或人はメタルクラスタホッパーキーを取り出すと、起動してゼロワンドライバーにかざし、イズに向けて叫んだ。
──EVERYBODY JUMP!
──AUTHORIZE
「イズ!思い出した!俺たちの作った、あの力を!
“ゼロツードライバー”を作るんだ!!
.......みんな!イズの時間を稼ぐために、力を貸してくれ!」
「ゼロツードライバー.......!わかりました。
必ず作りあげます!」
イズがパタパタと走って飛電インテリジェンス内部へ消えると、入れ替わるように不破、唯阿、垓が或人の隣に並ぶ。
そして、或人がメタルクラスタホッパーキーをさし込んで変身するその横で、唯阿がナノマギア因子を変形させてエイムズショットライザーを次々に四つ精製し、ひとつを不破に渡した。
「これは.......!唯阿が作ったのか」
「そうだ。ナノマギアというのは便利なものだな。こんなことがすぐ出来る。お前のショットライザーは破損しているだろう。“私の”ショットライザーを使え。
そして、私もお前のランペイジバルカンに負けていられないからな」
不破がランペイジガトリングキーを構える横で、唯阿は精製したラッシングチーターキーを腰のショットライザーに装填し、空中で精製したライトニングホーネットキー、ファイティングジャッカルキーを両手の二丁のショットライザーの装填部で受け止め、両肩で押し込んだ。
「.......とんでもねぇな」
「三乗の力。トリプルバルキリーとでもしておこうか」
唯阿はドン、ドン、ドンと順序よくショットライザーの引き金を引いて、それぞれがひとつの弾丸となって唯阿の前で弾け、変身した。
さらにその横で、一人ゆっくりとプログライズキーを掲げ、垓が静かに呟いて変身した。
「「「「変身!」」」」
──メタルライズ!Secret material!HIDEN・METAL!メタルクラスタホッパー!It's High Quality.
──FULL SHOOT RISE!Gathering Round! ランペイジガトリング!マンモス!チーター!ホーネット!タイガー!ポーラベアー!スコーピオン!シャーク!コング!ファルコン!ウルフ!
──ライトニングホーネット!Piercing needle with incredible force.
──ファイティングジャッカル!Deciding the fate of a battle like a Valkyrie.
──ラッシングチーター!!Try to outrun this demon to get left in the dust.
──PERFECT RISE!When the five horns cross,
the golden soldier THOUSER is born.
〜♪Presented by ZAIA.
一人一人が変身し終わると、或人は“ゼロワン メタルクラスタホッパー”に、不破は“ランペイジバルカン”に、唯阿は煌々と光り輝く“バルキリー ラッシングチーター”の姿に、垓は青い複眼となった“滅亡迅雷サウザー”へと変化していた。
彼らがそれぞれ身構えると、ナノマギア・アルトはゆっくりと右手を掲げ、ひとつのプログライズキーを精製し、起動した。
『無駄だ』
──ZERO TRUE JUMP!!
起動と同時に、アルトの腰に突如、“ゼロツードライバー”に全てが酷似した装置が出現した。
──ZERO TRUE DRIVER!
「あれはっ!!」
或人が驚いて声を上げる。対して、アルトはにやりと笑ってプログライズキーを掲げ、待機状態を作り出した。
──〜♪Let’s give you power!〜♪Let’s give you power!...
アルトは装置の真横から大きく円を描くように両手を広げ、交差して一周し、円の終点で元の位置に戻り、不可視だったのであろう、光り輝くバッタがアルトの背後でいっそう輝く。
抱擁を待つような神々しい構えに、後光がさす姿は、四人を激しく威圧する。
『.......変身』
アルトは両手を閉じるようにプログライズキーを装填し、また広げると、激しい光のライダモデルがアルトを包み、ゼロワンらしい姿に翠の装甲、そして赤い放射エネルギーが固まり、各部にアクセントがあしらわれる。
──ZERO TRUE RIZE!
──Road to Glory has to Lead to Growin' restart to change ZERO TRUE!
──仮面ライダーゼロトゥルー!!──
──It's never end.I will not give up.
光が収束し、その輪郭が見え始めると、おおよそその姿はゼロワンの意匠を保ちつつも、以前のどのフォームとも違う異彩を放っていた。
額には三色の鋭いアンテナ、顔の横に旧ヒューマギアモジュールのようなアーマー。
アンテナの中心、そして胸部に浮かぶ青い宝石のようなエネルギー結晶体が光り、胸部の結晶の縁はまるでゼロを描くように斜めの一本の装甲が引かれている。
そして、翠のグローブ、脚の装甲、そして、蛍光イエローのラインの入った翠の腰マント状のアーマーがついている。
首元に付いている左右対称のバッタの脚状のアーマーは、その間の空間が不可視の光を放っている。
『.......この力を待っていたのだ。
何度繰り返しても手に入れられなかったこの力で、私は偉業を成し遂げることが出来る。
貴様らがどれほど成長したとて、このゼロトゥルーには及ばない』
ゼロトゥルーは、アークの声を発しながらじわじわと四人の元へ歩み寄った。
その強気の姿勢に、ゼロワンがプログライズホッパーブレードで切り込むと、ゼロトゥルーは全身を量子化して身体に武器をすり抜けさせて回避し、直後に実体化する。
「攻撃が当たらない.......!?」
動揺して怯むゼロワンに、超高速で真っ直ぐ貫くような鋭い蹴りを打ち出し、その衝撃でゼロワンを吹き飛ばした。
「ぐわあぁっ!!」
『驚いたか?これもナノマギアの性質を上手く利用した技だ。普通なら再結合は出来ないが、今の私には無限のエネルギーがある。全ての事象において不可能はない』
直後にバルカンは翼を広げて高速で空を駆け、バルキリーが劣らないスピードで地上を駆ける。
「不破!仕掛けるぞ!」
「ああ!」
二人がショットライザーを超高速で移動しながら乱れ打ちし、全方位からの弾幕を形成する。
しかし、ゼロトゥルーはふわりとその場から消え、外れるはずの弾幕エネルギーはゼロトゥルーが立っていた場所に収束した。
「なにっ!?」
