パッ、と目を開けると、真っ先にアークワンに叩きのめされる迅が映る。
何度も切りつけられ、身体はさらに黒くなっていく。そして、ついに迅のフォースライザーにヒビが入り、バチバチと火花を散らす。
「迅ッ!」
垓が立ち上がって叫ぶのに目もくれず、迅はフォースライザーを外し、ザイアスラッシュライザーを装着する。
「迅ッ!!もういい!私が.......」
「ダメだ!今隙を見せたらやられる!はあぁっ!」
迅はフライングファルコンの姿を維持し、羽根を飛ばしての攻撃をしながらバーニングファルコンのプログライズキーを起動し、装填する。
──INFERNO WING!──
──BURN RISE!──
〜♪Kamen Rider.Kamen Rider.
「変身!!」
迅がスラッシュライザーを操作すると、フライングファルコンが広げた翼が燃え、かと思うと、全身が燃えて一度剥がれ、不死鳥のように広がる。
──SLASH RISE!──
──バーニングファルコン!The strongest wings bearing the fire of hell.
羽根の攻撃は段階的に炎を帯び、不死鳥が迅を包み込むと、爆発してその場から仮面ライダー迅 バーニングファルコンに変身した迅が現れた。
黒い爆煙が燃え盛る中、迅は大きく翼を広げて加速し、スラッシュライザーの操作で右足一点にエネルギーを溜めて突撃する。
「はああああっ!!倒れろぉ!!」
──BURNING RAIN RUSH!!!──
凄まじい熱気と気迫を放って迫る迅に対し、アークワンはふん、と鼻で笑い、右手一本を前に突き出して構える。
「.......俺を舐めるな!!!」
激昴する迅はアークワンに激突すると、大きな火柱と爆発を引き起こした。
垓はあまりの熱気と煙に目を覆う。
しかし、煙が晴れた時、立っていたのはアークワン。
その右手に、迅が力なく変身解除し、首を掴まれていた。
『愚かなことだ』
無慈悲に言い放つアークワンの腕に掴まれ、苦しみながら迅が力を振り絞り、垓へプログライズキーを二つ投げる。
「天津 垓っ!.......げほっ、僕のことはいい!.......ヒューマギアの未来を.......頼んだよ!!」
垓がプログライズキーを受け取ったことを確認すると、迅は少し微笑み、次の瞬間に空中へ放り投げられた。
「うわっ」
『死ね』
咄嗟のことに驚いた迅に、容赦なく闇のエネルギー弾が数発撃ち込まれる。
そして迅は、まるで蒸発するように煙となって消えてしまった。
垓のもとへ漂う煙は、暖かく包み込み、迅を形成していたナノマギア因子が垓に吸収されていくのが感じ取られた。
しかし、垓はそれでも歯を食いしばり、拳を握って悲しむと、迅から託されたフライングファルコンをアメイジングコーカサスに、バーニングファルコンをアウェイキングアルシノに吸収させ、ふたつのキーを手に構えて立ち上がった。
「.......もう終わらせようか。アーク。
そして、未来から来たアルトくん。
私は、記憶を失い友を知った。そして取り戻した。そして失った」
垓はザイアサウザンドライバーを腰部にセットし、アウェイキングアルシノキーを装填すると、堂々と構えて待機音を響かせる。
──ZETHUMETHU・EVOLUTION──
〜♪
視界にいるアークワンをアメイジングコーカサスで覆うように一文字に腕を開くと、起動し、「変身」と呟いて叩き込んだ。
──BREAK HORN!──
──PERFECT RISE!
When the five horns cross, >滅亡迅雷、そして私の五人の力が交差する。
the golden soldier THOUSER is born.>そしてここに黄金の戦士サウザーが誕生する.......
〜♪Presented by ZAIA.>ザイアの力を刮目せよ
サウザーはその場でサウザンドジャッカーを取り出すと、黄金の身体を煌めかせ、紫だった瞳が澄んだ青に光り、アークワンに向けて身構えた。
「.......私の強さは、桁外れだ!!!」
アークワンはサウザーの出方を見ながら静かに立っていた。
すると、サウザーはギン!と強烈な光を発し、アークワンを照らす。
『むっ.......!?動けん』
アークワンが体を動かそうとすると、拘束されているように動かない。そこに、サウザーは大胆に斬り掛かる。
「ハァッ!」
アークワンの左肩から、右腰まで大きく傷をつける。すると、アークワンに掛けられた呪縛は放たれ、すかさず反撃に出る。
しかし、サウザーはまたギン!と同じように光を発すると、アークワンは殴り掛かる体勢のまま硬直する。
『貴様.......何だこの技は!?』
「ハァッ!」
サウザーはまたもアークワンに切りつけると、蹴り飛ばして転ばせ、またギン!と光る。
動けなくなったアークワンに、サウザーは次の一撃を構えながら話し始めた。
「これは、私に向けられた悪意を無効化する技だ。
攻撃すべて、そして存在そのものが他者への悪意となった貴様では、私に傷一つ、つけることは出来ない!」
またひとつ、またひとつと切りつけると、アークワンはどす黒いオーラを放ちながら睨みつける。
『.......っ!!』
「その剥き出しの殺意が、そして滅亡の思想こそが自らを滅ぼすことになる事が分からないか。
貴様に反撃のチャンスなどない。その自身が持つ強大な悪意に飲みこまれて、滅びるがいい」
サウザーは一段と眩く輝き、サウザンドジャッカーをザイアサウザンドライバーに突き立てて力を吸い上げ、そのままドライバーを操作すると飛び上がった。
──JACK RISE!
