ヴィラン名『ピトフーイ』   作:アニアス

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オリジナルヴィランが出ます


第1話

朝のスラム街。

大通りはブルーシートや段ボールで作られている簡易な家が並んでいる。

住人たちは洗濯物を干したり酒を飲んだりと大きな騒ぎを起こすことなく生活していた。

 

「ふぁ~…」

 

そんなスラム街の日常の中を歩いているのはピトフーイ。

まだ睡眠が足りないのか大きな欠伸をしている。

 

「あーあ、今日も仕事ゼロ。暇で死んじゃいそ~」

 

麻薬のバイヤーの始末をしたのは1週間前。

それ以降、1件も仕事が入らず暇をもて余している。

金銭面では困っていないが人の生き死にを快楽としているピトフーイにとっては地獄である。

 

「もうこうなったら殺し屋やめて人狩りでもしようかな~…ん?」

 

殺し屋は稼げるが快楽の方が大事であるため転職しようかと考えた時、ピトフーイはあることに気がついた。

スラム街を根城にしているヴィランたちが大通りを歩いていた。

別に珍しいことではないが今日はいつにも増して多くのヴィランが出歩いておりスラム街の住人たちも不審に思ってしまう。

 

「ん~、こりゃあ何かあるなぁ~…よしっ!」

 

当然ピトフーイも不審に思いこの状況を探ろうと1人のヴィランの後をつけることにした。

 

バレないように後をつけているとヴィランがとある廃倉庫の中へ入っていった。

物陰に隠れているピトフーイが様子を伺っていると、 次々にヴィランが入っていく。

 

「何だろう?」

 

不審に思いながらもピトフーイは物陰から出て他のヴィランたちに紛れて倉庫の中へ入ろうとする。

ヴィランたちがピトフーイを気にする様子もないため一緒に倉庫の中へ入っていった。

 

中に入ると既に大衆のヴィランがいた。

 

マスクを着用していたり、ナイフの手入れをしていたり、異形系の個性持ちだったりと様々なヴィランたちがまだかまだかとソワソワしている様子だった。

 

「なんだろ?パーティーでもあるのかな?おっ!」

 

これから何があるのだろうとピトフーイが首を傾げると視界にあるヴィランが映り込んだ。

 

異形系の個性なのか頭部が牛の顔をしており2メートルを越える体格。

タンクトップ越しでも盛り上がっている筋肉を携え存在感が大きかった。

 

ピトフーイは牛のヴィランを見つけるやフレンドリーに声を掛けた。

 

「やぁやぁビーフくんじゃないか!」

 

いきなり声を上げたピトフーイに周囲の視線が集まるも、ピトフーイは気にせず牛のヴィランへ歩いていく。

牛のヴィランが振り向いてピトフーイを見るや嫌悪な表情になった。

 

「ピ、ピトフーイ!何でお前が!?つーか俺のヴィランネームはビーフくんじゃねぇ!」

「そんなこと言わないでおくれよビーフくん。私と君の仲だろ」

「その言い方やめろって言ってるだろ!」

 

顔見知りなのか牛のヴィランはからかうピトフーイに怒鳴り声を上げる。

 

牛のヴィランの名は『タウロス』

 

金稼ぎのためにヴィランとなり、数々のヒーローを撃退してきた百戦錬磨の実力者。

ひょんなことからピトフーイと腐れ縁を築き『ビーフくん』とあだ名で呼ばれている。

ピトフーイが起こしたトラブルに何度も巻き込まれることもあり何かと残念な面も持っている。

 

そんな2人が言い争っている光景を他のヴィランたちが注目しヒソヒソと話している。

 

「あれがタウロスか…!スゲェ体格だ…!」

「それに殺し屋のピトフーイもいるぞ…どんな個性を持ってるんだ?」

「噂じゃピトフーイは無個性らしいぞ」

「はっ!?マジかよ!?」

 

ピトフーイもタウロスもそれなりに有名なヴィランであるため注目も集まってしまう。

そんなことなどお構い無しに2人は話を続けている。

 

「それよりビーフくん。これって一体何の集まりなワケ?」

「はぁ?お前何も知らないで来たのかよ?」

 

ピトフーイが嘘を言っているように見えないタウロスは呆れた顔になってしまう。

どうやら何の集まりなのか知っているタウロスにピトフーイが更に聞こうとした時だった。

 

 

 

「全員揃ってるな」

 

 

 

倉庫内に男の声が響きヴィランたちが聞こえてきた壇上へ注目すると、3人の男が立っていた。

 

真ん中に立っている男は髪が薄い水色。

顔には掌が張りついて表情が見えず、腕や肩、首にも同じ掌が張りついていた。

 

掌の男の右側には黒いモヤのようなものが漂っていたがよく見ると黄色く光る目があり人であることを示していた。

 

更に掌の男の左側には脳が剥き出しになっている男がおりタウロスよりも筋肉質で大柄だった。

 