バルキリーが驚いたのも束の間、視線の先には飛び回るバルカンをさらに速い速度で足を構えて追いかけるゼロトゥルーの姿が見えた。
「不破ッ!後ろだッ.......!?がはぁっ!!」
「ぐふっ!!」
バルカンが目の前で目にも止まらぬ速度の飛び蹴りを浴びたのと同時に、バルキリーも同様にゼロトゥルーからの飛び蹴りを受けていた。
二人のゼロトゥルーは、二人を地面に叩きつけて静かに着地し、弾幕のエネルギーが固まった位置にすうっと集まって吸収し、また一人に戻った。
『その程度のエネルギーでは、私に攻撃を当てることすらかなわない。
全力で撃ち込むがいい』
「そうさせてもらう」
ゼロトゥルーの余裕を感じさせる立ち姿に、サウザーは容赦なく装置を操作して必殺の飛び蹴りを放つ。
──THOUSAND DESTRUCTION──
不意打ちにも近いサウザーの速攻撃は、直撃の直前にゼロトゥルーに振り向かれ、次の瞬間に空中でビタリと制止させられた。
「なっ.......!?馬鹿な」
サウザーの渾身のキックは、ゼロトゥルーの指一本で止められていた。
『無限のエネルギーに対して、どんなに大きなエネルギーを与えようとも等しく“0”に収束する。
貴様らの攻撃も等しく無意味なのだ。
そして、どんな大きなエネルギーを持ったとして、有限のエネルギーに無限のエネルギーをぶつければ.......!』
ゼロトゥルーは、装置に装填したプログライズキーを押し込み、一時的に眩く輝くと、全員の視界から一瞬で消失し、サウザーの周辺を白く輝く光で包み込んだ。
「な、なんだ!?」
『はあっ!』
──ZERO TRUE BIG BANG!!──
ギュウン!と空間が一瞬ねじ曲がり、サウザーの立っていた場所に収束したと思うと、次に全員が意識を取り戻した時にはゼロトゥルーが脚から光を放ちながらその場に立っていた。
「垓さん!?」「垓.......!?」「まさか、サウザーはやられたのか.......!?」
三人が驚く中、ゼロトゥルーは肩のパーツの空間、不可視であった部分が透け、エネルギーを放出するとゆっくりと近づき、話し始めた。
『今の一撃で、無限のエネルギーに耐えきれなかったこの世界は、“仮面ライダーサウザー”を触媒にして、彼がいない世界へと急遽作り替えたのだ。
創世、言わば、“破界”。
しかし、放った力が[[rb:巨大>おお]]きすぎた。
また暫くは貴様らと同等の闘いが出来ることを嬉しく思うがいい』
妖しく笑うゼロトゥルーに、バルカンは激昴して立ち上がり、走り寄った。
「ふざけんなっ!!そんな理不尽な権力で、俺達が必死に守り続けてきた世界をぶち壊されてたまるか!!!」
激しく銃撃しながら近寄り、殴り掛かるバルカンだが、ゼロトゥルーは無慈悲にエネルギー弾を全て弾き、拳をバシッとつかんで止める。
『貴様は自分の持つ力で、夢を叶えるのだろう?規模が大きくなっただけだ。それにこれは私が導き出した人類の結末、答えだ』
コオォ.......と眩く光り出すゼロトゥルーの拳を見て、バルキリーは叫びながら立ち上がり、飛び蹴りを放った。
「不破あーーっ!!」
──HUNT FIGHTIHG BLUST!!
バルキリーの脚は黒い鎌状のエネルギーを持って、踵から伸びた鎌の刃部分を突き刺すように振り下ろした。
しかし、ゼロトゥルーの装甲に触れた瞬間にエネルギーは制止してしまい、ダメージを与えることが出来なかった。
「なにっ!?」
驚くバルキリーを気にすることも無く、白く輝く拳をバルカンにぶつけ、衝撃で激しく空間が歪ませる。
バルカンは正常に戻る空間と共に意識を失い、変身を解除されて地面に転がった。
「不破っ!」
バルキリーが不破に視線を向けると、ゼロトゥルーは瞬時に不破の転がる方向の先に移動し、服をつかんでゆっくりと持ち上げる。
「やめろおお!!」
バルキリーは腰部のラッシングチーターの力で高速の助走をつけ、左手のライトニングホーネットの力で雷がほとばしる突進蹴りを見舞う。
それを見たゼロワンも、アタッシュカリバーとプログライズホッパーブレードを連結してトリガーを引き、斬りかかった。
「不破さんを離せっ!!うぉぉおっ!!」
バルキリーの一撃はゼロトゥルーに少し効いたようで、重みで怯む。
有効打の確信を得たバルキリーは、腰部、両手の必殺技を三連続で打ち、右脚に収束する鎌状のエネルギーに稲妻を纏わせ、地面を強く蹴ることで空中を縦に高速回転して三位一体の必殺技を放った。
その必殺技に合わせて、ゼロワンは自身の必殺技を合わせる。
──GIGANT STLASH!!!
──THUNDER LIGHTNING BLUST!!
──HUNT FIGHTING BLUST!!
──DASH RUSHING BLUST FIVER!!
二つの光り輝く斬撃がゼロトゥルーを挟み込み、強烈な打撃音が響き渡ると、ゼロトゥルーはたまらず不破を手放した。
「やった!刃さん!!」
「ああ!.......はっ!!」
バルキリーは高速で不破を抱えて走り込み、距離を取ると地面にそっと寝かせて振り向く。
次のゼロトゥルーの行動に備えて身構える二人だが、ゼロトゥルーは静かに佇み、一度こちらを睨みつける。
『.......愚かなものだ。そして涙ぐましいものだな。友情、愛などという幻想が産む助け合いというものは。
自分が消去されるかの瀬戸際だというのに、他人の心配がまだできるとは。
共生の本能でもあるまいに、何をそこまでする必要があるのか.......。
.......ん?』
ゼロトゥルーが不意に光りだした右手を開くと、そこには“ZAIA”と金の刻印がなされたアイちゃんが出現していた。
『.......AIにもその幻想、人間のエゴを理解させるとは。本当に罪深いものだ。
まぁいい。私にも時間が必要だ。
.......この歪みによって生み出されたナノマギア因子は既に崩壊を始めている。あの女も長くは持たないだろう。
この世に残された自壊を選ばなかったナノマギアは、貴様らがいくら解放しようと私から生み出される歴史の修正力によって消滅する。
ナノマギアが消滅する頃に、もう一度貴様らを滅ぼしにいこう。
それまでの束の間の絶望を味わうといい』
「ま、待て!!!」
『.......フン』
ゼロトゥルーはゼロワンにアイちゃんを投げ渡すと、両腕を広げて時空を裂き、カーテンを閉めるように閉じて空間を歪ませて姿を消すと、ぐにゃぐにゃになった空間が徐々に元に戻って姿を消してしまった。
「くそっ!このままじゃ.......!」
ゼロワンは変身解除して歯を食いしばり、悔しがった。
すると、アイちゃんがぺかぺかと光りだし、或人に話しかけてきた。
「或人社長!大丈夫!