──JACKING BREAK
──THOUSAND DESTRUCTION──
「その身で償え!ハァーッ! 」
サウザーの突き出した右脚には眩い金色のエネルギーが凝縮され、上に紫の“滅”、下に白の“亡”、右足側に桃色の“迅”、左側に真紅の“雷”の文字が浮かぶ。
迫り来るライダーキックに動くことも出来ず、ただ呻き声をあげながら睨むアークワン。しかし、ぶるぶると震えながら右腕をサウザーに掲げると、一言呟いていた。
「確かに俺は.......こんなはずじゃ.......」
直後に轟音と共に激しく激突するサウザー。
爆発に紛れてアークドライバーワンとアークワンプログライズキーはひび割れ、そのまま衝撃を受けて爆発し、霧散した。
どす黒い気がアルトから抜け、ふわりと力が抜けて倒れる。
その直後に、飛電 其雄がアルトの背後から現れ、抱き抱えた。
「あれは.......或人の父親ヒューマギアか!?なぜここに.......これも時空の歪みか」
一人驚くサウザーだが、彼に構わず、其雄は地面にチョップを打ち込んで砂塵煙幕を作り、跡形もなく消えてしまった。
「なっ.......逃がしたか.......!」
サウザーは注意深くキョロキョロと辺りを見回してから、そっと変身を解除する。
「ガイちゃん!頑張ったね!」
垓の手元で握られたアイちゃんが、ぺかーっと優しく光って励ます。垓はアイちゃんをギュッと握って涙を流した。
「あぁ.......でも、今は少し、一人になりたい」
「.......そっか。それじゃあ、戻ろうか」
二人は、重い足取りでとぼとぼと飛電インテリジェンスに歩いていった。
────────────
その頃、不破と唯阿は二人、延々とアークゼロと戦っていた。
「くそっ.......もう持たない.......」
バルカン アサルトウルフが突然膝をつく。それに対し、バルキリー ライトニングホーネットは焦りながら彼を煽り、振るい立てようとした。
「どうした不破!もうへばるなんて情けないぞ!」
「ちがう.......!俺が.......俺が暴走しそうなんだ.......!」
「.......なにっ!?」
バルカンは出現させたオーソライズバスターにシューティングウルフキーを差し込むと、唸り苦しみながらエネルギーを溜め、オオカミ型のエネルギー弾をぶっぱなした。
──BUSTER DUST!!!──
オオカミ型のエネルギー弾は縦横無尽に走り回り、アークゼロ達に噛み付いていく。彼らは爆発して霧散していくものの、それらは全て不破の目の前に現れ、あっという間に囲まれてしまった。
「な.......なぜ倒せない.......!なぜ!」
『絶望せよ』
アークゼロ達はバルカンに手をかざすと、不気味なエネルギーを放出しはじめる。バルキリーはバルカンを助けるため、一度はショットライザーを構えたが巻き込みを考慮して格闘戦を挑んだ。
「不破!!今、今助ける!!」
渾身のキックも、手刀もビクともしない。健闘も虚しい中、バルカンは一人精神世界へ誘われていた。
「おい、起きろ!俺!.......じゃない、不破 諫!」
「.......な、なんだ?」
不破が目を開けると、目の前には自分が立っている。
景色は真っ白で何も無い中、段々と世界が黒く侵食されていく。
「この場所は.......?」
「俺の.......いや、俺たちの中枢だ」
「俺たちの.......!?なんだよ、俺は俺、一人じゃねぇか」
「.......ふん、自分がこうも馬鹿だと呆れることも出来ねぇ」
「なんだと!?」
目の前の不破 諫は頭を掻きむしりながらため息をつくと、改めて真剣な眼差しで不破に向き直った。
「いいか?俺はな、未来でナノマギア化した不破 諫。そして、可能性の中に存在している、『不破』じゃない『諫』、『刃 諫』だ。
そして、今の名は『ナノマギア・イサム』。
既に『不破』ですらねーんだよ俺は」
不破はキョトンとした表情でイサムを見る。
そのリアクションにまたイサムは鼻で笑うと、顔を赤らめて微笑んだ。
「ま、まぁ、こんな内容は理解しなくてもいいな。
とにかく俺はナノマギアのイサム、そしてお前は人間の不破 諫だ。それだけわかれば.......」
「ヤイバ.......イサムだと?
