やはり俺の高校生活はまちがい続けている。 作:さっきのピラニア
…この校門をくぐるのはいつ振りだろうか。両手で数えきれない程ではないが久しぶりだ。
少しくたびれた革靴を校庭から飛んできた土煙でざらつくアスファルトを歩く。何度も通ったこの道の感触も久しぶりだ。風向きの関係でざらつくアスファルトも、少し古くなったように見えるこの校舎も。屋上から聞こえるトランペットの音も。後ろ髪引かれるあの日々も。昨日の事のように思い出せる訳ではないが思い出せる。
職員室に向かう廊下は、リノリウムとワックスの独特な香り。開かれた窓からは春の訪れを知らせる少し生暖かい風と、桜の香り。
「…戻って、来たな。」
戻って来ちまったという言葉の方が正しいだろうか。ふー、と大きく息をついて、職員室の扉を開ける。まずは校長と教頭、そして学年主任に挨拶しないとだな。
職員室を見渡すと、一人の先生と目が合う。長い黒髪に白い白衣を着た女性。俺は彼女に、あの頃の面影が見えた。と、言う事は自分の推測は正しいのだろう。俺は少し目を細め、なるべく笑顔を作って挨拶する。
「お久しぶりです、平塚先生。学年主任ってどこにいるか分かります?初めてなもので。」
こちらを見た彼女は目を丸くする。だが直ぐに持ち直して答える。
「…ゆうい、横芝先生か…業務連絡にあったが、ここに赴任してくるのは本当だったのだな。あとその作り笑いと呼び方は止めてくれ、お前らしくない。」
溜息を付いて、平塚先生が言う。
「…さいですか。久しぶりだな。ここでこんな形でまた会うとは思わなかったけどな。で、学年主任がどこにいるか教えてくれないか?挨拶しておきたいんでな。」
「あぁ、分かった。」
平塚先生に主任を紹介してもらい、赴任の事務手続きをする。先生への紹介はまた後日だそうだ。まだ春休み中でで始業式・入学式までまだ数日ある。徐々に慣れていけばいいさ。
俺はあてがわれた物理準備室へ向かう。物理準備室は特別棟にある。春休み、かつ三年生も卒業した事もあり、やたらとこの棟だけは静けさに満ちていた。準備室の扉を開け、席に座る。
県下有数の進学校のこともあり、ある程度授業で説明で使えそうな備品が揃っている。使わなくても受験は突破出来なくはないが、数式を羅列して計算させるだけの授業も味気なかろう。始まる授業で使う算段をしていると、扉がノックされガラッと開かれた。
「…ノックくらいしろよ。無遠慮な所は相変わらずだな。」
「まぁ、良いじゃないか。知らない仲じゃあるまいし、総武高校元生徒会長さん。」
そう言って、彼女はニヒルな笑みを浮かべる。先程あった戸惑いは無いように見える。もしくは隠しているか、だが。
「…そんな昔の話は忘れたよ。副生徒会長さん。」
「良いじゃないか。積もる話や昔話をしようじゃないか。」
「お断りだ。そんな話をしても退屈だし、効率的じゃない。」
彼女は俺を眺めながらポケットから煙草を取り出して火を点け、一息つく。俺も続き鞄から煙草を取り出す。
「…キャスターか。良い趣味してるじゃないか。」
「…お前のLARKは少しおっさん臭いんじゃないか?」
「ワイルドで格好いいだろうが!皿田きのこサラダも吸ってたし、おっさん臭くないぞ!」
「そこでアラレちゃんのマイナーネタ持って来るのはおっさん臭くないか?…って言うかあれ幼稚園児だからもっとアウトだぞ。」
どうも旗色が悪いと察した彼女は咳払いをし、話を変える。
「…っんん!…で、どうだ。久しぶりの校舎は?」
「まぁ懐かしい以外に感想は無いな。変わった様な、変わらん様な不思議な感じだ。」
「私も赴任して数年経つが、ここは全然変わらないな。」
「そんなもんか。」
「そんなもんさ。…じゃあ私はこれで失礼するよ。これからよろしく。」
「あぁ、宜しく。」
平塚先生は煙草をもみ消すと立ち上がり、扉を開ける。
「そうだ、忠告って程ではないが、今の総武には良くも悪くも面白い奴らが揃ってるぞ特に二年生はな。楽しみにしておくと良い。」
「了解。楽しみにしておくよ。」
そう言って彼女は扉を閉める。準備室の中には再び静寂が訪れた。短くなった煙草をもみ消し、短く息を吐く。
あと少しで新学期が始まる。今年も生徒たちの青春を傍観し、少し干渉しながら過ごすのだろう。退屈と言うか、忙しくなりそうだ。
さて、始まりました始まってしまいました。俺ガイルss。
平塚先生の設定は作品の関係上、大分捏造していて矛盾点出ているかもですが、ssってことでご容赦ください。
本当は他の作品を作ってからにしようかと思っていましたが、こっちの設定が出来てしまったので連載開始です。前回同様見切り発車。
社会人オリ主登場は前回同様なのでご愛敬ってことにしておいてください。
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