怪異症候群 鬼の名を持つ少年   作:fruit侍

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今日こそあのリラ〇クマが出るぞお! といってもちょっとだけだけど……。


真実と正体

「本当に同級生……なんだ」

 

「一応な」

 

神代から衝撃(?)の事実を知らされた姫野は、学校関係の質問を色々としてきた。そしていくつか答えてやると、俺が同級生だということに納得したようだった。

 

言い忘れていたが、俺は身長が190cm近くある大柄な体格だ。たまに大人と間違えられたりすることもある。学校の巨人という異名が付いたこともあったな。そんな特徴があるにも関わらず、姫野は何故俺のことを知らなかったのか。

 

「さて、話を戻そうか。神代、単刀直入に聞く。あれは一体何だ?」

 

神代は少し躊躇うと、観念したように口を開く。

 

「あれは……ひとりかくれんぼで生まれた……化け物よ」

 

「ちょ、ちょっと待って。『ひとりかくれんぼ』って?」

 

知らない単語が出てきたことに、姫野が分かりやすく動揺する。

 

「ひとりかくれんぼってのは、降霊術の一種だ。人形に霊を乗り移らせることで、霊とコンタクトをとったり、術師としての質を高めることができるもの……らしい」

 

「やけに詳しいね……」

 

「こういうのには興味あるからな。決して実行などしないが。……それで、神代は何でひとりかくれんぼをしたんだ?」

 

「最初は面白半分だった。でもあんなことになるなんて……!」

 

神代は腹を押さえながら震えている。刺された時の恐怖が蘇ってきたのだろうか。

 

「大体、事情は分かった。それと言い忘れてたが、ひとりかくれんぼには大事な注意事項がある」

 

「な、何?」

 

「一度始めたひとりかくれんぼは、『きちんと終了の手順を守って終わらなければならない』。まあ要するに、怖くなっても家から抜け出すなってことだ」

 

「え!? それじゃあすぐに脱出はできない、ってこと!?」

 

一度始まったひとりかくれんぼは、終了の手順を守らなければ、永遠に続く。もし二階のベランダから脱出出来たとしても、神代の家が幽霊屋敷となることは間違いないだろう。

 

「まあ落ち着け。逆に言えば、その終了の手順を守りさえすれば、ちゃんと終わる。脱出の手口を考える必要なんかないってことだ」

 

「じ、じゃあどうやったら終わるの!?」

 

姫野が一気に近づいて聞いてくる。距離感というものがないのか、こいつには……。

 

「すまないが、俺もそこまでは知らないんだ。あの時はどういうものか知りたかっただけだから、サイトも途中までしか見ていない。神代、どこでひとりかくれんぼのやり方を調べた?」

 

「一階のお父さんの部屋。そこに、パソコンがあるから……」

 

俺は一階の入れる部屋には全部入ったが、パソコンがある部屋などどこにもなかった。だとすれば、鍵のかかっている部屋のどこか、だろう。

 

「神代、案内してくれ」

 

「分かってるわよ。……いたた」

 

神代は腹を押さえながら立ち上がる。止血はしたが、痛みまでは取れない。ただの応急手当に過ぎないからな。

 

 

 

 

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「あれ……!? 鍵はかけてないはずなのに、何で……!?」

 

俺達は神代の父親の部屋まで来た。予想通り、そこは鍵のかかっていた部屋だった。

 

「やはりか……。鍵を探すぞ」

 

「え? う、うん。でも、『やはり』ってどういうこと?」

 

神代が聞いてくる。姫野は俺が一階の入れる部屋に入ったことは知っているが、神代は知らない。話していないためだ。混乱を防ぐためにも、話しておくか。

 

「神代には悪いが、俺は一階の入れる部屋には一度入っているんだ。だがここは鍵がかかっていて入れなかった部屋の一つだ」

 

「え? 先に言ってよ!」

 

「だから悪かったと言っている。それに、同級生とはいえ赤の他人がここの鍵が閉まっていることを知ってたら、どう思う?」

 

何故知っているんだという疑問から、不信感に変わるだろう。何が起こるか分からない今の状況で、分かれて行動するのは危険だ。

 

「あ……そっか」

 

神代もどうやらそれを察したようで、納得した。

 

「それで、どこから探すの? この階から?」

 

「いや、一階は大雑把とはいえ俺が見ている。なら先に誰も見ていないところを探すのが一番効率がいいだろう」

 

神代はここの鍵がかかっていることを知らなかった。ということは、ここの鍵は神代が刺された後に何者かによって閉められたということだろう。姫野は玄関と神代の部屋にしか行ってない。それを考えると、この中で誰も行ってない部屋が二階にいくつかあるはずだ。

 

「神代、二階の部屋はいくつある?」

 

「お兄ちゃんと私と春子の部屋と……あと広い和室があるけど」

 

「なら和室を調べよう。広い場所を先に探したほうが、後々楽だ」

 

俺達は二階の和室へ行くために、階段の方へ向かった。

 

 

 

 

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俺達は神代の案内の元、無事和室の前まで来ることができた。それより、この和室が二階のど真ん中にあるとはな。どうも神代家のご主人は、大きい和室が好きなようで。

 

「開けるぞ」

 

俺はそう言って、襖を開けた。襖ということで、鍵はかかっていない。

 

だが、そこで俺達は信じられないものを目にする。

 

和室には、人が倒れていた。

 

「「「ッ!」」」

 

神代がすぐに死体に近づく。そして首に手をやる。

 

「ッ……!」

 

そして信じられないといったような表情になると、今度は目に涙を浮かべ、泣き出す。

 

神代に姫野と俺が近づく。

 

「姫野、この男性は?」

 

神代はとても話ができる状況ではないので、姫野に聞いてみる。

 

「おじさん……じゃ分からないよね。……由佳の、お父さん」

 

だから神代は反応したのか。そして神代の反応を見る限り、既に息絶えているのだろう。

 

「少しそっとしておいてやるか。姫野、神代のそばにいてやれ。鍵は俺が探す」

 

結局は俺一人で探すことになってしまったが、これでいい。実の家族を失った直後に探索をさせると、重要な物を見落としてしまう可能性がある。

 

「落ちてはないか……。この押入れは……」

 

俺は押入れを開けようとしたが、何故か開かない。何か中で引っかかっているのか、と反対側からも開けようとするが、こちらからも開かない。

 

建付けが悪いのだろうか。いずれにせよ開かないならどうしようもない。俺はもう一つの押入れを開けることにした。

 

ただその押入れの襖には、血がべっとりとこびりついていた。

 

(誰の血だ……?)

 

俺はそんなことを思いながら、襖を開けようとした。

 

突如、この和室に濃密な殺気が流れ込む。

 

「ッ!」

 

俺は反射的に飛び退いた。

 

「姫野! 神代!」

 

俺が大声で二人の名を呼ぶと、二人は葬式の時みたいな表情から驚いたような表情へ切り替わる。そして俺と同じように、血がこびりついている襖の方を向いた。

 

少しの沈黙の後、襖がゆっくりと開かれる。そこから出てきたのは、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミーツケタ♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血塗れの包丁を持ったクマの人形だった。




毎作品恒例のアンケート!

主人公のヒロインは誰?

  • 美琴ちゃん
  • 由香ちゃん
  • どっちもだねどっちも
  • ひとみこが正義や!(ヒロインなし)

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