狂いのストラトス Everlasting Infinite Stratos   作:柳之助@電撃銀賞5月10日発売予定

42 / 70
いや、なんかごめんさい。すいません土下座します。

ネタ、カオス、壊れ注意

推奨BGMはおまかせでテンション上がる系をどうぞ


第伍話

 

 解説席にて虚が精神的にダメージを被っている間に既にレースは開始していた。開幕の警笛の音と共に、六機のISが同時に飛び出――――さなかった。

 

『おっ先ー』

 

 飛び出たのは一機のみ。

 ISに備えられたマイクから声が拾いあげられ、アリーナ内に響くのは――シャルロットだ。PICを用いた飛行ではなく己の二脚で以って瞬発する。

 そして残りの五機は、

 

『ど、どうした事でしょう! シャルロット選手を除いた五人の選手動きません! 機体トラブルでしょうか! ってかシャルロットさん早っ!』

 

『解説しましょう。あれは』

 

『あれは!?』

 

『影縫いですね』

 

『ああ、だな』

 

『どうしよう! 当り前のように話してるけど意味がわかんない!』

 

 とりあえず、動きの無い五機にカメラがズームし、液晶に姿が映る。よく見ればまったく動きが無いわけではない。開始地点から移動こそしていないが、身体を揺らしてどうにか前に進もうとしている。

 それでも、脚部が地面に張り付いたように停止している。

 

『カメラさん、各機の背後にズームをお願いしますわ』

 

 セシリアの言葉に従い液晶に移る姿が五機の背後に移り、そこにあったのは、

 

『く、苦無?』

 

『ええ、苦無です。シャルロットさんのデュノア流忍術の内の一つ、影縫いですわ。名の通り、苦無を影に突き刺し動きを止めるというものです』

 

『……まぁ、刺さってるのが一本だからいいだろう。全力だったら影の縁に沿って何十本も止めて完全に動けなくなるからな』

 

『ですわね』

 

『なにがいいのかわからない!』

 

 言っている間にも動きがあった。今のセシリアの解説を聞いて各選手が各々の武器を背後に向けてぶっ放す。

地面が粉砕され、機体自らも衝撃を受けるが、

 

『か、各機束縛から抜けましたぁーー!』

 

『流石ですわね、一本だけだったらああやって刺さってる地面ごと破壊すれば束縛から抜けれます』

 

『ともあれようやくレースが本当に始まりました! ですが既にシャルロット選手はかなり先行しています!』

 

 キャノンボールファストのレースコースは結構複雑だ。当然ながら超音速で駆動するISではアリーナ内だけでは狭すぎる。故にレース開始から、まずは直線して――太平洋を突っ切る。

 

『ここでレースコース確認です!』

 

 液晶に浮かび上がったのは――世界地図だ。

 

地球一周(・・・・)! 地球一週です! 約四万キロ! 超音速のISならば大体一日半ぶっ続けで疾走すれば走りきる距離です! 正直言いましょう! ――頭おかしいんじゃないでしょうかこの企画!』

 

『解説しましょう』

 

『お願いしますっ!』

 

『超音速ですから。秒速で400メートルくらい越えますから。下手なコースは一瞬で終わってしまいますからね。だったら、いっそのこと地球一周すればいいだろうということになりました。ついでに各国の篠ノ之博士ファンクラブの皆さまの協力ですわ』

 

『誰が言ったんですかソレ!? 止めましょうよ!』

 

『……千冬先生と姉さんだ』

 

『止められないわねこんちくしょう!』

 

 口汚く悪態付いている間にもシャルロットが海上を疾走している。太平洋を横断するのには大体五時間ほどかかるが、すでに東京湾は出ている。液晶いっぱいにその姿が映り、

 

『あれおかしくないでしょうか』

 

『なにがですか』

 

『いや、その……水の上走ってません? シャルロット選手」

 

『走ってますわね』

 

