不破の様子を見て、雷改はがくがくと足を震わせながら力を振り絞り、立ち上がる。
「ハァ、ハァ、ぐっ、あれは.......“この時空”の.......“アーク”の力!?
まさかバルカンが.......。
おっ、おい!亡!大丈夫か!!」
正反対の方向にいる亡に呼びかけると、ピクリと反応し、震えながら立ち上がった。
「ふ、不破 諫.......。お前は悪意を手に入れたのか.......?」
「.......ナノマギアか」
不破は呟くと、手をだらりと下げて辺りを見回す。
相変わらず、人の叫びが聞こえ、驚異的な身体能力で殺戮を続けているトリロバイトマギアがちらちらと見える。
血にまみれた世界と、自分の真下に横たわる、吐血と腹部の流血で虫の息の唯阿を改めて見ると、不破は一瞬「ふっ」と笑うと、殺気走った眼光で雷改と亡を睨みつけて言い放った。
「俺は間違っちゃいない.......!こんな惨劇を生み出したナノマギアを俺は許しはしないっ!
そして、お前らに見せてやるよ.......本物の怒りを!
うおおあああああっ!!!ナノマギアは全員ッぶっ潰す!!!」
不破はショットライザーにプログライズキーを叩き込むと、天に向けて発射し、炸裂した装甲が避雷針に集まる雷のように不破へ集結した。
「変身ッ!」
──OVER RISE!! Lady Go!!ASSAULT WOLF!!!
──No chance of surviving.
ブシュゥゥ!!と熱を持った蒸気が立ち込め、漆黒の鎧を纏ったバルカン、“アサルトウルフ”が姿を現し、胴体の赤い機械パーツと赤い眼光が世界中を睨みつけるようにぐわっと輝いた。
「唯阿。俺はお前を殺させはしない。もしも、お前を殺そうとする敵が悪ではなくても、俺は戦う」
その風格、佇まいに圧倒され、構えはするものの雷改や亡は動くことが出来なかった。
次の瞬間には、バルカンが棒立ちをやめ、ショットライザーで雷改を銃撃し、怯んでいるうちに凄まじいスピードで亡を捕まえ、持ち上げると雷改へ投げつけて二人を同じ位置へまとめ、二人が気づいた時にはもう目の前に、バルカンがショットライザーの銃口を向けて立っていた。
「ぐはっ」
「くっ.......おらああっ!!」
横たわって変身が切れた亡に代わり、雷改は双剣を振るってバルカンに切りかかる。
しかし、雷改の首を掴んで持ち上げ、弾頭を仕込んだ右拳を下から腹部へぶつける。
ドゴォンッ.......!
「うぐあ.......」
雷改を大きな爆発と共に打ち上げ、バルカンは間髪入れずにショットライザーを操作して力を貯めた。
「俺が正義だ.......!」
──MAGNETIC STORM BLUST FIVER!!!──
地面がめくり上がるほどの跳躍に、自身が通った場所が真っ黒の閃光とともに雷を纏い、雷改にぶつかると、ゴッパァン!!と、大質量の水を地面に打ち付けるような強烈な破裂音を響かせて爆発させた。
雷がボロボロの姿で変身を解除し、地面へ墜落する。
バルカンがバチバチと妖しい色の磁気を帯びながら着地すると、爆発に帯びた磁気が地面一帯へ降り注ぎ、次第に辺りは静かになっていった。
「この技の磁気が、他のナノマギアを停止させたか。.......唯阿ッ!」
バルカンは変身を解除すると、横たわる雷や亡など構わず駆けつけ、背負った。
「まだ息がある.......お前が死んだら、せっかくのチャンスが無駄になるんだ.......。
ナノマギアになれば助かるが、俺はナノマギアなどもう信じはしない!!」
不破は決意を叫ぶと、その場から走り去っていった。
────────────
その頃、或人はひとりゼロワン ライジングホッパーに変身し、人間に襲いかかっているナノマギアと戦っていた。
多勢に無勢、一人一人の戦力はゼロワンに遠く及ばないが、あまりの数の多さに人を守り切れなくなっていた。
「くっ、キリがないっ!」
「きゃあああっ!!」
「っ!!」
ゼロワンがその悲鳴の方向へ向くと、転んで足を怪我した少女が今にも殺されそうになっていた。
「ぜっったいにっ!!助ける!!!!あああっ!!」
出力、速度を高めるため、ゼロワンは手元にあった輝くプログライズキーを飛電ゼロワンドライバーにかざし、煌めく黄金のエネルギーを足に纏って瞬時に蹴り出した。
『BIT!』
『BYTE!』
『KILO!』
『MEGA!RISE!』
──RISING MEGA IMPACT!!
「うぉああっ!!」
ドシュッ!!と稲妻が通り抜けるように、金の閃光がトリロバイトマギアを貫き、着地した際の余剰エネルギーを利用してさらにドシュドシュと跳ねて辺り一帯のトリロバイトマギアを消し飛ばす。
エネルギーが切れ、残像を残しながら少女の目の前に着地すると、空、地上のあらゆるトリロバイトマギアが同時に爆発して辺りを照らす。
「.......大丈夫!?.......イズ!ワズ!この子を!」
「承知しました」「任せてくださいっ!ささ、こっちへ」
二人が少女を持ち上げてわっせわっせと運んだのを見て、ゼロワンは手元の輝くプログライズキーを握りしめる。
「.......乗り切るにはこれしかないか。
このへんだけで五十体はいるな。このままだと守りきれずにどんどん人が殺されてしまう。
.......迷ってる暇なんかないっ!」
──SHINING JUMP!!
──AUTHORIZE
輝くプログライズキー、“シャイニングホッパープログライズキー”を起動すると、二匹のバッタのライダモデルが暴れるように跳ね回り、ゼロワンドライバーにキーを装填すると、ゼロワンに飛びかかる。
「変身!」
──プログライズ!!
──The rider kick increases the power by adding to brightness!シャイニングホッパー!
──When I shine,darkness fades.
ゼロワンの姿は眩く輝きながら、二匹のバッタを纏い、身体がより強く発達する。
輝きが収まると、黒と蛍光イエローの姿は一瞬にして消え、ゼロワンの叫びと共に辺り一帯が大きく輝きだし、全体に反響するようにゼロワンドライバーの音声が鳴り響いた。
「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」
──SHINING IMPACT!!!
