狂いのストラトス Everlasting Infinite Stratos   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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■より 尸解狂宴必堕欲界


第拾参話

 鈴対真耶の意外な好カードが終わった後は実習訓練となった。一夏、鈴、セシリア、シャルル、ラウラがリーダーのグループに別れる。集まりが多かったのはやはりと言うべきか一夏とシャルルだった。一夏は今更だしシャルルは実習ということもあって気配を消していない。それに千冬が頭を痛めながらグループを分けさせたのは……何時も通りか。

 

 結局、一人8人のグループに別れた。

 

「えっと、じゃあ、まずは歩行まではやろうか。最初は」

 

「はいはいはーい!」

 

 やたら元気のいい声を上げたのは、

 

「出席番号一番! 相川清香! ハンドボール部! 趣味はスポーツとジョギングだよ!」

 

「いや、知ってるけど……」

 

 仮にもクラス委員長だし、クラスメイトの名前や部活と趣味くらいなら把握している。ていうか、結構喋るし。

 

「あはは、なんとなくね」

 

「お見合いじゃあるまい……」

 

「いや、それはないでしょ。凰さんに殺されたくないし」

 

「な、なんでそこで鈴の名前がでてくるんだ」

 

「いや、なんでって言われても」

 

 ねぇ、と他の六人も同意するように頷く。因みにあと一人は箒である。いつものように澄ましたように腕組みをし、目を伏せている。

 

「え、ええい、ほら早く始めよう」

 

「はーい」

 

 なんか、からかわれているが目をつむる。そして、装着、起動、歩行と問題なく進んでいく────わけには行かなかった。清香がISから降りた時にしゃがみ忘れたのだ。当然ながらIS立った状態では次の人が乗れない。

 

「うーん、どうしようか。……………俺が踏み台にでもなるか」

 

 どうするか、と迷った時に、

 

「一夏、次は私がやろう」

 

 箒が進み出た。

 

「は? どうした……?」

 

 箒は答えなかった。

 黙って立ったままのISに近寄り、

 

「よっと」

 

 軽く飛んだ。跳んで一度ISの装甲を足場として蹴って、

 

「ん」

 

 ISに背中から倒れ込むように、装着した。

 

「……………」

 

 そのまま軽く歩いて、すぐにしゃがみ込み、

 

「ほら、これで問題なくなっただろう」

 

 無表情で言ってきた。

 

「ど、どうしたんだよ、箒」

 

「別に……」

 

「ありがとね、篠ノ之さん! ゴメンね、私のせいで!」

 

「え、あ、ああ。き、気にしないでくれ」

 

 箒が清香に握られ、キョドっている。大丈夫だろうか。テンパって変なこと口走らなければいいが。

 

「な、な、なに、クラスメイト、じゃないか。級友を手助けするぐらい、あ、当たり前、だ」

 

「ありがとうありがとうありがとうね! 箒さん友達思いなんだね!」

 

「え、え? 友達、思い?」

 

「うん!」

 

「そ、そうか……。私たちは、友達、なのか」

 

 噛み締めるように呟く箒を見て、一夏は、

 

「…………………!」

 

 滂沱の涙を流していた。ようやく、ようやく2ヶ月間頑張って人格更正プログラムを受けさせた甲斐があった。小学生が見るような道徳的映像やら道徳的な小説を読ませたのだ。見せた自分が言うのもなんだけど、この年になってああいう類の話を見るのは苦痛だ。だが、それでも無理に見せてたまに刀を抜いたりしたけれど、それでもなんとか見させた。最近部屋が変わって更新プログラムも出来なくなってしまったが同室の子にやらせるように頼んでいた。

 そして、今。

 

「清香って呼んでくれていいからね!」

 

「う、うむ、き、清香」

 

「うん!」

 

 さらには清香に続き他の女子も名前で呼び合っていく。

 

 あの箒が友達を創っている……!

