中間管理職のオッサンが褐色美女な悪魔に憑依転生してしまった話 作:とんこつラーメン
それは同時に、ある事へのフラグにもなっていたりするかも…?
黒歌ちゃんが私の部屋に居候するようになってから数日。
信頼出来る誰かに留守番を任せられるというのは、それだけで心置きなく外出が出来る訳で。
「いやぁ~…今日も勝った! 勝った!」
「間違いなく大勝ね! 今夜のお酒も美味しいわよ~♡」
私とブッキーは、パンパンの紙袋片手に街中を行進。
意気揚々とアパートへの帰り道の途中なのです。
「そうだ。黒歌ちゃんに買い物を頼まれてるんだった」
「マジで? 何を買って来いって?」
「お醤油とお砂糖。それから小麦粉も」
「それだけで、今度の夕飯のメニューが幾つか想像出来るわね。んじゃ、行きましょーか。付き合うわよ」
「ありがとね。いつもの所でいいでしょ」
手荷物がある状態だけど、私達の腕力は普通じゃないので、これぐらいなら楽勝だ。
重さとは関係なく、ちょっち持ちにくくはあるけど、それは自分達の工夫次第だから気にしない。
「ついでだし、何か黒歌ちゃんにお土産でも買って行こうかな? ケーキとかいいかも」
「偶にはいいわね~。個人的にはお饅頭とかの方が好きだけど、久しく食べてないと無性に恋しくなるのよね」
「それ分かる~!」
なんて話ながら歩いていくと、目的地のスーパーが見えてきた。
よく見たら、出入り口の所に『本日特売日!』の旗が立っていた。
成る程、黒歌ちゃんはこれを知っていて私達にお使いを頼んだのね。
中々に策士じゃない……気に入ったわ。
「あれ?」
「あら?」
どうやらブッキーも気が付いたようで、二人で顔を見合わせてからお目目をぱちくり。
「あのスーパーって…ビラ配りのバイトとか雇ってたっけ?」
「さぁ…? 今までにそんなのは聞いたことないけど……」
スーパーの近くで、明らかに男受けを狙っている衣装(ミニスカ&バニー)でチラシを配っている女の子がいた。
常にニコニコ笑顔で、なんだか作り笑いのようで気味が悪い。
私達が気が付いた理由はそれじゃなくて、単純にその子から奇妙な気配…簡単に言うと魔力的な物を感じたから。
それだけで明らかに普通じゃない事が理解出来る。
「ちょっち近づいてみる?」
「そうね。なんだか気になるし、私達なら全然大丈夫でしょ」
だって私達、超強いもん。比喩や誇張じゃなくマジで。
余り警戒されてもアレなので、気軽な感じで接近していった。
「よろしくお願いしまーす」
こっちの正体に気が付いていないのか。
それとも、機械的にチラシを配っているのか。
私達に全く気圧されることなくチラシを手渡してきた。
「えーっと…? 『あなたのお願い叶えます』…だって」
「なにそれ?」
渡されたチラシには、単調なゴシック体でそう書かれていた。
明らかに怪しい……今時、どこぞの新興宗教でも、もっと回りくどい言い方をするのに、これは余りにもストレートだ。
「電話番号とかメールアドレスの類は書いてない…わね」
「一体どうやって願いを叶えるつもりなのかしら?」
「さぁ…?」
紙自体からも非常に微弱ではあるけれど魔力を感じた。
これにも何か仕掛けが施されているのかな?
色々と謎は残るけど、取り敢えずチラシは綺麗に折り畳んでからポケットに仕舞い、目的のブツを買う為にスーパーの中へと入っていった。
因みに、三つの買い物のうちの二つ…お醤油とお砂糖は『一人一個まで』のヤツだったので、私とブッキーで合計二個ずつ買って帰った。
こーゆーのは、買える時に買っておかないと後で損するもんね。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「これは多分、若手悪魔が人間と契約をする時に使うチラシだと思いますにゃ」
「「へぇ~…」」
その日の夕食時。
私とブッキーは黒歌ちゃんが何か知っていないかと思って、スーパーの前で貰ったチラシを見せてみると、予想通り知っていた。
「っていうか、カテレアちゃんは知らなかったの? 同じ悪魔でしょ?」
「いやいや。悪魔って言っても千差万別だし。今時の若い子達のやってる事なんて知らないってば」
つーか、若い子達がこんなバイト染みた事をしていること自体、今日初めて知ったぐらいだし。
「契約と言っても、そこまで仰々しいものじゃなくて、人間の頼みを聞いて、それを叶えてあげた後に契約の証として何かをあげたりするものらしいですにゃ」
「結構、サッパリとしてるのね~。てっきり、代価として命でも差し出すものとばかり思ってたわ」
「それはもうめっちゃ昔の悪魔の話ですにゃ……」
「悪魔社会も、現代に合わせて進化して行ってるのねぇ~…」
仮にも魔王の子孫である私が言っても微塵も説得力ないと思うけど。
「恐らく、チラシを配っていたのは使い魔の類ではないかと…」
「「使い魔」」
そういや、それっぽい事は実家の文献にも書いてあったっけ~。
大抵の悪魔は使い魔と契約をして使役しているとななんとか。
「カテレアちゃんは使い魔とかいないの?」
「いないわね~」
大抵の使い魔は動物とからしいけど、私ってば前世の時からペットなんて一度も飼ったことが無いから難しいでしょうね~。興味も無いけど。
「カテレアさんほどの大悪魔なら、それこそ凄い使い魔を持ってそうなのに…意外ですにゃ」
「そう? もぐもぐ……」
そんなに大層な悪魔じゃないわよ?
