狂いのストラトス Everlasting Infinite Stratos   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

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推奨BGM:.幸魂奇魂守給幸給or賑やかな日々の中(境界線上のホライゾンⅡより)

ホニメⅡ期のサントラ買ったので推奨BGM追加。
賑やかな日々の中でというのは、ええ、ホニメⅡ期で言えば浅間のオパーイ揺れ曲ですよ。ここまで言えば分かるよね?



第弐話

 

夏休み明け九月三日の放課後の一年一組。その放課後、教室内はにぎやかな喧騒に包まれていた。

 各々思い思いに友達と談笑したり、一人物思いにふけったりしているが、総じて和やかで騒がしい。授業ではないからHRであるが故に普段ストッパーである千冬がいないからかなり自由な雰囲気だ。

 

 パンパンと黒板の前で一夏が手を鳴らして、クラスの注目を集める。 

 彼の背後の黒板に書かれた文字は『文化祭』で、

 

「よーし、文化祭の出し物決めるぞー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真っ先に手を上げたのは意外にもラウラだった。腕がピンと延びている。誰もが意外そうな顔をして、

 

「……んじゃあ、ラウラ」

 

「ああ」

 

 一夏が彼女を指名し、立ち上がる。やはりピンと伸びた背筋で、周囲を見回し 

 

「このクラスには三人の代表候補生がいる」

 

 そんな前置きで語りだした。意外に真面目な雰囲気に全員が身構える。

 

「そして世界唯一の男性操縦者も、開発者である篠ノ之束博士の妹おり、担任は世界最強である織斑千冬だ。加えて言えば服担任も元代表候補性でもあったわけだ。……つまり、このクラスは世界的にもてもかなり重要であるわけだ。故に」

 

 拳を握り、言う。

 

「――ドイツ博覧会をやろう!」

 

「前置きは!?」

 

 いい顔で言いきるラウラに全員が突っ込んだ。

 

「待て。ちょっと待て。いやすごい待て」

 

「なんだ」

 

「いや、お前……最初のあの下りはどこ行ったんだ。なんだ、すげー真面目な話してどうなってんだ」

 

「うむ、あれは最初に真面目なことを言っておけばなんやかんやで通ると思ってな」

 

「通るか!」

 

 叫ぶ一夏に、しかし不思議そうに首を傾げ、

 

「なんだ。なにか不満でもあるのか? ほら大ドイツ帝国の博覧会をやるのだぞ? 諸手を上げて喜ばんか。これでいいだろう」

 

「ダメだ却下だ席に付け」

 

「解せぬ……」

 

 解せるよ。理由は自分で言っていただろうに。こんなクラスで一つの国のこと取りあげたらそれこそ問題だ。

 とりあえず相変わらずの愛国精神のラウラは座らせる。基本彼女のナショナリズムはいつものことなので皆も苦笑いだ。

 

「んじゃ、他に誰かないか?」

 

 改めて見回して、スッと延びたのは、

 

「……んじゃあシャル」

 

「ん」

 

 指名されたシャルが起立して言う。だが、大体皆は彼女が何を言うか予想はしていた。

 

「忍者屋敷がいいな! 教室とか改造して派手にやろう!」

 

「うん、まぁだろうな」

 

 大体予想してた通りだ。この忍者マニアならそう言うと誰もが思っていた。

 

「うーん、でも、そうだなぁ……」

 

 結構アリかもしれないと、一夏は思う。

 短い間だが同居していたから知っているが、シャルロットは結構おもちゃ関係も持っているのだ。なんでも日本に来た時にいろいろ回って買いあさったらしい。実際モノホンの忍者であるシャルロットが案外行けそうだし。

 

「それにほら、皆にも分身の術教えるから。案外できるよ?」

 

「出来ないよ!」

 

 皆からツッコミが入った。

 が、

 

「ああ、うん。確かに案外できたよなぁ」

 

「流石にシャルさんほどの数は無理ですけどね」

 

「それに私たちの出来るのは実体持たせたのではなくて残像とかだしな」

 

「私は魔力で再現できるけどねー」

 

「……私も行けたぞ。それでも五人だがな」

 

「……」

 

 そうだ、こういう人たちだったと皆が半目を向けていた。

 ちなみにシャルのような実体をもたせられるのは箒と今ここにはいない鈴と蘭、魔力で再現する本音。一夏やセシリア、ラウラは歩法による残像と目の錯覚によるモノだけだ。

 