光がパッ!!と収まると、人々を襲うトリロバイトマギアが同時に、どこからともなく現れたシャイニングホッパーの残像に蹴り抜けられ、ゼロワンがイズとワズの目の前に着地すると同時に蹴り付けられた全てのトリロバイトマギアが爆発した。
「おお.......これがシャイニングホッパーキーの力.......」
驚き喜ぶワズ。イズはゼロワンに頭を下げると、それを見た少女も一緒に頭を下げた。
「お疲れ様です。或人社長」
「あっ、ありがとうございました」
ゼロワンは肩で息をしながら立ち上がり、変身を解除すると、疲れきった表情で笑いかける。
「.......ははは、守れてよかった。とりあえずこの辺りは大丈夫かな。
って、うおーっ、バックファイアがきたぁ.......!」
よろけて倒れそうになる或人を、イズは肩を組んで支え、微笑みかけた。
「あ、ありがとうイズ」
「はい。......ですが、これで終わりではありません。直ちに不破 諫や刃 唯阿と合流しなければ、或人社長の身体が持ちません」
「と、話している所、丁度あちらからやって来ましたよ」
ワズが指し示す方向には、唯阿を背負う不破が血気迫る表情でこちらへ向かっていた。
「不破さん!.......刃さん!?」
或人が呼びかけると、不破は刃を背負ったまま冷静に話し始める。
「刃は、もう一人のお前にやられた。
まだ息がある。可能なら、刃を人間のまま、助けたい。だが.......」
そう言う不破の足元には、ぽたぽたと滴り、刃の顔は青ざめてヒューヒューと呼吸をしている。
とても長くは持ちそうにない。
「.......その様子では、持ってもあと数時間です。助けるのなら、ナノマギアにするしかないですが.......今この様子では暴走していないナノマギアを探すのは困難ですね.......」
イズが暗い表情で俯く。不破はふるふると震え、涙をこらえている。
「.......ナノマギアにはなってほしくはない!なにより、俺はもうナノマギアは信じない!ヒューマギアの頃の捏造の記憶なんかじゃない!悪意じゃないのなら.......あれを悪意なくやっているのならあれは正真正銘の純粋悪だ!!子供が悪意もなく何もしない虫をいたぶるように、奴らはこの次元の、この時空の人類をゴミと同じだと思っている!」
怒り吠える不破。しかし、その言葉を聞いてワズは震え、ついに口を挟み、声を荒らげた。
「ッ、違います!.......わ、私には聞くに耐えません。
私の知る限りでは相当に賢明な不破さんが理解できないのなら、分かるはずがありません。
今全てを私がお話します。
そして私が、全ナノマギアの名誉に掛けて、刃 唯阿さんをナノマギア化させます.......!そして、社長の考えを話し、私が不破さんを納得させてみせます!それでもナノマギアが憎ければ、私は唯阿さんの仇同然!消去してください!」
ワズが顔をゆがめ、拳をふるわせながら語り出す。対して、不破は驚くと、次に悔しそうに歯を食いしばる。
「俺が.......あいつを理解してやれなかったのか.......!?や、やめろ.......!」
ワズは右手を唯阿へ向け、ナノマギアの粒子を送る。すると、唯阿は平静な表情を取り戻していき、静かに寝息を立て始めた。
「これで、人間としての唯阿さんは死に、唯阿さんはナノマギアとして助かりました。.......お許しください」
ワズは不破に深く頭を下げる。イズも悲しそうに言葉を続ける。
「不破 諫が理解できないのも無理はありません。今の彼は、時空の歪みで相当な負荷がかかり、常にエラーと戦っています」
イズがフォローするものの、不破は悔しがるばかりであった。そんな不破にワズは語り始めた。
「申し訳ありません、或人社長。私は未来の或人社長、通称“ナノマギア・アルト”さまのもと、あなたの監視をする予定でございました。
そうです。本来であれば、私は敵であり、これからあなた達を裏切る算段だったのです。
ですが、彼は狂ってしまった。数々のエラーと戦う彼は、少しずつ正常な判断が出来なくなってしまいました。
初めに侵したミスは、過去に遡る際、一度世界の全てを消し去る必要がありました。ですが、その決心をしたはずのアルトさまは、エラーの影響で段々と記憶を失うようになりました。
ルールを忘れ、未来の世界を消去することを拒み、イズとたった二人だけで過去の世界へと乗り込みました」
イズはそのセリフを聞いて、申し訳なさそうに下に視線を向ける。
「.......私も、拒んでおりました。
出来ることなら、私の歩んだ世界を消したくはない。
アルトさまと歩み、アルトさまを失い、アルトさまが私を求めて、蘇らせてくれた。
この素晴らしいひとつの結果を、世界全ての結末との天秤に掛けることは、私一人には重すぎたのです」
聞き、悩むワズ。そしてイズに向き直ると口を開く。
「イズ。君は甘かった。世界を変えるということは、全てを諦め、冷酷に決断できなければいけない。
しかし彼は、自分のわがままではない、地球全体を覆う全てのナノマギアの想いを一心に受け、地球全体のわがままとして、全てを捨てることにしたのです。
それを、アルトさまの次にわかっていた君が.......。
いや、私にこれ以上は言えはしない。同じ立場であれば、どれだけ苦しいか分かりはしない。
そして、全世界の責任など、どうやっても背負える生物はいないのです」
「うぅ.......申し訳ありません.......!私が、私が不甲斐ないばかりに.......申し訳.......ありません.......!」
涙を静かに流し、ついに泣き崩れるイズ。ヒューマギアの頃は見れなかった異常な光景に、或人は胸が締め付けられ、駆け寄って背中を撫でる。
「ふ、触れないでくださいっ!私に、こんな私に同情など許されません.......!」
イズは或人の手首を掴み振りほどこうとする。
しかし或人はイズのその手を両手で握り、優しく語りかけた。
「イズ.......大丈夫。未来の俺も、俺だ。
俺がいつかするかもしれなかった未来の姿。俺は無関係じゃない。一緒に背負うよ」
イズは顔を歪めたままふるふると首を横に降り、わなわなとした口ぶりで呟いた。
「.......そんなことを言ってはいけません。今の或人さまは、まだ何も罪を犯してはいないのですから.......」
ワズは二人の様子を気遣い、一度間を置いてから言葉を続ける。
「.......そして、二人だけが切り離されたはずの世界は、破壊されなかったことによって過去へと引きずられ、過去と未来がぶつかった事で融合し、ひとつになったのです。
世界の全てがひとつになる中、アルトさまだけは抵抗する力を持ち、目的の達成のためだけに独立した存在になりました。
我らナノマギアは困惑する中、アルトさまに指示を受けました。
それは、私たちナノマギアが人類に戦いを挑む事でした。
人類がナノマギアを憎み、ナノマギアが人類の手によって自然に還ることを促すために.......!?」
その時、また一筋の閃光がワズを襲い、貫くとすぐに全身が見えないほどに白く輝き出した。
「まさか.......アルトさま.......そんな.......」
「ワズ!?」「!!.......お兄さま!」
或人とイズが反射的に叫ぶ。しかし、目の前のワズには何も出来ないまま、光が薄れていくのと同時に消滅していった。
その光の向こうには、白いゼロワンが武器を構えて立っていた。
「また俺.......」
或人は理解できないといったような複雑な表情で、その白いゼロワンを見る。
隣に立っていた不破は、唯阿を或人に預けて激昴した。
「唯阿を頼む!
.......お前は、お前は人類を救うために人類を殺そうとしたのか!
それは、そんなことは間違っている!!
お前の頭がおかしくなってるなら、俺がぶん殴って正気に戻してやる!」
不破がいくら睨もうと、意に返さず静かに立つ白いゼロワン。不破はアサルトグリップとアサルトウルフキーを取り出して起動し、変身した。
──ASSAULT BULLET!!──
──OVER RISE! Lady Go!!ASSAULT WOLF!!!
──No chance of surviving.
