中間管理職のオッサンが褐色美女な悪魔に憑依転生してしまった話 作:とんこつラーメン
一方その頃、一誠を惚れさせると決意を固めたレイナーレは…?
裏で色んな事があった次の日。
一誠のクラスはとある噂によって騒々しくなっていた。
「例の噂、もう聞いたかっ!?」
「聞いた聞いた! なんでも、このクラスに転校生が来るんだろっ!?」
「そう! しかも、すっごい美少女らしいぞ!」
「どんな子だろうなぁ~…今から楽しみだぜ!」
一体どこから、そんな情報を入手したのかは不明だが、男子達は完全に浮き足立っていた。一部を除いては。
「こんな時期に転校生だなんて珍しいな」
「だな。何か家庭の事情的なやつなのか?」
「他の連中はなんか騒いでるけど、俺達には関係ないな」
前ならば他の男子達以上に騒々しかった一誠、元浜、松田の三人は、傍観者の立場になって教室の様子を伺っていた。
完全に立場が逆転してしまった事になるが、だからと言って被害が拡大している訳でもない。
他の男子達は覗きなんて全くしないから。
「そうだ一誠。桐生の奴から聞いたぞ。お前、隣町の学校の子に告白されたんだって?」
「まぁな。普通に断ったけど」
「だと思ったよ。なんでだ?」
「んん~…別にあの子の事が嫌いって訳でもないし、俺から見ても凄く可愛い子だとは思った。けど…なんつーのかな。まだ碌に自分の本当にやりたい事も見つけられていない自分に彼女なんて出来ても、幸せに出来る気が全くしないんだ。だから、『年上の女性が好きだから』って言って断った」
「成る程な。お前らしいよ」
「半分だけ嘘をつく所なんか特にな」
これだけの話だけで、一誠の抱えている悩みや、彼の身上などを理解した松田と元浜。
伊達に親友同士と言う訳ではないようだ。
「何かあればいつでも相談しろよな」
「お前の為なら、幾らでも力になってやるよ。カテレアさんや伊吹さんもきっと同じ筈だぜ」
「元浜…松田…ありがとな」
自分は最高の親友たちを持った。
思わず涙ぐんだ一誠は改めて思った。
この友情だけは永久不変であると。
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担任が教室にやってきて、朝のHRが始まる。
そこで案の定、男子達が噂していた通り、女子の転校生がやって来た旨を伝えた。
「もう知っている奴等もいるようだが、実はこのクラスに転校生がやって来る事になった。入って来てくれ」
「はい」
担任の言葉に約三名を除いた男子全員が『おぉ~!』となり、女子達はそんな様子にげんなりとしていた。
結果として、相対的に『約三名』の評価が上がって行くのだが。
教室の扉を静かに開けて入って来たのは、黒く長い髪を靡かせた美少女。
ぶっちゃけてしまえば、人間に化けて偽名を使っているレイナーレだ。
今までは偽りの情報として『隣町の学校に通っている』事にしていたが、少しでも一誠に近づくために、本当に学生として潜入してきたのだ。
因みに、転校の手続きなどは全て黒一点であるドーナシークが行った。
そんな彼は今、ストレス発散の為に居酒屋で酒を飲んでいる。
「隣町から来ました、天野夕麻です! よろしくお願いします!」
以前とは打って変わって、元気な口調で自己紹介をした。
その眩しい笑顔に、男子達は興奮しまくっている。
(よし! 最初の掴みはバッチリね! これでアイツも少しは私の事を……)
そう思って一誠がいる場所を見ていると、その本人は窓の外を呆然と眺めながら物思いに耽っていた。
(って、全く私の事に気が付いてないやないか~い!!)
なんでそこで関西弁?
自分を振るだけに飽き足らず、今度は無視までされた。
流石にキレたレイナーレは、ズカズカと一誠の元まで歩いて行って、彼の机をバンッ! っと叩いてから一誠の目を自分に向けさせる。
「ちょっとアンタ!」
「ん? って…なんで君がここにいるんだ?」
「この制服を見ればわかるでしょ! 私がこの学校に転校してきたからよ!!」
「そうなのか。これからよろしくな」
「え…えぇ…こっちこそよろしく。じゃなくて!」
「なんだよ?」
「この私を振った事を心から後悔させてあげるから! 覚悟してなさいよ! 私の魅力でアンタを全力で惚れさせてみせるわ!!」
「あ~…はいはい。そうか、それはよかったな~」
「適当に流すな! こっちを見~な~さ~い~よ~!」
「揺らすなよ~。制服が伸びちゃうだろうが~」
完全に会話がジャンプ系ラブコメになっている二人を見て男子達は察する。
この勝負…最初から勝ち目無くね?
