怪異症候群 鬼の名を持つ少年   作:fruit侍

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筆が乗ったので書き上げました。

二章のマップは、原作のマップを左右反転したものです。展開を少々変えているためマップも変わっております。

正直に言うと、書いてる最中に菊川駅が東じゃなくて西だったことを知り、直すのが面倒だったので左右反転すればいいかってなったためです。


くねくね
何かが終わると何かが始まる


警察署を後にした俺達は、駅の方向へ歩いていた。

 

「氷室さんによると、ここをずっと先に行けば菊川駅に着くらしいんだけど……」

 

「だがもうかれこれ30分は歩いてる。駅どころかビルすら見えてこないぞ」

 

しかし、いくら歩いても着く気配がない。地平線に向かって歩いているようだ。

 

「二人とも、止まって」

 

何かに気づいたらしい神代が俺達を引き留める。

 

「どうしたの? 由佳」

 

「……あの自販機とゴミ箱、見覚えがあるのよ」

 

神代が指差した先には、赤い自販機と鉄でできたゴミ箱があった。

 

「自販機とゴミ箱なんてどれも同じようなものだろう。歩きすぎて疲れてるんじゃないのか?」

 

「……そうかもね。休憩にしましょ」

 

神代も自分で言ってはみたものの、改めてないと思ったのか、あっさりと引き下がった。

 

そうして俺達は神代が指差した自販機で飲み物を買い、少し休憩した。

 

「鬼道君……ブラックコーヒー飲めるんだね」

 

「眠りたくない時によく飲んでいるからな。学校でも飲んでるぞ」

 

「そうなのね……」

 

三本の缶をゴミ箱に捨て、俺達は再び歩き出した。

 

しかし10分くらい歩いたところで再び神代が止めてきた。

 

「……やっぱり、あの自販機とゴミ箱見覚えあるわよ!」

 

神代が再び指差した先には、見覚えのある赤い自販機とゴミ箱があった。

 

(一応確認してみるか……?)

 

俺は赤い自販機とゴミ箱に近づき、ゴミ箱の中を覗いた。確か、俺達が缶を捨てるまでは、何も入ってなかったはずだ。

 

(俺のブラックコーヒー、神代のサイダー、姫野のお茶……にわかには信じがたいが、俺達はここを通っている……)

 

ゴミ箱には、俺達が捨てた缶だけが入っていた。飲んだものの種類も完全に同じだ。薄々感じてはいたが、これで確信に変わった。

 

俺達は、同じ道を延々とループしている。だからいくら歩いても、駅に着かないのだ。

 

「どうやら、神代の言ってることは本当らしい。俺達は同じ道をループしてるみたいだ」

 

「そ、それじゃどうやって帰るの!?」

 

「あまり気は進まないが、辺りの人に話を聞いてみよう。もしかしたら、何か知ってるかもしれない」

 

頭のおかしい奴だと思われるかもしれないが、今はそうするしかない。

 

「人って、歩いてきた限りだと誰もいなかった気がするんだけど?」

 

「そこは、根気よく探すしかない」

 

俺達は道を外れ、畑や草むらがある方へ進んでいった。

 

そこから俺達は人を探し続けたが、見つかったのは畑で作業をしていると思われるお爺さんだけだった。

 

「思ったより人がいないね……」

 

「まあでも一人もいないよりかはマシだ。あのお爺さんに話を聞くとしようか」

 

俺達は畑に入り、お爺さんの方に向かって行った。

 

「あの……すみません……」

 

姫野が代表してお爺さんに話しかけた。

 

「……ん、どうした? アンタら……人の畑にまで入ってきて」

 

お爺さんは少し不機嫌そうだ。見ず知らずの他人が急に自分の畑に入ってきたら、そうなるのも仕方ないのかもしれない。

 

「あの……驚かないで聞いてください。こういうと変なんですが……さっきから、同じところをぐるぐる回ってるんです」

 

「……は?」

 

やはりこういう反応になるか。ここからは俺が話をしよう。

 

「俺達は訳あって警察署の方から来たのですが、この一帯に来た途端、どんなに歩いても同じ道に戻されてしまうんです。そこで、この辺りに住んでるであろう貴方なら何か知ってるのではと話しかけたのですが……」

 

「そらアンタら……狐に化かされてるとじゃなかね。はっはっは!」

 

お爺さんは全然本気にしておらず、冗談で俺達をからかって来る始末だ。

 

「本当なんです。いきなり信じろって言われても、無理な話なのは承知ですが」

 