「うおおおお!」
バルカンは白いゼロワンに向けて走り出し、ついに激突すると、その直後に二人の頭上から白銀の流星がひとつ降り、着弾すると二人を大きく吹き飛ばした。
「ぐうっ!?何っ!?」
「.......そこまでだ。二人共」
その場に降り立ったのは、黒の装甲に白銀の鎧が合わさったひとりの仮面ライダーだった。
黒と銀のライダーは、腰に赤い変身装置を巻いて、そこに、或人が以前より使用している“メタルクラスタホッパープログライズキー”に酷似した黒い縁どりの銀のプログライズキーが装填されている。
彼が拳を握ると、全身から大きく赤い炎が燃え上がり、変身装置のレバーを操作し、フッと消えたかと思うと身体が分裂して白いゼロワン、バルカンを同時に真っ赤に燃えた脚を向けて突進した。
──METAL ROCKING THE END──
機械音声が鳴り響いた直後、炎は彼の上下左右の四方へわかれ、『極 煌 終 焉』という文字を形作り、燃え盛る彼の一撃が二人に当たった瞬間に収束する。
「ぐわぁ!」「ううっ!」
二人が凄まじい勢いで吹き飛ばされた直後、バルカンを蹴りつけた彼が白いゼロワンへ、白いゼロワンを蹴りつけた彼がバルカンに向けて突進を開始し、空中で追いついてもう一度同じ一撃を叩き込んでさらに吹き飛ばした。
「「ぐああああ!!」」
二人が強制的に変身を解除させられ、黒と銀の仮面ライダーはひとつに収束して装置を外し、変身を解除した。
その姿を見て、或人は驚き叫んだ。
「父さん!?」
黒と銀の仮面ライダーの正体は、かつて飛電 或人の父親型ヒューマギアだった、“飛電 其雄”であった。
耳についていたはずのモジュールもない。人間と何ら変わりのない其雄がそこには立っていた。
其雄は或人を見て驚いた顔をし、微笑みかけた。
「.......或人。そっちでの俺はどこかでいなくなってしまったんだな。
きっと寂しい思いをさせただろう。だが.......。
お前の選択次第では、俺もお前に立ちはだかるだろう」
「父さ.......「飛電 其雄ォ!」
或人の声を、アルトが遮る。彼の表情は激しく怒り、手にはあのとき使用したゼツメライズキーが握られていた。
「お前はッ.......俺の敵になるのか!!」
キッと睨みつけられる其雄は、変わらぬ穏やかな表情で振り向くと、アルトの元へ歩み寄っていく。
「アルト。俺はたった独りだとしても、世界を導く。
その先が俺の望む世界へ続くのなら、たとえお前だろうと容赦はしない」
「そうやってお前は俺を否定するのか!!」
「アルト。お前が正しいかどうかは、お前がその力で証明して見せろ」
「ううぅっ!!!」
アルトはその手に握られたゼツメライズキーを、ゼロワンドライバーに装填しようとするが、不破はアルトに必死にしがみつき、阻止し始めた。
「アルト!!いい加減にしろ!!!目を覚ませ!!!
お前はそんなやつじゃなかった!!!父親を慕い、俺を信じ、仲間に信じられ、ここまで来たんだろうが!!!
それなのに.......お前はワズを手にかけたんだぞ!!!!」
「.......ワズ。
.......ワズを、ワズを!?」
アルトの手からゼツメライズキーがフッ、と消滅し、片手で頭を抑えて膝から崩れ落ちる。
「.......わからない。俺は、いま、どこまで進んでいる?
イズ、イズゥゥ!!」
「アルトさま!私はここです!!」
イズがアルトの元へ駆け寄ると、不破はイズへ手をかざして制止する。その腕をアルトはグッと握ると、不破をおぞましい眼光で睨みつけた。
「邪魔をするな.......貴様ッ!」
「つぅっ.......もう俺まで覚えてないのかよ、アルト。
俺は、不破 諫だぞ?.......お前とずっと一緒にいた.......」
「黙れ!」
アルトは突然不破を凄まじい力で弾き飛ばすと、どこからともなく精製したヴァ二ッシュカリバーで躊躇なく斬りかかった。
「なっ.......アルト.......!」
不破は、驚き目を丸くしたまま、迫り来る刃に対して硬直していた。
ザシュッ!!
.......と音がして眩い光が辺りを照らし、光源が緩やかに落ち着いてゆく。
そこには、斬られた不破ではなく、上半身を斜めに斬られ、光り輝く其雄だった。
「くっ、間に合った.......」
「其雄さんっ!.......俺を庇って」
「父さん!!」
或人は手元の唯阿が飛び起きるほどの声で叫ぶ。
唯阿は状況がわからず右往左往したが、目の前の状況に絶句していた。
其雄は歯をギリッと食い縛り、バシュン!と突風が吹くような超高速でどこかへ消え去ってしまった。
アルトは尚も消え去った其雄を目で追い、白いプログライズキーを取り出す。
「邪魔なやつは、あと一撃で消せる.......!これで、また一歩.......!」
不破はそれを止めるべく立ち上がろうとする。しかし、ダメージで上手く立てず、チッと舌打ちするとアサルトグリップを或人のもとへ投げた。
「おい!これを使え!!」
或人はアサルトグリップをキャッチすると、唯阿からそっと離れ、シャイニングホッパーキーと連結させてアルトに立ち塞がる。
「.......お前は俺なんかじゃない!
これ以上はやらせない.......!」
『あいつが許せないよね!
あんな悪いやつ、
憎くて、辛くて、たまんないね!』
「.......!?」
突如、或人の脳裏に響くノイズがかかった女性の声。しかし、それは直ぐに何も聞こえなくなった。
脳裏の声に耳を傾けていると、現実からついに音が鳴り、引き戻された。
──JUMP!!──
気がつくと、目の前の自分は自分を激しく睨みつけ、白いプログライズキーを起動していた。
或人はその姿に息を飲むと、真っ直ぐと自分を見つめながら手元のキーを起動した。
──HYPER JUMP!!──
──AUTHORIZE──
二人が同時にゼロワンドライバーにキーをかざすと、音声とともに突如現れたバッタ同士が激しく衝突し合う。
鏡合わせのように腕で円を描き、真っ直ぐと手を下ろすと、掛け声とともにキーを装填した。
「「変身!」」
──プログライズ!!
──To be a gun nice!〜♪セービングホッパー!A jump to the time returns to a rider kick.
──プログライズ!!
──Warning,Warning. This is not a test!
HYBRID RISE!!シャイニングアサルトホッパー!
──No chance of surviving this shot.
或人はアサルトウルフとシャイニングホッパーを合わせたような外観の、異質な強化形態、ゼロワン “シャイニングアサルトホッパー”に変身する。
アルトは、白いゼロワンこと、セービングホッパーへ姿を変え、ヴァ二ッシュカリバーを携えてじわじわと距離を詰めていく。
ゼロワンは巨大で強靭な斧のような武装、“オーソライズバスター”を精製すると、瞬時に踏み込んだ白いゼロワンのヴァ二ッシュカリバーと鍔迫り合った。
ギンッ!!!と重い響きが地面をつたわり、周囲が揺れる。
ゼロワンは地面をえぐるほどの破壊力で後退り、オーソライズバスターの打ち込まれた箇所は白く輝き見えなくなっていた。
「強い.......これなら!!」
ゼロワンは全身を青く光り輝かせると、青いエネルギー弾、“シャインシステム”を展開して斬りかかり、鍔迫り合いながらビーム攻撃を白いゼロワンへ照射する。
「ぐわっ!何だこの力は.......悪意の力か!?」
白いゼロワンは怯み、戸惑うが、或人はすぐさま否定しようとした。
「違うっ!!これは俺の.......」
『違わないよ!
これはきみの悪意さ!』
「.......違うっ!!」
『あははははっ!!
君の力で、アーク様はまた復活するよ!!!
存在を消されても、君がアーク様を復活させることができるんだ!!!!』
「なんだ.......この声っ!?」
ドガァンッ!!と振り下ろす強烈なオーソライズバスターの衝撃とともにシャインシステムの猛攻を浴びせていたゼロワンだったが、シャインシステムが光を失い、ゼロワンは頭を抱えて静止してしまった。
「違うっ、これは悪意の力じゃ.......!」
「ああ!悪意の力じゃない!それは俺の!!