お前.......未来で刃と何が.......」
「うっ、うるさい!それ以上は踏み入らなくていい!お前が俺と同じになる可能性だってあるかないか保証はできないんだからな!.......それより、だ」
イサムは咳払いをして不破に向き直ると、真剣な面持ちで話し始めた。
「俺たち二人は混じり合わず、お前、つまりは今の不破 諫の感情が激しく前面に出て、俺が、つまり未来のお前が消えようとしていた」
「ふん、当然だな」
「.......それでだ。お前には頼まなければならないことがある。
俺はこれからお前と分離して、お前と闘うことになる。
この周辺一帯のナノマギアの悪意を引き連れて、俺がまとめてお前にぶっ潰されるんだよ。
.......ホラ、受け取れ」
イサムが突然投げたものを不破が受け取り、確認すると、それは“ランペイジガトリングプログライズキー”だった。
「俺が未来で作った最終兵器だ。少なくともお前の知っている同じキーより強い。
いいか、この歪みで生まれたアークは、悪意の力で対抗することは出来ない。
俺がこのアサルトグリップを持って、悪意を全て集める。だから、お前は悪意を捨てて、人類の未来、そしてお前の夢のために戦え!」
「お前っ.......死ぬ気か!?」
イサムは不破のアサルトグリップをいつの間にか奪い、ぽーんと宙へ一度放り投げてから掴む。
そして、背を向けると、一度だけ振り返って呟いた。
「.......俺はいい。お前自身も、そして唯阿も、人類の未来も、お前に託した。
.......じゃあな」
どこかへ歩いてゆくイサム。しかし、不破にはなんと呼んで止めればいいのか分からなかった。
「ま、まてっ!お前っ.......俺っ!!!」
────────────
「.......はっ!?」
不破が目を覚ますと、目の前にアークゼロはひとりも立っておらず、ただうなだれるように立ち尽くすもう一人の不破 諫がいた。
その状況に理解が追いついていないまま、変身を解除されて唯阿が不破の隣に並ぶ。
「な、なんだ、何が起きた.......?なぜ不破が二人.......」
「あれは.......あれは“イサム”だ」
「は?」
不破が身構える中、目の前のイサムは静かに動き出し、禍々しく光るアサルトグリップを体内に取り込んだ。
「.......うあぁっ!!」
イサムが苦しみ叫ぶ。そして、目の前に浮かぶひとつのゼツメライズキーが精製されると、それを手にして汗をかきながら笑った。
「.......ニホンオオカミか。俺たちには絶滅種がお似合いってことか。
身構えろ!仮面ライダーバルカン!!」
──ジャパニーズウルフ!
イサムは苦しみながらもゼツメライズキーを無理やり、それも一瞬でこじ開けると、ショットライザーに叩き込んで構え、銃口をこちらに向ける。
──AUTHORIZE
──Kamen『Warning!』 Rider. Kamen 『Warning!』 Rider.
「変.......身!」
──SHOT RISE! オルトロスバルカン!!
──Awakening the instinct of two beasts long lost.
ブシュゥゥ!!と漆黒の煙を放出すると、その身体はアサルトウルフのようなダークメタルの装甲に、白銀のメタルが侵食した、“オルトロスバルカン”へと変身した。
「.......じゃあな、唯阿。そして、俺.......。」
オルトロスバルカンは落雷が直撃したように激しい紫の電気を撒き散らすと、がくりと肩を落とし、力なく立ったまま気を失った。
その姿に不破は、躊躇いつつもランペイジガトリングキーをこじ開ける。
「イサム.......お前が作ったこのチャンスは、俺たちが確実に未来に繋げる!!
うう、うう、うおおおおおおお!!!」
不破は目の奥から溢れるような涙をぐっと押さえつけるように目を瞑って、力強くプログライズキーをショットライザーへ押し込んだ。
──RAMPAGE BULLET!!
──ALL RISE!! Kamen Rider. Kamen Rider.
不破の周りに、多色多様のエネルギーが集まり、それぞれが形を持ったライダモデルとなる。
「変身ッ!!!」
不破がショットライザーを操作し、弾丸を発射する。
すると、弾丸がオオカミ型のライダモデルへ変化して大きな声で吠え、大地、そして大空を駆けめぐり、ライダモデル達をひとつに束ねて虹色の弾丸へと変化し、不破へと向かっていく。
──FULL SHOT RISE
音声とともに不破が拳で虹色の弾丸を叩き割ると、弾けた衝撃で巨大な光線が発射され、ゴォン!とコンクリートの地面が捲りあがって不破が飲み込まれる。
そのビームの中で、不破の身体は仮面ライダーバルカンとなり、装甲に勢いよくぶつかるようにライダモデルが装着されていく。
ガガガガガガガ.......!!と連続でエネルギーの塊が突き刺さると、光線が晴れ、えぐれた地面に静かに仮面ライダー“ランペイジバルカン”が立っていた。
──Gathering Round! ランペイジガトリング!
マンモス!チーター!ホーネット!タイガー!ポーラベアー!スコーピオン!シャーク!コング!ファルコン!ウルフ!──
青白かった仮面ライダーバルカンが、日光に当たることで輝き、煌めく青に変化し、まるで単独で光り輝いているように見える。
それは、対面するオルトロスバルカンと、ランペイジバルカンの闇と光がぶつかり、既に戦っているようにも感じさせる。
彼らは辺りが静まると、ゆっくりと同時に拳を掲げ、同じタイミングで話し始めた。
「お前は.......この俺がぶっ潰す!」
『人類は.......この俺がぶっ潰す!』
「うおおお!!」『うおおお!!』
光と闇の円状の放射エネルギーがぶつかりあった瞬間、二人が踏み込み、オオカミが首元を噛み付き合うかのような、抉り込む一撃が交差した。
轟音が響いて殴り合う光景を前に、唯阿はショットライザーを構え、変身しようとプログライズキーを起動する。
「私も加勢しなければ.......不破が万が一負ければ、この世界が.......うっ!?」
プログライズキーの起動ボタンを押した瞬間、バチィン!と弾け、煙を上げる。そして、ショットライザーまでもガタガタと揺れだして、バスン!と煙を上げてしまった。
「そんな.......この領域には、ショットライザーそのものが耐えられないのか.......」
二人のショットライザーも、目を凝らすとガタガタと震え、異音を発していたが、オルトロスバルカンのショットライザーには闇が侵食し、ランペイジバルカンのショットライザーには光が侵食していく。二人の全身が侵食に包まれ、お互いが殴った箇所が同様に侵食され、拒みあっている。
「.......強い悪意と、強い希望のぶつかり合いに、ショットライザーはついていけなかったのか.......。
想いはテクノロジーを超える.......不破、お前にとってこの装置は飾りでしかなかった」
殴り合う二人の衝撃が唯阿を半分ずつ刺激し、それぞれの想いが響く。
『人類がいなければこんなことには』「夢を持てば希望が見える」『夢など必要ない』「滅びる必要なんかない」『全てほろびてしまえばいい』「お前にも人類がどんな存在か教えてやる!!!」
そんな二人の声なき響きが唯阿に伝わり、それに呼応するようにランペイジバルカンがプログライズキーを操作して力を溜めて殴り付ける。
──POWER!RAMPAGE!!