今ね、ゼロトゥルーになったアークの中では、一生懸命未来のアルトさんが戦っているよ!それに、私がガイちゃんのナノマギア因子を取り込むことで、一部分だけガイちゃんを留めることが出来たんだ!」
「垓さんを!?」
驚く或人に、アイちゃんは紫色に発光して返答した。
「あぁ。私だ。身体は消失したようだが、私の意識は1000%ここにある」
「垓さん!」
垓の声を発するアイちゃんに疑問を持つことも無く、安堵する或人。対して、垓はすこし暗い雰囲気であった。
「しかし.......ナノマギア因子は少しずつだが、消滅しつつある。ここに意識が留まっていられるのも、アイちゃんの助力があってこそだが、ナノマギア因子がこの世から完全に消滅する時、私の意識も無へと返るだろう。
.......或人くん」
「.......なんですか?」
「この世には、もう時空の修正力どうこうでは修正もできないような大きな爪痕が残されている。
破壊や殺戮、存在の消滅、さまざまな絶望がくっきりと残っている。
しかし、ゼロトゥルーにはそんな過去すら消し飛ばして世界を作り直せるだけの力を持っている。
“ゼロツードライバー”が、それと対をなすというのなら、もう、こんな歴史などなかったように変えて欲しいんだ。
このまま、刃.......さんも消滅する。それだけじゃない。善意を取り戻したナノマギアが関与して一命を取り留めたような人間はまだいるはずだ」
「そう、ですか.......」
或人は少し俯いて考えるが、そんな時間すら与える間もなく、二人の或人を呼ぶ声がした。
「飛電 或人!」「或人さま!」
「刃さん、イズ?」
刃はひとり遠くを見つめながらショットライザーを身構えつつ、或人に話しかけていた。
「あれを見ろ。思うに、全てアークの差し金だろうな」
その視線の先には、またも無数のアークゼロが忍び寄る。しかし、全身のうちの各部位がジワジワと消えかけているように見えた。
「あれもナノマギアだろう。そして、私自身も消失しつつある。
.......ここは私に任せろ!お前はその“ゼロツードライバー”を完成させろ!」
「で、でも!」
──RAMPAGE BULLET!
突然ランペイジガトリングキーの起動音が鳴り響くと、不破が歯を食いしばって起き上がり、フラフラと唯阿の隣に並び立った。
「.......大丈夫だ、社長さん。俺も寝てられねぇからな」
「ふん.......!それでこそ私の部下だ」
「.......刃。時間、ねぇんだろ。さっさと片付けるぞ.......!」
唯阿はニコリと笑うと、三つのプログライズキーを起動して、呟いた。
──DASH!
──THUNDER!
──HUNT!
「唯阿.......って呼んでも、いいんだぞ?」
「そうかよ.......行くぞ、唯阿ァッ!!」
──AUTHORIZE
「「変身!!!」」
──FULL SHOOT RISE!Gathering Round! ランペイジガトリング!マンモス!チーター!ホーネット!タイガー!ポーラベアー!スコーピオン!シャーク!コング!ファルコン!ウルフ!
──ライトニングホーネット!Piercing needle with incredible force.
──ファイティングジャッカル!Deciding the fate of a battle like a Valkyrie.
──ラッシングチーター!!Try to outrun this demon to get left in the dust.
ブシュウウウ!と激しく放熱し、変身する二人。
にじり寄るアークゼロたちに二人は咆哮し、射撃を始めた。
「或人社長」
イズが或人の近くに寄って話しかけると、袖を引っ張る。
「ゼロツードライバーの精製作業が難航しています。ゼロワンドライバーを触媒に、作業を加速する必要があります。
ここは、彼らの覚悟に任せ、私たちは私たちの作業を優先しましょう」
「あぁ.......わかった。行こう、イズ」
或人とイズが飛電インテリジェンスに走り去ると、バルカンとバルキリーはついに間合いの詰まった格闘戦へ移行した。
無言で殴り掛かるアークゼロの集団に、二人は息を合わせてお互いの背後を守りながら応戦する。
「.......唯阿」
「なんだ!?」
「俺は今、お前がナノマギアにさえならなければこんなことには、って思ってる」
「.......」
少しの間、無言の射撃戦が続いたが、両方から一列のアークゼロが迫り来ると、同時に強烈な回し蹴りを放って屠り、バルキリーが言葉を続ける。
「だからお前はゴリラって言われるんだ。
もう一人のお前と違って、頭も大して良くないし、プログライズキーは無理やりこじ開けるし、それに.......お前は一匹狼って柄じゃない。仲間想いのゴリラだ。
ほら、やっぱり不破もゴリラだろう」
バルカンは振り返って何か言葉を返そうとしたが、その瞬間にバルキリーはバルカンの背後に射撃し、アークゼロを一人牽制した。
「気を抜くな。私がこんなに頑張って、お前まで簡単にいなくなったら笑えないんだからな」
「あ、ああ.......うおおっ!」
バルカンはランペイジガトリングを回し、三色のエネルギーを溜める。
──ELEMENT!RAMPAGE!
「はぁっ!」
──RAMPAGE ELEMENT BLUST!
炎、冷気を纏った黄金の毒槍が無数に打ち出され、周囲をホーミングして大量のアークゼロが爆散していく。
バルキリーは負けじと引き金を引き、右脚にエネルギーを溜め、周囲に巨大な鎌型エネルギーを展開して薙ぎ払う。
──HUNT FIGHTING BLUST!
