Infinite ARMS   作:橘 千景

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14 前略、五反田食堂にて

 

何やかんやで授業と訓練を繰り返していたら、あっと言う間に五月ですよ。

 

今日は日曜で、もう次の金曜日にはクラス対抗戦が行われようとしている。

 

なので月火水の三日間で訓練の仕上げに何をするか等朝から考えていたら一夏が部屋にやって来て「ひと月経ったし家の掃除に行こうと思うんだけどユーリ兄はどうする?」って聞かれたから、ちょっと外の空気を吸いに行こうかなと思い一緒に行く事にした。

 

そして準備をして部屋を出た所で鈴とばったり出くわし、少し話して鈴も一緒に行く事になった。

 

そんで申請を出してIS学園を出て、家に向かったのだけど………。

 

 

 

―――

 

 

「おりゃ、そこだ!」

 

 

「何の! ってああ?!」

 

 

「ふふん、甘いわね♪」

 

 

何時の間にか友人弾の家に遊びに来て、IS/VS(インフィニットストラトス・ヴァーサススカイ)をただいま対戦プレイ中である。

 

まぁ家に帰って一通りの掃除を済ませた後の事を決めてなかったし、一夏と鈴が会いに行こうと言い出したからそれも良いかと付いて来た訳だが。

 

 

『YOU WIN』

 

 

「っしゃ、アタシ達の勝ちね」

 

 

「だぁ~また負けた、一夏と組むと全く勝てねぇ」

 

 

家に来てから組み合わせを入れ替え入れ替えタッグ戦しているんだけど、弾と一夏が組むと必ず負けている。

 

と言うか私と鈴が組んだらと言うべきか、このゲームに関して私達の相性は抜群である。

 

何せ鈴の反射神経と操作テクは四人中トップで二対一でも簡単には落ちない、そこにどのタイプでも扱える私が援護なり何なりをするとアッサリ勝ってしまう。

 

因みに一対一でやったら延々鈴の一人勝ちになる、ゲーム中表向き最強で知られるテンペスタⅡを使おうと隠しコマンドで出現させる暮桜と白騎士を使おうと勝てないのだ。

 

 

「さ、次はどう組む?」

 

 

「いやそろそろ一旦休憩しようぜ、家に来てちょっとしてからぶっ通しで対戦してんだし」

 

 

「俺も、目が疲れた」

 

 

「賛成だね、それに時間もお昼だしお腹も空いてきた」

 

 

「ってそう言えばそうね、確かにお腹空いたかも」

 

 

そう話していた所でドンという音がしてそっちを向いたら、ドアを蹴り開けたのか足をブラブラさせた弾の妹の蘭ちゃんが立っていた。

 

 

「お兄、お昼出来たからさっさと食べに降りて来いっての……」

 

 

「お、久し振りだな蘭」

 

 

「お邪魔してるよ蘭ちゃん」

 

 

「うぇ?! い、一夏さん! それにユーリさんも、来てたんですか?!」

 

 

私達に気付いた蘭ちゃんは慌ててドアの影に隠れてから顔だけ出して話してる、まぁ結構な薄着だったからそりゃー恥ずかしいよね。

 

 

「家の掃除しに行ってて、ついでだし顔出しに来たんだ」

 

 

「ってかアタシは無視な訳?」

 

 

「あっ、鈴さんもお久し振りです」

 

 

「蘭お前ノック位しろよな、それでこんな目に遭ってんだか「黙ってお兄」はい!」

 

 

蘭ちゃんに注意しようとした弾が一言で黙らされた、相変わらずのパワーバランスみたいだね。

 

 

「……何で来てるって言わないのよ」

 

 

「い、言ってなかったか? そ、そりゃ悪かった」

 

 

弾を睨みつける蘭ちゃんの視線がちょい怖い、弾が蛇に睨まれた蛙に見えてくるよ。

 

 

「全く………あ、あの一夏さん達はお昼はまだですか?」

 

 

「ああ、今丁度腹減ってきたなって話しててさ」

 

 

「だ、だったらお昼食べてって下さい」

 

 

「んー、どうする?」

 

 

「私は元々五反田食堂で食べるつもりだったよ、厳さんの料理美味しいもの」

 

 

「アタシも、久し振りにじっちゃんのご飯食べたいわね」

 

 

「だってさ、ありがたくご馳走になるよ」

 

 

「い、いえ。それじゃあ……」

 

 

蘭ちゃんはそう言って、パタンとドアを閉じた。

 

 

「んー……蘭ともかれこれ三年の付き合いになるけど、まだ俺に心開いてくれないのかね? 何かよそよそしいっていうか何て言うか」

 

 

「………はぁ、この弟の将来が心配なのは私だけかな?」

 

