怪異症候群 鬼の名を持つ少年   作:fruit侍

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ひっさびさの更新。お詫びと言っちゃ何ですが、いつもより長いです。

他の方の怪異症候群SS読んでたら書きたくなりました。




衝突と和解

神代父の部屋を後にした俺達は、ひとりかくれんぼを終わらせるための道具を探そうとしていた。必要なものは、塩水と暖炉に火をつけるもの、そして人形を拘束するものだ。しかし今までの部屋に、そんなものはなかった。おそらく俺が入ったことのない部屋にあるのだろう。

 

すると突然、神代が思い出したように口を開いた。

 

「そういえば、物置部屋の鍵は大広間の時計の裏にあるってメモをお父さんの部屋で見つけたんだけど……」

 

「なら大広間に行こう」

 

俺達は大広間へ向かった。

 

 

 

 

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なんとそこでは、人形が食べ残されている料理を食い散らかしていた。俺達が入ってきてすぐに人形は料理を食べるのを止め、振り向く。

 

ミーツケタ♪

 

人形は包丁を振りかざして襲い掛かってきた。

 

「ここでばったりとはツイてないな……!」

 

俺は大広間の隅に置いてあった壺を手に取る。

 

「神代、先に謝っておく! すまん!」

 

「え!?」

 

神代は一瞬その言葉の意味が理解できなかったようで、素っ頓狂な声をあげる。しかし俺は気にせず、壺を思いっきり人形に叩きつけた。

 

 

ガシャアン!!

 

 

壺は見事に粉々に砕けてしまった。しかし人形にもダメージは入ったようで、しばらく起き上がりそうになかった。

 

「あった! 鍵!」

 

俺が人形と戦っている間に、姫野は鍵を見つけ出していた。となればもうここに用はない。

 

「逃げるぞ!」

 

俺達は大広間を急いで離れた。

 

 

 

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「はあ……。あいつ、どこにでもいるな」

 

大広間を後にした俺達は、玄関で休んでいた。

 

「でも、鍵はあったよ!」

 

姫野が鍵を見せてくる。その鍵には物置部屋と書かれていた。この家の入れるところはほとんど入ったが、物置みたいな場所はどこにもなかった。この家に三階は存在しないようなので、可能性があるとするなら……地下か。

 

「神代、この家に地下はあるか?」

 

「あるわよ。ここからお父さんの部屋の方へ行く途中に入り口があるわ。でも、一階の入れる場所に全部入ったんなら知ってるんじゃない?」

 

「見落とした。扉も何もなかったから、ただの空間だと思ったんだ」

 

「……まあいいや、早く行くわよ」

 

神代は何か言いたそうだったが、すぐにいつもの調子に戻って先行した。俺達は神代に着いていくように地下に向かった。

 

 

 

 

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神代に着いていくと、本当に地下への入り口があった。階段を下りると、二つの部屋があった。

 

「確か、右が書庫で左が物置部屋だったはず……」

 

神代がそう言って左の扉に鍵を差す。すると扉が開いた。

 

「物置なら使えるものがいくつかあるかもしれない。三手に分かれよう」

 

俺達は探索を開始した。

 

俺は大きなクローゼット三つの探索だ。まずは左から。

 

「ガラクタばかりだな……」

 

壊れたりしていて使えそうにないものばかりだ。続いて真ん中。

 

「これもガラクタばかり……」

 

見つかったのはまたもやガラクタの山で、これまた収穫なし。最後に右。

 

「これもか……」

 

神代家は物置部屋をゴミ捨て場と勘違いしているのだろうか?

 

「何かバカにされた気がしたんだけど」

 

「気のせいだろう」

 

「……」

 

どうしてこういう時女性はやたらと鋭くなるのか分からん。そういう能力でも備わっているのだろうか。

 

全員探索が終わったところで、俺達は一度集まる。

 

「こっちは収穫なしだ」

 

「私の方も。美琴は?」

 

姫野は何か持っている。

 

「えっと、孫の手を見つけたんだけど……」

 

これはなかなかいい収穫だ。孫の手は手が届かない場所にあるものも取れるので、探索の幅が広がる。

 

「孫の手? 何に使うの?」

 

だが神代にはそれが分からなかったらしい。

 

「手が届かない場所にあるものが取れるだろう?」

 

「あ、そっか!」

 

神代は納得したように手を叩く。

 

