Infinite ARMS   作:橘 千景

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08 こういう使い方もある

 

一夏の特訓をしつつ自分の調子も整えていたら、あっと言う間に二日経ちオルコットとの試合の直前になっていた。

 

只今ピットにて武装その他の最終チェック中、大体は昼休みに終わらせたけど確認作業は大事だよ。

 

傍には一夏と箒が見守ってくれている、これは教導者として勝っても負けても格好は良く決めないとね。

 

 

「ユーリ、状態はどうだ?」

 

 

大体のチェックを終えた所で、試合の監督兼私のセコンドな千冬がピットにやって来た。

 

因みにオルコットには真耶ちゃんが付いてるそうな。

 

 

「一言で言えば素晴らしい、かな千冬。この学園の整備科生の優秀さが良く分かるよ、性能を最大限発揮できる位にチューンされてる。今度直接会いに行って何人か工房に勧誘しようかな?」

 

 

「それは好きにしてくれ、まぁお前がそこまで褒めるなら相当なのだろうが。それで、勝てそうか?」

 

 

「それは分からないね、ただ何時も通りに楽しむだけだし」

 

 

「そうか」

 

 

「ユーリ兄なら勝てるさ」

 

 

「師匠、負けるなよ」

 

 

私の言葉に千冬は一言言って微笑み、一夏と箒は激励の言葉をくれた。

 

 

「……良し、準備は完了。千冬は管制室に行って向こうに伝えてきて、向こうからの返事が来たら出撃するから」

 

 

「分かった。ここより管制室の方が見やすいぞ、お前達は付いて来い」

 

 

そうして千冬は一夏と箒を連れてピットを出て行った。

 

 

「さてと…今回はよろしくね、よっと」

 

 

ホログラムウィンドウを閉じて打鉄に声を掛け、装甲を一撫でしてから飛び乗って起動する。

 

直ぐにバシュンと空気が抜ける音がして、装甲が身体にぴったりと合わさった。

 

 

「あぁ…良い感じだ」

 

 

そう着け心地を確かめているとコールが入って、千冬の声が聞こえてきた。

 

 

『向こうはもうアリーナに出ているそうだ、お前も自分のタイミングで出撃してくれ』

 

 

「了解、じゃあ行ってくる」

 

 

もう待ってるなら急がないとな、カタパルトに足先をセットして――

 

 

「ユーリ、出ます!」

 

 

音声操作で動かして自らを弾き出し、そのまま目に留まったオルコットの傍に飛んで行く。

 

 

「お待たせしました」

 

 

「気にしてませんわ…始める前に一つ確認しておきたいのですけれど、よろしいかしら?」

 

 

「はい、何でしょう」

 

 

「貴方は本当にあの工房でテストパイロットをなさっていたのですか?」

 

 

「ええ。学生生活の傍らで日々試験機や試験武装を操り、またその相手もしてきました。もちろん手加減なんてお互いに無しでしたよ?」

 

 

「…わたくしも工房所属の操縦者の方に教導して頂いた事のある身です、貴方がどれ程の実力者と戦ってきたのかは理解しました。故に…全力を以ってお相手しますわ!」

 

 

そう言ったオルコットは手にしていたライフル・スターライトmkⅢを構え、更に機体名の由来であるビット・ブルー・ティアーズを四機飛ばして私の周囲に配した。

 

 

「正々堂々参りましょう、武装を展開して下さいな」

 

 

「ではお言葉に甘えて…はっ」

 

 

両手に意識を集中し、ストレージ(私は拡張領域(バススロット)をこう呼んでいる)から打鉄用ブレード・葵を二振り呼び出して構える。

 

 

「…わたくし相手にブレードを二本とは、冗談にしては笑えませんわね」

 

 

「いやまぁちゃんと射撃武装もあるが、これが冗談かは闘いの中で判断してくれ…千冬、合図を」

 

 

オルコットにニヤリと笑ってそう言って、通信で千冬に開始の合図を頼む。

 

 

『………始めぇ!』

 

 

「参りますわ!」

 

 

スピーカーで会場中に響き渡った千冬の声に続いてオルコットも声を上げ、構えたライフルから高エネルギーのレーザーが放たれる。

 

それを跳ね上がりかわすが、間髪を入れずに四方のビットからもレーザーが放たれる。

 

 

「せぇい!」

 

 

そのビットからのレーザーを手にしたブレードを最低限の挙動で振るい、四発全て弾き飛ばす。

 

 

「な…切り払ったですって!?」

 

 

予想外の事に驚くオルコットに向かい、すぐさま最大速度で空を翔る。

 

 

「くっ!」

 

 

がそう簡単には近寄らせてはくれないらしい、背後から迫るビットのレーザーを宙返りでかわし続いて迫るレーザーも身を捻って避けていく。

 

 

「そこですわ!」

 

 

「ふっ!」

 

 

