やはり俺の高校生活はまちがい続けている。   作:さっきのピラニア

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本日も駄文ですが、お楽しみいただければ幸いです。


彼女の優しさは、いつか誰かを救い、そして傷つける。

その後、クラスの歪みは徐々に収まっていった。

彼女はこちらを気にする様子もあったが、特に話をすることもなく、少し昔へと戻っていく。お互いに元通りになっていく。俺はいつもの平穏に。彼女は楽しい学校生活に。

 

数日経ち、とある日の下校途中、俺を呼び止める声がした。振り返ると、そこに居たのは彼女だった。少し息を切らして彼女はそこに居た。

「祐一くんはこのままで良いの?」

「このままって?」

「クラスでの事。本当に良いの?」

「問題ないな。こういった類のモノはいつか終わる気にするのも時間と労力の無駄だろ。」

俺たちは並んで帰り道を歩く。あまり時間は経っていない筈なのに、話をするのは久々な感覚がした。俺はここにいてはいけない。元の形を取り戻しつつあったクラスをまた歪めてしまうわけにはいかない。俺はそう思い、足を早め彼女から離れようとした。

 

「…あのね。聞いて欲しい話があるの。つまらないかもだけど。」

中学時代、学校で虐められていた人がいたこと。彼女が庇った事。彼女が庇ったのは脅されていると勘違いした人達が更に虐めを加速させたこと。

そして、その人が耐え切れずに自殺してしまった事。

「彼が死んじゃったのは私のせいじゃないのかもしれない。でも偶に思うんだ。もしかすると私のせいかもしれないな、って。本当はどうしたら良かったんだろう、って。」

彼女は話をした後、あはは、と誤魔化すように笑った。そしてごめんね、と付け加えた。そして面倒な事を言う女の子だとも。

「だからさ、ほっとけなかった。祐一くんがそんな風に居なくなっちゃったら嫌だな、って思ったの。ただそれだけ。」

夕暮れが徐々に沈み始めた校内で、足をぶらつかせている彼女の表情は少し影を落としているように見えた気がした。俺は一つ深いため息をついた。

「そうだな、つまらない話だったな。」

彼女は目を丸くして俺の方を向いた。彼女の様子気にせず続ける。

「ソイツには自分の問題を解決する力が無かっただけだ。対抗する若しくは、逃げる勇気がやり過ごす度胸無かっただけだ。先生に相談する、親に言って転校する、選択肢は多くあったはずだ。ソイツは一番やっちゃいけない復讐をやったわけだ。ソイツにとっては今の苦しみから逃げられるし、虐めた相手には心の傷を与えられる。でも、ただそれだけだ。それ以上もそれ以下もない。問題が消滅しただけだ。解決はしていない。」

「でm「お前が気に病む必要はないさ。お前はソイツを庇った。恨まれる筋合いはないだろうさ。」

彼女に必要なのは強い否定なのだと思う。彼女の後悔の否定。

そしてその言葉はあぶれた側の人間から与えられないと、彼女は納得しないのだろう。彼女は多くの人から慰めを貰っただろう。でも彼女は後悔をし続けている。学校というコミュニティからあぶれたとはいえ俺でなくても良いのだろう。いつか俺じゃないあぶれた誰かからその言葉は与えられるだろう。ただ彼女が暫く引きずり続けるのを見るのは気が引けた。あと、俺に纏わり付き続けられるのが厄介だったからという打算もあったのだけれども。

そして一つ付け加えた。

「あと、俺はソイツとは違う。もし俺がそんな立場でも気にする事は無い。絶対にな。」

「…」

「だから俺の事も気にするな。そしてお前が好きなようにやればいいさ。これからもな。」

「でも…」

「それならまた俺は否定してやる。お前の責任じゃないってな。」

「…あはは、それでも、私にはそう見えるの。」

「…そう見えるのはお前だけだ。」

「そうかな?」

「そうだ。」

俺たちの間に沈黙が流れる。彼女は優しい人間なんだと思う。ただ自分の持つ価値観に当てはめて哀れんで、そして救おうとして失敗して。

小さい頃はその方法で救えた人もいたのかもしれない。でも救えない人間もいる。死んだ彼や俺のように。選んだ人間と周りの人間に恵まれなかった。それだけだ。

「ま、でも。」

俺は続けた。

「そんな顧みない優しさが何時か誰かを救うのかもな。」

彼女はまた誰かを救おうとするのだろう。上手くいったり上手くいかなかったりして。そんで色々分かって大人になっていく。特に救えない人間が溢れていることに深く失望して。

「…じゃあさ。」

「ん?」

「私はこれからも私のやりたい様にやらせてもらうよ。それが貴方には好ましく見えなくてもさ。」

「そうか。俺は巻き込まないでいくれると助かる。」

「それはどうかな?」

彼女は子供っぽい悪戯めいた表情をしていた。

「あと、ありがとう。」

「…どういたしまして。俺は何もしてないけどな。」

「良いの、私がそう言いたかっただけだから。」

柔和な微笑みをして彼女はそう言った。

「さいですか。」

俺はどんな表情をして答えていたのだろうか。いつもの無愛想なものだっただろう。

歪んだ俺の青春のページは進んでいく。大きな波もなく、凪いだ海のように。

平穏な日常が続けば良いなと願いつつ。俺たちは互いに帰路についた。

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