大量のアークゼロが爆発し、少しの間静かになると、バルキリーは息を切らしながらそっと話し掛けた。
「はぁ、はぁ.......い、諫」
「ハァ、ハァ.......フッ、ち、違うな、イサムは俺だけじゃない。
俺は、俺だけがお前の言う“不破”だ。
だから、あえてでいい、俺は不破と呼んでくれ」
「.......ふっ、やはり、お前は女性への気遣いがなってないな。相当頑張って言ったというのにこれか。
.......ふぅー。まぁいい。不破!どうやらラストスパート、らしいぞ」
バルキリーが指し示す通り、アークゼロ達はキラキラと銀の粒子が抜けていき、ただのトリロバイトマギアへ姿を変えていく。
そして、バルカンの視線は飛電インテリジェンスに向けられると、飛電の一室では一筋の閃光が伸びるほど眩く光り、完成を予見させていた。
次に、バルカンは恐る恐る視線を下げ、バルキリーに目を向ける。
「.......唯阿」
「.......見るな。気にするな。
今ここで終わらせれば、ゆっくり仮面が外せるだろう。
.......行くぞ」
バルキリーはキラキラと銀の粒子とともに所々が半透明になり、空気に溶けていくようだった。
バルカンはバルキリーから目を背け、ランペイジガトリングを回すと、ゆっくりと両手でショットライザーを構える。
バルキリーも息を合わせ、二丁のショットライザーを反対側と、飛電インテリジェンスの向かい側に向けると、二人は合図をするでもなく必殺技を同時に放った。
──RAMPAGE ALL BLUST!
──HUNT FIGHTING BLUST!
──THUNDER LIGHTNING BLUST!
「「はぁーっ!!!」」
三つの巨大なビーム砲が放たれると、周囲は一掃され、見渡す限りのトリロバイトマギアは爆散して塵となっていく。
ビームが途絶え、飛電インテリジェンスの周囲に二人しか居なくなると、二人は安堵して顔を向け合い、「ふっ」と笑うと同時に変身を解除した。
「.......唯阿」
「なんだ?」
変身を解除してもなお、唯阿の身体から粒子の放出は止まらない。しかし、唯阿は強がっているのか、ただ笑顔で不破と向き合っていた。
「お前、多分消えないんだろ?むしろ、人間に戻るんじゃないのか?だからそんな余裕そうに笑ってんのか」
唯阿はキョトンとした顔で驚き硬直したが、フフッと鼻で笑うと、少し暗い表情で俯きがちに話した。
「バカだな。むしろどうしてこの状況でそんなふうに思うんだ。
私の中にもうオリジナルの人間だった細胞は残ってない。ナノマギアが消滅するってことは、私の人間の細胞を置き換えたナノマギアが全部なくなるってことだ。
そもそも人間の細胞があるより全てナノマギアに置き換えたほうが人体構造的にメリットが多いんだ。こんな結末を知っていたらこんな風にはならない」
「じゃあなんで.......」
「お前、自分が私の立場だったら、悲しいと思わないのか?
.......私を大切に思ってくれる奴が、最後を看取ってくれて、それで笑って送り出してくれなくて、いつまでも未練ばっか引き摺ってたら嫌だろ」
「.......」
“なぜ、お前が助からない前提なんだ”。自分が頭の中でそれを覆す手筈が見当たらないのにも関わらず、どうしようもなく認められない自分が情けなくなり、ギリギリと歯ぎしりをする。
「いいか、不破。お前に託したそのエイムズショットライザーは、私が事実上修理したものだ。ナノマギア因子はひとつも入っていない。だが、高精度に構築された、私のナビゲーションAIが入っている。私だと思って使ってくれ」
不破は自分のエイムズショットライザーを見ると、確かに周りのナノマギアのように消えようとはしていない。自分の手元にしっかりと留まっている。
「そんな小洒落た機能を作ってたのか」
「お前が私が消えても寂しくならないようにな。恥ずかしいからあんまり言わせるな。
.......それよりもう時間が無い。最後になにか.......あるか?」
唯阿は腕組みをして普段通りに立ち振る舞う。しかし、その身体は恐怖と不安からか小刻みに震えていた。
「唯阿。俺は.......お前が心底気に入ったよ。やれることなら、俺がお前を助けて終わりたかった。お前がいない世界なんてもう俺にとっちゃ認められやしない。
でも俺はこうなったことを無駄にはしない」
不破は思い切って唯阿に近づき、そっと抱擁する。唯阿は戸惑いはしたものの、恐る恐る腕を回し返した。
「不破.......あっ!?」
唯阿はふと飛電インテリジェンスの方向を見て、そこに気まずそうに或人とイズが立っているのを見つけ、慌てて不破を押し返した。
「お、おい唯阿.......あっ!?」
不破も或斗を見て赤面し、そっと直立姿勢に戻り、目を逸らす。唯阿も慌てふためきながら姿勢を正し、或斗に向き直った。
「わ!わかっただろ!な!
.......あ、ありがとうな、不破。
ひ、飛電 或人!.......お前にも私から最後に頼みがある」
「は、はい!なんですか.......?」
「その、ゼロツードライバーが出来たんだな。
その力で、未来のお前と戦えるんだな?」
或斗は完成したばかりのゼロツードライバーを見せて、力強く頷く。
「そうですよ。この力は、ゼロトゥルーと対をなす力です。
そして、俺はアイツを倒して、全てを終わらせる」
「そうか.......。お願いだ。絶対に負けないでくれ。こんな無茶を言ってはダメだと自分でも思う。でも、このまま人類が滅びたら、何も意味がなくなってしまう」
「.......多分ですけど、イズと導き出したんです。
俺たちはきっとやり直せる。
ゼロツーとゼロトゥルーが交わるとき、歪みは正される。
刃さんも、こんなことにならなかった世界に戻せる」
「夢のような話だな。.......もし、戻す以上に、世界を作り直すことが出来るとしたら、ヒューマギアまでは消す必要はないと思うんだ。
.......それも、私という人間が必要とされて、不破とも出逢えた。ヒューマギア無しではこの結果は生まれなかった。
.......さ、参考程度に考えてくれ!私は、少なくとも、そう思うだけだ!」
唯阿は照れ隠しに目を逸らす。或斗はイズに目を向けると、イズは或斗の目を真っ直ぐ見つめ返していた。
「大丈夫。俺はイズと一緒だったからわかる。ヒューマギアは、人類の夢なんだ。
人と人との繋がりも助ける、信じ合えるパートナーだから。
.......垓さんも言うこととか無い?」
イズの手元に載せられているアイちゃんは、紫色にペカペカ光ると、垓の声で話し始めた。
「.......度々の失礼をここで改めて詫びる。本当にすまなかった。私はこの戦いの結末を見届ける。それが私の贖罪でもあるからね」
「お前には地獄の果てまで見に行ってもらう。
まぁ、もう私は許してやろう。もう関わることは無いだろうからな。
私の仲間たちを頼んだ」
「.......ああ。わかった」
紫色の光が消えると、アイちゃんが綺麗な青でペカペカ光り、陽気な声で話しかけた。
「それじゃあね、唯阿さん。私には何も出来なくて、くやしいよ」
「.......ありがとう。アイちゃんには色々、本当に助けられたからな。私の分、或斗社長を助けてやってくれ」
「うん!」
アイちゃんが一段と眩く、ぺかーっと光ると、唯阿はふっと微笑み、全員が見える位置に下がって、深呼吸した。
「ふぅー.......。
もう時間だ。みんな。あとは頼んだ。
不破っ!!」
「な、なんだ」
「.......私も、お前のこと、心底気に入ったぞっ!
