中間管理職のオッサンが褐色美女な悪魔に憑依転生してしまった話   作:とんこつラーメン

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前回、とある黒猫を拾った美女二人。

あれからどうなったのでしょうか?








時には泣くことも大事

 黒歌は驚きの余り、全く身動きが取れないでいた。

 体力が限界になって、少しでも節約をする為に猫の状態になって移動をしていると、いきなり意識がブラックアウトする。

 で、それから暫くして意識が回復すると、そこは全く知らない部屋の中で、自分の事を覗き込むようにして見つめている二人の美女が。

 

(な…なんなのにゃぁぁぁっ!? 全く状況が掴めないにゃっ! しかも、この二人……)

 

 二人して褐色肌なのが共通点だが、そこは別に問題点ではない。

 問題なのは、二人の身体から凄まじく強大な魔力を感じている事だった。

 

(あ…明らかに普通じゃないにゃ……。一人からは濃密な悪魔の気配がするし、もう片方からは最上位の妖怪の気配がする……)

 

 動物的な本能で理解出来る。

 下手な動きをすれば確実に死ぬと。

 

「ねぇ、ブッキー。この子、なんか目を覚ましたっぽいけど、普通の猫ちゃんと同じようにミルクとかあげてればいいのかな?」

「それで大丈夫だと思うわよ? けど、ミルクなんてあったっけ?」

「よく焼酎の牛乳割りとか作って飲んでるし、あるとは思うけど……」

 

 部屋の隅に置いてある酒類専用の小さな冷蔵庫を開けて確かめてみる。

 すると、辛うじて一本だけ牛乳パックが残されていた。

 

「あ~…あったあった。けど、問題は何に注ぐか…よね。いい感じのお皿ってあったかな……」

 

 カテレアの部屋には食器棚なんて洒落た物は存在していない。

 基本的に使った食器は、洗った後に洗面台横にあるプラスチックの籠に放置してあるのだ。

 

「ちょっと待って」

「どったの?」

 

 ミルクを皿に入れようとしたカテレアを静止させ、伊吹がジ~っと黒歌の事を見つめた。

 最強格の鬼の睨みを受けて冷や汗ダラダラになる。

 一体何をさせられるのか不安で不安で仕方がない。

 

「あなた……人型になれるでしょ?」

(ギクッ!? バ…バレてるっ!?)

 

 ここで下手に誤魔化せば、それこそ自分の命が無い。

 生き別れた大切な妹と再び再開するまで、泥水を啜ってでも自分は生き延びなければいけないのだ。

 その為ならば、幾らでも勇気を振り絞ってみせよう。

 

 畳の上で横たわっていた体を起き上がらせて、少しだけ後ろに下がってから姿勢を正す。

 すると、彼女の体が徐々に猫の状態から人間の女性の形へと変化していく。

 

 着崩した黒い着物を着て、黒く長い髪と猫耳と尻尾を持つ美女。

 これこそが黒歌の真の姿だった。

 

「やっぱりね」

「あらまぁ。それなら、お皿じゃなくてコップの方が良いわね」

 

 そっちかい。

 中身が元人間の転生者とはいえ、身近に鬼神がいることで超常現象的な事に対して大きな耐性が付いてしまっているのかもしれない。

 

「…まずは、私の事を助けてくださって、本当にありがとうございます」

 

 相手は自分よりも遥かに強者。

 しかも、命の恩人ときている。

 両手を畳の上に置いて、深々と頭を下げて礼を言った。

 

「別に、そこまで畏まらなくてもいいわよ?」

「そうそう。助けたのだって、単なる気紛れだったし」

「それでも、この命を救って頂いたのは事実ですので」

 

 ここで調子に乗ってはいけない。

 片方だけでも圧倒的なのに、そんなのが目の前に二人もいる。

 ここで機嫌を取っておかないと、完全に終わりだ(と黒歌は考えている)。

 

「頑なそうね。分かったわ、その言葉は受け取りましょう」

「ありがとうございます」

 

 まずは第一関門を突破。

 けど、まだまだ全く油断は出来ない。

 

「で、なんで貴女は…って、まだ名前を聞いてなかったわね」

「私は『黒歌』と申します。ご存じの通り、しがない猫又にございます」

「猫又…ね。その割には、なんだか悪魔っぽい気配も感じるのだけれど?」

「そ…それは……」

 

 絶対に聞かれるとは思っていた。

 素直に話した方が良いのだろうか?