 

「やりました、やりましたよ束さん……! ついに箒に戦闘無関係の友達が……!」

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

 

 その時、どこかの場所で。

 束はハンカチで目元を拭きながら、

 

「ううー、よがっだね、箒ぢゃん……! おねーちゃん嬉しいよぉ……!」

 

 

 

 

・・・・・・・

 

 

 

 

「そう気負いするな。なに、歩く事などISがあろうとなかろうと変わらんよ」

 

「な、なるほど……ありがとう、ボーデヴイッヒさん!」

 

「ふ、気にするな」

 

「そういえば、ボーデヴイッヒさんて軍にいたんだよね? 階級とかあったの?」

 

「む、一応少佐相当の権限はあったな。まあ、正確な役職らばドイツ軍IS部隊隊長というものだったが」

 

「す、スゴいね。少佐って呼んでもいい?」

 

「構わん、好きに呼べ。ほら、そろそろ次の者に代われ」

 

「ヤー!」

 

 なにあの子カッコイいい。

 というか、なんだあのノリ。

 

 

 

 意外にも馴染んでいるラウラだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、セシリアー。一夏知らない?」

 

「あら、鈴さん」

 

 放課後、銃火器のメンテナンスをしていたセシリアは第三アリーナで鈴に声を掛けられていた。

 

「一夏さんですか? 先程シャルルさんの案内に来てましたけど。さっき出て行きましたが」

 

「あっちゃー、入れ違いかー。残念」

 

 どこにいるのかなー、と早々に踵を返しアリーナを去ろうとするが、

 

「おい」

 

「ん?」

 

 横合いから掛けられたら声に顔を向けた。

 ラウラだ。

 

「織斑一夏がどこにいるか知らないか?」

 

「知らないわよ、私も探してんのよ。なに? なんかあいつに用?」

 

「ああ───少し、死合いをしたくてな」

 

「……………は?」

 

 鈴は信じられないようなことを聞いたかのようで、

 

「ん? あれ、耳おかしくなったのかしら? もう一回言ってくれないかしら?」

 

「織斑一夏と死合いをしたいから、居場所を教えろと言っているんだよ」

 

「………あんたって、そんなキャラなんだ。へぇ」

 

 数度、頷き、

 

「──ナマいってんじゃないわよ」

 

 全身から闘気と殺気を溢れ出させた。

 

「はぁ? なに言ってのよ。ぽっと出キャラが粋がってんじゃないわよ。私の許可なしにさぁ。あいつと死合い? なに、あんたあいつ殺したいの? ダメよ。全然ダメよ。あいつ殺すのは私なのよ。引っ込んでなさいよ、新キャラが」

 

「………私はただ居場所を聞いているだけなんだがな。貴様の都合などしらん、なぜ貴様に許可を取らねばならん」

 

「はぁ? 決まってんでしょう」

 

 鈴は胸を張って、

 

「あいつは私のもので、私はあいつのものなんだから」

 

(─────言い切った!?)

 

 セシリアと周囲で見ていた皆が思った。

 

「なんだそれは、子供の理論だな。そんな駄々に付き合うつもりはない。さっさと教えろ。ここに来てまだ日も浅い、一々探し回るのは面倒なんだよ」

 

「い・や」

 

「───ほお」

 

 瞬間、空気が軋む。

 

「最後だ、織斑一夏の場所を教えろ。教えなければ……まぁ、半殺し程度で済ましてやる」

 

「はぁ? 無理よ、そんなん。知ってるかしら? ぽっと出の新キャラってのは、最初に調子こいたら後で手痛い目に会うのがお約束なのよ」

 

「知るか」

 

 空気が、さらに軋みを上げていく。すでに二人の周囲にいた生徒たちは避難し、セシリアは頬に手を当て、

 

「……いつ止めましょうか」

 

 友人二人を止めるタイミングを見計らっていた。

 