 

「いや、アタシも心配だわ」

 

 

「俺としては一夏が弟ってのは複雑なんだが、蘭の応援をしない訳にもなー……」

 

 

一夏が蘭ちゃんの態度の意味を理解しなさ過ぎて思わず溜息を吐きながら呟くと、鈴と弾も同意して呟いてきた。

 

 

「ん? どうしたんだよ三人共、小声でぶつぶつと」

 

 

「いや、何でも無いよ何でも………はぁ。まぁとりあえず、下に行こうか」

 

 

「あ、俺は片付けてから降りるわ」

 

 

そう言いつつ弾はゲーム機等を指差す。

 

 

「なら手伝おう、一夏と鈴は先に降りてて」

 

 

「ん、分かった」

 

 

「じゃあ先に行ってるわね」

 

 

二人に先に降りてもらい、テキパキと仕舞っていく。

 

 

「にしても、一ヶ月以上もユーリ以外の男が居ない場所に居ても全然変わんねぇなあいつは」

 

 

「その所為で周りの女の子達も私も苦労してるよ」

 

 

「だろうな。でもなー……蘭の味方でいねぇと後が怖いが、一夏が義弟ってのは嫌だしなー。だから鈍いままで居てくれても良いような悪いような」

 

 

「本人次第だからどうしようも無いのは分かってるんだけど、私達から伝えても駄目な問題だから」

 

 

「はぁ……面倒なダチを持ったもんだぜ」

 

 

「弟が苦労を掛けて申し訳無い、っと片付け終わり」

 

 

話しつつパッパと片付けて行ったら、サクッと終わった。

 

 

「んじゃ俺達も飯にしようぜ」

 

 

「ああ」

 

 

そうして弾の部屋を出て下に下りて行くと、何かが顔面目掛けて飛んで来た。

 

 

「うぉ?!」

 

 

驚く弾の分も含めて二つの飛来物、その正体のおたまを指二本で掴んですかさず投げ返す。

 

 

「……へっ、相変わらずやるじゃねぇかボウズ」

 

 

投げ返したおたまを余裕でキャッチした弾と蘭ちゃんのお祖父さん、厳さんはニカッと笑ってそう言った。

 

 

「料理は並んでるからさっさと食っちまえ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

小急ぎで弾は蘭ちゃんの横の席に着き、私は料理が大量に並んである席の前に着いた。

 

 

「おっそいわよお兄。後ユーリさんも、来るまで待ってたんですから」

 

 

「ごめんごめん、んじゃあ頂きます」

 

 

そうして皆で食事を開始する。

 

 

「もぐもぐ……そういやさ、IS学園で鈴ともう一人誰かと再会したって言ってたっけか?」

 

 

「ん? ああ、もう一人の幼馴染の箒とも会えたんだ」

 

 

「え?! 一夏さんもう一人幼馴染居たんですか?」

 

 

一夏の言葉に蘭ちゃんが驚いて食いついてくる。

 

 

「あ、ああ。鈴がセカンド幼馴染で、箒がファースト幼馴染なんだよ」

 

 

「そ、そうなんですか……」

 

 

「オマケに今は箒と相部屋でさ、まぁ見知らぬ相手じゃなくて助かってるけど」

 

 

「あ、相部屋ってつまりその人と同室って事ですか?!」

 

 

「おう、そうだ」

 

 

「そんな……どうしよう……このままじゃ一夏さんがその人や他の誰かに……でもどうすれば……」

 

 

一夏と箒が相部屋だと聞いて蘭ちゃんが何か鬼気迫る表情になって、俯いて小声で呟きだしたのが凄い怖いです。

 

少しの間蘭ちゃんはそうしていたけど、いきなりバッと顔を上げ―――

 

 

「……決めました! 私、来年IS学園を受験します!」

 

 

「ぶふ~~~っ?!」

 

 

そう突然宣言したら、丁度お茶を飲もうとしていた弾が盛大に吹いた。

 

そして弾におたまが飛んで来てクリティカルヒットした、良い音出たよ。

 

 

「いってぇ! じゃなくて蘭、お前何言い出すんだよ!」

 

 

「そうよ、アンタかなり良いとこの学校通わせてもらってたでしょ?」

 

 

「えーと……聖マリアンヌ女学院だったっけ? 超が付く有名な女子校でエスカレーター式で大学まで行き、卒業後は大企業への就職安泰のとこだね」

 

 

「え?! そんな良い学校捨てて、何でIS学園に?」

 

 

「問題は無いです、私の成績ならどこでもやってけます」

 

 

「いやでも……あ、そうだ! あそこって実技もあるだろ?」

 

 

「うん。入試にISの適性試験もあるから、適性が低過ぎれば筆記が良くてもちょっと厳しいかな?」

 