 それとも誤魔化すか?

 けど、この二人に下手な小細工は通用しないような気もするし。

 

「まぁまぁ、ブッキー。ついさっき会ったばかりの女の子に、そこまで聞くのも酷ってもんでしょ。ね?」

「…それもそうね。誰にだって聞かれたくない事の一つや二つはある…か。ごめんなさいね」

「い…いえ…大丈夫…です」

 

 危機一髪。予想外の助け舟に救われた。

 こんなにもホッとしたのはいつ以来か。

 

「それよりも、まだ私達の自己紹介をしてないでしょ?」

「そうだったわね」

 

 これより数秒後。

 彼女達の正体を知った黒歌は、顎が外れて心臓が破裂しそうな程に驚愕する事になる。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「い…いいいいいいいいい伊吹童子さまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「そうだけど…そこまで驚くことは無いんじゃない? お姉さん、ちょっと傷つくなぁ~」

 

 先程までの殊勝な態度から一変、もう滝のように顔から冷や汗を流しまくる。

 自分なんかでは絶対に敵う訳がない、それどころか、こうして会うだけでも非常に恐れ多い伝説級の大妖怪が、あろうことか自分の目の前にいるのだ。

 一介の猫又に過ぎない黒歌からすれば、光栄過ぎて眩しいやら、恐れ多すぎて恐縮するやらで、さっき以上の大混乱に陥っていた。

 

「い…伊吹童子さまと言えば、あの『日本三大化生』の一体であらせられる『八岐大蛇』さまのご息女であり、分御霊である神霊……そんなお方に助けて頂けたなんて……」

「う~ん…確かにそうなんだけどさぁ~……そこまで畏まれると、流石にドン引きって言うか……」

 

 自分の事を正しく認識はしているが、かといって目の前で恐れられるのはどうにも苦手。

 伊吹童子自身は、他の妖怪たちや人間達とも楽しく和気藹々とした関係を築きたいだけなのだ。

 

「し…しかも、伊吹童子様のご友人が、まさか先代魔王の血筋のお方だったなんて……」

「いや…確かにウチの家は凄かったかもだけど、私自身はどこまでも、お酒やギャンブルが好きなだけの女よ?」

 

 自分が間違いなく『貴族』と呼ばれる存在なのは承知していたが、だからと言ってそれらしい生活や態度なんて取れる筈も無い。

 何故なら、前世では貴族どころか底辺も底辺の一般人の社畜で、死因だって過労死だったのだから。

 どれだけ金を持っても、どれだけ強大な力を持とうと、庶民の感覚や視点を辞められないカテレアだった。

 

「あ…あの…お二人はどのような事が切っ掛けでお知り合いに…?」

「「単純に部屋が隣同士だったから」」

「そんにゃ理由っ!?」

 

 これも以前に言ったかもしれないが、魔王の子孫と最上級クラスの神霊がアパートの隣同士で暮らしているだなんて誰が想像するだろうか。

 少なくとも、三大勢力の重鎮たちが知れば、胃に穴を空けつつ卒倒するのは間違いない。

 

「ところで黒歌ちゃん」

「ひゃ…ひゃいっ!?」

「…そんなに怯えなくてもいいわよ。別に取って食おうってわけじゃないんだから」

「も…申し訳ございません…」

 

 分かっていても怯えてしまうのは、完全な本能によるもの。

 どれだけ頭で理解していても、恐怖と生存本能がどうしても勝ってしまう。

 

「どうして駒王町に…とか、どうしてあんなにも疲弊していたのか…とか、そんな事は今は聞かないわ。けど、これだけは答えて頂戴」

「な…なんでしょうか…?」

「貴女、これからどうする気?」

「それは……」

 

 正直、行く宛てなんて何処にも無い。

 妹を探そうにも、どこにいるのかなんて全く分からないし。

 無我夢中で逃げてきて、完全に自分が八方塞な状況なのは理解していた。

 

「やっぱし、何にも考えてなかったのね。というか、考える余裕が無かったって言う方が正しいのかしら」

「……………」

 

 何も言えない。まさにその通りだから。

 

「もぉ~…そんな顔をしないでよ~。まるで、お姉さんが苛めてるみたいじゃないのよぉ~」

「にゃはは…ブッキー。弱い者いじめはダメよ~?」

「カテレアちゃんまでぇ~…って、いつの間にかもう飲んでるっ!?」

 

 カテレアの手には日本酒の入ったコップが握られていて、その顔は真っ赤になっていた。

 テーブルの上にも、いつの間にか用意されている炙りイカが。

 

「まぁ……困っている女の子をこのまま放りだすのも目覚めが悪いしねぇ~。黒歌ちゃん」

「は…はい。なんでしょうか?」

「あなたって…お料理って出来る?」

「い…一応…一通りは……」

「他の家事は?」

「出来ますけど……」

 

 一体何を聞いているのだろうか?