「手が届かないといえば……私の部屋のベッドの下に何か転がってたのよね。寝っ転がりながらスマホ触ってたら見つけたんだけど、手が届かなかったから無視しちゃった」

 

結構重要な情報だ。何故もっと早く言ってくれなかったのか。

 

「神代の部屋に行くぞ」

 

俺達は神代の部屋へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「意外だな。お前に兄がいたとは」

 

「最近はほとんど話してないけどね」

 

神代の部屋で孫の手を使い、ベッドの下の物を取った俺達は、二階でまだ唯一開いていない扉の前に来ていた。神代によると、ベッドの下にあったものは、神代の兄の部屋のものらしい。

 

神代が鍵穴に鍵を挿し、俺達は中に入った。

 

しかし肝心の神代兄はいない。

 

「あのバカ兄貴、どこに行っちゃったのかしら。バカ兄貴のことだから、隠れてるとかはないと思うんだけど。大方そこの窓から脱出でもしたのかしらね」

 

そう言いながら、探索を始める神代。死体が見つかっていないということは、神代兄はまだ生きている可能性があるな。

 

そんなことを考えながら探索をしていると、鍵を見つけた。これは……書庫の鍵か。本なら、薪の代わりにはなるか。勝手に燃やすな? 今は緊急事態。やむを得ないことだ。

 

「……」

 

ふと、黙々と一人で使える物がないか探す姫野を見る。そういえばしばらく姫野が喋っていないな。何かあったのだろうか。

 

「姫野、何だか様子が変だぞ。どうかしたか?」

 

「あ、鬼道君……その……」

 

読み通り、何か隠していたようだ。

 

「実は……これ……」

 

姫野が渡してきたのは、『風呂場』と書かれた鍵だった。しかし他の鍵と違うのは、血が付着しているということ。

 

「おじさんの部屋で見つけたんだけど、椅子の上にポンって置かれてて、何だか変な感じがしたの。それで拾って見てみたら、血が付いてるし……それに、風呂場の前を通る度に、凄く嫌な予感がして……」

 

奴が鍵を閉めて回っているとすれば、鍵を隠すはずだ。現に西部屋の鍵は、奴が潜んでいた押入れにあった。しかし風呂場の鍵だけは隠されていない。血が付着しているのも、間違いなく奴が関係しているだろう。

 

それに姫野が感じた嫌な予感。実は俺も少なからず感じていた。風呂場から、扉越しに殺気のようなものを感じたのだ。

 

とすると、これは奴が仕掛けた罠である可能性が高いな。

 

「……姫野。これは見なかったことにしよう。罠である可能性が高い」

 

「う、うん」

 

姫野は風呂場の鍵をしまう。

 

「二人とも、使えそうなのがあったわよ!」

 

神代の方を見ると、粘着テープを持っていた。確かにあれは人形を拘束するのに使えそうだ。

 

「さて、これ以外に収穫は無さそうだし、他のとこ探しましょ」

 

「ああそうしようか」

 

俺達は神代兄の部屋を出た。その時、

 

 

グチャリ……グチャリ……。

 

 

「「「!」」」

 

血肉を踏み潰すような嫌な音が、俺達の耳に入る。間違いない、何かが、この廊下を歩いている。

 

「あ、あれ!」

 

姫野が指差した先には、和室で亡くなっていたはずの神代の親父さんがゆっくりと歩いていた。

 

首がない状態で。

 

「うっ……」

 

姫野が顔を青ざめさせて、口を押さえている。耐性がない人間にはかなりきつい光景だ。

 

「出来るだけ直視するな。幸い、奴の動きは遅い。隙を見て、下に降りるぞ」

 

しかし動きは遅かったので、捕まることなく俺達は下に降りることができた。

 

 

 

 

 

 

 

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階段を下りた途端、神代がへたりこんでしまった。

 

「もう……嫌ぁ……」

 

おそらくさっきの首がないのに歩いていた親父さんを見て、心が折れてしまったのだろう。

 

しかし今はそんなことをしている場合ではない。奴はどこにいるか分からないし、階段から降りてから、少し殺気が強くなった気がする。何が起こるのか分からないが、長居は危険だ。

 

「……神代、酷なことを言うかもしれないが、俺達は今、命の危機に晒されてる。そんなことをしてる場合じゃない」

 

「ちょっと鬼道君……!」

 