 

「それなら……これでも?」

 

 

そう言って蘭ちゃんは折られた紙を取り出して広げた、そこには―――

 

 

「IS簡易適性試験、判定結果はA」

 

 

と書かれていた。

 

 

「問題は解決済みです」

 

 

「これって各国政府が実施してる希望者が受けられるって言う、IS操縦者募集の一環のやつね」

 

 

「そう、タダで受けられるやつです。それでですね、一夏さんには先輩としてご指導をお願いしても良いでしょうか?」

 

 

「え、俺? まぁ良いけど」

 

 

「約束ですよ!」

 

 

「いやいや勝手に話し進めんなって! なぁ母さん、何とか言ってやってくれよ!」

 

 

「あら、その子がそう決めたなら良いじゃない。よろしくね一夏君、ユーリ君と鈴ちゃんも」

 

 

厨房に居た弾と蘭ちゃんの母蓮さんが、ひょこっと顔を出してさらっと言った。

 

 

「ええ?! 親父はいねぇし……じーちゃんは良いのか!」

 

 

「蘭が自分で決めたなら、俺達がどうこう言う問題じゃねぇだろうが」

 

 

「……駄目だ、味方がいねぇ」

 

 

弾がそう呟いてがっくりとうなだれた。

 

 

「まぁまぁ弾、こればっかりは蘭ちゃんの自由意志じゃない。正しだ、先ずは蘭ちゃんにはもっとちゃんと考えて欲しい」

 

 

「ちゃんと考える、ですか?」

 

 

「そう。IS学園に通うって事とこの先に待っている事を、君がこの先何を扱う事になるのかを」

 

 

「そうね、アタシもその方が良いと思う。はっきり言うならそれなりの覚悟が要るわ、これは代表候補生になった者の言葉よ」

 

 

「え、鈴さん代表候補生なんですか?!」

 

 

「っそ。んでアンタは適性Aって高い結果が出てる、それはこの先努力次第で代表候補生、そして代表になる可能性も高いって事なのよ」

 

 

「そしてそうなると軍属にならなくてはいけないとか、色んな決まりだったり危険が在る。それに何よりISとは、十年前に世界の在り方を変えてしまった兵器だと理解しておいて欲しい」

 

 

それが作った者の意思に反する認識でも、だ。

 

 

「……分かりました、冷静になってしっかり考えて決めます」

 

 

話しを聞いて少し暗い顔になった蘭ちゃんはそう言ってくれた。

 

 

「えと、勘違いしないで欲しいんだけど、蘭ちゃんがIS学園に来る事を止めたいって訳じゃないからね。ただ大事な自分の人生だから、後悔しないようちゃんと選択して進んで欲しいんだ」

 

 

「はい、さっきはちょっと焦っちゃいました。ちゃんと父さん母さんと、それにお祖父ちゃんともちゃんと話してから改めて決めます」

 

 

「ん。まぁその上でIS学園に来るなら、私と工房の全面支援を約束しよう」

 

 

過保護?うん分かってる、でも大切な友の妹であり私にとっても大切な妹分だからね。

 

 

「え、エヴァリエス工房の全面支援……流石に恐れ多いです」

 

 

「なはは、まぁそこは気楽に受け取っておいて。早くご飯食べ切ってしまおう、でないと冷えちゃう」

 

 

「そうですね」

 

 

「俺の存在は結局放置かよ……トホホ」

 

 

「げ、元気出せって弾、俺も蚊帳の外だったしさ」

 

 

笑顔に戻った蘭ちゃんと食事を再開する、一夏は弾を慰めながら。

 

 

「そういえば蘭ちゃん可愛らしい服だね、髪も下ろして大人っぽいよ」

 

 

ご飯を食べつつ蘭ちゃんが着替えていた事に触れてなかったなーと思い、率直な感想を伝えてみる。

 

 

「そ、そうですか?」

 

 

「そーいやそうだな、この後出掛けたりすんのか?」

 

 

「あ、いえ、特にそういう訳じゃないんですけど……」

 

 

「「………はぁ」」

 

 

残念ながら一夏には好きな人の前ではおめかしする女の子の気持ちは伝わらないらしい、同じ事を考えたのか鈴と同時に溜息が出てしまった。

 

ホントに将来が心配だよ私は。

 

まぁそれは置いといて、その後は他愛ない事を話しながらご飯は食べ終わった。

 

そして鈴と蘭ちゃんは久し振りに会えたし女の子同士で出かけたいと二人で出て行って、私と一夏も弾とどっか行くかと外に出た。

 

そしてゲーセン行ったり何やかんやして、久し振りに休みだーって実感できる一日だった。

 

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