「いいだろう、郷が乗ったならば見せてくれ先輩どの。古参キャラ《ロートル》の力量を。貴様を下した後に自分で探そう。セシリア、手を出すなよ」

 

「なに、やるの? いいわよ、来なさい。先輩として格の違いを教えて上げるわよ。そうね──私からは攻撃しないから。好きにやってきなさいよ」

 

「………吠えたな、蜥蜴が」

 

「蜥蜴じゃない、龍よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先に動いたのはラウラだ。鈴は攻撃しないというのだから当然だか。ラウラは腰のホルスターから拳銃を抜き、撃つ。セシリアのような美しさはない。ただひたすらに、無駄という無駄を削ぎ落とした動作。何万回と繰り返し徹底的に最適化された動き。それを以てラウラは鈴へと発砲する。狙いは、すべて急所。頭、喉、心臓、腹の中央。口では半殺し程度と言っていたがそれで済ますつもりなど毛頭ない。ボロ雑巾のようにして、織斑一夏の前に突き出してやる。

 だが、

 

「は」

 

 その最適の弾丸を鈴は当たり前のように回避した。踊るように。ステップを踏みながら。

 

「思いっきり急所狙いじゃない。酷いわね、アンタ。なるほど、女としてはともかく戦士としてはやるじゃない」

 

「生憎、女である前に軍人なのでな」

 

 軽口を吐きつつリロード。新たなマガジンを装填。撃つ。

 だが、

 

「ふうん」

 

 鈴は何でもないように回避する。いや、回避するというのは正確ではないかもしれない。鈴の動きは回避の為の動きには見えない。

 

 踊っているのだ。細かいステップを踏んで、体を揺らす。腕や足を大きく動かすことはないが、それは確かに舞いだ。

 

「アンタさ、いい女の条件って知ってる?」

 

「知らんな、聞いてなかったのか? 私は女である前に軍人なのだ。そんなくだらないものに興味はない」

 

「そのくだらないものがあるからアンタは私に触れられないのよ」

 

 言葉の間にもラウラの銃撃は止まらない。むしろ一丁だけではなくもう一丁追加され、さらには時折投擲用ナイフが混じり、苛烈さを増していく。

 だが、

 

「いい女ってのはね、惚れた男以外には触れさせないのよ」

 

 その苛烈な銃撃に身を置いても、鈴は無傷だった。むしろ、腕を組む余裕さえあった。

 

「誰かに惚れた女が、あいつに惚れた私が。あいつ以外に体を許すわけないでしょうが。いい? 高嶺に咲く華は誰にも摘まれないのよ。惚れた男以外にはね」

 

「くだらん」

 

 吐き捨てた。

 

「くだらんな、惚れた? 体を許さない? 高嶺に咲く華? だからどうした。ああ、なるほどご立派だな、貴様の矜持は。見事と言ってもいい。だがな───それらが、全て蹂躙されるのが戦というものだ」

 

 そして、ラウラが量子変換(インストール)から2つ同時に取り出したのは、

 

「……パンツァーファウスト」

 

 セシリアか目を細めながら呟く。セシリアの趣味ではないがラウラが好んで使う武装だ。だが、

 

「否」

 

 それをラウラは否定する。 本来なら乳白色や濃い緑、または焦げ茶色等が多いが、黒、赤、黄に弾頭がカラーリングされたそれは、

 

「ドイツ様式パンツァーファウストだ」

 

 ぶっ放した。

 それは真っ直ぐに鈴へと向かって、

 

「────────」

 

 爆発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 鈴がいた所に大きな爆煙が上がった。それを見て、ラウラは満足げに頷く。流石は我が祖国ドイツ式が武装。カラーリングだけでなく、火薬とかも弄ったかいがあったものだ。

 しかし、

 

(いかん、死んだか?)