──RAMPAGE POWER BLUST!!
巨大なエネルギーを纏った拳がオルトロスバルカンに当たると、ギン!!!と高周波の激突音が響き渡る。
全体の景色がエネルギーで覆われ、誕生、愛、友情、希望、喜びの情景が映し出される。その中には、不破の歩んできた時間、イサムの歩んできた時間、或人、唯阿.......その他さまざまな人間の素晴らしい人生が映っていた。
『.......そんなものは虚構だ!』
オルトロスバルカンがショットライザーを操作すると、拳に巨大な闇が集まる。
そして、ぶつけるとシン.......と無音になり、ッバン!!!と一瞬の破裂音とともにランペイジバルカンが吹き飛ばされて希望の景色が絶望の色に変わる。
『この世に生まれ落ちて泣き、満たされず、渇いた現実を生きる。
愛、友情は幻想.......。そんなものは定義できない。生まれ落ちた時から決められた絶望に恐怖し、憎しみあい、疑い合うのが人類だ』
ドロドロと侵食される景色。そんなネガティブなオーラが唯阿をも蝕み、耐えられず目を覆う。
しかし、ランペイジバルカンは難なく立ち上がって煌々と輝き、叫んだ。
「陰気臭い事言って、勝手に決めつけてんじゃねぇ!!
.......人類は、守るべき俺の夢だ!悪意だなんだって言って発展してきたような存在じゃねーことはコンピュータが、AIが一番わかってんじゃねーのか!!!!」
バァン!と衝撃が走り、黒いオーラ、景色は光に包まれ、眩しく変わる。
オルトロスバルカンの動きが止まり、唯阿もショットライザーを手に取り、見つめて、フフッと微笑んだ。
「.......そうだ。人類は希望を、夢を追いかけて、理想を作り上げてきたんだ。
ヒューマギアも、人類の希望をのせた、夢の結晶だった.......」
『.......動けん!?』
オルトロスバルカンは仁王立ちのまま動けなくなる。対してランペイジバルカンは、容赦なく光輝く拳を喰らいつかせた。
『ぐふっ!.......ッアァ!!』
オルトロスバルカンは吹き飛ぶでもなく崩れ落ちると、よろけながら立ち上がり、赤黒い稲妻のように光る眼光を放ちながら突進し、ランペイジバルカンのショットライザーを殴りつけ、ヒビを入れる。
「なにっ.......くっ!!ああっ!!!」
ランペイジバルカンも、オルトロスバルカンの隙だらけになった腹部へ殴りつけるように、青白い眼光を放ちながら突進して殴りつけ、ショットライザーがバリバリと放電する程のヒビを入れた。
「ハァ.......ハァ.......」『ハァ.......ハァ.......』
お互いがよろけ、放電しながら苦しむと、それぞれの拳に想いを乗せて殴り合う。
その姿は殴りつける瞬間に生身に変わり、装甲など意味を持っていない。
彼らはもう変身が解除されたも同然であり、その仮面ライダーの姿はテクノロジーを超えた想いの力が形成している。
二人の殴り合いが静まると、息を整え、ブルブルと震える腕でショットライザーを操作し、力強く身構えて見つめ合う。
「う、うおおおお!!」『おおおお!!』
「これで終わりだ!!イサムゥ!!」
『.......もう終わりだ!バルカン!!』
「.......!?」
『おおおお!!!』
戸惑うランペイジバルカンに対し、オルトロスバルカンは躊躇せず大きく飛び上がり、パワーを放出して漆黒の隕石のようになって飛びかかった。
──ORTHROS BLUST FIVER!!
「お前の.......いや、俺の想い、無駄になんかしねぇよ!うおおお!!」
ランペイジバルカンも、その場から飛び上がって、虹色の閃光と化して突撃する。
──RAMPAGE ALL BLUST FIVER!!
空中で光と闇が混じりあうと、衝撃と共に一瞬不可視となり、景色が拓けると二人は脚ひとつで激しくぶつかりあっていた。
何重にも重なるナノマギア、ヒューマギアを取り込んだ悪意を背負うオルトロスバルカンと、一人空へ突き進むランペイジバルカン。
徐々に競り負けるランペイジバルカンに向けて、唯阿は大声で叫んだ。
「不破ァーーーッ!!!負けるなァーーーッ!!!」
「.......おおおお!!!」
ランペイジバルカンは大きく輝きだし、大きな翼を生やして加速して、オルトロスバルカンを圧倒し、脚を破壊した。
『うおお.......この力は.......かくなる上は.......!ぐわああああ!!!』
「.......しっ、しまった!!!」
ランペイジバルカンはオルトロスバルカンを突き抜け、空で巨大な爆発を起こし、雲をはじけさせて綺麗な青空を作り出す。
しかし、オルトロスバルカンは散り際に黒くドロドロした粒子を地上に向けて降らせ、それは高速で唯阿へと向かっていく。
「させるか!!させるかぁぁー!!」
──SPEED RAMPAGE!!