「んー、まぁ分身の術はともかく忍者はアリだな、うん」

 

 軽く頷き黒板に“忍者”と書き込んだ。黒板に書かれた文字は“文化祭”と“忍者”。

 だが流石にこれだけはどうかと思う。

 

「他になんかないか?」

 

 呼びかけるが、今度は手は上がらない。それぞれ隣や前に席の子と話すだけだ。再び教室が騒がしくなる。

 意見を求めるだけではアレなので一夏もなにか考えてみる。真っ先に思いついたのは、

 

「刀剣博覧会……」

 

「……」

 

「は、だめだなうん。物が無いし」

 

 呟いた瞬間騒がしさが消えて一斉に半目を向けられたので撤回する。実際物が無い。実家に帰ればそこそこあるだろうが、中々帰れないし、一夏が持ってるのは美術的価値を無視してかき集めた人斬り包丁ばかりだ。さすがに危ない。あと美術的価値を無視してあるが、結構値の張るのものあるらしい。持ち出すと千冬に怒られる。それは避けたい。というか避けないと死ねる。

 

「そうだなぁ……」

 

 腰の刀に手を当てて考える。柄をなでながら、

 

「無難に喫茶店とか……」

 

 悪くないんではないかと思う。無難と言えば無難だが、王道と言えば王道だろう。問題は食べ物関係だが、

 

「えっと、料理とか出来る人は?」

 

 問われ、クラス全体の三分の一の手が上がった。まぁこんなもんだろう。大体こういう時に手を上げるのは自信がある者だけだろうから実際には最低限くらいできるのはもう少しいるはずだ。一夏もそれなりに出来る。千冬が生活力皆無なので束に教えてもらったのだ。確か、鈴も同様だったはず。

 

 ちなみに束の料理はプロ級である。基本的にどこの世界の料理もめちゃくちゃ旨い。  

 

 そこら辺が箒が料理まったくできない所以であるが。

 

「ふむ……じゃあ、一応候補にっと」

 

 “喫茶店”が追加される。

 これで“文化祭”“忍者”“喫茶店”だ。

 これで三つ。だがやはり案としては物足りないだろう。

 ではどうするかと言われたら困るのだが。雑談を交わす皆を見回し、聞き耳を立てて様子を探ってみる。事によれば、誰かがポツリと呟いたことを拾うしかない。

 そして、聞こえたのは。

 

「……すぅ……すぅ……」

 

「…………」

 

 寝息だった。それもうたた寝とかではなく結構ガチな眠りだ。誰が、なんて問うまでもない。こんなタイミングで寝る人間は一夏の知り合いでは二人であり、一人は四組であるがゆえにここにはいない。だから当然候補は一人で。

 

「……すぅ……すぅ」

 

 篠ノ之箒しかいない。

 

「おい、ほ……」

 

「ちょっと待て織斑君っ」

 

「……相川さん?」

 

 箒を起こそうとしたの一夏を制止したのは箒の隣の席の清香だ。彼女はあくまでも小声で、箒にも意識を配りつつ、

 

「ダメだよ、箒さん寝てるんだから」

 

「え、でも今HR……」

 

「でも、こんなに気持ちよさそうにしてるんだから。起こしたらダメだよ。ほら、意見とかは他の皆が出すからさ。ね?」

 

 清香がクラス全体に目配せをしたら、大半が頷いていた。例外は苦笑しているセシリアや未だ自分の意見が通らなかったことに納得してないよで渋面のラウラに、

 

「…………」

 

 なんか遠い目をしていた本音だ。一夏も同じような目をしているだろう。

 二人は思う。

 ああ、こうしてコミュ障は進んでいくんだなぁ。

 なまじ周囲が優しいから改善されない。なんか見守ろうもたいな雰囲気なのだ。特に本音は自分でも簪を甘やかしている自覚がありそうだから尚更だろう。一夏も同じだし、束なんかはだだ甘だから始末に負えない。人格構成プログラムやら性格矯正プロジェクトが一定以上に進まない所以である。

 夏を終えてかなり皆と打ち解けた思ったら今度はマスコット扱いである。そういうのは本音だけでいいと思うんだが、

 

 とりあえず、その本音に振ってみた。

 

