あの後、姫野達に事情を説明し、二人に神社に来てもらった。二人もここの雰囲気が落ち着くのか、先程までの緊張は見られない。間違いなくこの神社、ただの神社じゃないな。
「……お主ら、呪われておるな」
神社のお爺さんが姫野と神代を見て言う。
やはり、あのひとりかくれんぼの影響がまだ残っていたということなのか。あのぬいぐるみを燃やしたところで終わることはできても、呪いなどは消すことができないということだろう。
「「え……?」」
急にそう言われて、二人は困惑する。
「お主らと、奴の狂気が怪異を呼び寄せた。夜までにどうにかせんと、命はないぞ」
今の時間は、太陽の位置的に夕方の少し前くらいだ。つまり、あまり時間は残されてない。
「……そ、そんな!」
「何とかできないんですか!?」
姫野と神代が焦った様子で言う。このままでは死んでしまうというのだから、当たり前だ。
「北に寂れた工場がある。アレの正体を知りたくば、そこへ行くがいい」
工場? ああ、そういえば道路の北の方に、建物の屋根のような物が見えていた。あれは工場だったのか。
お爺さんに言われた通り、俺達は北に向かった。
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「ここか……」
先程も言ったように、道路から少し見えていたため、すぐに到着した。
「有刺鉄線が切られてる……」
「ペンチも落ちてるわね……誰かいるのかしら?」
有刺鉄線が切られている。そこにペンチも捨てられていたことから、先程まで張ってあったのを誰かが切ったんだろう。
「さっきのお爺さんは、ここに行けばアレの正体が分かるって言ってたわね」
「うん。でも何だか嫌な予感がするよ……」
姫野の言う通り、ここだけ明らかに空気が重い。しかも、さっきから誰かに見られているような、そんな感じがする。これがあいつじゃなければいいんだが……。
「ほら、行くわよ。先に進まないことには何も始まらないわ」
神代が急かしてくるので、俺と少し遅れて姫野も中に入った。
この工場は廃れてから随分と時間が経っているようだ。大量の瓦礫が散らばっていて、窓の奥は真っ暗で何も見えない。建物もあちこちひび割れており、置かれているドラム缶はどれも完全に錆びている。
「うーん……見た感じ手がかりっぽいのはなさそうだなぁ……」
「こっちも何もなかったわ」
先程から少し手分けして辺りを調べているが、奴に関するものは全く見つからなかった。あのお爺さんが嘘を言っている可能性は低いだろうし、もっと奥に行かないといけないか。
「……誰かいるな」
「「え?」」
奥に行こうとして俺は足を止めた。人の気配と、何かが燃える音を感じ取ったからだ。ここには燃えるものがないので火事にはならないだろうが、一応警戒しながら進む。用もなくこんな場所にいる人が、少なくともまともな人間ではないのは確かだ。
警戒しながら進んだ先にいたのは、中年の女性だった。
「……アンタ達、この町の人間じゃないね」
中年の女性はこちらを見て早々、そんなことを言ってきた。
「何故、こんなところに一人でいるんですか?」
姫野が俺達全員が思っていたことを代弁する。
「別に。私がどこにいようが私の勝手だ」
中年の女性は吐き捨てるように言った。
「アンタ達もあの化け物に会ったの?」
その言葉で、俺達の女性に対する警戒心が一気に高まる。
「も、って……ということはおばさんも?」
神代が聞き返す。
「それ以外何があるってんだい。分かりきったことを一々聞くんじゃないよ」
……何だその態度は。神代は一応確認のために聞いたんだ。それに対してその返答はないだろ。
「身内の方とか、心配にならないんですか?」
姫野が聞く。さっきの言葉を聞いた感じ、この女性はこの辺りの人間だ。なら、身内がいてもおかしくない。しかし、この女性の感じからして……。
「ならないね。私はとっくに独り身だよ。旦那とは数年前に離婚。子供はあの世行きさ」
だと思った。旦那が、ましてや子供がいるのなら、一人でこんな場所に来ようとは思わないだろう。
「そうなんですか……失礼しました」
姫野が謝罪する。悪いことを聞いてしまったことに変わりはないからな。
だが女性は、姫野の謝罪を聞くと気味悪く笑いだした。
「……ククッ、なにを謝ることがあるの。まぁ、こんなババァの話に付き合ってくれるのなら話は別だけどね。……で、アンタ達……こんなところにまで何しに来たの?」
「あ、えっと、それは……」
急に聞かれたことに焦って、姫野はしどろもどろになってしまう。
「言っとくけど、この先には何もないよ。無駄足だったね……ま、おばさんに会えただけでもよかったんじゃないの。クックック……」
俺は女性の言い方に何か違和感があることに気づく。
おそらくこの工場の入り口にあった有刺鉄線を切ったのはこの人だ。俺達がこの辺りの住人じゃないということを知っておきながら、何故目的があってここに来たと思っているんだ? 何故無駄足だったという言葉が出てくるんだ? 何故道に迷った挙げ句ここに辿り着いたという可能性を考えなかった?
「私は死ぬまで鬼ごっこなんて御免だからさ……とりあえず安全な場所にでも隠れるとするよ」
ここに安全な場所はあるのか? この無限ループする現象もおそらく怪異の仕業だろうが、この空間に閉じ込められている時点で安全な場所はないだろう。そもそも夜になってしまえば、俺達は全員もれなく死ぬ。
「アンタ達はどうすんの? 鬼ごっこでもすんの? あの化け物と……。アッハッハッハッハ! 助けを求めたって無駄さ! あいつはどこまでも追っかけてくる……死ぬまで追っかけて来るんだよ!」
女性は狂ったように笑いながら言ってくる。
「チッ……神社に戻るぞ。ここには何もないみたいだし、時間はそう多く残されてないからな」
「う、うん……」
「そうね……」
あまりの気持ち悪さに、俺はここから離れることを選択した。神社のお爺さんなら、何か分かるかもしれない。二人も気持ち悪かったのか、あっさり承諾してくれた。
あの女性は俺達が見えなくなるまで笑っていた。
主人公のヒロインは誰?
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美琴ちゃん
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由香ちゃん
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どっちもだねどっちも
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ひとみこが正義や!(ヒロインなし)