──RAMPAGE SPEED BLUST!!
バルカンは超高速で黒い粒子をかき消していくが、地上付近で残る僅かな粒子をかき消す直前に、力を失って翼がもげ、不破 諫の姿へ戻って、手を伸ばした体勢で地面にポトリと落ちた。
「唯阿.......!」
「すまない.......不破.......私がお前を見届けていたばかりに.......」
唯阿は逃げることも叶わず、その僅かな黒い粒子に取り込まれ、体内から湧き出る漆黒の液体金属に飲み込まれる。
そして、不破の目の前で仮面ライダーアークゼロの姿へ変貌した。
「.......唯阿、唯阿!!」
『フフフ.......絶望せよ』
「うっ.......うう!お前は、倒したくない!!俺は、いまさっき、自分を殺したんだぞ!!それなのに、こんな、こんな!!」
静かに手を広げて歩み寄るアークゼロ。不破はカタカタと震えながらボロボロのショットライザーを向け、とめどなく涙を流した。
「うっ、うっ、うわああああ!!」
不破が目を瞑り、引き金を引こうとしたその時、空間を引き裂くような明るい音声が鳴り、まぶた越しでも分かるほどの煌めく光を放つ何かが降り立った。
──METAL RISING IMPACT!!!
「おおおおりゃああああ!!!」
『馬鹿な.......』
「.......な、なん.......」
衝突音に驚き、不破が恐る恐る目を開くと、目の前にはアークゼロの姿から浄化され、膝をつく唯阿と、その隣に、変身解除して光を放つ或人が立っていた。
「あ.......或人.......」
不破が安堵と悲しみに顔を歪ませ、或人の名を呼ぶ。すると、或人は不破に笑顔を向けた。
「唯阿さんだったのか。.......でも、もう大丈夫。俺がナノマギアを元に戻せる。
.......間に合ってよかったァ〜!」
「.......ッう!!」
笑顔を向ける或人の背後に、キラキラと散る銀色の粒子が、一瞬だけナノマギア・イサムを形作り、サァァ.......と消えていく。
不破はその姿を見て、歯を食いしばり、立ち上がって或人に向けて拳を振り上げると、ハッと思い直して崩れ落ちる。
そして、地面を殴りつけて、泣きながら呟いた。
「遅すぎる.......!こんな.......遅すぎたんだッ.......!!うおおお.......ッ!!!」
咽び泣く不破に、或人はただ、困惑するしかなかった。
────────────
急速にナノマギアが鎮圧されていく最中、アルトは其雄に捕らえられ、暗く狭い部屋で柱に縛り付けられていた。
「父さんッ!父さんの目的はなんだ!俺を助けたり、邪魔したり、何のつもりなんだ!」
アルトはミシミシと紐を軋ませ、脱出などいつでも出来ると言わんばかりに動く。
「.......或人。俺はお前の考えを、改めて知りたいんだ。
お前はこの後、どうするつもりだ。
悪意をラーニングして、飲み込まれ、それによってナノマギア全体がアークに取り込まれ、大勢の人間を殺した。
未来と現代の、ふたつの世界がこうしてひとつになり、歪みが生まれ、お前も狂っていくばかりだ。
お前は知っているか分からないが、多くのナノマギアはこの惨状を理解し、耐えることが出来ず、自決している。
.......もう、決めた方がいい」
真っ直ぐと目を見つめて問いかける其雄に、アルトは即答を返す。
「俺は、もう決めた。
思えば、最初から、来る前から分かってたんだ。
人類を救うなんて、タイムパラドックス的に無理だった。
この時系列を、結末を覆そうと努力したって、時空の歪みはそれを超える事象を引き起こし、ヒューマギア革命なんか目じゃない事が起きて、ナノマギアが先に作られている。
.......アークってなんだよ、デイブレイクってなんだよ、そして、なんでナノマギアが作られてんだよ!
それもこれも、この世界、宇宙、次元を超えた悪意だ!俺にはそれがわかる!!
狂ってるわけじゃない!俺がここに来て、時空によって生み出された存在に正されてるんだよ!」
「.......それはお前の思い込みだ。宇宙に意思なんて」「あるに決まってるだろ!!俺が、俺が世界を救おうとしたら、救えないように作り替えられる!これはアークが俺に教えた真実だ!」
はぁ、はぁと息を荒らげて話すアルトに、其雄は静かに間を置き、問いかけた。
「或人.......それなら、お前はこれから何を、どうするつもりだ?」
静まり返った空間。そしてアルトは呼吸を正してから、沈黙を破った。
「人類も、ヒューマギアも、ナノマギアも.......俺が全て滅ぼす」
「.......そうか」
其雄はゆらりと黒と銀のメタルクラスタホッパーキーを取り出すと、起動する前にアルトが光りだし、其雄より先にプログライズキーを起動した。
──JUMP!
「なにっ.......」
戸惑う其雄の目の前には、紐を柱ごと消失させて立つ、アルトが立っていた。
「この世界を救えるのは、ただ一人。
.......俺だ!」
──AUTHORIZE
〜♪
アルトの目の前に、天井を破壊して白のバッタが舞い降りる。
めちゃくちゃに天井を破壊しながら飛び回る中、アルトは意識を集中させるように天へ両手を掲げ、そっと体の軸に沿って手を下ろす。
「変身!」
──プログライズ!