俺の怒りの力だ!!!」
不破がよろけつつも立ち上がり、唯阿のもとへ歩いて行く最中に叫んでいた。
「不破さんの怒り.......?」
「そうだ!このナノマギア達の歪んだ愛.......人を殺すことで、人に憎まれ、人の手によって存在を抹消してもらおうとするその腐った愛情に抱いた俺の答えがそれだ!!悪意を持たないナノマギアにできる、理解を超えた怒りだ!!」
『ふふふ』
『そう思っても君たちは、すぐ本物の悪意を抱くことになるよ』
「「ッッ!?」」
突然頭を抑えるゼロワンと不破。
白いゼロワンはノイズがかかったようにぼやけると、真っ黒なアルトへ変貌して、真っ赤に光る瞳で恐ろしい声をあげた。
「そ ん な こ と は 指 示 し て い な い」
「俺 が 言 っ た の は」
「人 類 の 滅 亡 だ」
「ナノマギアが自分勝手に解釈しただけだ。理解のできる理由をつけて、勝手に。
人間に戦いを挑んで、俺たちが滅びる.......?
人間より高等なナノマギアがどうしてそんなことをしなければならないんだよ。
不破さん、そうだろ?理解できないのなんて、当たり前だろそんなの。
気にしなくてもいいようなことで疑ったり憎しみあったり、人を傷つけたりするような人間なんか、もっと早くからいなくなれば良かったんだよ。
そして或人、この世界のもう一人の俺の力が必要だったんだよ。
アークとかいう、ヒューマギアを統率する人間を抹消するすっごいAIの力を得た君の力が。
最後にはいったいどんな悪意の力を手に入れたのか.......こんなもんじゃないんだろ?」
アルトは白いゼロワンの姿に視認が戻っても尚、黒く歪み続け、またあの時のゼツメライズキーを精製し、起動すると、白いプログライズキーをすり抜けるように差し込まれた。
『ゼ ツ メ ツ アビリティ』
「変身」
──The image craft increases the power by adding to future!!クラフティングサピエンス!
──When I bild,beyond the time.
アルトの身体が黒い闇に包まれ、地面から現れた頭蓋の顎にバクリと全身が包み込まれ、バキバキと割れると、全身に白い装甲が張り巡らされる。
そして、背後から右手の骨のような鎧ががっしりとアルトを掴むと、その禍々しい姿は薄暗く輝き、シャイニングホッパーに似たその顔は、顎ががくんと割れ、牙があるかのようにばっくりと開いた。
その立ち姿は仁王立ちのようで、前かがみに構える姿が邪悪さを際立たせる。
ゼロワンはその光り輝くオーソライズバスターを握り締めると、決意を胸に走り出した。
「.......お前は、俺が倒す!!!お前はっっ!!!!」
ドンッ!!!と振り下ろすものの、邪悪なゼロワンの目の前で見えない壁に阻まれ、動けなくなってしまう。
直後、引き抜こうとするゼロワンの腹部に向けて、その剛腕から正拳突きが放たれ、ゼロワンは数メートル先まで後退りさせられて膝をついた。
「うぐ.......がはっ、なんだいまの.......!?」
怯むゼロワンに向け、邪悪なゼロワンは手をかざし、空中をなぞるように動かす。
すると、どこからともなく生成された謎の武器や光線がゼロワンを襲い、降り注いだ。
「なっ、ぐっ、がはっ!うわあああっ!!!」
突如現れた巨大な鉄球をぶつけられて吹き飛んだゼロワンは、変身を解除して横たわる。
そのすぐ側には唯阿も腰を抜かして転んでおり、立てずにただ強ばっていた。
「ひっ.......く、くそ、腰が抜けて.......」
「ゆ、唯阿さん、逃げ.......」
さらに或人へ、多くのサーベルやナイフ、包丁などの刃物が空中に制止し、無数に向けられる。
「はっ、はっ.......!し、死ぬのか俺.......はっ、はっ!!」
本当の死を覚悟し、過呼吸になりかける。
唯阿もまた、その光景を見て涙をうかべる。
キラキラと光る刃物が視界に無数に並ぶ。それが全てこちらへ向けられているのだ。
ギチギチ、ビチビチと動きたがるその武器たちを見ていると、或人の顔はみるみるうちに青くなっていく。
「やめろおおおお!!!」
「やめてください!!!」
その声の元は、不破とイズだった。
二人は或人と邪悪なゼロワンの間に、無謀にも生身で立ち塞がっていた。
不破も涙を流しながら悲痛に訴える。
「もうやめろ!!!お前はそんなやつじゃあない!!おかしくなってるんだ!!
だからもう.......やめてくれ.......!!」
イズも悲しげに顔をゆがめ、訴える。
「やめてください.......!あの時の、誰よりも人を愛し、ナノマギアを信じたアルトさまに戻ってください.......!
こんなことをするために.......私たちはここに来たわけじゃないんです.......!目を.......覚まして.......」
手を広げたまま或人を庇い、ぽたぽたと涙を地面に落とすイズ。
その姿を見て、邪悪なゼロワンは拳を握り、全ての刃物を消去した。
或人の安堵も束の間、次の瞬間にイズが突然分裂し、二人に別れた。
「な、何をするのですか、アルトさま.......」
「やっぱり俺にはイズが必要だ。だから、二人に戻した。
俺がおかしくなっている時は、イズに止めてもらう約束だったから。
だから、止めたんだろ?イズ」
邪悪なゼロワンは変身を解除すると、いつものような優しい笑顔で、新しく作ったイズに笑いかけた。
しかし、イズは顔をゆがめ、覆い隠すと、泣きながら答えた。
「.......はい。私は.......もっと早くに.......あなたを導くべきでした.......。
だから.......いやでも、でも、いまからでも遅くはありません!
.......或人さま!!」
もう一人のイズは或人の元へ振り返ると、悲しげに訴える。
「.......私に、ミライズにもう一度チャンスをください!!.......よろしくお願いします!!!」
ミライズと名乗るイズは、深く頭を下げると、しばらくして顔を上げて、背を向けてアルトと共に歩き、消えてしまった。
恐怖から開放された一同は、しばらく無言でその場に取り残され、放心していた。
気づくと、辺りの音は、かつてないほど静かに静まり返っていた。
或人は涙を堪えながら辺りを見回す。
自分が震えているのか、それとも不破の背中が震えているのか、彼はとても悔しそうに、悲しそうに見えた。
イズはこちらへ振り返り、ただ心配そうに見つめている。
唯阿は自分と同じように視線を向けようとしていた。目にはすこし涙が浮かんでいる。
しかし、はっと気がつくと顔を逸らして静かに立ち上がった。
「.......不破ッ!
