。
そして突然の事に動けないインデックスを、上条はすぐに背負って食蜂の後についていった。
しばらく逃走劇を繰り広げて、休憩室の一つを借りることに成功した。
「はあっはあっ、やっと休憩できたわねぇ」
「ありがとな、食蜂。その能力、便利だよな」
「さっきまで無能力全開で腐ってたんだけどね☆」
「ははっ、とにかくフロントでタオルがないか見てくる」
「大丈夫よ、私の能力で買ってきてもらってるから」
そう言うと、休憩室に女性が一人入ってきた。
その人は服一式を持ってきており、それとタオルを置いたらすぐに退室していった。
「今から私がインデックスちゃんを洗ってくるから、この服を洗ってきてね☆」
「お、おう。でも」
「今の人からお布施があったわぁ☆ どうせだから、使っちゃいましょ☆」
「まじか」
まさか休憩室の目の前に乾燥機付きのドラム式洗濯機があるとは思いもよらなかった。最新の技術で、従来の者よりも高性能と化しているがそれでも15分はかかってしまうようだ。いや、それでも十分早いんだけれども。
あっけにとられる上条。
そして上条は、扉越しに現れる修道服を見ながら思案した。
(今日のインデックス、様子がおかしかったな)
一番最初に気づいたのは、インデックスが先生と一緒に居る時俺に気づき声をかけた時だ。
その時一緒に振りむいたインデックスは、いつも俺に向けてくる笑顔じゃなかった。
むしろ、悲しい表情。
先生、インデックスの事、本当にちゃんと見ているのか?
昔からの付き合いで、先生と生徒との関係だって言っていたけど、本当にそうなのか?
いや、最初からおかしかったんだ。
なんでいきなり同棲生活をすることになったんだ?
首輪という存在を、俺が偶然壊したんだ?
偶然じゃねえ、これは仕込んでたに違いない。
だが、仕込むにしてはおかしい所しかない。
ステイルや神崎が言うには、魔術師は自分の掛けた魔術は得意分野かつ
自分が操れる力量のものでしか使えないという。
あの有名塾講師である先生が、わざと生徒にそんなことをさせるのか?
じゃあ、あの首輪をさせたのは?
そして先生はその首輪を、どんな意図があるか効果があるか知っているから壊させたのか?
まずいな、俺、先生を信じられなくなってきているぞ。
違う信じるということばは、きっと違う。
今までお世話になったんだ。
英国と日本のカルチャーショックというか、ホームステイとかの面で
訪れ、学園都市の総括理事長が俺のところに来させたんだ。
そして高校に入学させて、異文化交流をし始めた。
俺達は無能力者なのに、先生の授業を受けてからレベル1になった奴が多く出ている。
俺も手首の先しか効果がなかったのに、今では右肩から先の右腕全体になっているし。
「なんで先生は、俺とインデックスを……」
「面白そうね、出歯亀力を発揮するわぁ」
「食蜂、おもしろいだなんていうんじゃねえ」
「あら、ふふっ。インデックスちゃんは、寝ちゃったわ」
「そうか」
「……やっぱり、あの子何か隠してるわよね」
「そうおもうか」
「さっきあの子、お風呂場で泣いたわ」
「……くそっ」
ガンッと壁を殴る。
無力感にさいなまれる上条。
そして先ほどまで、おちゃらかけていたが彼の雰囲気で察した。
そう、食蜂もインデックスの身体を洗っていた時、精神崩壊を起こしてしまったのだ。
”わたし、私、わたし、私……やだ、消えたくないっ”
”インデックスちゃんっ、ああもう、私の洗脳力なんて効かないし、
お、おちついてっ!”
”とう麻さんに、好きとか、やだやだやだ!!”
”!?”
突然の告白に、食蜂は驚愕した。
”操祈さん助けてっ、わたし消えたくないよお!”
”どういうことなのか、教えて頂戴!”
”とうま、とうまさ、とう麻さんなんて、好きじゃないのにっ
、違う、私は当麻さんの事、愛してます、じゃないのに!”
”インデックスちゃん、貴方にかかってる何かを解除しなさい!”
”ダメなんだよ、自動書記は先生との絆で一緒に居てくれなくなるっ!”
”あの人が好きなのね!?”
”うん、大好き!”
その時食蜂はやっとみつけた一瞬のほころびに、能力を全力で行使した。
外装代脳、呼び名をエクステリア。
この装置も借りて、やっとヨハネのペンとインデックスの自我を切り離すことに成功した。
今では呼吸も整って、おとなしく寝ている。
「ねえ、当麻君。インデックスちゃんのいう、先生・ヨハネのペン。
そしてどこから来たのか、教えてくれない?」
「食蜂。それは……」
二人は休憩室の椅子に座って、話す。
本来なら言わないほうがいいことだが、食蜂は洗脳系能力者。
隠していても、いつか必ず判明してしまう。
ならば今言った方がいい。
そう判断した上条は、事の一端を食蜂につたえることにした。
「作為力万端ねぇ」
「そうか。やっぱそうだよな」
「あなたらしくないわねぇ。当麻君なら、ぶっとばす!
ってなくらい、云うと思ったんだけどぉ?」
「色々あるんだよ」
「(重症ね)とにかく、先生を見つけて今日は帰りなさい」
「食蜂はどうすんだ?」
「私ぃ? 私はこのまま帰るわぁ。そんな気もおきないし」
「そっか。ありがとな、食蜂」
「っ、えぇ、また埋め合わせよろしくねぇ☆」
「ああ!」
この後服を取り出して上条は、インデックスを背負って歩き出した。
食蜂は色々な片付けを済ませて、帰路につく。
「当麻君、この人形劇を収束させてちょうだいね」
一人の女の子のために奮戦する彼の後ろ姿を見て、微笑むと同時にくるりを背を向ける。
そして歩き出せるはずが、歩き出せなかった。
ドンッ
「あらっ、え――」
食蜂はその人物を見ると、表情をみるみると青くさせていく。
見られてはいけない場面を見られたと思い、すぐにリモコンを取り出そうとしたが――。
「【忘れろ】」
「あれ、私、何してたんだっけ?
……まあいいわぁ、せっかくだし見て回ろうかしらぁ」
その人物は去る。
更に渦中にある彼、アウレオルス=イザードはさらに狂信的に書き綴っていく。
”この物語、この世界は、こうであるべきなのだ”と。