──To be a gun nice!〜♪セービングホッパー!A jump to the time returns to a rider kick.
白いゼロワンは、ヴァニッシュカリバーを携えて身構え、崩落した天井からさす日差しを浴びて照り返す。
対して、其雄は冷や汗をかきながらプログライズキーを起動し、腰にサイクロンライザーをあてがった。
──CYCLONE RISER──
──EVERYBODY JUMP!
其雄はプログライズキーをサイクロンライザーに滑り込ませるように入れると、バッタ型の部位を折り曲げ、その屈折部分から大量の黒いバッタを放出した。
「変身」
冷静に呟きながらレバーを引くと、プログライズキーがこじ開けられ、黒いバッタが其雄へ密集し、一瞬だけ仮面ライダー1型 ロッキングホッパーに変わり、更なる変貌を遂げた。
──CYCLONE RISE!
──メタルクラスタホッパー!
黒と銀の1型は、静止してギラッと光ると、静かに歩いて間合いを縮めながら話した。
「これが、この歪みによって生まれた、現代のナノマギアがもたらした力、“ロッキングクラスタホッパー”だ。
お前を止めるために、俺がこの力を使う。
.......現代のナノマギアはこの世界の歪みだが、こうやって使われてもいい存在らしい。そんな意思はこの時空の歪み、宇宙にあると思うか?」
問いかけている最中に、白いゼロワンは高速で接近し、ヴァニッシュカリバーを振り下ろす。
1型は対抗して拳を武器に向けて放つと、黒い結晶がその拳と武器の間に発生し、代わりに消滅した。
「.......そんな理屈じゃない!この世に本当に正しいって言える正義なんてない!
俺がこんな事を早く終わらせるべきなんだ!そのためにここに来た!.......父さんと戦いたくなんてない!俺と一体化して消えてくれ!」
「それなら、お前が力づくで分からせてみろ。
本当に人類が、ヒューマギアが、ナノマギアが滅びるべきなのか、父さんには理解できないからな。
.......或人。お前が笑って過ごせる世界が、そこには無い」
「.......そんな世界は、どこにも存在するべきじゃない!!!」
白いゼロワンは強烈な横なぎの斬撃を1型の結晶に叩き込み、砕き割って本体へ当てる。
「まずいな.......さすが或人だ」
不可視に消失した装甲を、黒いバッタを召喚して集め、再生して構えなおした。
「.......やあぁっ!!」
白いゼロワンが続けざまに斬りかかろうとすると、二人の間に突如イズが手を広げて乱入した。
耳のモジュールがないため、未来のイズだ。
「やめてくださいっ!或人さま!
争いでは何も解決しません!」
「イズ!!人類は滅亡するべきだって......お前も言ってただろ!!」
「えっ!?そんなこと、思ったこともありません!.......!?」
戸惑うイズ。しかしよく見ると、白いゼロワンの周囲には次第に黒いオーラが漂い、その空間にうっすらと、赤いメッシュのイズが映る。
彼女はしっかりと白いゼロワンに背負われるように抱きついていて、その邪悪な赤い瞳がイズを睨みつけていた。
「.......それは私ではありません!或人さま!!!目を覚ましてください!!!」
「.......そうか。でも、この子は俺にすごく近く接してくれる。
何よりも俺のために、俺の罪滅ぼしの為に考えてくれている」
「それは罪滅ぼしという名の大罪です!
.......わかりました。言葉で言っても無駄なら、私を取り込んでください!それで、私がこの身をもって、或人さまの目を覚まします!」
イズは悟ったように目を見開くと、震えながら前へ進む。しかし、その腕を1型が掴み、制止した。
「やめろ!それ以上踏み出ていたら、君も斬られ、消されていた。
今は耐え.......うっ!?」
1型が驚き硬直する。同時に目の前のイズは腹部が白く輝き、その輝きは1型の身体までも貫いていた。
「或人.......さ、ま.......」
「或.......人.......!!」
輝きの中で何かが引き抜かれ、二人はどしゃりと膝をついて力なく倒れる。
そこに、白いゼロワンは歩み近寄って手をかざした。
「もうここまで来たら、どうしようもないんだよ。
せめて、俺が滅びるか、彼らが滅びるか。
どっちが正しい力なのか、俺は見たいんだ。
父さん。イズ。俺とひとつになろう」
白いゼロワンが二人の頭に手をのせると、徐々に二人は分解されていった。
「.......或人。お前のことは、俺が.......止めてやりたかった」
1型から其雄の姿へ変身が解除されながら、力なく呟く。それに、白いゼロワンは申し訳なさそうに返す。
「俺のわがままだっていい。思い出したんだよ俺。
こんなこと[[rb:何回も繰り返して>・・・・・・・・]]いいものじゃない」
「.......そうか。.......そうだったのか。或人.......」
其雄はギリッと歯を食いしばって拳を握るが、その姿は段々と消え、その最後の最後に白いゼロワンへ向き直った。
「或人!.......俺は、それでも諦めない.......!」
其雄の姿が手のひらに吸い込まれて消えると、その場に何も描かれていないプログライズキーの形だけが残った。
そして、イズもまた、力なく吸い取られていく中で呟く。
「私たちの夢は呆気なく終わった.......。そう思ってました。ですが、何も呆気なくなんてなかったんですね。
或人さまは、既に何度も繰り返していた.......」
「.......俺も知らなかった。でも、こっちのイズが、アズが教えてくれたんだ。
この歪みのルーツを」
「ですが私も諦めません。
私の中のゼアはそれでも或人さまに力を授けるでしょう。
ですが.......ですが私は.......」
「俺も何度諦めないって言ったんだろうか。もう全て終わらせよう」
「本当にそれが、或人さまの本心ですか。私と固めた決意は.......その結論が.......これですか」
「.......。」
白いゼロワンは制止して沈黙すると、またも多くの黒いオーラを纏い、今度は頭を抱えだした。
『ぐぅぅぅ.......!!黙れっ!』「これが、俺の結論.......!」『そうだ.......!』
白いゼロワンが変身解除しながら、ノイズの入った声を交えてイズに手を伸ばす。
その違和感に、イズは抵抗するべく動こうとしたが、既に消失していた身体機能ではどうすることも出来なかった。
「まさか、貴方は或人さまじゃ.......ない!?」
『.......こんな所で覆されてたまるものか!ハァッ!』
アルトの目が赤く輝き、アークの声に変わる。そして、平手をイズに向けて突き出すと、一気に量子化させて吸収した。
「そんな.......アルトさ.......ま.......」
消えゆくイズは小さく爆発するように明るい緑に輝き、残留しようとした。
しかし、その輝きを逃がさないと言わんばかりに、アルトは手を突き出して握りしめ、エネルギーを増幅させる。
アルトはそのエネルギーを両手の間に押さえ込みながら、呟く。
「あの時見つけた、この世界の最強の力、“ゼロツー”、この進化の力を.......『この私が利用する』.......!!