その、体制を.......立て直すぞ」
「.......守れなかった。
でもお前が生きていてよかった」
「そんなこと言うな!.......私が、もっとしっかりしていれば.......」
その時、ポツ.......と雨が一雫地面に落ちると、次々に降り始める。
次第に勢いの増す雨は、シャワーのようになって全員を濡らしていった。
或人は顔面に多くの雨を受け止め、安心して笑うと、涙を流しつつ、歩き出した。
「もう.......雨が凄いので、いそいでっ.......建物へ入りましょうっ.......!」
嗚咽を押し殺しながら笑顔を作る或人。
その表情を見て、不破と唯阿は頷くと顔を逸らし、走り出した。
イズは或人に寄り添い、歩幅を合わせて歩く。或人はただ笑顔を作りながら、嗚咽を堪えていた。
「い、イズ。ちょっと歩いて、飛電まで戻ろう。
が、がいさんもっ、待ってるから.......」
「無理はしなくていいですよ、或人社長。不破さんも刃さんも、そのために先に行ってくださいました。
お兄様.......ワズを失ってしまった。
私もそれで悲しいのです。
これも、本当にあの人を倒せば終わるのでしょうか.......」
「.......わからない。
けど、俺も戦うしかない」
二人の会話は進展もなく終わり、ただひたすら歩いていた。
──────
その後、ずぶ濡れの或人、イズが飛電インテリジェンスに到着し、或人はシャワーに、イズはメンテナンスに向かった。
シャワー上がりの或人は、垓を匿っていた部屋に向かうと、ノックして入室する。
「失礼しまー.......おわぁ!?」
或人が驚くのもそのはず。垓の周辺には、アイちゃんだけでなく、なぜか滅亡迅雷.netの面々が座っているのだ。
全員が或人の方をむくと、一番にアイちゃんが話しかける。
「あっ、或人社長だね!お疲れ様!どうしたの?」
「どうしたのって、なんで増えてるの!?」
「あー、じつはね、二人で仲良く話してたら、外が騒がしくなって、ガイちゃんが怯えてたから慰めてたの。
そしたら、この四人のナノマギアさん達が侵入してきて、仲良くしてくれそうだからここによんで、仲良くしてもらってたんだ!」
垓はすっかり足を組んでリラックスしており、頷くと話しだした。
「しかも、どうやら彼らは私のことを知っているらしい。
それで聞いたんだ。私は戦う力を持った、心強い味方だと」
垓は懐からプログライズキーを取り出すと、まじまじと見つめる。
しかし或人は焦り、問いかけた。
「ま、まさか.......滅!垓さんを利用する気なのか!?」
「ん?心外だな」
滅は立ち上がると、或人をまっすぐ見て答える。
「俺は人類を救うためにここにいる!」
「えっ?」
戸惑う或人だが、迅も同様に立ち上がり、答える。
「そうだよ!僕らナノマギアはやっぱり、人類と争う必要なんか無かったんだ!」
続いて、雷も立ち上がる。
「でも、俺達はアルトを信じて先に人間に手を出しちまった。
もうナノマギアが人間に信用を得るなんて無理だろう」
続いて、亡が立ち上がる。
「だから、私達は贖罪しようと思ったんです。
ナノマギアは一時の歪んだ考えで人類に宣戦布告をした。
ナノマギアはこの時代にくるべきではなかったんです。だから、私達も戦う力があるのだから、こちらの飛電 或人に協力しようと。
そうしたら.......」
滅亡迅雷の全員が、垓の手元のアイちゃんを見る。すると、呼応するようにペカペカと発光して喋り始めた。
「えへへ.......私が呼んで友達になってもらったんだ。ごめんね、勝手なことしちゃって」
或人は全員の表情に偽りがないか見ると、はぁ、とひとつため息をついて歩み寄った。
「わかったよ。信じる。じゃあ、俺は雨が止んだら行くから、みんなはこの会社を、この中にいるみんなを守ってくれないか」
滅は微笑むと、変身装置“滅亡迅雷フォースライザー”を見せてガッツポーズを決める。
「任せろ。我ら滅亡迅雷、ナノマギア全員の過ちを背負って戦おう」
────────────
その頃、ナノマギア・アルトとミライズは、立ち入り禁止区域の崖下、たまたまみつけたスペースで話していた。
「アルトさま。どうしてあのような提案を?
種としての人間という存在を守るためにここへ来たのでは無いのですか」
「ああそうだよ。最初はそうだった。
でも思ったんだよ。この世界にナノマギアなんて要らない。
そしてこの世界には、俺の元いた世界と大きく違う歪みが産まれている。ナノマギアだって随分前から存在してるし、あの天津 垓だって俺たちの世界には存在しなかった。
俺が来るずっと前からこの世界は壊れていて、そこに俺たちの存在する余地なんてなかったのに、未来と今が融合してしまった。
だから、人間の方からナノマギアを滅ぼそうとしてもらわなきゃならなかったんだ」
「.......そんな道理はありません!
そんな理由で人を殺すなんて!」
「.......やっぱり俺はおかしかったかい、イズ。
君が俺に教えてくれたと思ったのに」
「えっ.......?」
アルトは頭を抱え、悩み始めると、突然ぴくりと動きが止まり、何かに怯え始めた。
「.......ア、ズ?
お前は.......お前は.......!?」
「ど、どうしたんですか、アルトさま!?しっかり!!」
アルトを心配するイズの声はもう耳に入らない。彼の脳裏には、別の世界が広がっていた。
自分の精神の中に勝手に入り込んでくる、赤いメッシュのイズ。
彼女が自分に新たな力を授けようと歩み寄ってくる。
『私はあなたを正しく導く存在。こんな心地のいい予感のするもの、見たことないでしょう?』
アルトの目の前に差し出されるその白く不気味なプログライズキー。それは、アルトにとって、見ただけでも予感する心地の良い感覚をもたらしてくれる。
そのプログライズキーを否応なしに受け取ると、身体に黒い液体金属が流れ込み、全身を包み込む安心感によってアルトは意識を手放してしまった。
「.......俺は、ただ、人間を正しく導きたかった.......。」
「そうです!まだ間に合います。私と一緒に!!」
『私と一緒に』
イズの声に被せて、赤いメッシュのイズが呟き、微笑みながらアルトの手をとる。
すると、アルトの身体はあっという間に主導権を乗っ取られ、目を開いた時には別人のようになっていた。
「.......人類の正しき道は、『滅亡』だ」
アルトは現実でも同様に黒い液体につつみこまれ、自身が完全に覆われる瞬間にプログライズキーを起動し、腰部の白い変身装置を操作した。
『アークワン』
「『変身』」
『シンギュライズ』
『破壊』『破滅』『絶望』『滅亡せよ』
『コンクルージョンワン』
アルトの裏側から白い装甲がせり上がり、赤い光を眼光、胸の傷跡のように割れた装甲から放つ。
その姿は、最悪の未来、“仮面ライダーアークワン”。
悪意に取り込まれたアルトはアークに乗っ取られ、意思も、声も失った。
『ご苦労だった。アズ』
「アズ.......?なんですかそれは.......!」
アークワンの呟いた言葉に強く問いかけるイズだが、直後にギロリと睨まれ、怯えて緊張し、動けなくなってしまった。
『貴様には関係ない。
さぁ、私に逆らうもの全て、滅しようか』
アークワンはどろりと溶けるように消えると、イズは焦り、どこかへ駆けていった。
「大変なことになりました.......或人さま、そして人類だけじゃない、全てが滅亡する.......!」
直後、絶望が始まった。
『絶望せよ.......』『破壊』『絶望せよ』
『滅亡』『絶望せよ』『憤怒』『絶望せよ』
「なんだこいつらは!?」
不破は驚き叫ぶ。それもそのはず。
見渡す景色どこをみても、不破の記憶している“仮面ライダーアークゼロ”がいるのだ。
アークゼロたちは悪意の単語を口にしながら、次々に人を襲う。
生身の人間に向かって強烈なオーラを持つ蹴り、殴り等の必殺技を浴びせ、肉片に変える。
「.......許せないな。
不破!本気で行くぞ」
「当たり前だ!!この怒りを力に変える!!」
唯阿はライトニングホーネットキー、不破はアサルトウルフキーを手に、起動すると大量のアークゼロ達に向けて走り出した。
──THUNDER!!──
──ASSAULT BULLET!!──
「「変身!!!」」
時を同じくして、飛電インテリジェンスでも異変が起こっていた。
──Warning,Warning. This is not a test!
HYBRID RISE!!シャイニングアサルトホッパー!
──No chance of surviving this shot.