明らかに普通じゃない雰囲気を漂わせている3人に集まったヴィランが注目する中、ピトフーイがタウロスに話しかける。

 

「ねぇねぇビーフくん。何あの人たち?」

「………あの掌男は死柄木弔。敵連合っていう組織のリーダーで今回の雄英高校襲撃の話を持ちかけてきた首謀者だ」

「へぇ~死柄木って言うんだ~……え?雄英高校襲撃?」

 

掌の男『死柄木弔』が首謀者であることを知ったピトフーイだったが、その後の雄英高校襲撃に反応を示す。

 

雄英高校といえばヒーロー養成学校の中でも倍率が高い超エリート高校。

数多くのプロヒーローたちが卒業した学校を襲撃すると知ったピトフーイは流石に驚いてしまう。

 

「ここに集まったのは雄英襲撃で名を上げたい連中ばっかりでな。言わば寄せ集めの集団だ」

「そんな適当に集めた連中で大丈夫なワケ?因みにビーフくんもその1人?」

「ビーフくんって呼ぶんじゃねぇよ…俺は今回の報酬が破格の値だったから参加したまでだ」

「相変わらずお金にがめついねぇ~」

「うっせぇ」

 

ケラケラと笑うピトフーイをタウロスが軽く流していると死柄木が口を開いた。

 

「いいかお前ら。俺たちは今日、雄英を襲撃する。だが本当の目的は……平和の象徴、オールマイトを殺すことだ」

 

死柄木から本当の目的を聞かせたヴィランたちは一斉にざわついてしまう。

No.1ヒーローでもあり平和の象徴とも呼ばれている『オールマイト』の殺害を初めて知らされたようであり、当然タウロスも驚いてしまう。

 

「オールマイトを殺すだと…!?」

「ビーフくんも知らなかったんだ?」

「あ、あぁ。あの隣にいる黒霧ってヤツが雄英までワープゲートを開いて襲撃することしか聞いてねぇぞ…」

 

「ちょっ、ちょっと待てよ!」

 

すると1人のヴィランが声を上げて死柄木に抗議をした。

 

「俺らは雄英を襲うことしか聞いてねぇぞ!?」

「何だよオールマイトを殺すって!?」

「No.1ヒーローを簡単にやれるワケねぇだろ!」

 

オールマイトの強さを知ってるかのような口振りで次々に声が上がっていく。

それを見た死柄木はため息混じりにイラついてしまう。

 

「はぁ~面倒くせぇな……黒霧」

「はい」

 

死柄木に呼ばれたモヤの男『黒霧』が前に出て声を出した。

 

「皆さん。今回の雄英襲撃、そしてオールマイトの殺害に関しまして手を抜いているつもりは毛頭ありません。むしろオールマイトにはそれ相応の準備をしました」

 

黒霧の言葉にヴィランたちは再びざわついてしまう。

あのオールマイトを倒せる秘策とは一体何なのだと疑問が漂う中、再び黒霧が声を発した。

 

「ご紹介します。対平和の象徴の怪人『脳無』です」

 

それと同時に大柄な脳剥き出しの男が一歩前に出た。

ずっと壇上でマネキンのように大人しくしていた男『脳無』が動き出したため倉庫内ではどよめきが起きてしまう。

見るからに強そうではあるがタウロスはどうも腑に落ちずにいる。

 

「見るからに増強系みたいだが、それだけでオールマイトに対抗できるのか…?」

 

パワーだけでオールマイトを捩じ伏せられるなら誰も苦労はしない。

それだけでオールマイトを倒すことができるのかと不審になってしまう。

 

「ピトフーイ、お前はどう思う…?ってあれ?」

 

タウロスがピトフーイの意見を聞こうとすると、隣にいた筈のピトフーイがいつの間にかいなくなっていた。

辺りを見渡すもその姿は見えなかった。

 

「アイツどこ行きやがった………?」

 

 

 

 

 

「へぇ~これがオールマイト用の秘密兵器だったんだ~!」

 

 

 

 

 

その時、聞き覚えのある声がタウロスの耳に入りまさかと思い壇上を見ると、案の定ピトフーイが壇上に上がって脳無を間近で見ていた。

 

「何やってんだあのバカ!?」

 

勝手な行動をしているピトフーイにタウロスは頭を抱えてしまい、ヴィランたちも驚いてしまう。

しかしピトフーイはお構い無しに脳無を観察する。

 

「見るからに増強系っぽいけど異形系にも見えるねぇ…にしても脳剥き出しってグロッ。これ生きてるの?」

「オイ」

 

能天気に脳無を観察しているピトフーイに痺れを切らした死柄木が近づく。

 

「いきなり何なんだお前は…黒霧、コイツ飛ばせ」

「落ち着いてください、死柄木弔」

 

