Infinite ARMS   作:橘 千景

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16 狂戦士

 

「……なんだアレは」

 

 

あの襲撃者にはISコアの反応が無い、という事は完全なロボットなんだろう。

 

だけどあのデザインは何だ?どこか歪な……生物が機械を取り込んだと言うべきか、機械が生物の姿を真似ようとした様な、そうとしか言い様の無い異形だった。

 

って今はその姿はどうでも良い、アリーナのシールドを破る程の攻撃手段を持つ敵なんて明らかにマトモじゃない!急いで二人の援護に向かわないと!

 

 

「千冬、管制室のシールドを一瞬で良いから解除してくれ」

 

 

そう千冬の方を向いて言ったら、千冬は渋い顔で俯いてしまった。

 

 

「出来ればそうしたいが……画面を見てくれ」

 

 

そう千冬に言われ管制用機器の操作画面を見るとそこにはシールドレベル5固定、そして操作不能と表示されていた。

 

更に観客席、管制室、アリーナ緊急出入り口等全ての扉もロックされていた。

 

クソ……あの敵からのハッキングか?最悪ぶち抜けない強度では無いが、その為には管制室を消し飛ばす事になる。

 

この室内に居る人達を避難させられない以上それは選べない選択だ。

 

そうこう考えていると、アリーナ内の異形が全身を一夏に向けて構えている様に見える。

 

 

「師匠、このままでは一夏が!?」

 

 

「まだ大丈夫、落ち着くんだ箒。だが実際考える間も無い……束!」

 

 

心配と焦りから青褪めた表情になっている箒の頭を優しく撫でて落ち着かせつつ、束に声を掛ける。

 

 

「何、ユーちゃん?」

 

 

束はあの異形を観察していたのか、何時の間にか取り出していたカメラから此方に視線を移して返事した。

 

 

「一瞬で良い、管制室の窓のシールドを解除してくれ」

 

 

「おっけー♪………いやごめん、二分だけ時間を頂戴」

 

 

余裕の笑みで私の言葉に答えた束だったけど、ウサミミから伸ばしたケーブルを操作パネルに接続して直ぐそう言い足した。

 

そしてホログラムキーボードを表示して物凄い速さでキーを打ち始めた。

 

 

「それは二人次第だ……『一夏、鈴、二分だけ時間を稼いでくれ! 後この通信を受け取っている者は他の生徒の出来るだけの安全確保を、最悪扉をぶち破って脱出しても構わない、責任はエヴァリエス工房と千冬が取る!』……構わないな千冬」

 

 

「ああ」

 

 

オープンチャンネルで二人と観客席に居るだろう専用機持ち達に向けて指示を出す。

 

そして言った後で事後承諾になるが千冬の方を向くと、一言答えて静かに頷いてくれた。

 

 

『持たせてみせる、頼むぞユーリ兄!』

 

 

『ヘマしないでよユーリ!』

 

 

その直ぐ後二人から返事が返ってきて、アリーナ内を見ると異形との交戦が始まっていた。

 

 

「頼む、束」

 

 

そして何時に無く真剣な表情で作業をする束の後姿にそう呟きながら、首から下げた自身のISを強く握った。

 

 

 

―――

side 一夏

 

 

「くっ! 避けるだけでも精一杯かよ!」

 

 

ユーリ兄にはああ言ったけど、このバケモノ(としか言い様が無い)の攻撃半端じゃない。

 

物凄い速さで動くわ恐ろしい風切り音を立てて腕を振り回すわ!

 

しかもちょくちょく腕の先から炎とかレーザーとか噴き出して来るんですけど!?

 

でも何よりおっかないのが瞬時加速で攻撃して来る瞬間だ、コイツの腕の先に煌く巨大な爪を喰らえばどう考えても無事じゃ済まない。

 

でも一つ一つの動作の隙は大きいからこっちも反撃は出来てるんだけど、表面に掠り傷が溜まっていく位でまともなダメージにはなってないよなぁ………。

 

 

『一夏。出来るだけコイツを挟んで動きなさい、その方がお互いのフォローがしやすいわ』

 

 

『おう!』

 

 

時折エネルギー波で鈴の方に向いた所を攻撃したり、逆にこっちに張り付いて来るのを剥がしてもらったりしながら何とか時間を稼いでいく。

 

少しの間それを続けていたら不意に攻撃が止んで、バケモノが動きを止めた。

 

 

『何だ?』

 

 

『エネルギー切れかしら……?! そいつ観客席を狙ってる!』

 

 

鈴が言うが早いかバケモノはその巨大な腕を扉をこじ開けようとしている観客席の生徒達に向ける。

 

そしてバケモノの腕の一部がカシャッと開くと其処が輝きを放ち始める。

 

 

「冗談じゃねぇ……やらせるかよぉ!」

 

 

嫌な予感がして、迷わず俺はその射線上に飛び込んで雪片を構える。

 

次の瞬間にはバケモノの腕から眩いエネルギー波が撃ち放たれ、それを零落白夜を発動させて無理やりに押し止める。

 

 

「持ってくれ、白光のシールド残量!」

 

 

数秒程の敵機のエネルギー放出が収まると同時、白光のシールドが切れた位と同時に目の前にまで迫っていたバケモノに叩き落とされる。

 

そして地面に打ち付けられた瞬間、白光が強制的に待機状態に戻っちまった。

 

 

「ってぇ!?」

 

 

結構な高さから落とされたから衝撃で腰が目茶苦茶痛い。

 

そして痛みを堪えながら頭上を見上げると―――

 

 

「あ」

 

 

バケモノが俺に向かい片腕を向けていた。

 

 

『一夏?!』

 

 

悲鳴っぽい鈴の声が待機状態の腕輪から聞こえる。

 