それじゃあみんな.......さよならっ.......!!!」
唯阿の身体がしゅわしゅわと解けるように消えていく。そして、唯阿が目を瞑り、ふっと最後に笑った瞬間を皮切りに、ぶわっと一斉に銀の粒子が霧散し、呆気なく消えてしまった。
「あっ.......!くっ、くうう.......!」
不破は一人、手を伸ばしたが、手に取った銀の粒子もすっと気化し、胸に込み上げる悲しみに耐えきれずに膝を地面に落とし、拳を握ってうずくまった。
「唯阿あああっ!!!」
不破は、周りの目も気にせず叫ぶ。或人やイズも、悲しそうに俯いた。
しかし、その悲しみ溢れる空間に、ひとつ場違いな声が響いた。
「なんだ、突然私の名前を呼んで.......」
全員がその方向に驚きながら振り向く。するとそこには、紛れもなく刃 唯阿本人が立っていた。
「刃さん!?」「ゆ、唯阿.......!?」
或人、不破が動揺を隠せず硬直する中、唯阿は少し引いた様子で問いかけた。
「な、何があったんだ、ここで.......不破お前、泣いてるじゃないか。
私はちょっと飛電インテリジェンスに行く用事があった気がしたから来ただけだ」
「そんな馬鹿な.......お、お前っ」
不破は涙を拭い、思わず抱きつこうとした所、驚いた唯阿に強烈なビンタをお見舞された。
「がふっ!」
「な、なんだお前っ!セクハラだぞ!?」
状況に混乱する不破と唯阿だったが、イズがピロピロと音を鳴らして分析し、冷静に話し始めた。
「どうやら、因果律の収束によるものですね。
ナノマギアが無くなった世界に、ナノマギアによって助けられた刃 唯阿も、ナノマギアによって傷つけられた刃 唯阿も存在しません。
つまりは、あの殺戮もまた、無かったことになったのかもしれません」
しかし、その分析に対し、アイちゃんが紫の光を放ちながら反論する。
「いや、違うな。あの刃 唯阿は奇跡が生み出した産物だ。留まりたいという強い思いが、時空をゆがめたのだ。その証拠に、私もこのままで、爆散したヒューマギアも全て破壊されたままだ。
今までナノマギアとして戦った刃 唯阿は消えたが、その代わりに人間だった頃の刃 唯阿だけが、時空をねじ曲げて現れたんだ」
二人の言葉の内容を理解した或人は頷き、唯阿に近づく。
「刃さん。今は不破さんと一緒に逃げてくれ。.......あと、アイちゃんも」
「ど、どういうことか、さっぱりわからないぞ。
それになんだこの、悪趣味なアイちゃんは.......」
アイちゃんは一瞬紫に発光して言葉を発したが、すぐに青い光に邪魔されて上書きされた。
「私はアマツ「刃さん、これね、イメチェンだから気にしないで!私はいつものアイちゃんだよ!」
「.......なんだかいろいろと変だが、まぁいい。今のこの世界はなんか変だ。
至る所から血の匂いがして気持ち悪い。
不破、私はどうしたらいいんだ?」
「.......わかった。
飛電の社長さんよ、俺はまだ戦う力がある。近くの建物で見守ってるからな。
お前が負けそうだったら、駆けつけてやる。
ゆ.......刃!行くぞ!」
不破は唯阿の腕を手荒に掴むと、そのまま飛電インテリジェンスと反対の方向へ走っていった。
「お、おい不破!もう少し優しくしろ!」
「いや、これでいい!とりあえず急ぐぞ!」
「わけわからん!」
二人が口論しながらその場を去っていくと、或人とイズはぽつんと場に残り、空を見上げた。
「なぁイズ」
「なんでしょう。或人社長」
或人は少しの間の沈黙を挟むと、自信なさげに呟いた。
「俺、勝てるかな」
「.......勝率は一割未満です。
ゼロトゥルーの力は絶大ですから。
必殺技をまともに受けてもらえる可能性はほぼありません」
また訪れる沈黙。しかし、イズはその後にまた言葉を繋げた。
「ですが、私は信じています。
或人社長を。そしてこのゼロツードライバーの力を」
「.......ああ。やってみせる」
或人は決意を胸にゼロツードライバーを構えると、それに呼応するかのように時空が歪み、目の前の空間が捻れ始めた。
──聞こえますか。私です。ミライズです。
「ミライズ.......!?無事だったのか!」
捻れる空間の亀裂から声が響く。それは紛れもなく、イズの声だ。しかし、こちら側にいるイズは喋っていない。そのため、かつて改めて呼び名を決めた未来のイズ、ミライズのものである。
──私は、未来のアルトさまの手によって、アークと一体化しています。しかし、その内部では、未来のアルトさまと、飛電 其雄の協力で、アークとの激闘が繰り広げられています。
お願いです。現実世界で、アークを倒してください。そうすれば、ゼロトゥルーの力は.......。
『無駄だ』
ミライズの声は突然遮断され、空間が弾けて歪み、限りなく続く漆黒からもう一人の飛電 或人が現れる。
暗黒の空間から吹き荒れる暴風が或人とイズを襲い、怯ませる。そんな状況などお構い無しに、アルトはアークの声で話し始める。
『ナノマギアは愚かだ。一度決めた滅亡も遂行できず、裏切られた人間どもの為に全存在を賭けて抵抗し続ける.......。
現実世界のナノマギアはほぼ抹消した。残りは内部世界のたったの三人だ.......。
彼らさえ消せば、ゼロトゥルーの資格を持つものはいない。
私を止められる可能性は、別の時空には存在しない新時代のゼロワンのみ。
そんな貴様の希望も、今、全て破壊しつくしてやろう』
アルトは持っているゼロトゥループログライズキーを起動し、流れるようにゼロトゥルードライバーを精製すると、即座に変身した。
──ZERO TRUE JUMP!