ビットの攻撃をかわした先で空いた背中にライフルが放たれるが、それを振り向きざまに投擲したブレードで弾く。

 

そして足を止めた所に再びビットの攻撃が来るがギリギリの所をスラスターを小刻みに噴かして抜けて行く。

 

 

『思っていたよりはやりますわね』

 

 

『それはどうも、こっちとしても中々に楽しませてもらってるぞ?』

 

 

距離が離れてきたので通信を繋いで会話をする。

 

 

『…何か雰囲気が変わっていましてよ?』

 

 

『なに闘ってるからテンションが上がってな、癖で感情が昂ると口調がちと荒くなるんだよ』

 

 

そんな会話の最中にもオルコットの弾幕は止まず、一部をシールドで防ぎながらかわしていく。

 

しかし攻撃そのものは悪くない、狙いも正確だ。

 

だがそれ故にかわしやすく、そしてオルコットはビットの最も強力な使い方をしていない。

 

…いや、出来ないのか?

 

 

『オルコット、君同時攻撃はどうした? 本来ビットの使い方は本体との連携にあるだろ』

 

 

『っ…』

 

 

やっぱり出来ないか、なら一つ余計なお節介でもしてみるかねぇ。

 

 

『機体を信じ思考を柔軟にしろ、センサーの機能を十全に発揮させ操作すればどうにでもなる。出来る出来ないなんて迷いは放り捨ててしまえ、やると心に決めれば澱みは消える』

 

 

『…いきなりなんですの、このわたくしに助言などと失礼な!』

 

 

『承知の上だ! それでも君により高みへと至って欲しいと思うんだから仕方ないだろう? 文句なら倒された後で幾らでも聞いてやる、今は勝つ為にやるべき事を全部やってみせろ!』

 

 

思い切り煽ってからニヤリと笑い、さっきブレードを投げて空いた右手に今度はアサルトライフル・焔備を呼び出す。

 

そしてビットから放たれるレーザーをすり抜けながら、オルコットに向かい照準を合わせた。

 

 

 

――――――

side セシリア

 

 

「くぅっ!?」

 

 

またビットの攻撃をかわされながら銃撃を当てられる、先程のやりとりからずっとこの繰り返しですわ!

 

まだビットは落とされてはいませんが、少しでも操作を誤れば撃ち落されるかもしれない。

 

どうしてわたくしの攻撃が当てられないのか、そんなものは分かりきっている。

 

それは先に指摘された通りの理由であり、それが己の弱点であるという事も承知していた。

 

だとしてもこうもかわされるなど思ってもいなかった、それ程に経験の差があるというのか。

 

…いや、それ以前に一つわたくしは間違えていた。

 

相手はこのブルー・ティアーズを熟知している、このライフルもBT兵器も基礎は全て工房の技術供与による物なんですもの。

 

そのような相手にこんな攻撃を続けていればエネルギー切れかシールドを削り切られるか、いずれにしてもわたくしが敗北するのは必然でしょう。

 

そのような屈辱を味わう位でしたら…今一時の恥など気にはしていられませんわ!

 

 

「ブルー・ティアーズ、わたくしに力をお貸しなさい!」

 

 

怒りを抑えて、ハイパーセンサーから流れてくる情報に意識を研ぎ澄ませる。

 

そしてビットと自身の感覚をその情報にそって思考し、それを実行する為だけに集中する。

 

ブルー・ティアーズを信じる、それはつまりわたくしの思考を必ず汲み取ってくれるという信頼の心。

 

わたくしの攻撃が止んだ隙を狙い、あの男性…ユーリがニヤリと笑い此方にライフルを向ける。

 

ふん、撃ち込まれた分は返させていただきます!

 

 

「今ですわ!」

 

 

取るべき機動をセンサーから送り、ビットを躍らせる。

 

彼の背後から先ず一撃、それを身を捻ってかわす所に左右から射角を調整した二発を同時に放つ。

 

そしてビットに合わせて移動した位置からライフルを撃つ。

 

考えるのではなくセンサーからの情報を感じるままにビットに指示を送り、自身もその感覚に従いトリガーを引く。

 

 

「二…一…そこです!」

 

 

彼が上に跳ね上がると読んで待機させた四機目のビットに斜め下から撃たせ、宙返りをする瞬間にライフルの一撃を重ねる。

 

 

『うっぐ!?』

 

 

狙い通りにその背にレーザーを当て回線から聞こえる呻き声に手応えを感じつつ、大きくバランスを崩した所に向かい瞬時加速(イグニッション・ブースト)を掛ける。

 

 

「インターセプター!」

 

 

左手にショートブレードを呼び出しながら、チャージが完了した推進エネルギーを解放する。

 

ビット達に追い撃ちをさせつつ、掛かるGに耐えながら向かう背中に刃を突き出した。

 

 

side out

――――――

 

 

 

ライフルの一撃からビットで体制を崩し続け、シールド残量が削がれた所に近接の一撃で決める気か。

 

純射撃特化の機体で近接を仕掛ける意表の突き方、それを迷わぬ思い切り、ますます気に入った!