血筋は確かに凄いかもしれないけど、私なんてそれだけだし。
今はこうして友達と一緒にニート生活を満喫している、ごく普通のお姉さんな訳だし。
それはそれとして、黒歌ちゃんの作ってくれた卵焼き、ふわふわでめっちゃ美味しんですけど。凄いご飯が進むんですけど。
「ブッキーは使い魔っていないの?」
「こっちもいないわね。というか、それ系の従者を持ってる妖怪って一人もいないと思うわよ? ねぇ?」
「そうですね。私も、日本妖怪が使い魔を持っているという話は聞いたことがありませんにゃ」
「へぇ~…」
そこら辺が、西洋と東洋の違いなのかしらね。知らんけど。
「でもこれって、一体どうやって使うのかしら? 見たところ、この『あなたのお願い叶えます』以外には何も書いてないのよね」
「そのチラシは所謂『発信機』のような役割をしているんですにゃ。その紙に向かって念じると、向こう側でそれを感知して、転移魔法でやって来る…的な感じで」
「…やってる事自体は完全にデリヘルのソレよね……」
「中には如何わしい事を目的としてチラシを使う人間もいるらしいですけど…」
「仮にも悪魔だし、そっち系の願いもアリっちゃアリなんでしょうけどね」
けど、あのソーナちゃんとかは同じ悪魔でも相当に初心な感じがしたな~。
言葉一つで顔を真っ赤にしてたし。
最近の若い悪魔の子達って、皆が皆、似たり寄ったりなのかしら?
「それはそれとして、今日のご飯も美味しいわ~♡ 特に、この出し巻き卵とかマジで最高。醤油とかかけなくても味が濃くてガンガンご飯が食べれちゃう」
「このお味噌汁も美味しいわ~。体だけじゃなくて、心までほっこりとしちゃう」
「そ…そんな…大したことはしてませんにゃ……」
そして、可愛く照れてる猫耳美少女が傍にいる!
これを役得と言わずしてなんとする!
「けど、カテレアちゃんが最近の悪魔事情に詳しくなかったのは意外だったわね」
「そうでもないわよ? 私の屋敷があった場所って、冥界でもめっちゃ端っこの方にある田舎だったし。静かなのはいいけど、それは同時に不便って事でもあるのよね。買い物行くのにも都会まで転移しないといけないし。それだって完全ノーコストって訳じゃないし」
「だから、冥界から出て地上で暮らすようにしたんですかにゃ?」
「そーゆーこと。明らかにこっちの生活の方が便利だし、性に合ってるもの。コンビニが近所にある事の素晴らしさは、分かる奴にしか分からない」
ぶっちゃけ、他に色んなお店があってもコンビニ一つないだけで不便に感じちゃうのよね。
それだけコンビニが万能だって証拠なんだけど。
「カテレアちゃんの気持ち…超分かるわ~! 私も同じだったもの」
「ブッキーも?」
「うん! 私が京都から来たって事は前にも話したでしょ?」
「まぁね」
「同じ京都でも、私が住んでるのって妖怪たちが隠れ住んでる秘匿された土地だから、買い物に行くだけでも一苦労なのよ。冥界とは違って簡単に転移とか出来ないし」
「でしょうね」
もしも転移なんかして、それを万が一にでも誰かに目撃でもされたら一大事だ。
裏事情にそこまで詳しくない私でも、それぐらいは簡単に分かる。
「ずっと、都会で暮らす事に憧れてて…それで一念発起してやって来たって訳。本当はそれだけじゃないんだけど……」
「っていうと?」
急にブッキーの表情が暗くなる。
何か聞いてはいけない事でも聞いてしまったのだろうか。
「実は私ね…妹って言うか…正確には『妹分』的な女の子たちがいるのよ」
「「妹分?」」
実際に血の繋がりは無いけど凄く仲がいい…って解釈でいいのかな?
「一人は『酒呑童子』っていって…黒歌ちゃんには、これだけで分かってくれると思うけど」
「は…はい。けれど、酒呑童子さまといえば、伊吹童子様の別側面では……」
「その通り。けど、なんでか肉体を持ったまま分離をして、しかもお互いに認識まで出来ちゃってるのよね~。ま、そこまで気にはしてないんだけど」
いや、割と深刻な事なのでは?
「もう一人は『茨木童子』っていって、良くも悪くも天然で子供っぽい女の子なのよ」
「黒歌ちゃん知ってる?」
「はい。大江山の支配していた鬼達の頭目の一人と伝えられてますけど…」
「その認識で間違ってないわ。詳しく話していけば長くなるから、今は置いておくけど」
そうれがいい。私も全部を聞いて頭の中に入れられる自信が無い。
「二人とも…体が小さくて可愛くて……目に入れても痛くない程に溺愛してたんだけど……」
「「だけど?」」
「…時の流れって…残酷なのよ」
「「へ?」」
こ…今度は急に黄昏始めた?