『走ってるな』

 

『……どういうことでしょうか』

 

『解説しましょう――その方が速いからですわ』

 

『あと、片足が沈む前に反対の足を前に出してを繰り返して走ってる』

 

『……』

 

『まぁ、あれはISのPICを切ってるんですわね。ISに慣性制御を任せるのではなく、自分で調整しているのでああいう事が出来るですわ』

 

『……それってIS意味あるの?』

 

『ありませんわ』

 

『今さらだな』

 

 

 

「ううぅ……」

 

「ああ、ほら泣くな束」

 

 

 

 

『ともあれレース最序盤はシャルロット選手が独走状態です! どうなるのでしょうか……っ』

 

 言った瞬間にシャルロットに光線が突き刺さり水飛沫が立った。液晶に移る場面は移り、

 

『来ました、開始時に影縫いされて動けなかった他の選手たちです! そして、今のは』

 

『サラ先輩の狙撃ですわ、流石ですわね』

 

 言った通りシャルロットを撃ったのは未だ大きく開いた距離で狙撃銃『スターブレイカー』を構えるサラ・ウェルキンだ。

 

『ここらへんがシャルロットさんの不利な点でしょうか。いくらPICは切っても他の機能は生きてますのでやはり生身には程遠いです、IS起動時間自体もかなり短いですしね。それに反して他の選手の方々は流石というべきかかなりの長い起動時間ですからISを用いた高速機動(・・・・・・・・・・)に慣れています。これは小さいようで以外に大きいですわね』

 

『なるほど……しかしシャルロット選手大丈夫でしょうか。水飛沫に消えたままで、除除に他の選手と距離が縮まっていますぅっ?』

 

 語尾がおかしくなったのは、勿論理由がある。

 水飛沫の中からシャルロットが飛び出して来たのだ。無傷で。

 

 そして――五人も。

 

『解説! 解説を!』

 

『解説しましょう――――あれは東洋の神秘、分身の術です』

 

『十八年東洋に生きてるけど知らないわよそんな神秘!』

 

 言ってる間にも五人になったシャルロットは散りながらも疾走を再開する。即座にカメラが仕事をして液晶に五人分が各アングルで表示される。

 

「解析! 解析です簪お嬢様ッ!」

 

 虚がカメラ解析担当の簪の名前を呼ぶ。アリーナ内に響くのではなく内線での通信だ。それでカメラの操作の担当の簪に連絡取るが、

 

『無理』

 

「ええっ!?』

 

『シャルロットの分身見極めるとか無理だから。専用の解析機でも無いと。そして今はない。だから無理』

 

「そ、そんなぁ……」

 

『ちなみに解説させていただきますと、彼女の分身は本体とまったく同じ気配、質感を持ちますわ。戦闘能力は僅かに落ちるらしいですが』

 

 言ってる間にもシャルロット五人衆は等間隔で距離を空けながら、海面を疾走する。それに負けじと楯無たちも距離を詰めいていく。シャルロットは分身したせいで速度が若干だが落ちている。それを見過ごすわけがない。 

 それぞれ速度を加速してシャルロットに接近する。

 楯無は四連装のガトリング・ガンが内蔵されたランス『蒼流旋』を。

 サラは長大なライフル『スターゲイザー』を。

 ダリルは犬の顎を模したハンドカノン『レフトケルベロスⅡ』を。

 フォルテは二メートルも延びた剣爪『ブラッディネイル』を。

 それぞれ構え、接近して放ち、

 

 シャルロットが爆発した。

 

『え、ちょ、ま』

 

 先ほどの奇襲とは比べ物にならないほどの爆発。巨大な水柱が上がり、衝撃波が起こる。楯無たちもそれに巻き込まれて、ぶっ飛んだり、海中へと堕ちる。特に近接武装で攻撃したフォルテの被害は大きい。

 

『セシリアさん!』

 