ふたつの世界の極限の力が合わさり、誕生する新世代の仮面ライダー.......!」
アルトはエネルギーを完全に包み込み、取り込むと、地面に落ちている何も描かれていないプログライズキーを拾い、両手に瞬く光を出現させ、収まる頃にその手には全く新しいプログライズキー、そして変身装置が握られていた。
アルトは邪悪な声で笑いながら、呟いた。
『その名も.......仮面ライダーゼロトゥルー。』
────────────
その頃、飛電インテリジェンスに戻った或人と不破、唯阿、イズは、普段通りに戻った垓を見て驚いていた。
「今までは記憶を失い、苦労をかけてすまなかった。
そして、全て思い出した今、ナノマギアプロジェクトを詳しく洗い直したんだ。
飛電の中で、ヒューマギア開発以前に企画されていたのも違和感がある。そう思って調べると、こんな事実が明らかになったんだ。この資料を見てくれ」
或人は垓に紙一枚の資料を手渡されると、目を丸くした。
「これって.......!」
その資料の企画立案は、デイブレイク以前の日時。或人がまだ幼く、祖父の飛電是之助が社長をしていた時代のこと。
そんな年数にも関わらず、その企画の立案者の名前には、ハッキリと“飛電 或人”と記されていた。
「俺の.......名前!?」
「そうだ。未来の君はどうやら、過去何度もこの世界に干渉し、人類の滅亡を防ぐために尽力していた。
しかし、それは全て別の時空、人類が滅亡した未来から来た別々の飛電 或人達による干渉だった。
その結果、この世界は歪み、壊れてしまったようだ。
.......そして、私は天津 垓が存在した世界に干渉された、ナノマギア化した天津 垓という新しい歪みだ」
垓は手に持ったアイちゃんをデスクにそっと置き、自分の手のひらを見つめる。
唯阿は或人の資料を覗き込み、気になった点を注視してつぶやいた。
「その過去のうちにナノマギアの開発がなされなかったのは、前社長が開発を拒んでいたからか。
それを天津 垓が掘り起こして、ナノマギアを作ってしまった」
「.......しかし、これも私がやらなくても誰かがやったであろうことだ。
それがたまたま私だった。もし私が開発していなくても、未来の飛電 或人は来訪をやめなかったはずだ」
垓の言葉の後、誰も言葉を続けずに沈黙すると、イズのヒューマギアモジュールに突如現れた光の粒子がそっと流れ込み、イズは目を見開いて慌てだした。
「.......大変です!みなさん!直ちに戦闘態勢に入ってください!」
「イズ!?.......いや、君はまさか、ミライズ!」
或人が驚いてイズを見ると、その様子から感じ取って問うと、頷いて慌ただしく全員を部屋から出るように促した。
「その通りです。
私は意識を逃がして、その場から逃げてきました。恐らくここに、今戦える皆さん全ての力を持って止めなくてはならない相手が現れます。時は一刻を争います!今すぐ外へ!」
イズに背中を後押しされて、三人は部屋を退室させられる。
全員が戸惑いながらも、少し恐怖で顔を歪ませる。しかし、足取りは迷わず外へ向かっていた。
不破はショットライザーを手に持ちながら歩き、呟く。
「これから来るやつはあのイサムよりも強いのか.......?いや、そんなはずは無い。あの男が弱いはずがない!お前の気持ちを無駄にはしない.......!」
唯阿も同じようにショットライザーを構えながら進み、呟く。
「私も一度は死んで、ナノマギアになったんだ。私を救ったナノマギアの分も、尽力しなければな」
垓はサウザンドライバーを手に、ずんずんと突き進んで呟く。
「この騒動が終わり、もし平穏な日々に戻ったのなら、滅亡迅雷の四人は蘇らせる。この私を取り戻してくれた四人への恩返しはそれしかない」
その最前列でゼロワンドライバーを腰に取り付け、真剣な表情で進む或人の隣に、イズが並んで歩いた。
「或人社長。この世界のこの時間軸に私たちが来て、こんなことになってしまい、本当に申し訳ありません。
これから来る相手とは、お察しのとおり、未来の或人さまです。彼は、アークに乗っ取られていました。
アークが彼を導き、歪ませ、果ては彼の人格に成り代わり、全てを終わらせる力を手に入れるべく計画していたのです。
彼を倒すには、真のゼロに対をなす、“新世代のゼロワン”の力が必要です。
或人社長も、思い出さなければなりません。この時空で持つべき本当の力を.......」
「本当の力.......」
或人とイズが一番先に飛電インテリジェンスを出ると、すぐに一人の男が目に入った。
彼はナノマギア・アルト。同じ顔をした二人が見合って立ち止まる。
ぞろぞろと不破、唯阿、垓が続いて出て来た後、或人は口を開いた。