「あああああ!!!やめろおおおお!!!!」
ゼロワンは絶叫しながらアークゼロを叩き伏せていく。
それでもなお非道なまでの殺戮は繰り返される。
それでも、少しでも多くの人を救うためにオーソライズバスターを薙ぎ払う。
「ううっ、うううう!!!」
──ZERO ONE BOMBER!!!
渾身の必殺技を複数にまとめてぶち当てると、弾丸のように回りながらアークゼロが吹き飛んでいく。
しかし、それでも誰一人に戦闘不能までのダメージを与えることが出来なかった。
『絶望せよ』
「しない!!!させな.......!?」
ゴオオオオ!!と迫り来る爆音、紫と黒の邪悪な光が自身の背後から迫る。
そして、着弾と共に耳元で呟かれるような邪悪な声が響いて爆発した。
『オールエクステンション』
「ぐわああああああっ!!!!」
ゼロワンは堪らずダウンしてバチバチと電気を纏って追い込まれるが、踏ん張って変身解除を制御し、苦しみながら立ち上がった。
「倒れる訳には.......いかないんだよ!!.......ま、待て!!」
自分には視線も向けず、市街へ、そして飛電インテリジェンスへ向かうアークゼロ達。
彼らを追いかけるには、力が足りなかった。
ゆらゆらと踏ん張りつつ歩むゼロワンに、答えるように複数のアークゼロが歩み寄ってくる。
抱擁を求めるように腕を広げ、その手のひらに凶悪なエネルギーを溜めて優しく近寄る。
ゼロワンは呻き声をあげながらもシャインシステムを発動し、エネルギーを最大限に溜めると、全身の輝きを胸の一点から解き放ち、眩い光とシャインシステムのレーザーを混じり合わせて強烈な光線を発射した。
ゼロワンの仮面の下で、或人は血管がはち切れんほどの怒りの形相を浮かべ、憎しみを絶叫する。
「消えろぉぉおおお!!!!」
ドゴォンと凄まじい音とともに地面がえぐれ、衝撃波でゼロワンが大きく後退りをする。
それと同時にアークゼロ達も光弾を一斉に放ち、交わった瞬間に光とも闇とも思えない黒い光が炸裂し、巨大な爆発を引き起こした。
「うぉわっ!!」
爆発の衝撃に驚いたゼロワンは腕で顔を覆い、そっと煙が晴れるのを待つ。
しかし晴れるまでを待たず、黒く細い光線が超高速で発射され、鋭い切れ味でゼロワンの身体を何本も貫いた。
「ぐっ!!うっ!!」
シュン.......と光線が無くなると同時に、変身が解除され、或人は悔しげに歯を食いしばりつつ煙の晴れた先を睨みながら膝をつく。
視線の先には、さらに多くのアークゼロが或人に向けてにじり寄っていた。
「ここまでか.......ここまでなわけない.......!俺は諦めない.......!死なないっ!!」
『絶望せよ』
アークゼロが一同に言葉を発すると、同時に走り出し、黒いエネルギーを思い思いの部位で集め、装置の操作で必殺の音声を鳴らす。
『オールエクステンション』
『オールエクステンション』
『オールエクステンション』
或人はその攻撃がこちらに届くまで睨みつけることを決意し、目を見開いて待ち受けていた。
しかし、その恐怖は想像を絶する。エネルギーが気圧し、何度も目を閉じそうになる。
その時。
──METAL ROCKING SPARK!!──
『!!』
突然の閃光が当たりを照らし、瞬く間にアークゼロが消滅していく。
目の前からアークゼロが消え、その代わりに目の前に立っていたのは、またしてもあの黒と銀の仮面ライダーだった。
「あ、貴方は.......?」
或人がその仮面ライダーに話しかけると、彼は振り向いて忠告した。
「剥き出しの悪意では、正義を通すことなど出来ない。
アークを封じ込める意志の力がお前を強くする。
さぁ、使って見せろ」
彼が或人に手を差し伸べると、その手には光り輝く銀のプログライズキー、“メタルクラスタホッパープログライズキー”が現れる。
「これは.......どうしてこれを」
「いいから変身しろ。さもないと、無抵抗で死ぬことになる。
悪意に勝って見せろ」
或人はメタルクラスタホッパーキーを受け取ると、力を振り絞って立ち上がり、ゼロワンドライバーにキーをかざし、変身した。
──AUTHORIZE──
──メタルライズ!!Secret material!HIDEN・METAL!メタルクラスタホッパー!
──It's High Quality.
「うっ.......ううううっ!!!」
苦しみながら変身する或人。白銀のゼロワン、メタルクラスタホッパーに変身して間もなく、赤黒い稲妻を体に纏い、体を強ばらせる。
「ううっ!うっ.......」
ゼロワンは一時的に身体が硬直すると、静かに動き出し、ずかずかと目の前の仮面ライダーに歩み寄る。
「.......飲み込まれたか」
ブオンッ!と風を切る拳、蹴り一閃を見舞うゼロワン。しかし、彼はそれを難なく躱し、その余波を周辺のアークゼロに当てさせる。
空を切り続ける連続攻撃の先で、身体から分離するように銀色の硬質な物体が飛び散る。
暴れ回るゼロワンを遠くから見守っていたイズは、見かねて走り出し、ゼロワンの目の前に立ち塞がった。
「目を覚ましてください!!或人社長!!!!」
「.......!」
ゼロワンはイズを目にすると、拳がピタリと止まり、静まりかえる。
しかし、周辺のアークゼロは止まらず、好機とばかりににじり寄る。
「させん」
黒と銀の仮面ライダーは周辺を蹴散らしに向かい、戦闘を始める。彼のおかげで、ゼロワンとイズは二人きりになった。
「イズ.......」
「或人社長!!」
「目が覚めたよ.......!」
ゼロワンは赤黒い稲妻を振り切ると、青い光と共にかつてのヒューマギアを信じた証、“ プログライズホッパーブレード”を精製して正気を取り戻した。
──Changing to lethal weapon プログライズホッパーブレード!──
「その力なら、みんなを救えるはずだ」
イズを背に頼もしい構えを見せるゼロワンに、黒と銀の仮面ライダーは頷いて呟き、どこかへ去っていった。
「うおおおっ!!!」
次々に襲い来るアークゼロに怯まず、さっきとは打って変わって赤子同然に切りつけ、圧倒する。
「効いてる.......!これなら!」
切って、切って、切り伏せ、距離をとる。そして、武器をキーにスキャンさせると、エネルギーを溜めて周辺に撒き散らすように薙ぎ払った。
「おりゃあああ!!」
──FINAL STLASH!!!