レイナーレは一誠の事しか見ておらず、その一誠は彼女の事を鬱陶しくしながらも、彼女の事を気遣って好き放題させている。
そして、女子達は理解をする。
この二人……めっちゃ面白いと。
影ながら応援しつつ、その様子を観察して楽しめると。
「なんだ兵藤。天野と知り合いなのか?」
「知り合いと言えば知り合いだけど……」
「なら、校舎の案内とかを任せてもいいか?」
「別にいいですよ。それぐらいならお安い御用です」
今の一誠は基本的に先生の頼み事は絶対に断らない。
そのお蔭で、内申は鰻登りである。
「ア…アンタに案内される!? ってことは、もしかして二人っきりに…?」
「そうなるな。それがどうかしたのか?」
(二人っきりになれば、ダイレクトに私の魅力を見せつける事が出来る! ふふ…どうやら、思った以上に目的を果たせそうね…!)
なにやら都合のいい事を考えているようだが、それが出来れば誰も苦労なんてしないのだ。
因みに、そんな一誠の様子を見て、元浜と松田の二人は、他の女子達と同様に影ながら見守ることを決めた。
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担任に言われた通り、放課後にレイナーレに各校舎を案内する一誠。
隣り合わせになってから一誠が各教室の軽い説明をしていくのだが……。
「あそこが音楽室で、その向かい側にあるのが色んな楽器を収納している倉庫な。で、この先に軽音楽部の部室があって……」
「……………」
レイナーレはずっと、一誠の横顔ばかりを見て説明は右から横に受け流されていた。
別に彼の話を意図的に無視している訳ではない。
無意識の内に、その横顔から目が離せなくなってしまったのだ。
「ちゃんと聞いてるか?」
「えっ!? あ…あぁ! 聞いてるわよッ!? うん! あそこが音楽室なのよねっ!?」
「そこは軽音楽部の部室だ」
「し…知ってるわよッ! ちょっとアンタの事を試しただけよ!」
「あっそ」
呆れながらも案内を続ける一誠を見て、思わずレイナーレは自分の胸を抑え込んだ。
(な…なんなのよ一体! どうしてこんなにも胸がドキドキするわけっ!? 相手は人間なのよッ!? 私達よりもずっと寿命が短くて脆弱な人間…なのに…なんで……)
思わず目を逸らし、顔だけじゃなくて耳まで真っ赤に染める。
(こんなにも…カッコよく見えちゃうのよ……バカぁ……)
そんな二人を見ていた道行く生徒達は、ピンク色の空気を感じ取ったのか、全員揃って自販機のある場所へと向かって歩いて行った。
目的はただ一つ。ブラックコーヒーを飲む事だ。
「あれ? いつの間にか人気が無くなってる。どこに行ったんだ?」
一通り案内し終えてから、二人は渡り廊下を使って下駄箱へと向かう事に。
その間、ずっとレイナーレは一誠の顔を直視できないでいた。
途中、ふと視界に映った古めかしい建物を見つけたレイナーレは、思わず一誠に尋ねた。
「ねぇ、あの建物は何なの? 妙に古いけど……」
「あれは旧校舎だな。今の校舎は新築で、昔はあっちの方を使ってたんだ」
「それじゃあ、今はもう使ってないの? それとも、倉庫みたいにしているとか?」
「うんにゃ。確か、あそこも部活棟として使われてた筈だ。オカルト研究部…だったっけ?」
「ふ~ん……」
自分自身が堕天使な身であるレイナーレからすれば、オカルトなんて言われても反応に困る。
その気になれば、この世界はオカルト的な事で溢れ返っているのだから。
そんな二人を背後から密かに覗いている人物達がいた。
「あの女の子…堕天使の気配がするわね」
「みたいですわね」
真っ赤な髪を持つ少女『リアス・グレモリー』と、彼女の親友である大和撫子な感じの少女『姫島朱乃』。
駒王学園の三年生にして、さっき一誠が説明をした『オカルト研究部』の部長と副部長をしている生徒達だ。
「少し事情を聞いてみる必要があるみたいn…」
「リアス。幾らなんでも、それは流石に無粋なんじゃなくて?」
「へ? なんでよ?」
二人に近づこうとしたリアスの腕を掴んで、朱乃が彼女の事を静止させる。
その顔は完全にニコニコ笑顔になっている。
「あの二人を見て御覧なさいな。完全にデートよ? 仮にも最上級生である貴女がそこに突っ込んでいったらどうなるか、分からないリアスじゃないでしょ?」
「そ…それはそうだけど…それじゃあ、どうするのよ?」
「今は様子を見るだけに留めておきましょう? 何かアクションがあれば、その時に改めて動けばいいんだし」