「お前一人ならこうしていようと別にいいが、俺達を巻き込んだということを忘れてもらったら困る。まずは『ひとりかくれんぼ』を終わらせる。悲しむのはその後でもできるだろう?」

 

「……たは」

 

神代が何か言ったが、聞こえなかったので、俺は何と言ったか神代に聞こうとした。その時、物凄い勢いで胸ぐらを捕まれた。

 

「……!」

 

そして神代は、俺の目を見て叫んだ。

 

「なら、あんたは家族が死んだ悲しみが分かるの!?」

 

途端、何故か胸の辺りがざわついた。

 

そこから神代は涙声で喋り始めた。

 

「お父さんは死んじゃって、お母さんとバカ兄貴と春子は無事か分からないし、家はこんなになっちゃって、挙げ句の果てに、美琴やあんたまで巻き込んで、もう何が何だか分からなくて……でも分かるのは、もうあの頃の家族には戻れないってこと……全部私のせいだってこと……私が遊び半分でひとりかくれんぼなんてやったから……でも、本当にこんなつもりじゃなかった……こんなつもりはなかったのよぉ……」

 

神代の声は徐々に勢いを弱め、最後は神代が泣き崩れてしまうと同時に聞き取れなくなった。

 

しかし俺には、それを気にするほどの余裕がなかった。胸のざわつきが収まらない。しかも次第にそれは強くなっていく。

 

今すぐ神代から離れないと、おかしくなりそうだ……!

 

「……姫野、神代の側にいてやれ。奴を見つけたら、死に物狂いで逃げろ」

 

「え? 鬼道君何するつもり!?」

 

「暖炉に火を付けれるものを探してくる。そう簡単には捕まらないから安心しろ」

 

「ちょ、ちょっと鬼道君!」

 

俺は台所の方へ走り出した。姫野が俺を呼ぶ声がするが、振り返らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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「はぁ……」

 

台所についた俺は一人座って、ため息を吐いていた。胸のざわつきは依然として収まらない。

 

(神代のあの悲痛な表情や叫びを思い出す度にざわつきが強くなる……いや、これはざわつきというより……悲しみ? いや、怒り? この気持ちは何だ? 一体これは何なんだ?)

 

「クソッ……!」

 

自分の中にあるものが分からないことにもどかしさや苛つきを感じた俺は、床を殴り付ける。すると床が、少し凹んでしまった。

 

「なっ……!?」

 

勿論、そんなに力を入れたわけではない。そもそも俺は床を凹ませるほどの力の持ち主ではない。

 

(さっきから俺に何が起こっている……!?)

 

自分に何が起こっているのか分からないことに、俺は少し怖くなる。俺はこのことを一刻も早く忘れるために、ここに来た理由である暖炉に火を付けられる物を探すことにした。台所ならライターの一つ二つはあるだろう。

 

「やはり、あったな」

 

予想通り、引き出しにライターが入っていた。ちゃんと火が着くかの確認もする。

 

目的は果たしたと台所を出ようとしたところで、とあることを思い出す。

 

「そういえば終わらせるのには塩水が必要だったな。ここで作るとするか」

 

そう言って俺は置いてあった空のコップに水を入れ、塩を適量入れて棒でかき混ぜる。これで、塩水はいいだろう。塩水を作る過程で調理用油が目に入ったので、暖炉に火を着ける保険として一応持っていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、鬼道君!」

 

姫野が声をあげる。神代も落ち着いているようだが、目は赤くなっている。

 

「ライターを見つけるついでに、塩水を作ってきた。それと暖炉に火を着ける保険で調理用油も持ってきた。二人はこれを持って上の和室に行っててくれ。俺は暖炉の薪の代わりになるものを探してくる」

 

俺は台所で入手したものを姫野と神代に渡す。

 

「それと神代、さっきは言い過ぎた。……すまなかった」

 

「……別に、もう気にしてないから」

 

神代の言い方は突き放すようだが、目からして本当に気にしていないようだ。

 

俺は暖炉の薪代わりになるものを探すため、地下の書庫に向かう。書庫になら、いらない本が一、二冊はあるだろう。

 

奴との決着は、刻一刻と迫っている。




次回でおそらくひとりかくれんぼ編は終わると思われます。

主人公のヒロインは誰?

  • 美琴ちゃん
  • 由香ちゃん
  • どっちもだねどっちも
  • ひとみこが正義や!(ヒロインなし)
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