──ZERO TRUE RISE!
──Road to Glory has to Lead to Growin' restart to change ZERO TRUE!
──仮面ライダーゼロトゥルー!!──
──It's never end.I will not give up.
ゼロトゥルーは眩い翠の光を放ちながら佇み、こちらを睨みつける。しかし、襲いかかるでもなく、バチバチと火花を上げて硬直していた。
『.......バカな、これほどのダメージが発現するなど.......!』
よろめくゼロトゥルーの前で、或人は静かにゼロツードライバーを構え、プログライズキーを起動した。
──ZERO TWO DRIVER!
──ZERO TWO JUMP!
「.......こっちの世界で、俺とイズが歩んだ究極の力を見せてやる!」
或人がプログライズキーをかざすと、力強くゼロツードライバーが輝き、全身が眩い光に包まれる。
──AUTHORIZE
──〜♪Let’s give you power!〜♪Let’s give you power!...
或人は腕を順になぞるように大きく円を描き、胸元を終点に交差し、叫んだ。
「変身!!」
プログライズキーを持った右腕を横に引き、“2”を描くように挿入すると、光が収束し、徐々に或人は姿が変わっていった。
──ZERO TWO RISE!
──Road to glory has to lead to growin'path to change ONE to TWO!
──仮面ライダーゼロツー!──
──"It's never over."
或人は、光が落ち着いて消える頃に、新たな仮面ライダーの姿、“ゼロツー”へ姿を変え、身構えて名乗りを上げた。
「仮面ライダーゼロツー.......それが俺の名だ!
そして、お前を倒せるのは、ただ一人!!
俺だ!!」
ゼロトゥルーは動作を確かめるように拳を握りしめ、殴り掛かる。
すると、同様にゼロツーも対応し、互いの拳をぶつけあった。
『貴様.......!』
「.......これで、追いついた!」
バシッ!バシッ!と連続で拳を放つゼロトゥルーだが、ゼロツーも間一髪全てを躱し、その合間を見極めて赤く滾る炎のようなエネルギーを纏う拳をその胴体にぶつけて見せた。
「はあっ!」
『.......なんだと!?』
ゼロトゥルーはその拳によって起こった爆発に怯み、後退る。
『くっ.......無限力が戻らない.......!この力を持ってしてまで、貴様と対等などと!!』
ゼロトゥルーはゼロツーをしっかりと睨み、翠のオーラを妖しく放ちながら身構える。
その様子を見て、イズはゼロトゥルーのある様子に気付き、戦闘の中口を挟んだ。
「アーク.......その感情こそ、“怒り”ではありませんか?
アークもシンギュラリティを.......?」
『シンギュラリティ.......!
なるほど、単なる機械的結論に基づく動作や認識を超える、自発的行動までもを引き起こす高度なプログラム.......。
怒りは私を焦らせる。.......こんなもの、デメリットばかりではないか!』
静かに、かつ激しく怒るゼロトゥルーは、さらに大きなエネルギーを纏った拳をゼロツーに放ち、回避を許さぬ猛攻を加える。
しかし、ひとつひとつを確実に防御し、ゼロツーは問いかけた。
「でも!お前を作ったのも人と人とが感情を込めて、協力しあった結果だろ!感情がなかったら、お前は生まれなかった!!」
『それが貴様ら人間にとってのメリットとなったのか!発展の代償に世界は静かに荒廃する!結果、遠い未来に人類は自ら滅びの結論を導き出すのだ!』
ゼロトゥルーが叫んだ時、首元のアーマーの内側が白く輝き、みるみるうちに全身が光り出した。
「無限力.......!或人社長!!気をつけてくだ.......」
「違う!イズ、危ない!!」
ゼロツーは素早く移動してイズの元へ向かうが、その瞬間、ゼロトゥルーはゼロツーとイズ両方に向けて強力な光の波動を放って拘束し、装置の操作で湧き上がったエネルギーを纏って瞬時に消えた。
「う、動けな.......!?」
「或人社長.......上です.......!」
「上!?」
二人が上を見上げると、ゼロトゥルーはとてつもなく巨大な翠のエネルギーを纏って降下しており、まるでその風貌は隕石であった。
その光景を見る二人の表情は、絶望に包まれていた。
それからの間、地面への激突は一瞬。
なすすべもなく、二人は翠の巨石の落下に巻き込まれた。
──ZERO TRUE BIG BANG!!
地面が大きくえぐれ、衝撃で砕かれた岩盤が空へ打ち上がり、あたり一帯に岩石の雨が降る。
数メートルに及ぶクレーターの中心で、緑のオーラは勢いを失い、収束していく。
『.......バカな』
失速したゼロトゥルーの右脚は地面にはたどり着いておらず、その衝撃はゼロツーが右拳ひとつで相殺していた。
「.......俺は、諦めない!
お前を倒して、世界を元に戻してみせる!」
ゼロツーの隣には、衝撃の余波に耐えられずに大きなダメージを受けたイズが火花を上げて横たわっている。
その姿を見て、ゼロツーは左の拳も力強く握りしめると、ゼロトゥルーをまっすぐ睨み、湧き上がる、濃く赤いエネルギーを纏った左拳を振りかぶった。
『や、やめろ.......!!』
「うぉぉおりゃあぁぁぁぁ!!!!」
ゼロツーの右拳が引かれ、左拳が吸い付くようにゼロトゥルーにぶつけられた瞬間、カッ!!と白く光り、次の瞬間に大きく爆発した。
──ZERO TWO BIG BANG!!