 

だが―――

 

 

「まだ…終われないなぁ!」

 

 

ビットの攻撃でボロボロになったブレードとライフルを放り捨て、両手にグレネードを呼び出して直ぐ傍にばら撒く。

 

 

『なっ!?』

 

 

センサーの情報で驚きに目を見開くオルコットが見える、その反応が欲しかったぞっと♪

 

躊躇い無くグレネードを起爆させ、私と周囲を爆炎と煙が包む。

 

瞬時加速で此方に迫っていたオルコットにも直撃するタイミングを狙ったから手応えはある、まぁ自分ももうシールド残量がレッドゾーンだがな。

 

さて…もう少し格好付けさせてもらおうか!

 

両手に本来は狙撃に使う長距離用大型ライフル・撃鉄を二挺呼び出す。

 

本来はオプション込みで使う物だが今は銃だけで良い、さぁ私のターンといこう。

 

オルコットが来ていた方向に向きながら、背後に瞬時加速して煙から飛び出す。

 

 

『っ! そこで『遅い!』っな!?』

 

 

オルコットが気付いて反応するのを遮り、瞬時にビットを狙い撃つ。

 

 

「…残念、一機逃したか」

 

 

撃ち出した弾丸は三機のビットを捉え落としたが、反応が間に合われ一機にはかわされた。

 

 

『まさか一瞬で持っていかれるとは思いませんでしたわ』

 

 

『四機とも落ちてて欲しかったんだがな、そうすれば後は対処し易いミサイルタイプだけになったのに』

 

 

煙が晴れ、再びオルコットと向かい合う。

 

グレネードのダメージか彼女の手にしているライフルは銃身が曲がり、所々の装甲は吹き飛んでいた。

 

だがまだ左手のショートブレードと三機のビットが残っている、さてどう攻略するか。

 

 

『このような無茶をなさるとは思いませんでした、やってくれましたわね』

 

 

『驚いただろ? だが君の奇策も中々だ、がもし私が他の選択をしてカウンターを喰らってたらどうするんだよ』

 

 

『そうさせない為のビットですわ。さて…お互いにもう余力は残っていませんわね』

 

 

『だな…次で決めるか』

 

 

『ええ、では……』

 

 

『行くぜぇ!』『行きますわ!』

 

 

互いに声を張り上げて、相手に向かい行動を起こす。

 

オルコットはライフルをしまうと背後に提げていたミサイル搭載ビットを飛ばし、三機のビットで待ち構えてくる。

 

私は撃鉄をしまい、また手にブレードを二振り呼び出し構える。

 

そして両肩のボロボロになってる盾を前面に向け、瞬時加速で一気に間合いを詰めに行く!

 

 

「させませんわ!」

 

 

行動が読まれていたかその叫び声が耳に届くと同時に、動き出す私の動線上にビットのミサイルとレーザーが放たれる。

 

が、それをシールドと手にしたブレードで防ぎそのままオルコットの眼前にまで翔る。

 

 

「せぁあ!」

 

 

「くぅ!」

 

 

私がオルコットを防御の為に構えられたショートブレードを砕いて×字に斬り伏せるのと、側面からビットのレーザーとミサイルが叩き込まれるのは同時だった。

 

 

「「………」」

 

 

僅かの沈黙、それを破ったのは鳴り響くブザーの音だった。

 

 

『試合終了、両者引き分けだ』

 

 

その直ぐ後スピーカーから千冬の声が響き、残念ながら引き分けと告げられてしまった。

 

 

「むう…半拍子遅かったか。オルコット、ありがとう」

 

 

「ん…あ…はい?」

 

 

声を掛けてみるが、オルコットは少し意識が朦朧としてそうな感じで反応が薄い。

 

恐らく脳が処理疲れでぼーっとしてしまたのだろう、慣れるまではビットと自身の同時行動は負担が結構掛かるから。

 

 

「大丈夫かい? ピットまで送ろうか?」

 

 

「あ…いえ…ん、もう平気ですわ」

 

 

もう一度声を掛けると、オルコットは軽く頭を振ってから答えてくれた。

 

 

「じゃあ改めて。楽しかったよ、ありがとう」

 

 

そう言って左手を差し出す。

 

 

「…こうまでされては認めざるを得ません、貴方は優秀な操縦者ですわ」

 

 

オルコットはそう言い握手をかわしてくれた。

 

 

「次はこっちも専用機で相手をす…る…っぐ!?」

 

 

あ、不味い。

 

胸に激痛を感じて視界がぼやける、小久しくISを纏ったからか少し負荷が掛かったらしい。

 

 

「どうしましたの!? あ、発作ですのね!」

 

 

オルコットも覚えててくれたんだね、意外とこの娘根は優しいんじゃないかな?

 

あは…駄目だ、もう…落ちる―――

 

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