side ???
私は目の前で何が起きているのかもうついて行けなくなってきていた。
半ば八つ当たりだと分かっていても恨んでしまう彼の、無様に負ける姿でも見てやろうかと思って見に来たら良く分からない変なロボット?がいきなり降って来て。
それを彼と対戦相手の子が何とか抑えていたらロボットが観客席に向かいシールドを破れるだろう攻撃をしようとして、それを彼が必死に受け止めて落とされて。
そして彼にロボットの腕が向けられて危ない!と思った次の瞬間兄の方の彼がまるで騎士の様な白いISを纏って現れ、未確認機を蹴り飛ばした。
そのISの右腕には頑丈そうな装甲が見て取れ、その手には鞘に納まった長い刀が握られていた。
それから弟の方の彼が対戦相手の女の子に連れられて避難して行き、兄の方の彼が身構えた。
そしてロボットが起き上がって動き出そうとした途端何時の間にか宙に投げ出されていて、その次の瞬間には真っ二つになって地面に落ちていた。
それが兄の方の彼がやったのだと理解するのに少し時間が掛かる程、それはあっと言う間の出来事だった。
そして敵のロボットが倒されたんだとやっと理解してホッとしたのも束の間、次の瞬間今度は巨大な鉄球がロボットの残骸を押し潰していた。
その鉄球を放った主は何か見たことある様な気がしてくる怪人っぽいおっきなトカゲ?だった。
そのトカゲと彼が今度は戦い始めた。
反撃こそ出来て無いけど、彼は傍目には全く危うげ無く全ての攻撃を回避していた。
その戦いに見入ってしまっていた所為でその戦いが目前まで迫っている事に気付く事が出来ず、あっと思った瞬間には私に向かって鉄球が迫って来ていた。
それをややスローモーションに感じていると、隣に座っていた親友が私に覆い被さるように跳びついて来た。
その親友を抱き止めながら、自分が迂闊だった所為で一緒にこれからペシャンコにされてしまう申し訳無さと多過ぎるやり残した事を後悔しながらぎゅっと瞼を閉じた。
そして物凄い轟音が耳に入って来て、襲い来るだろう死の恐怖に身を震わせるがそれは一向に訪れない。
戸惑いながら恐る恐る目を開くと、そこには右腕に纏っていた装甲が跡形も無く吹き飛び肩からおびただしい量の血を流し此方に背を向ける彼が居た。
彼が自分達をそれ程の痛手を覚悟して護ってくれた事を理解して感謝やら申し訳無さやらで頭が困惑していると、すぐ目の前だから彼が口にする言葉が聞こえてきた。
「………ヒーローとは逆境にこそ、その真価を発揮する。愛する弟が憧れのヒーローだなんて慕ってくれているんでね、この程度何でもないさ!」
この窮地を本当に何とも思っていないような明るく響く声で、そんな台詞を彼は口にして腰の刀を抜いていた。
その言葉が聞こえた瞬間、ぐちゃぐちゃだった頭の中がスッと整った。
直ぐに立ち上がり親友を引っ張り上げて立ち上がらせ、出口に向かい駆け出す。
開かない扉の前で騒ぐ生徒達を無理やりに下がらせて、私は右腕にISを部分展開させて手にした武器を振るった。
その一撃で扉を打ち破り、周囲の生徒達に叫ぶ。
「皆ここから避難して! 落ち着いて近くの人から順番に!」
戸惑う親友にもどうにか落ち着いてもらって手伝ってもらい、周囲の生徒を誘導していく。
観客席のシールドの向こうからはまた激しい金属音が聞こえて来る、だから詰まらない様にしつつも出来るだけ急がせて避難をしていってもらう。
何とか誘導を終えて一息吐く、そしてアリーナの方を見ると彼はまだあのおっきなトカゲと戦い続けていた。
その姿を見ながら私の胸には灯火の様に一つの思いが湧き上がっていた。
あんな風に逆境に立ち向かっていける、それがヒーロー……私にも出来る?