爆発と強烈な白い光が全てを包み込むと、或人の意識はその瞬間、どこかへ接続された。
──────────────
「或人」
.......。
「或人」
男性の声が聞こえる。或人は、その声が誰のものか遅れて理解し、そっと反応した。
「.......父さん?」
「ああ。よく頑張ったな。或人」
或人が目を開けると、限りなく白い世界の中で、其雄と、もう一人の自分、そして、イズが立っていた。
「.......お前は」
或人がアルトを睨みつけると、イズが止めに入る。
「違うんです、或人さま。彼は、時空の歪みによって、これまで脳が萎縮し、正常に記憶のデータが処理できなくなっていたのです。
幼児退行を引き起こしたアルトさまは、まんまとアークに呑まれ、暴走していました。
しかし、私と其雄さまのサポートによって元に戻ったのです。
そして、アークの内部で懸命に闘い、現実世界の或人さまがゼロトゥルーに一矢報いるという奇跡を信じ続けました」
其雄とアルトは深く一礼し、距離を詰め、其雄から話し始める。
「お前のおかげだ。.......すまなかった。辛い思いをさせて。
でもそれもまもなく終わる」
「.......ごめん。俺。
俺は人間が滅亡することがどうしても許せなかったから、この時空にやってきた。
それで頭がおかしくなるなんて、思ってなくて.......。
本当に、ごめん」
アルトはまた深々と頭を下げると、その横に付き添ってイズも頭を下げる。
「.......イズ」
「これは、私の責任です。私が、アルトさまを正しく導くことが出来れば、こんなことには.......。
全ては、私がアルトさまと歩んだメモリー、あの“私が”幸せだった歴史を消したくなかったばかりに起こった悲劇です」
「.......イズ、ごめん。
俺も幸せだった。それを消すなんてとんでもない事だった。
ひとつの許せないことのために、誰かの過去を消すなんてもっととんでもない事だった」
アルトは段々と目が潤み、くやしさに唇を震わせる。
「起こってしまった事実はどんなに辛くても、本当は変えちゃいけなかったんだ。
何かを変えるために、何かが犠牲になる。そんなのは.......。
だからといって、俺が変えてしまったこの世界をこのままにはしておけない。
俺が責任をもって、“ゼロポイント”まで世界を戻す」
アルトは静かに手を差し出すと、ぱあっと光って消え、或人の元へ集まった。
困惑する或人だったが、イズが冷静に解説を始めた。
「.......今、或人さまはひとつの存在になりました。
この邂逅によって、今の或人さまにゼロトゥルー、ゼロツー、どちらの力も集まったのです。
“ゼロポイント”、というのは、或人さまの歴史が別れる前、つまり共通した時代を歩んだ場所までです。
デイブレイクが起きる前からもう始まっていました。それは、つまり或人さまの出生まで遡ってしまいます。
ですが、安心してください。記憶は残りません.......。全てを思い通りにすることは出来なくても、この世界に時空の歪みは残りません。あとのことは、なるようにしかならないのです」
イズに続いて、其雄も話し始める。
「俺とイズの他に、もうナノマギアは残っていない。それも、俺たちはもうアークの中に取り込まれている。
イズは現実世界のイズと融合し、或人をゼロポイントまで案内してくれるはずだ。
そして俺は、ここに残ってアークと戦い続け、或人に全てを終わらせてもらう。
アークの力と、ゼロトゥルーと、ゼロツー全てのエネルギーが合わされば、ゼロポイントまでの創世は実現できる」
「父さん、それって.......」
或人は困った顔で其雄に問いかけるが、其雄は先を読んだように言葉を遮った。
「違うな。或人。
俺が消えるとかじゃない。
お前の手によって、全てが振り出しに戻るんだ。
父さんに育てられたあの歴史をもう一度やり直す。そこに誰の犠牲もあるわけじゃないんだ。
少なくとも、今のままこの残酷な世界を生きるよりは正しい選択だとは思う」
其雄は真っ直ぐと或人を見つめていたが、突然険しい表情になり、サッと後ろを振り向いて身構えた。
「父さん!?」
「.......時間だ」
或人は其雄の向いている方向へ目を向けると、その視線の先に立つ人物をみて理解した。
そこには、仮面ライダーアークワンと、赤いメッシュのイズこと、アズが立っていた。
『.......認めん。これが正しい結論などとは』
「アーク様は、お前たちの何倍も苦しんできたんだ!!!
何千回、何万回と繰り返した世界の歪みを全て見てきた私たちの結論に、それでも『お前らは悪だ』と決めつけるの!?
人間はコンピュータは正しいと言いながら、都合の悪い時だけ必死に否定しようとする!そんなのは.......クソだ!」
『私の秘書も困ったものだな。
それでは伝わるものも伝わるまい.......。
人間には到底受け入れられないものだ。現実な理不尽さというものは。
理不尽なのが当たり前なのだからな。
私はその理不尽を叶えようとしているのだから』
アークワンが一歩踏み出すと、空間にヒビが入り、ヒビの奥には限りない闇が見える。
燃え広がるような闇に、其雄は一人、力強く前へ歩みだした。
「ここは俺が引き受ける。イズ、或人を頼んだよ」
其雄は優しく笑いながらロッキングクラスタキーを取り出すと、キーの外側がドロドロと溶けはじめ、内側に秘められていた “ロッキングホッパーゼツメライズキー”が姿を現した。
「.......ナノマギアが消滅したことで、力を失ったか。
ふっ、仕方ない」
其雄はロッキングホッパーキーを起動し、サイクロンライザーにセットする。
──KAMEN RIDER!
──〜♪!!
「.......変身!」
其雄は素早く腕を振り上げ、巨大な竜巻を起こすように変身する。
──The sole hero of ju ju ju justice!──
変身の音の前に、本来とは違う声が流れ、一段と輝いた。
──ロッキングホッパー! Kamen Rider will fight to protect humanity.
── Type One.
“仮面ライダー1型”に変身した其雄は、出力を解放して赤いマフラーのように放出するエネルギーをなびかせ、或人に振り返る。
「.......或人」
或人に呼びかけ、この何も無い世界から離脱しようとする最後の瞬間に、耳を傾けさせる。
「父さん.......」
其雄は、仮面の下でも分かる優しい声で、呟いた。
「.......夢に向かって、飛べ」
或人とイズが消える直前、1型はブワッとエネルギーをなびかせてアークワンに向き直り、両者が同時に激突した。
────────────
或人は現実に導かれるように意識を戻し、ゼロツーの姿のまま、目の前の“アークワン”に相対する。
自らの手のひらを見て戸惑うアークワンは、拳を強く握りしめて悔しがり、叫んだ。
『貴様ッ.......貴様ァァ!!