 カテレアの真意が全く分からず、さっきとは別の意味で困惑していた。

 

「…よし! それじゃあ、黒歌ちゃん。私の部屋に住みなさいな」

「…………へ?」

 

 一瞬、呆然として頭が真っ白になる。

 カテレアの言葉が正しく理解出来なかった。

 

「本当はブッキーの所の方がいいとも思ったんだけど、それだとすっごく萎縮しちゃいそうだし。それだったら、まだ私の方がマシかな~って思ったんだけど。どうかしら?」

 

 本音を言えば、カテレアの申し出は非常に有り難かった。

 これまでずっと夜空を天井にして野宿という名のアウトドア生活をしてきた身としては、まさに地獄に仏な言葉だった。

 だが、同時にこうも思ってしまう。

 どうしてこの方々は自分に対して、こんなにも親切にしてくれるのだろうかと。

 これまでもずっと周囲を警戒しながら生きてきた黒歌は、無意識の内に他人を疑う癖がついていた。

 

「私は良いと思うわよ? どうせ部屋は隣なんだし、様子を見に行こうと思えばいつでも行けるし」

「その代り、ウチの家事全般をお願いしたいのよね。いやね? 別にやろうと思えば出来るのよ? でも、どうしてもやる気が起きないと言いますか……」

 

 完全にダメ女の言い分だ。

 成る程。それならば納得だ。

 彼女達は自分の身の安全を保障し、その対価として自分は二人の普段の生活をサポートする。

 ギブ&テイク。それならば多少は気が楽になる。

 あくまで多少だが。

 

「…ほ…本当によろしいんですか?」

「全然構わないわよ~。女の子の一人や二人、その気になれば幾らでも守れるから。いざとなれば『知り合い』に相談するし」

 

 ここでカテレアの言う『知り合い』とはソーナの事である。

 確かに悪魔の中では相当な地位にいるカテレアであるが、転生してからこっち、同じ悪魔たちと全く会話らしい会話なんて一度もしたことが無い。

 そんな中、彼女が唯一親しいと思っている悪魔がソーナだったのだ。

 故に、彼女が頼る悪魔となれば必然的にソーナしかいなくなる。

 

「だから、安心していいわよ。それに……」

 

 ポン…と、黒歌の頭の上に手を置いて、そっと撫でる。

 

「そんな顔をした女の子を、このままになんてしておけないでしょ」

「同感ね。今までどんな事があったのかは知らないけど、偶には誰かに頼るのも悪くは無いと思うわよ? 大丈夫、鬼は嘘はつかないから」

 

 その言葉を聞いて、不思議な安心感に包まれる。

 それが黒歌の涙腺を崩壊させ、その目から大粒の涙を零させた。

 

「う…うぅぅぅ……」

「よしよし。今までよく頑張ったわね、えらい、えらい」

「はい……はい……」

 

 カテレアに抱きしめられながら、その胸の中で泣き続ける黒歌を見ながら、伊吹童子は優しく微笑みながら、いつの間にか開けた缶ビールを口に含むのだった。

 

 こうして、保護された黒歌はカテレアの部屋にて世話になる事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




実は、今回の話を考えている途中で、黒歌をとあるキャラのヒロインにしようと思い至り、その方向で進めていこうと思います。
原作とは違う形で、彼女には女のとしての幸せを手にして貰いましょう。

そして、次回はレイナーレと一誠のその後の話。
一誠を振り向かせる決意を固めたレイナーレが取った行動とは…?




カテレアとブッキーの筆下し…見たい?

  • 見たい!!!
  • 別に?
  • ブッキー! 俺だ! 結婚してくれ~!
  • カテレアお姉さまは俺の嫁!!
  • 一夫多妻で二人とも俺の嫁ですけど何か?
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