『解説しましょう。――――東洋の神秘その二です』

 

『複数あるの!?』

 

『千八まであるとか』

 

『零が多い!』

 

『まぁ、ともあれ解説しますとその名の通りの分身爆発ですわ。自爆、といってもいいでしょうね』

 

『……な、ならば本体は何処に!?』

 

『……カメラ、上』

 

 ポツリと呟いた箒の言葉にカメラのアングルが動く。

 いた。

 空中を走っていた。

 

『もうやだ』

 

『解説しましょう』

 

『いや、もういいです……』

 

『空中を音速超過で蹴りつければ大気を足場とすることができます。それを連続してるだけですわね』

 

『こいつ解説気に入ったのか……』

 

 

 

 

 

 

 

『ぐ、グランドキャニオンを八艘飛びしてます!』

 

『解説しましょう』

 

『え、これいるか?』

 

 

 

 

『大西洋が割れたぁーー!?』

 

『解説しましょう――水遁の術ですわね』

 

『え、なんか違わないか?』

 

 

 

 

『ど、ドラゴンーーーー!?』

 

『解説しましょう――あれは翼の形からしてワイバーンですわ』

 

『英国の守護竜の内の一体だなあれ。シャルロット以外が手出すと死ぬぞ』

 

 

 

 

『ピラミッドの頂上が光り輝いています!』

 

『解説しましょう――光遁の術ですわ』

 

『そんなのあったのか……』

 

 

 

 

『さ、サラ選手! シャルロットの鎖鎌に絡めとられたぁーー!』

 

『解説しましょう――鎖遁の術でしょう』

 

『……ん?』

 

 

 

 

『な、なんか雪男ぽいのが並走してますが!』

 

『解説しましょう――雪男でわね』

 

『結構上位の化外だなぁ』

 

 

 

 

『だ、ダリル選手顔が! いきなり何かにぶつかったように停止しました!』

 

『解説しましょう――あれは風遁の術ですわ』

 

『あ、あれは駄目だな。近くの国に救護要請』

 

 

 

 

『万里の長城を回転しながら駆けています――縦回転で!』

 

『解説しましょう――大車輪遁の術ですわ』

 

『お前なんとか遁ってすれば忍術になると思ったら大間違いだからな』

 

 

 

 

『フォルテ選手、棄権申請きました! 私としては何故彼女がここまでやったのか謎よ!』

 

『解説しましょう――内申点稼ぎですわ』

 

『あーそう言う事言わなくていいから』

 

 

 

 

『…………はっ!? 寝てませんよ!? アリーナ内の人ほとんど寝てても私は寝てないわよ!?』

 

『……ふわっ』

 

『いやそこは解説しましょうやれよ』

 

 

 

 

『日本海に帰ってきましたーー! 一時はどうなる事かと思ったけどなんだかんだでもうすぐゴールです!』

 

『残りは楯無先輩とサラ先輩、シャルロットさんだけですわ』

 

『……こいつ飽きたな』

 

 

 

 

『本州辿りついたぁーー! やたら長かったレースもまもなく終わりです! 観客の皆さん隣の寝た人を起こして!』

 

『半分くらい寝てますわね』

 

『現実逃避で気絶しただけじゃないのか』

 

 

 

 

『トップはシャルロットさん! 次いでお嬢様! サラさんは少し遅れています!』

 

『これはシャルロットさんの勝利が濃厚ですわ』

 

『生身だったらシャルがぶっちぎりなんだがなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 そして。

 レースが――――終わった。

 

『え? いやいやいやいやいや。――――え?』

 

『どうしました?』

 

『え、何時の間に終わりました?』

 

『シャルが途中で負けず嫌いを発揮してISの自壊構わずに亜光速出して終わった』

 

『見えませんでした?』

 

『人類に亜光速とか見えないわよ!』

 

 ――――とりあえず終わりである。




感想とか欲しい、です、いや、はい、すいません

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。