 

 流石に不味い。今の一撃で殺してしまったかも知れないと思うと冷や汗が流れる。下らないことをいうからつい調子に乗ってしまった。 教官に怒られるのは、イヤだなぁと思いつつ、

 

「────通りませ 通りませ」

 

 聞いた。

 

「行かば 何処か細道なれば」

 

 歌を。

 

「天神元へと 至る細道

 ご意見ご無用通れぬとても

 この子の十の お祝いに

 両のお札を納めに参ず

 行きはよいなぎ 帰りこわき

 我が中こわきの 通しかな」

 

 響く、歌を。爆煙が晴れていく。いや、晴れていくのだが、晴れ方がおかしい。一点を中心として、煙が吹き飛ばされいる。

 そして、その中心にいたのは、

 

「ーーーー『私は惚れた男以外に触れられたくない』」

 

山吹色のチャイナドレス姿の鈴だ。 両腕を広げてくるくる回る姿は無傷だ。

 

「なにをした……?」

 

「知りたい?」

 

 鈴は舞いを止めることはせず、しかし饒舌で、

 

「私はね、惚れた男以外になんか触れられたくないのよ。私はそんな安い花《オンナ》じゃない。私と共にあれる人だけ。その人以外に手折られるのなんて許せない。だから私は高嶺に咲くの」

 

 自分は高嶺にいるから、誰にも触れさせない。 触れることを許さない。 手折られても、枯らされても本望と思える人間──織斑一夏以外の馬鹿は許さない。

 彼以外に触れられてたまるか。

 

「舞いそのものには意味はななくても、私の歪みは私に迫る存在を惑わし、私の魂は私自身を高嶺に押し上げる。惚れた男が私を摘みに来てくれるように、私は高嶺に咲き誇るのよ」

 

 だから舞いを舞う限り、私に攻撃は通じない。 そう、主張する鈴に、

 

「───────なるほど」

 

 ラウラは静かに頷いた。

 

「なるほどなるほど」

 

 数度頷き、

 

「おもしろい」

 

 口元を歪めながめ、凄惨に笑った。

 そして、そのまま、

 

「─────本気でやらせてもらおう。死んでもしらんぞ」

 

 制服から量子変換(インストール)しておいた軍服に姿をかえて、左目の眼の眼帯を取り外した。

 妖しい光を放つ金眼が露わになり、

 

「────いけません! ラウラさん!」

 

 セシリアの制止も聞かずに、ラウラは鈴を見た。

 見た。

 見て。

 その瞳に、未だ舞い続ける鈴を写し

 

「!」

 

 ラウラの首に銀閃が走った。

 しかしラウラは寸でのところで回避し、大きく跳ぶ。

 

「おいおい、なにやってるんだよ、鈴」

 

「一夏!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったくよ、人が案内してる時に騒がしいと思ったらすげー楽しそうじゃん。……っと、悪いなシャルル、案内はまたこんどなー」

 

「いいよー」

 

 離れたところから、セシリアの横でシャルルが手を振ってきた。

 すでに白の着流しの一夏も手を振り返し、

 

「んで? なんでこんな事になってんだよ」

 

「えーと、なんでだっけ……?」

 

 鈴が舞をとめて惚け、それに答えたのは

 

「そこの二人が、お前を巡っていきなりバトりだしたんだよ」

 

 箒だった。

 

「って、箒? こんなとこにいたのかよ」

 

「……まったく、せっかく清香たちと訓練をしていたというのに…………」

 

 ぶつぶつ文句を言いながら、セシリアの横に並んでいた。どうやら、早速できた友達と訓練していたらしい。訓練といっても、近接格闘について、箒が指導していただけなのだが。

 

「で? どういことだ?」

 

 それに答えたのは、ラウラだった。

 

「織斑一夏。私と殺し合いをしてほしいんだよ」

 

「………はあ? なんでだよ」

 

「は、お前も私も戦士だろう? 死合うのに理由なんかいるか?」

 

「いや、そんなこと言われてもなぁ」

 

「それても、その腰にぶら下がっているのは偽物か? ああ、いや本物でも、そんな鉄の棒では大して変わらんか」

 