「.......もう一人の俺。お前はこれからどうするつもりなんだ」
問いかけられたアルトは、フン、と笑うと衛星アークの声で返した。
『既に知れたことだろう。私はこの力で全てを破壊する。
.......聞こえは悪く感じるだろう。しかしこれは全て、人類が生み出したタブー、全宇宙の歪みを排除し、全てを終わらせることこそが、本来の人類の果たすべき責任なのだ』
アルトは突然もやにつつまれてふっと姿を消すと、瞬時に不破の真横に立って呟く。
『人類が破壊する自然。理由や言い訳ばかりのエゴで改悪されていく。
貴様の持つ“夢”には、何一つ自分自身のワガママは入っていないのか?それは、自分が平和に生きることと、宇宙の崩壊に天秤をかけて成立する業であろうか』
「.......そういう最もらしいこと言って、丸め込めるような俺じゃねぇ。俺の持つ力がそうさせるんだ」
『フフ.......そうか。“力”か。その通りだな。猿は純粋な力で縄張りの統率を実現する』
「なんだと.......?」
不破がアルトを睨むと、目を合わせて赤い瞳で睨み返す。不破が驚き怯んだ瞬間、姿を消して唯阿の横へ着いた。
『人類の発展、曰く“発達した未来の形”。それは地球という惑星のみならず、周囲の宇宙法則にまで影響を与えることとなった。
貴様が生み出したものは、あそこの彼のような力ですべてをねじ伏せる暴力そのものだ。人間が生き残り、統率し種として繁栄するために同族を脅かす』
「.......何を言うかと思えば。人間の業など人間が痛いほどに分かりきっている。ひとりひとりの力で生きて何かを成し得る生物がどこにいる。野生に還って淘汰される為に生きる生物などいない。世界がこうなることは初めから運命づけられていた」
『何かを成し得ることが世界にとって歪みとなるのだ。
そうして生まれた歪みこそが人類自らを滅ぼすことに繋がったのだ』
「.......っ!」
唯阿が歯を食いしばってキッと睨みつけると、アルトはアークゼロの姿になっており、その不気味な赤い瞳で睨み返し、もやとなって消えた。
気づくと垓の背後へ移動しており、その斜めの射角で不破と唯阿のショットライザーが向けられた。しかし、リスクを考慮してか、二人は引き金を引くことが出来なかった。
『人間は道具を作り、武器を作り、文化を発展させ、そして争う。それは力による支配。
欲しいものは地位か、物資か、手に入るものであればなんでも欲しがったのだ。
貴様は歪みではなく、この世界線に紛れもなく存在していたのだ。より人間らしい人間の生き様だ。そうして人間は同じように地に落ち、滅びゆく』
「私は地に落ちた訳では無い。思い直した。
人間は変われるということを私が1000%証明してみせる」
『その結果こそがナノマギアだ。人間はこうして滅びたのだ。人間は自身らの滅びの運命から逃れることは出来なかった。
しかし、一度アークを生み出した結果、そのアークが人類を贖罪する事、それのみは素晴らしい功績と言えよう』
「.......私を皮肉るか!」
垓が振り向いて睨むと、アルトはアークワンの姿へ変わっており、ゆっくりと振り向いて正面から見つめ返し、吸い込まれるような赤い瞳で圧倒する。
そして、辺り一帯を真っ黒のモヤで覆い、吹き荒れる邪悪なオーラの中から或人の前にアークワンが現れた。
『私は貴様ら仮面ライダーの力を全て得て、全てを抹消する。
人類の過ちは、人に作られた私達が正すべきなのだ。
感謝するぞ飛電 或人。こんなにも早い段階で、人類に贖罪の機会を与えることが出来る。それこそ、私が成すべき使命だ』
「そんなこと.......させるかよ!
人間は進み続ける!未来の俺だって、人間を、そして世界そのものを救うために過去に戻ったんだろ!!
何度だってやり直す!どんなに酷いことになっても、何度だって変われるんだよ!!」
『.......何度悲劇を繰り返すことになる。何度世界を人類のエゴで歪めればいい。
この世界線に限らない。あらゆる形の世界だろうと、人類の悪意は消えることがない。ナノマギアは悪意を持たないが、彼らこそが人類の残した負の遺産だ』
「俺はそれでも.......!」
或人は拳を握りしめ、一度俯いてから決意を固め、顔を上げて目を見開いた。
すると、そこにはアークワンではなく、絶望に落ちきったような、血の気の引いた表情のアルトが立って、こちらを見返していた。
「.......!?」
『これが、あらゆる可能性の世界を見てきたナノマギア・アルトの姿だ。
.......それでも、言ってみせる気か?
.......それでも。』
或人は驚きたじろいだが、少し間を置いて深呼吸をすると、落ち着き直して目を見開き、声をはりあげた。
「.......それでも!!」
『第五節に続く』