一体ブッキーに何があったの…?
「二人にはね……惚れてる男の子がいたの」
「「ほほぅ?」」
黒歌ちゃんと一緒に目を光らせる。
これはコイバナの予感?
「酒呑ちゃんは坂田金時くんって言って…金髪碧眼のイケメンで、めっちゃ筋骨隆々なのね。性格も『ザ・主人公!』って感じの好青年でさぁ~…そこら辺の女の子なら一発でノックアウトだと思う」
「それはまた……」
「絵に描いたような勝ち組にゃ……」
そりゃ~…惚れても無理は無いわ。
「ばらきーちゃんの方は『渡辺綱』っていって、クールな感じのイケメンで、ちょっと天然入ってる天才剣士。ばらきーちゃんとは幼馴染的な関係なのよね」
「幼馴染同士の恋……」
「青春ですにゃ……」
酒の肴には最高のネタね……。
「その二人がね……少し前に結婚しちゃったのよ~!!」
「「おぉ~!」」
そりゃまためでたいですな!
けど、どうしてブッキーは悲しそう?
「結婚式じゃ酒呑ちゃんはデッレデレだったし……ばらきーちゃんに至ってはツンデレ大爆発させて来賓している連中全員の口から砂糖吐き出させてたし~!」
「「でしょうねぇ~」」
その光景…簡単に思い浮かべられるわ~…。
きっと、すっごく幸せそうにしてたんでしょうねぇ~。
「うわ~ん! 坂田ぁ~! 渡辺ぇ~! 私の可愛い妹達を泣かせたら承知しないんだからね~!」
(ぶっきーの意外な一面を……)
(垣間見てしまったにゃ……)
彼女って…実はシスコンだったのね…。
人だけじゃなく、鬼も見た目じゃ分からないって事かしら。
「そしたら、お付きの妖怪たちが『伊吹童子様はいつご結婚なされるので?』なんて言ってきて……人間で数少ない知り合いである『頼光ちゃん』も『貴女もそろそろ落ち着いたらいかがですか?』って! アンタにだけは絶対に言われたくはないッつーの! あの子達の結婚の時は最後まで渋っていて、いざ結婚式の時になれば誰よりも号泣してた癖に~!」
なんか、完全にブッキーの愚痴大会になってる気がする。
まだ酒も入ってないのに。
「余りにもしつこいから……置手紙だけおいてコッチに来ちゃった♡」
「なんともまぁ大胆な……」
「その置手紙にはなんて書いたんですかにゃ?」
「『いい人探しに都会まで行ってきま~す♡』って」
「「適当にも程があるっ!?」」
それでいいのかブッキーさんよ……。
確実に京都の方じゃ大パニックになってるでしょ。
その『頼光さん』とやらは激怒してるでしょ。
「何の音沙汰も無いから、きっと問題無いでしょ。多分」
「楽観的にも程がある……私も人の事は言えないけど」
こうして、ブッキーの意外な過去と交友関係、それから性格を知った私達なのでした。
これが変なフラグになってないといいんだけど……。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
ある日の昼下がり。
黒歌は台所にて夕飯の下ごしらえに勤しんでいた。
「今日の夕飯は何にするかにゃ~……あれ?」
ふと冷蔵庫を覗くと、料理酒の容器が空っぽになっていた。
「あちゃ~…買い足すのをすっかりと忘れてたニャ~…」
またこの前のようにカテレア達に買い出しを頼むか?
今日もまたいつものように出かけているから、それが一番妥当かもしれないが。
「どうせなら、無くなりかけてる物も見つけ出して、買ってきてくれるようにお願いしようかにゃ?」
そうと決まれば早速、黒歌はいそいそと調味料の残りを調べていく。
しかし、この時の彼女は気が付いていなかった。
この前、二人が持って帰ってきて、そのまま棚の上に放置しっぱなしになっているチラシが淡い光を放っている事に。
「ん? なんだか妙な気配が……って、なんにゃっ!?」
部屋の中央で、どこかで見た事のあるような魔方陣が展開され、そこから誰かが転移してきた。
それは、彼女がずっと会いたいと願っていた相手であり、たった一人の血の繋がった家族。
「お待たせしました。グレモリー眷属の者です…って……え?」
「し…白音…っ!?」
「黒歌…姉さま……?」
生き別れになった猫又姉妹。
誰もが予想しなかった形で再会する。
なんとも言えない形で再会した姉妹。
次回は二人が主軸になるかも?
それと、ブッキーと酒呑とばらきーちゃんとかに関しては、完全にこの作品のオリジナルなので、そこまで気にしなくても大丈夫です。
カテレアとブッキーの筆下し…見たい?
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見たい!!!
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別に?
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ブッキー! 俺だ! 結婚してくれ~!
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カテレアお姉さまは俺の嫁!!
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一夫多妻で二人とも俺の嫁ですけど何か?