「え、えっと……じゃあ、のほほんさんはー?」

 

「え、えっと……そうだねー、コスプレとかーいいんじゃないー?」

 

 コスプレ。

 なるほどこれも王道と言えば王道だ。

 基本的にIS学園の生徒たちは綺麗所揃いだ。全体的にレベルも高い。一夏も男であるし、そこらへんの価値感はかなり独特だが、それくらいはわかる。というかよく弾から羨望のメールやら電話が来るし。夏休み中は毎日だった。蘭なんかは修行目的で名目上学校見学で毎日のように来ていたたが、当然弾は入れない。いや、束や千冬が取り計らおうとしてくれたのだが、蘭によって蹴落とされた。だから様子を聞くのと血涙混じりの連絡が頻繁だったのだ。

 まあそれはともかくとして、

 

「うん、“コスプレ”というのはアリだな」

 

 黒板に書き込む。

 これで黒板に書かれた文字は“文化祭”“忍者”“喫茶店”“コスプレ”だ。

 ふむ、とやはり刀の柄をなでながら考える。四つだ。さてどうだろう、これは多いのか少ないのか。中学の時は無数の候補が出て、結局これくらいの数で多数決をしていたはずだ。三年間とも。

 中々判断しにくいところだ。“とりあえず”としての案なら少ないし、“本命”としては多い。

 そして皆は少ないと取ったようだった。

 

「喫茶店と被るけど料理は?」

「ペットボトルとかのガラクタでアート作ったり」

「絵とか漫画とか書いたりってどう?」 

「劇とかはー? いろんな役やったりしてさ」

「バンドは、どうかな。出来る人でローテ組んで、出来ない人は音響やったりさ」

「ならダンスもやったら?」

 

 一度出れば結構出てくる、とりあえず一夏もどんどん書きだして行って。

 黒板に書かれた文字は結構増えた。

 “文化祭”“忍者”“喫茶店”“コスプレ”“料理”“アート”“劇”“バンド”“ダンス”。

 結構出たのではないかと思う。

 だから、決めるために多数決を取ろうとし、

 

「ちょっとよろしくて?」

 

 セシリアが手を伸ばした。

 

「……!」

 

 とたんにクラス全体がざわつく。

 

「セシリアさんだ……」

「セッシーさんが遂に」

「大本命キタコレ」

「ウフフ、来る名言を録音しなきゃ……!」

 

「えっと、よろしくて?」

 

「はい!」

 

 騒がしくなった皆にセシリアが聞いた瞬間に、一斉に静聴体勢である。

 そして、皆を代表して、

 

「じゃあ、どうぞ、セシリア」

 

「ええ、では」

 

 コホンと、前置きをし、

 

「全部やればいいんではないでしょうか?」

 

「は?」

 

「ですから、基本をコスプレ喫茶店にして、それの一環として忍者の格好をしたり、キャラを作ったり、本格料理をしたりしてはどうでしょうか。それに余興として一定時間ごとにバンドやダンスをしてはいかかですか? これなら、コスプレや料理等で色々な国の文化を使うわけですから、始めにラウラさんが言っていた世界の立場の話もクリアできますわよね?」

 

「…………」

 

 セシリアの発現に一瞬皆黙る。

 そして、

 

「流石セシリアさん!」

 

 全員から歓声沸き起こった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、ウチのクラスはコスプレ喫茶メインでバンドとダンスとアート制作をするのか……?」

 

「ええ、まぁ」

 

「……」

 

 職員室にて。全てが結成した一夏は千冬に文化祭の決定内容を提出していた。ざっと目を通した千冬は小さくため息を吐き、

 

「お前らな……言っておくがそこまで時間は潤沢ではないのだぞ? むしろ少ない。にもかかわらずこれだけのことをやるきか?」

 

「ああ、それは俺も思いましたが。セシリアが

『確かに日程的には厳しいかもしれせんが、きっと皆さんとならできますわ』

って」

 

「ふむ……」

 

 一夏から聞いたセシリアの言葉に僅かに思案気に首を傾げたが、

 

「まぁ、オルコットが言うならば間違いないだろう。よし、承認だ。この申請書に必要なこと書いておけ。一週間以内だ」

 

「了解です」

 

 さすがセシリアさん、信頼度抜群である。

 

 

 

 

 




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