「はぁ?」

 

「っ」

 

 反応したのは一夏と箒だ。かつてのセシリアと同じように二人から剣気と怒気が溢れ出す。違うのは止める千冬はいない。一夏が刀に手をかけ、箒も長刀を出して前に出る。

 

「あれ? なんか大変なことになってない?」

 

「なってますねわね」

 

 もう、この六人以外にアリーナから人間が消えていた。

 

「………まったくよぉ、なんだよ。セシリアもお前もよぉ。アレか? ヨーロッパ人てのは刀嫌いなのか? 銃至上主義か?」

 

「………………」

 

 二人から怒気と剣気が止まることなく流れだし、

 

「ああ、いいぜ。いいよ、やってやるよ。殺してやるよコラ」

 

「私にも残しておけよ。後でもう一回私が殺す」

 

「って、ちょっと待ちなさい」

 

「あ?」

 

「あんた、私より先にコイツ殺しに掛かるとかどういうつもりよ。そんなことしてたら、その前に私があんた殺すわよ」

 

「あー、じゃあそうだな。俺がコイツ殺しに行くから、お前が俺を邪魔しろよ。そうすればいい感じに半殺しだろ」

 

 という、一夏のふざけた提案に、

 

「…………いいわね、それ」

 

 うんうん、と頷いた。今度は舞いではなく、拳を構え、

 

「唵・摩利支曳娑婆訶―――」

 

 呟きと共に鈴の姿がズレて重なっていく。蜃気楼のように、陽炎のように。そして、それを見た一夏は笑みを浮かべ自らも、

 

「如医善方便、為治狂子故、顛狂荒乱、作大正念、心墜醍悟、是人意清浄、明利無穢濁、浴令衆生、使得清浄――――諸余怨敵皆悉摧滅」

 

 一夏は自分の在り方を変える。自らの歪みは鈴と共に受け入れた。だから、鈴が隣にいる時はその本性をさらけだそう。人斬りの狂気を正気へと変えていく。

 二人の体から殺気と殺意が物理的な質感が生まれる。

 それに対し、ラウラは、

 

「はっ、なにをベラベラと。そんなことをしなければならないから貴様らは所詮アマチュアなんだよ」

 

 瞬間、ラウラからも様々な気が質量を得て流れ出す。一夏と鈴がそれぞれの詠唱で行ったことを意識の切り替えのみで為したのだ。そして最早言葉は必要ないと前に出ようとし、

 

「おいおい」

 

「………はぁ?」

 

「……戦の作法も知らんのか、貴様」

 

 突然止まった。何も変わった様子は、ない。だが、しかし三人の、いや箒すらも目を細めて睨んだ先は、

 

「知らないよ? 僕戦士じゃないからね」

 

 ────シャルルだった。

 彼は手袋をはめた右手を突き出し、

 

「よくわかんないけど、止めたほうがいいかなっておもったんだよね」

 

「おいおい、シャルル。お前も男だろ? わかるだろ? こういう横槍本当にムカつくだよ」

 

「………わかんないよ、僕にはね」

 

 少し目を伏せて、

 

「じゃあ、止めてよね。今すぐ止めるなら何もしないからさ。でも動くっていうなさ───腕一本くらいは覚悟してよ」

 

 何かをしているようにも見えない。殺気も殺意も怒気も闘気もない。しかし、それでも背筋が凍らされるような感覚が彼にはあった。

 並の人間なら腰を抜かすだろう。

 だか、ここには並の人間などいない。

 

「アホらし」

 

「まったくね」

 

「笑止」

 

 三人は三人ともまったく怯まずに動く。何かを斬り落とし或いは引きちぎったりして、動いた。それにシャルルが再び指を動かし、箒がすでに抜いていた大太刀に指を滑らし、セシリアがいい加減止めようとして銃を抜き。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────────いい加減しろよ、馬鹿共」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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