イラついている死柄木を黒霧が宥めて止めに入る。

これから雄英を襲撃をする手前に騒ぎが起きてしまえば面倒のため黒霧は死柄木を落ち着かせてピトフーイに話しかける。

 

「失礼ですが、もしや貴女はピトフーイではありませんか?」

「おっ!私のこと知ってんの?いやー光栄だね~!」

「はぁ?コイツがピトフーイ?」

 

スラム街だけでなくヴィランやヒーローの間でもピトフーイの名は有名であるため黒霧はもしやと思ったのである。

照れるように後頭部を掻いているピトフーイに黒霧は丁寧に対応する。

 

「貴女のような名のある方に来ていただけるとは、こちらとしても頼もしい限りです」

「そんなことよりさぁ、この人?でホントにオールマイトを倒せるワケ?」

 

黒霧の言葉を遮りピトフーイは脳無の胸をドアをノックするように叩いた。

ピトフーイもタウロスと同じ意見でパワーだけでオールマイトを倒せるとは思っていない。

しかも胸を叩いても一向に反応しない脳無に廃人なのではないかと思う中、黒霧は自信を持って答える。

 

「ご安心を。この脳無は対オールマイト用の兵器です。そう簡単にはやられません」

「ふーん?」

 

そのままピトフーイは脳無をジーッと見続けた。

1秒、2秒、3秒と時間が過ぎていきヴィランも死柄木も黒霧もピトフーイに注目している。

 

誰もが何も言わずに動かずにいた時だった。

 

何処から途もなくピトフーイが拳銃を取り出し脳無へ銃口を向けて引き金を引いた。

2発3発と倉庫内に銃声が鳴り響きその場にいた全員が呆気に取られてしまう。

 

「………ピ、ピトフーイ!何を!?」

 

ハッと我に帰った黒霧がピトフーイに声を上げるも、ピトフーイはあっけらかんに笑っている。

 

「いいじゃん別に。ちょっとした腕試しみたいなもんだってば」

 

脳無を見ると胸に3ヶ所の弾痕がくっきりと残っていた。

脳無がピトフーイの放った弾丸を受けたということを物語っている。

 

「やっぱ秘密兵器とは思えないねぇ。だってこの程度の攻撃くらい避けられないんじゃ………」

 

その時、ピトフーイが声を詰まらせてしまった。

脳無が受けた傷がみるみるうちに塞がっていき内側から押し出されるように弾丸が溢れ完全に傷が治っていった。

これを見たピトフーイはもちろんのこと、タウロスも他のヴィランたちも驚いてしまう。

 

「………成る程ねぇ。これならオールマイト用の秘密兵器ってのも納得だわ」

「まったく、勝手な行動は控えていただきたい」

「ゴメンゴメン。それにしても再生する個性か~。っていうか撃たれたってのにノーリアクションだし…っ!」

 

するとピトフーイ目掛けて死柄木が手を伸ばしてきたため咄嗟に避ける。

 

「お前何様のつもりだ…!?殺すぞ…!」

 

勝手に壇上へ上がっただけでなく脳無を傷つけたピトフーイに完全にキレた死柄木が息の根を止めようとした時だった。

 

「ス、スゲェェ!」

「あっという間に傷が治りやがった!」

「しかも撃たれても堪えてなかったぞ!」

「これはひょっとするとマジでオールマイトをやれるんじゃねぇか!?」

 

ヴィランたちが歓喜の声を一斉に上げた。

始めは半信半疑であったが脳無の能力を目の当たりにして疑問から確信へと変わっていった。

 

「……………」

「死柄木、どうかご辛抱を。ようやく皆が纏まってきた時に騒ぎを起こしてしまえばすべてが水の泡。それにピトフーイは重要な戦力です。だからここは堪えて下さい」

「………チッ」

 

黒霧に説得された死柄木は興が覚めたのかピトフーイに背を向けて元の場所へと戻って行った。

それと同時にピトフーイも壇上から降りタウロスの元へ戻った。

 

「ったく、お前は相変わらずだな。ヒヤヒヤさせんじゃねぇよ」

「なになに?もしかしてビーフくん心配してくれたの?」

「んなワケねぇだろ。ここでトラブル起きたら報酬がパーになっちまうじゃねぇか………つーか今さらなんだけどよ、お前も雄英に行くのか?」

 

いつの間にか流れでピトフーイも雄英襲撃に加わっているためタウロスは反射的に聞いてしまう。

そんなタウロスにピトフーイは笑いながら答える。

 

「まぁ乗り掛かった船だし?最後まで付き合うよ。それに丁度暇してたからねぇ~」

「………フッ。お前らしいな」

 

タウロスは報酬金のため、ピトフーイは人の生き死にを見たいため、利害の一致で雄英襲撃へ向かうのであった。




名前:タウロス
CV:小山力也
個性:牛
牛っぽいことなら何でもできる!
巨漢な体格から繰り出されるタックルは強烈だ!
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