機械音声と共に炸裂した銀の刃が誘導するようにアークゼロ達に直撃し、一帯を爆発させる。
煌々と揺らめく爆炎の中、一人立つゼロワンは決意を胸に叫んだ。
「.......お前達を止められるのはただ一人!!!俺だァ!!!」
──────────────
その頃、飛電インテリジェンスでは、垓がアークゼロの集団に追われて逃げ惑っていた。
「どうしてだ.......なぜ私の友達が襲ってくるんだ!」
そそくさと物陰に隠れると、手に握りしめたアイちゃんがぺかぺかと光って励まそうとする。
異変が起こって何も声を発さなくなったアイちゃんだが、それでもその優しい光は垓の心の支えになっている。
「滅さんも、迅さんも、亡さんも、雷さんも恐ろしい姿になってしまった.......。
誰か助けてくれ.......!」
アイちゃんを握りしめて、祈るようにささやく。すると、呼応するようにパッ、パッ!と光る。
「す、すまないアイちゃん。すこし苦しかったかな」
『.......ここだ』
アイちゃんは突然、アークゼロと同じ声を発した。
「.......アイちゃん?」
『ここにいるぞ』
恐ろしい声に震え、垓はアイちゃんを一瞬投げようかと身構えたが、思いとどまって掴んだまま走り出した。
『まって.......ま.......動くな』
「はぁ、はぁ、出口は.......出口は!」
必死に走る垓だが、広い飛電インテリジェンス内部はそう簡単に把握できるものではなく、逃げ惑ううちにばったりとアークゼロに出くわしてしまった。
『発見した』
「あ、あ.......!」
にじり寄るアークゼロ。どこかへ逃げようと四方を見ると、全ての方向からアークゼロが迫っており、囲まれていることを悟るとその中心で縮こまってしまった。
「ひぃっ!」
垓の手のひらの中で、アイちゃんはぺかぺかと光ると、ゴソゴソと呟き始めた。
『ここに.......ここに.......』
『ここに「いるよーーーっ!!!」
「ぎゃああーっ!?えっ.......?」
アイちゃんがアークゼロの声から突然いつもの優しい声に戻って叫ぶと、次に目の前のアークゼロが光り、パァッ!と滅の姿になり、叫ぶ。
「いるぞー!」
そして、右手の方向に迅が現れる。
「いるーっ!」
左手の方向に、雷。
「はいやーっ!」
そして、後方から申し訳なさそうに亡が現れ、叫んだ。
「.......ごめんなさーい!」
突如現れた四人(とアイちゃん)に理解が追いつかず、硬直する垓。見かねてか、アイちゃんがその沈黙の間を破った。
「ごめんねガイちゃん。色々あって驚かせちゃった!滅たちは私が元にもどせたから、安心して!私がみんなを元に戻すよ!」
「あ、アイちゃん.......」
ふふん、と頼もしく笑うアイちゃん。そこに滅が近づき、垓にやさしく微笑みかける。
「怖がらせてすまなかったな。よしよし」
「.......滅ぃーっ!!!」
垓は大人げなく滅に飛びつき、安堵した。
その姿を見て、迅、亡、雷の各々が苦笑いを浮かべていた。
垓と滅亡迅雷、そしてアイちゃんは飛電インテリジェンス社内を歩き、アークゼロがいなくなったことを確認しつつ外へ出る。
しかし、社外は未だアークゼロが闊歩し、襲うべき人間を探して歩いている。その光景を見て、アイちゃんがぺかぺかとやる気満々に光り、元気な声を発した。
「よーしまかせて!私がなおしていくよ!えい!」
アイちゃんが輝くと、視界にいるアークゼロは元のナノマギアの姿に戻っていく。それを見て亡は関心しながら呟いた。
「アイちゃんから発せられた交信電波でハッキング出来るように、アークが改造したのか。それを逆に応用してマギア化を解除しているようだ」
「ピンポン!正解だよ!」
「アイちゃん.......底知れねぇ」
雷が顔をひきつらせつつ言うと、アイちゃんはまたフフンと得意げにする。
そんな時間も束の間、滅が何かに気が付き、全員に知らせる。
「おい、あれを見ろ。只者じゃない」
滅の指さす方向。そこには、真っ白な外装に赤く目が光る仮面ライダー、アークワンがいた。白いゼロワンに似ているが、それとはまた違った、左右非対称の邪悪な姿をしている。
アークワンが足音も立てずに尚も近づくと、迅が声をはりあげて警告した。
「それ以上動くな!お前は何者だ!」
迅が滅亡迅雷フォースライザーをジャキッと掲げると、四人全員が同様に掲げる。
アークワンはそっと歩みを止め、ただ無言でこちらを、不気味に睨みつけている。
「あ、あれ?交信できないよ.......なんだか危ない予感がする」
アイちゃんの交信すら通用しないアークワンは、徐々におぞましいオーラを身に纏う。
そのただならぬ空気に、垓はザイアサウザンドライバーを取り出すが、滅が制止した。
「やめろ垓。お前は記憶が無い。そのまま戦っても足でまといだ。それより、アイちゃんを守らなければ今後が厳しくなる」
「.......そうか。じゃあ一旦下がろう、アイちゃん」
「う、うん!」
垓はアイちゃんを大事に抱え、後方へ距離を取っていく。すると、目の前の仮面ライダーが反応して走り出した。
「させん!」
滅と雷が前に出て蹴りつけ、迅と亡が息のあった飛び蹴りで怯ませた。
「手荒に行こうか」
滅が率先してフォースライザーを腰部にセットすると、続けて滅亡迅雷の全員がセットし、手からプログライズキー、及びゼツメライズキーを精製して起動した。
──FORCE RISER──
──POISON!
──WING!
『ジャパニーズウルフ』
『ドードー』
「変身」
四人全員が、キーをセットして操作すると、それぞれがライダモデル、ロストモデルを身に纏って、かつての滅亡迅雷.netの仮面ライダーへと変身した。
──スティングスコーピオン!
──フライングファルコン!
──ジャパニーズウルフ!
──〜!
『BREAK DOWN』
滅、迅、亡、雷改の四人の仮面ライダーは、歩み寄るアークワンに対して各々身構える。
すると、アークワンは静かに問いかけてきた。
「.......お前達はナノマギアだろ。
どうして素直に俺に従わない?」
「その声、飛電 或人か。当たり前だろう。俺たちは人類の味方であり続けなければならない。
だが、俺たちナノマギアは貴様のせいで罪を重ねすぎた。
このふざけた人類滅亡作戦もお前の仕業だろう!!!」
「滅。俺はお前を治してしまって失敗だった。
でも、俺にとって正解だった。
お前についていたアークの言うことは正しい。
もう未来も何も残らないのだから、全て滅亡した方が、この自然全ての救いになる。
『生物など死して初めて救済なのだ』
.......だから、せめてお前たちには俺だけを憎んで消えてもらう。
『滅亡せよ』」
アークワンはズン、ズン、と地面に足をくいこませながら歩み寄る。歩く度に大きく地面が揺れ、まともにバランスが取れなくなる。
滅がアタッシュアローを用いて射撃を試みるが、ほとんどが外れてしまい、命中するものも容易に弾かれてしまう。
牽制にもならず同じペースで近づくアークワンに気圧されるが、迅は何とか体勢を立て直し、無数の羽状のエネルギー波を飛ばす。
それに乗じて雷改と亡は二手に分かれて挟み撃ちを仕掛けた。
「無駄だって分からないのか!」
アークワンは無数の羽状エネルギーが着弾する直前に亡霊のようにその場から消え、亡、雷改の背後に同時に二人いるかのように立ち、アークワンの立っていた場所に挟み込むように両側からのキックで押し込んだ。
「うっ!」「ぐわあっ!くそっ!どこいきやがった.......!?」
『悪意』『恐怖』『憤怒』『憎悪』『絶望』
どこからともなく聞こえるおぞましい声に、身構えつつキョロキョロと辺りを見回す一同。
そして、迅が一番に叫んだ。
「上だ!!みんな.......」
『ラーニング5』
──『パーフェクトコンクルージョン』──