「…朱乃がそこまで言うなら……」
一応の納得はしてくれたのか、リアスは渋々ながらも引っ込んだ。
(人間の男の子に惚れてしまった堕天使の女の子が、わざわざ人間に化けてまでして学校にやって来る……まるで、一昔前の少女マンガみたいね。頑張って、お姉さんは二人の事を応援してるから。似たような身の上として…ね)
今はまだ朱乃の考えは勘違いの段階なのだが、それが真実になる日は意外と近いかもしれない。
その日こそが、一誠が本当の意味で一皮剥ける日なのかもしれない。
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下駄箱で靴に履き替え、一緒に校門を出る…までは良かったが、レイナーレはまだ一誠の隣にいた。
「なんで着いて来るんだよ……」
「か…勘違いをするんじゃないわよ! べ…別にアンタと一緒に帰りたくて着いて来てる訳じゃないんだからね! 私も帰り道がこっちなだけなんだから!」
「誰もそこまで言ってねぇだろ……」
本日何回目になるか分らない溜息を吐きながら、一誠とレイナーレは帰路に付く。
一誠の方は何にも思ってないが、レイナーレは心の中でガッツポーズをしていた。
(よっしゃ! あの教会を拠点にして大正解だった! まさか、偶然にも帰り道が同じ方向だったなんて!)
その後、特にこれといった会話も無いまま並んで歩いていく二人だが、逆にその光景が傍から見るとカップルのように見えてしまう。
(リア充だ)
(リア充がいる)
(あの子って確か、今日来たって言う転校生だよな?)
(そういや、まだ転校する前に、あの子が校門の前で兵藤に告白してるのを見てる奴がいたぞ)
(マジでッ!? ってことは、惚れた男の為に転校してきたって事かよ……)
(チクショウ……! なんて羨ましい奴……!)
道行く女子達からは生暖かい眼差しで、男子達からは嫉妬が込められた視線を向かられていた。
「気のせいか? 妙に背筋がゾクゾクってするんだが……」
「なによ。もしかして冷えたの? 暖かくなってきたとはいえ、まだこの時間帯は冷えるものね。仕方がないわね……」
何を思ったのか、レイナーレはいきなり一誠の腕に抱き着いてきて体を寄せてきたのだ。
彼の体温を服越しに感じ、一誠もまた彼女の体温を服越しに感じる。
自分でも何をやってるんだと思った。
けど、やってしまった以上はもう後戻りは出来ない。
実際、レイナーレの顔は沸騰しそうな程に真っ赤になっている。
「いきなりなんだよ?」
「わ…私も急に寒くなってきちゃったのよ! 文句あるっ!?」
「文句っつーか…普通に歩きにくい」
「なんですってっ!? こんな美人と腕を組んで歩けてるのよっ!? 少しは男らしく喜びなさいよね!」
「ンな事を言われてもな……」
レイナーレがグイグイと体を寄せてきて、一誠が離れようと体を動かす。
不安定ながらも仲睦まじく歩く二人の様子は、完全に恋人同士のようだった。
結局、途中で帰り道が分かれるまで、ずっと二人は腕を組んで歩き続けた。
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余談だが、この様子を使い魔を通して見ていたリアスと朱乃はというと…。
「「あま―――――――――――――――――――――――――――い!!」」
二人して、紅茶の代わりにブラックコーヒーを飲んでいた。
最初から全開で飛ばしてみました。
主役が登場しない代わりに、完全なアオハルなお話に。
次回はちゃんと登場させますのでご安心を。
カテレアを中心とした大人の恋物語も描きたいですね~。
カテレアとブッキーの筆下し…見たい?
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見たい!!!
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別に?
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ブッキー! 俺だ! 結婚してくれ~!
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カテレアお姉さまは俺の嫁!!
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一夫多妻で二人とも俺の嫁ですけど何か?