俺の真っ直ぐな物言いが功を制したのか、お爺さんの態度が変わった。

 

「……本当かね? そんなら……ちょいと様子ば見に行こうかね」

 

「お、お願いします!」

 

何とか信じて貰うことはできた。

 

「……嘘じゃなかろうね?」

 

「はい。でなければ、知らない人に自分から話しかけるなんてことしませんよ」

 

「そうかい」

 

お爺さんはそう言うと、畑を横切って道路の方へ歩いていった。俺達もそれに着いていく。

 

道路に着くと、お爺さんが険しい表情をしていた。

 

「……確かに、どこか風が嫌な感じばい」

 

「一体、ここで何が起こってるのでしょうか……」

 

先程は歩いたりしていて気づかなかったが、お爺さんの言う通り風も変な感じだ。この時期の風は涼しさを感じさせるものだが、ここの風は寒気を感じる。単なる寒気ではない。嫌な予感がする方の寒気だ。

 

「……田舎には稀に起こる。こげな変なことがな。ま、ワシらにはどうしようもないことだって。こういう変なことは、放っとくのが一番よか」

 

「「「……」」」

 

「ここでボケっと立っとくのもつまらん。コトが静まるまで、ワシの家で寛いできんしゃい」

 

「あ……ありがとうございます」

 

お爺さんは畑の方向に歩き始めた。俺達が畑の方に行く途中にあったあの建物は、お爺さんの家だったのか。

 

俺と神代はお爺さんに着いていくが、姫野は畑と反対の方向を見ている。

 

「……?」

 

「……どげんしたかね? そんなところに立ち止まって」

 

動かない姫野に気づいたお爺さんが、姫野に声をかける。

 

「あ、いえ……大したことじゃないんです。なんかあそこに白いモヤみたいなのがあって……」

 

姫野が指差した方向には、確かに白いものがある。飛んできたビニール袋か、はたまた風に煽られている案山子か。

 

「ん? ……よう見えんばい」

 

俺達には見えるが、お爺さんには見えないようだ。年を取るとやはり老眼になるんだな。

 

「ちょっくらメガネをかけんとね。……どれどれ」

 

もちろん、老眼鏡は持っていたようで、お爺さんはそれをかけてから再び姫野の指差した方向を見る。

 

しかし、お爺さんの動きがふと止まった。神代と姫野はそれに気づいていない。

 

「なんだか……変ね。生き物みたい」

 

「あの……ちゃんと見えますか?」

 

反応しないお爺さんに返事を求める姫野。それにしても、生き物みたい、ね。言われてみれば風に煽られているというより、生き物のように動いているように見える。

 

ん……? 田舎……白いもの……生き物のように動く……。

 

その時、俺は思い出した。

 

「見せるな!」

 

「えっ? えっ?」

 

急に大声を出した俺に二人は驚く。だが気にしている暇はない。急がないと手遅れになる。

 

「お爺さんにそいつを見せるな!」

 

「ちょ、ちょっと! 急にどうしたのよ!」

 

お爺さんはゆっくりこちらに振り向いてきた。

 

しかしその表情は、狂気すらかんじる満面の笑みだった。

 

ああ、遅かったか……!

 

「……わカらナいホうガいイ……」

 

大きく口を開け、一文字ずつ発音するようにその言葉をお爺さんが言った直後だった。

 

「#%&*@^%^:-|/#★●@&§|`#;%,&ーーーーーー!!!!」

 

人には発音できないような声を出しながら辺りを走り回り、お爺さんはそのままどこかに走り去ってしまった。

 

「な、何が起こってるの!?」

 

お爺さんが走り去っていく方向を見ながら姫野が言う。

 

その時、お爺さんを狂わせた元凶であろう、白いものが俺達の前に現れた。

 

「!」

 

俺は奴から咄嗟に目を反らした。

 

「§&↑★;`@%#&」

 

「ひっっ!」

 

奴が気持ちの悪い声を出すと、姫野が短く悲鳴をあげる。奴からは生物特有の感じが一切しないが、敵意を感じる。逃げれば間違いなく追ってくるだろう。

 

「逃げるぞ!」

 

しかし逃げる以外の手段は俺達にはない。俺達に、こいつをどうこうできる手段など、存在しないのだ。

主人公のヒロインは誰?

  • 美琴ちゃん
  • 由香ちゃん
  • どっちもだねどっちも
  • ひとみこが正義や!(ヒロインなし)

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