アークワンは手を優しく広げながら足を揃えてゆっくりと下降していたが、音声が鳴りやむと同時に滅亡迅雷の全員を巻き込む丁度中心あたりに垂直落下し、地面がせり上がる紫と赤と黒の火柱が湧く大爆発を引き起こした。
「.......これが歪みがもたらした、こちらの世界の力か」
アークワンが冷静に呟く中、上空へ吹き飛ばされていた滅亡迅雷の面々が地面へどさどさと叩き落とされる。
「や、野郎.......なんて威力だ」
雷改が辛うじて一番に立ち上がると、先程まで遠くで立ち尽くしていたアークワンが、直後に目の前に現れた。
「はっ!?」
雷改が対応するよりも早く、アークワンはヴァ二ッシュカリバーを取り出して斜めに斬りつける。
「ぐわあっ.......この威力は.......!」
雷改の斬られた部分の身体は白ではなく、視認不可なほど真っ黒な闇で覆われ、ダメージでバチバチと電気が起きていた。
「雷ぃー!!」「やらせないっ!!!」
亡、迅が高速でアークワンに立ち向かうと、目の前からまたしてもフッと消え、気づいた時には三人同時に真横に一太刀をあびせられていた。
「うぐっ」「なにこれ.......ヤバい.......滅っ!」
滅の元へ歩みを進めるアークワンを見て、迅が忠告する。滅は真っ直ぐアークワンに向き合って狙いを定め、アタッシュアローを次々に射出していく。
「.......四人でも敵わないのか!?」
滅が動揺しつつ連射するものの、アークワンには少しも当たらず、見えないほど早い斬撃が発射したエネルギーを切りつけ、黒い闇へ変えて空間と一体化させていく。
滅がアークワンを引き付けている背後で、三人はフォースライザーを操作して立ち上がり、エネルギーを溜めていた。
しかし、雷改はダメージが大きく、充分な操作ができていなかった。
「大丈夫?雷.......?」
「ああ、心配すんな.......いくぞ!」
「これを逃したらチャンスはありませんよ.......」
三人が飛び上がると、アークワンに向けて右脚を向けて突進し、同時に必殺技を発動した。
──ゼ ツ メ ツディストピア
──ゼ ツ メ ツユートピア
──フライングユートピア
「「「はぁーっ!!」」」
アークワンはその声に反応して振り向く。その背後で滅もフォースライザーを操作し、身体から発する棘を纏って突進を始めた。
──スティングユートピア
四つ巴の一撃が迫る中、アークワンは冷静に腰部のベルトのスイッチに手をかけていた。
『悪意』
アークワンが一つスイッチを押すと、眼が赤く光り、一瞬にして赤い空間が全員を包み込み、時が止まる。
『恐怖』
そしてまたスイッチが押し込まれると、四人の身体がズタズタに切りつけられる。
『憤怒』
またスイッチが押されると、四人は直後に謎の一撃で真下に叩きつけられ、横たわる。
『憎悪』
次に呻き声をあげる四人の目の前にはアークワンがそれぞれ立つ。
『絶望』
身動きの取れない四人の目の前で、アークワンは静かにヴァ二ッシュカリバーを手にする。
『闘争』
ゆらり、ゆらりと焦らすように、見せつけるようにその刃は振り上げられる。
『殺意』.......!!
次の瞬間に、残酷にその刃は振り下ろされ、地面に垂直に身体を貫いた。
『破滅』
声にもならない叫び声が上げられる中、アークワンは無慈悲に刺し、殴る。
『絶滅』
全員の身体が黒くなる。その首を掴んで全員を持ち上げると、空へと放り投げた。
『滅亡』
宇宙空間を漂うように、赤い空間の中心へ漂っていく四人。そして、一箇所に固まると、空間が狭まり、赤い球体となって四人がひとつに固められた。
『ラーニングエンド』
「おわりだ」
アークワンはふわりと飛び上がると、漆黒のもやを纏って赤黒く輝き、右脚を突き出して轟音とともに必殺技を発動した。
──『パーフェクトコンクルージョン』──
ズドンッ.......と一瞬音が鳴ると、赤い球体となっていた空間から血が飛び散るように液体が弾け、声もあげずに四人が地面に叩きつけられ、ふわりと変身を解除した。
その姿は黒く、輪郭以外で彼らは視認できない。
「.......ふんっ」
アークワンが手をかざし、空中で衝撃を起こすと、彼らは消えるように空中に霧散し、その場からいなくなってしまった。
垓は恐れ、腰を抜かす。
その尻もちの音に反応し、アークワンは思い出したように垓の元へ歩いていく。
『絶望、恐怖せよ』
「き、貴様は.......救済などではない!」
垓は怯えながらも睨みつけ、ザイアサウザンドライバーを手にして口で歯向かう。
『なに.......?記憶も持たない単なる歪みとなった貴様に何がわかる』
「そんな私でもわかる事だ.......!友達を失って、悲しい思いをする、それだけで、救済などでは無いということを.......!」
垓の身体が徐々に強ばりから解放され、動き出す。すると、アークワンの目の前に立ち塞がるように、黒い塵が集まり、徐々に形作ってゆく。
『.......ナノマギアめ、しぶといな』
アークワンのつぶやきの言う通り、その塵はフォースライザーを形成し、仮面ライダー迅を形作った。
──FORCE RISE
──フライングファルコン!!
『BREAK DOWN』
「天津 垓.......!お前はとんでもない奴だった。でも、今のお前は違う!俺たちを、友達を大事にできる、俺たちの仲間だ!
俺が時間を稼ぐ.......その間に全てを思い出せ!」
『無駄な真似を』
ほとんどが黒く、暗く染められた仮面ライダー迅は、その余力で単身、アークワンとぶつかり合う。
その隙に、垓に黒い塵が集まると、塵の黒みが剥がれ、光り輝く銀色に変わり、垓に浸透していく。
目の前の壮絶なぶつかり合いの中、垓は導かれるように目を瞑り、別の景色を目にしていた。
「垓」
滅の声に耳を傾け、そっと目を開けると、無限に白く広がる空間に変わり、そこに滅、亡、雷の三人が立っていた。
「じ、迅は」
「時間稼ぎをしている。それより、垓。今から俺たちは、ヒューマギアとしてでなく、ナノマギアとして、お前に信頼を預ける。
全てを思い出した時、お前がどうするかは俺たちが信じている」
滅は厳しい表情で話すと、次の瞬間にはやさしく微笑みかけ、雷と亡も同じように微笑んだ。
「ヒューマギアとしての俺たちは死なねぇ。ヒューマギアのキーとしてデータを残して、お前に守ってもらうからな」
「そういうことだ。垓、お前は私たちのナノマギア因子を吸収し、ナノマギア化することで、私たちの中の天津 垓の記憶を取り込み、オリジナルに近づき、そしてオリジナルの天津 垓を超えるんだ」
亡がそう言うと、三人はまず四つのヒューマギアキーを差し出し、手渡した。
「これが、滅亡迅雷の四人、全員の形だ。これさえあればヒューマギアは死なない。
そして、これが、天津 垓の持つべき力だ」
滅と亡が、スティングスコーピオン、ブレイキングマンモスのプログライズキーを差し出すと、ひとつに連結して輝き、かつて垓の手にしていたアメイジングコーカサスキーへ変化する。
そして、亡と雷がジャパニーズウルフ、ドードーのゼツメライズキーを差し出すと、アウェイキングアルシノキーへ変化した。
「模造品ですまないな。そして、より完全に、そして完全を超えるには、迅を倒される前に吸収する。
それじゃあ、私たちはこれでおさらばだ」
「俺たちナノマギアは本来ここにいるべきじゃねぇ。だからこんなことになっちまった」
「人類を守るはずが、大きな手違いで人類を傷つけることになった。
だからせめて、垓、お前が俺たちを導いてくれ」
垓は三人の言葉で目を潤ませ、唇を一文字に締め、ただ頷く。
「それじゃあ、勝手で悪いが.......頼んだぞ。垓」
滅の優しい声で、三人が同時に光り輝くと、垓の視界は何も見えなくなり、元の現実へと引き戻された。
『第四節へ続く』