助けてくれるヒーローを待つだけの弱い私じゃなく、誰かを助けられる私に。
「後はわたし達だけだよ~~、早く逃げようよ~」
私の隣で親友が急かしつけてくる。
「本音は先に逃げて、私はこの戦いを見届けるから」
「でも………分かったよ~、かんちゃんは頑固だもんね~。わたしも一緒に居るよ~」
「うん、ありがとう本音」
side out
―――――
自身への景気付けに言ったけど、さっきの台詞はちょっと恥ずかしい。
とかどうでも良い考えを頭の中で蹴り飛ばしつつ迫り来る鉄球をかわす。
「さっきは悪趣味な一撃をくれた癖に、そこからは随分素直な攻撃ばかりじゃないか」
「はん、さっきのはかわされ続けたのが気に入らなくてやっただけだ。オレ様は真正面からぶつかり合って叩き潰すのが本来好きなんだよ!」
言いつつサイボーグトカゲは鎖のしなりも攻撃に織り交ぜながら鉄球を振るって来る。
「その考えは嫌いじゃ無いけど、容易く潰せると思うな……よ!」
そう言いながら鉄球の直ぐ横を通り過ぎる、その次の瞬間鎖が千切れて地面にズドォンと地響きじみた音を立てて鉄球が落ちた。
まぁ正しくは千切れたのでは無く、切り離されたんだけどね?
「なっ!? テメェ、何時の間にそんな小細工してやがった」
「これでも斬撃の速さには自信が有ってね、一発喰らって以降にかわすタイミング全てで鎖の同じ継ぎ目を延々斬り付けておいたのさ!」
そうドヤ顔で言い放ちながら某ス○イダーマッ!のポーズをして見せる。
「あー……くそっ! 興が冷めたぜ、今回はここらでお開きにするか」
手にしていた鎖の残りを放り捨て、サイボーグトカゲは頭をガリガリと掻いた。
「そうしてくれるなら助かるんだけど?」
「次に会う時は最初から全力で来いよ、こっちもそのつもりで行くぜ?」
そう言いながら此方を見据えるサイボーグトカゲの目は、少しピリッとする程の威圧を放っていた。
「………そうだね、心しておこう。でもそれは勿論……お前もだぞ?」
「………くく、当然だぜ」
私の返事と同時に放ち返した威圧を気に入ってくれたのか、何処か嬉しそうに笑いサイボーグトカゲは踵を返し飛び去ろうとする。
「っておーい、名前位言っていけー」
それを呼び止め、とりあえず気になった事を聞いておく。
「ん? ああ、オレ様の名か。ふふん、オレ様の名はベルセルク……破壊王ベルセルクだ!」
そうドヤ顔(多分)でサイボーグトカゲはベルセルクと名乗った。
「じゃあ今度こそ戻るが、次にオレ様と会って殺されるまで死ぬんじゃねぇぞ?」
「そっちこそ、モンスターハンター的な者に狩られるなよ?」
「がはははははは! 首洗って待ってな!」
最後に大笑いしてから、そう言い残してベルセルクは飛んで行った。
そしてISのハイパーセンサーでも見えない距離まで去って行ったのを確認した所で盛大な溜息を一つして、地面に降り立ってISを解除して座り込んでしまった。
「だはぁぁあぁぁぁぁぁぁああああ、つっかれたぁぁぁぁぁぁ」
『ユーリ兄、大丈夫か!?』
少しの間ぼーっとしてたら、心配そうな一夏の叫び声が回線から聞こえてきた。
『ん、一夏こそ怪我とか無いか?』
『こっちは無事だよ、それよりユーリ兄腕は大丈夫なのか!?』
『んー、大分痛むけど見た目程酷い怪我でも無いよ。表面の肉を盛大に削ぎ落とされたけど骨とか内側の神経とかは感覚からして無事だし』
『どう見ても重傷だろうが。まぁとにかく良くやってくれた、後で医務室に行って手当てをしてやる』
今度は千冬から労いの言葉が掛けられた。
『ん、ありがとう』
『ユーリ、見てたけどホント無事で良かったわ。にしても途中ぶつぶつ言ってたのはともかく、随分と恥ずかしい事を宣言してたわね……ぷくく』
今度は鈴の声が聞こえてきた……って今なんと?
『えーと鈴さん鈴さん、それはどういう事ですかね?』
『アンタ相当焦ってたんでしょ、オープンチャンネル開きっぱなしよ。一夏助けてアタシに指示くれた時からずっと、つまりアンタが戦闘中言った言葉はこのアリーナに居るISを持ってる子達と管制室に居る皆に筒抜けだったのよ』
という事はあの言った後で目茶苦茶恥ずかしかった台詞も聞かれてたと、しかもIS持ってる娘達全員と管制室の全員にもかー、そうかそうか………。
その後私が覚えているのは、薄れゆく意識の中、『あ、ちょ、ごめんユーリ!』と謝る鈴の声や『ユーリ兄、俺は嬉しかったぞ!』と一夏のフォローする声や『ユーちゃん、ばっちり録音したからね♪』と束の止めの一言までだった。
試合開始前にイジった仕返しかな、ホント勘弁して。(泣)