 

「すまんユーリ兄、俺ここまでみたいだ」

 

 

そう呟きながら襲ってくるだろう死の恐怖に瞼を閉じる。

 

その時、ガラスが砕け散る大きな音が聞こえた気がした。

 

 

side out

―――

 

 

「良し! ユーちゃんシールド解除出来るよ!」

 

 

「分かった、なら皆さがっ……?!」

 

 

束がよっしゃってポーズしながらそう言ったから飛び出すために周りに指示を出そうとした瞬間、異形が放ったエネルギー攻撃に向かい雪片を振るう一夏が見えた。

 

そして異形のエネルギー放出が治まった次の瞬間、一夏は地面に叩き落とされた。

 

 

「束、シールド解除だ!」

 

 

地面に落ちてISが解除されたのが見えた時、反射的に私は叫んだ。

 

 

「あ、うん!」

 

 

束がキーを打ち管制室のシールドが解除された途端、私はISを展開しながらガラスを破り飛び出した。

 

そして出せる最速で接近し、一夏に向かい止めをさそうとしていた異形を全力で蹴り飛ばす。

 

その一撃で壁に叩き付けられた異形は、一時的にだろうが動きを止めたようだ。

 

 

「ふぅ、ギリギリセーフかな? 遅れてごめん、無事か一夏」

 

 

「……ユーリ兄? 助けて、くれたのか」

 

 

私が声を掛けると一夏はゆっくりと瞼を開いて私を見、ホッとしたのか気の抜けた表情でそう言った。

 

 

「当たり前の事を言うな、バカモノめ。まぁ後は任せてくれ『鈴、聞こえる? 一夏を頼むよ。管制室まで飛べば束がシールドを解除して中に入れてくれるから』」

 

 

『分かったわ』

 

 

鈴に頼んで一夏を抱えて飛んでもらい、それを確認してから異形に向きなおす。

 

 

「さて……私の弟と親友、そして生徒達の命を危ぶませた償いをしてもらおう」

 

 

私の剣たる愛機が一つ《ヴァンブレイズ》の主武装、長刀スタンピードを腰溜めに構えつつそう口にする。

 

この異形が言葉を聞いているかは知らないが、この怒りを口にせずにはいられないのだ。

 

 

「貴様は此処で破壊する、慈悲は無い」

 

 

起き上がりながら此方に顔(だと思う部分)を向ける異形の機械の眼を真っ直ぐに睨み宣言する。

 

 

「マッサツ………ピガ!?」。

 

 

私を敵だと認識して動き出そうとした異形との距離を一足で詰め、反応されるより速く片手と片足ですくい上げて放り投げる。

 

そして右手に握るスタンピードを自身の正面にやや斜めに構え、意識を集中させる。

 

 

「……スピードファング」

 

 

そう呟きながら踏み込みつつスタンピードを抜き放ち、叩きつけるように振り下ろす。

 

 

「ガラクタが調子に乗り過ぎたな」

 

 

そう言い捨てながら刃を一振るいして背を向け、左右泣き別れになった異形が地に落ちる音を背後に聞きながら鞘にカチリと納める。

 

そして一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐き出した。

 

 

「……少しは落ち着けたかな? んじゃまぁ後始末は学園のスタッフにでも任せて(ドガッシャアアァァァン)はうわぁぁぁ!?」

 

 

ほっと気を抜いていた所に物凄い轟音が直ぐ傍から響いた所為で思わずかなり変な声が出てしまった………誰にも聞かれてませんように。

 

というか今の音は背後からだよね、って振り向けばあの異形の残骸が巨大な鉄球にペシャンコにされていた。

 

そして鉄球に繋がれた鎖を目で追っていくとそこに居たのは何処か生物的な、それでいてしっかりと機械なロボットが鎖の先端を握って浮いていた。

 

頭部にはエネルギー粒子のたてがみをなびかせて、鎧の様な物を纏っていて、例えるならその容姿はRPGに出てきそうなリザードマンの太ってるのをサイボーグにしたような感じだった。

 

 

「やれやれ、姫さんの実験の後始末なんざつまらねぇ任務だぜ。だが姫さんの頼みを断る事も出来ねぇし……仕方ねぇよな」

 

 

そいつは見た目に反して普通に喋った、ちょっと驚き。

 

 

「まぁ良いか、直ぐ戻れとは言われてねぇ。折角だし派手に暴れるか、んじゃ………ちぃっと付き合ってもらうぜ其処の白いのォ!!」

 

 

は?私か?

 

って一瞬呆気に取られた瞬間にはその巨大トカゲの手元に鉄球が引き寄せられており、それをすぐさま振りかぶってこっちに向かって投げてくる。

 

 

「ちぃ!」

 

 

この状況を整理する間も無く攻撃を仕掛けられている事に舌打ちしつつ、眼前に迫る鉄球を寸での所でかわす。

 

さっきは気を抜いていたと言え飛んで来るのに気付きもしない程の速度で振るわれた鉄球だ、もし直撃したら……ミンチよりひでぇ事にもなりかねん。

 

とか考えつつ次々と繰り出される鉄球の猛攻をステップや瞬時加速を織り交ぜて回避していく。

 

 

「へぇ……中々すばしっこいじゃねぇか、だが……此処ならどうだぁ!」

 

 

ニヤリと笑った(様に見えた)巨大トカゲがそう言いながらまた鉄球を放ってくる。

 

それをかわそうとして、今巨大トカゲが言った言葉の意味に気付く。

 

何時の間にかアリーナの観客席の直ぐ傍まで来てしまっていた、つまり避けられない!

 

だとして―――

 

 

「舐めるな!」

 

 

そう叫びながらスタンピードを腰に提げ、右手を鉄球に向かい構えた。

 

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