やはり俺の高校生活はまちがい続けている。 作:さっきのピラニア
今日も今日とて、いつもの準備室で業務を片付けていた。
教師というのは、訳分からん雑務が多い。部活の顧問やら保護者の対応やら生活指導やらでまいっちんぐである。まいっちんぐって今日日聞かんな。もう死語か。
それに加えて授業の準備もしなければいけない。とはいえ赴任初年度だからなのか、俺が何かしら無言の圧力を感じさせているのか。他の教師達は相も変わらず職員室で仕事をしているのだろう。
俺がここで作業しているのは教頭や学年担当に雑務を任せられるのを避けるためと、早く帰っても目立たないからであったりする。どっちにしろ早く帰ると陰口を言われるのだから、直接言われづらい場所にいた方が精神衛生上良い訳である。労働と人間関係の闇は深い、そして不快。
そんな要らんことを考えているうちに、雑務と明日の授業の準備を終える。さ、帰りますかね。できれば陽が落ちる前に帰宅するのが俺のMOTTOである。ホットモットのから揚げって美味しいよね。
今晩の夕食がほぼ決まったので、手提げかばんを引っ提げ扉を開けると同時、隣の扉も開く。
隣の教室から出てきたのは3人組。決してズッコケな彼らではない。
2年の比企谷、雪ノ下、由比ヶ浜である。
パッと見、不思議な組み合わせである。特に比企谷。平塚先生曰く、ふざけた作文を書いた罰として入部させた、との事らしい。
彼の作文を見せてもらったが、まぁ中々に歪んでいたというか何というか。
高校生でここまで確固たる意志?僻みを感じさせる文章を書くのは面白いなとは思う。が、流石に学校に提出する文章かと言われれば疑問である。こういう所でしか他人に真面目に見てもらえないのは分かるが、普通はもっと当たり障りのない作文にするだろうに。
成績に関しては詳しくは知らないが、文系がともかく理数系は壊滅的な成績であるという話の様である。確かに物理の結果も平均からは大きく下回っているので教師としてはもう少し頑張って欲しい所ではある。
次に雪ノ下。とはいえ彼女は特段言う事は無かったりする。授業態度も真面目だし成績も優秀、偶にいる優等生という印象である。多少友達付き合いが苦手そうな所もあるが、それも生徒の個性である。教師が口出しすることでも無かろうに。
あとは先日準備室に来た彼女、もとい雪ノ下陽乃(後で平塚先生に聞いた)の妹である事位だろうか。見た目はともかく、両極端な性格を感じさせる姉妹ではある。
最後は由比ヶ浜。最初視界に入った時にはドキリとした。何と言うのが適切だろうか分からないが、雰囲気が似ていた。あの時の彼女に。見た目は大分違っているけれども。
教師という職業柄、そういった人物がいないわけではない。その度に動揺してしまうのは、あの時刺さった心の棘が疼くからだろうか。
あと授業中に問題を出したときに一番最初に手を挙げて、見事に不正解を叩きだすのは止めて欲しい。もしくはきちんと予習をしておいてほしい。
「あ!ゆーいち先生だ!こんにちはー!」「こんにちは。」「うす。」
「お、部活終わりか、お疲れさん。あと下の名前で呼ぶのは止めなさい。横芝先生だ。」
生徒達は三者三様の挨拶をする。
「先生も帰りなんですか?」
「そうだな。」
比企谷が問う。
「意外ですね。教師って遅くまで残業して草臥れてるイメージですし。平塚先生とか。」
確かに生徒が教師を見て感じる事はそうなのだろう。そして間違っていない。
「確かにな。俺は特殊なパターンかもな。一応忠告しておくが教師になるなよ。残業も多いし良いことが無い。しかも世間知らずの教師しかいないしな、俺含めてな。」
「それが分かってるなら世間知らずって訳じゃないんじゃないんですかね。知らんけど。」
彼はフォローかも分からない軽口を返す。隣で女子組は苦笑いである。
ズッコケていない三人組とは早々に別れ、バイクに跨りエンジンをかける。何年も前に数えきれない程通ったこの道も、今も変わらずそこにある。思い出と後悔を置き去りにして。
辛かった事もいつの日か良い経験になるとは誰が言ったのだろうか。乗り越えられれば正しいのだろう。割り切れればそれも良しだ。…じゃあ未だに引き摺り続けている者は?
伝えられなかった想いも、間違った選択も全て自分がしたことだ。燻り続けグズグズにに詰められてしまった諦観すらできない大人を誰か大馬鹿だと笑ってはくれないだろうか。
耳障りなエンジン音だけが俺の耳にはずっと響き続けていた。
二日連続投稿なんて半年ぶりですね。多分そろそろ頻度落ちます。
予定していた書き方と大分というか全く違っているけど何故か書けたからヨシ!(良くない)
駄文ですが感想お待ちしております。励みになります。