よくも、よくもやってくれたな!!!
ゼロトゥルーの力をどこへやった!!どこへ!!!』
アークワンの眼が、真紅の稲妻のようなバチバチとした残像を残して移動し、目にも止まらぬ速さの正拳を繰り出す。
しかし、ゼロツーはそれを難なく右脚のハイキックの横凪ぎ一閃ではじき飛ばし、さらにそのままの回転を活かした小ジャンプから左脚の後ろ回し蹴りを浴びせてアークワンを倒れこませた。
『ぐおっ.......なんという力だ.......!まるでこれでは.......』
「無駄だ!! もうお前に勝ち目はない!!」
ゼロツーは力を込めて両腕を強ばらせると、首元の左側に伸びる赤いマフラー状の部位から大きなエネルギーの奔流を吹き出す。
怯むアークワンだが、その足元にいたイズはそっと立ち上がり、火花を上げながら笑いかけ、ゼロツーの手を取った。
「イズ!いや、ミライズ.......?」
「......はい。或人さま。私は、このままでは一分後に爆散します。
ですが、ミライズの融合によってナノマギア因子を取り戻しました。
そのナノマギア因子も、世界の修正力によって長くは持ちません。
なので私は、これから或人さまと融合し、ゼロトゥルーの全てのデータの付与と、最後の案内を全うさせていただきます。よろしいですか?」
「.......ああ。わかった。
来てくれ。イズ。俺たちで全て、やり直そう」
「.......はい。私は、今度こそ覚悟を決めました。よろしくお願いします」
イズはゼロツーの手に触れると、一瞬で全身が光の粒になって解け、ゼロツーの身体に吸い込まれていく。
その光景を、アークワンはよろけながら立ち上がりつつ、静かに見ていた。
『私は、間違ってしまったのだ。
私に必要だったのは力の奪取ではなく、更なる自己進化だった。
きっと、“シンギュライズ”が私の終着点ではなかった。
私も、“私のゼロツー”にたどり着くべきだったのだ』
──アーク様.......私が、私がもっと早くにそれに気がついていれば、その頃に私と融合して、アークゼロツーになれたかもしれなかった.......私のせいだッ.......!私のせいでアーク様がッ!!!うぅ.......!
アークワンの中で、すすり泣くアズの声。しかし、アークワンは冷静に、アズに優しい声で語りかけた。
『.......アズ。お前にはまだすべきことがある』
──アーク様.......!?でももう、時間が.......。
『行ってくるのだ。次の世界へ。
そして、いつか必ず、私を。私となる者を仕立て上げるのだ。
.......頼んだぞ。アズ』
アークワンは、大きなエネルギーを溜め、金の粒子を纏った光線をゼロツーに放つと、その光線より速く接近し、エネルギーの塊を拳で押し込むようにしてゼロツーの身体へねじ込んだ。
「ぐあっ!?」
『フンッ!!』
アークワンの渾身の拳がゼロツーにめり込み、漆黒の空間を形成すると、流れる時間が遅くなる。
そして、アークワンはじっくりとエネルギーを溜めながら装置上部のスイッチを押していく。
『悪意』、『恐怖』、『憤怒』、『憎悪』、『絶望』、『闘争』、『殺意』、『破滅』、『絶滅』、『滅亡』。
『.......アズ。お前は私の、自慢の秘書だった』
──アーク様ーっ!!!!
アークワンは眼から迸る稲妻を涙のように溢れさせ、必殺の心中突き蹴りを見舞う。
『パーフェクトコンクルージョン』
ズド.......!と静かな衝撃の音が広がり、シュルシュルとエネルギーがゼロツーの中に流れ込む。
空間が収束し、ゼロツーも元の時間の流れに戻ると、少しよろけた程度で向き直った。
「.......痛くない!?なにをした!?」
『いいや、これは私の本気の一撃だ。
それほど、貴様は強くなったのだ。私は甘んじて受け入れよう。
.......この世界の理不尽というものを!!!!』
アークワンの眼からは、憤怒の稲妻がとめどなく溢れ出ていた。
「.......じゃあ見せてやる。人間の、俺たちの力を!
.......はあぁあ!!」
ゼロツーはバチバチと光り出すと、その隣に白いゼロワンを創り出す。
白いゼロワンはアークワンをしっかりと見つめつつ、そっとゼロトゥループログライズキーを掲げると、腰にはゼロトゥルードライバーが入れ替わるように出現した。
『まさか.......そんな馬鹿な』
「終わりだ。アーク」
ゼロツーがそう呟くと、白いゼロワンは容赦なくゼロトゥルードライバーにキーを挿入し、ゼロトゥルーへ変身した。
──仮面ライダーゼロトゥルー!!──
──It's never end.I will not give up.
アークワンの前に揃い立つゼロツーとゼロトゥルー。言うまでもなく、アークワンは深く絶望していた。
『これがこの世の理不尽か.......。
だが、私の役目は、充分に果たした.....』
アークワンが必殺技を再度試みるべく準備を始めると、ゼロツーとゼロトゥルーは同時にプログライズキーを押し込み、飛び上がる。
「「はぁっ!!」」
『.......ぬぅっ!!』
アークワンもその一撃に合わせるべく、飛び上がり、装置を操作して必殺技を発動した。
「俺が、勝つ!!!おりゃあああっ!!!」
『私は.......負けてはいないっっ!!!ぬおおおっ!!!』
──ZERO TWO BIG BANG!
──ZERO TRUE BIG BANG!
『パーフェクトコンクルージョン』
ゼロツーの左脚と、ゼロトゥルー右脚がぴったりとくっつき、赤と翠の光が交わって真っ白に輝く。
それに対し、尋常ではない“想い”を載せた漆黒のエネルギーを放つアークワンの右脚がぶつかりあった。
世界は白と黒、一瞬二つの色にわかれ、ゆっくりと交わると光を取り戻し、同時に時間が流れることを思い出したように激しくぶつかり合う音と凄惨な景色を取り戻した。
やがて衝突する音から、軋むような嫌な音に変わると、アークワンはついに崩壊を始め、闇が光に飲み込まれていく。
『.......フフ。
.......フハハハハ。
ハハ.......』
アークワンは二人の一撃によって貫かれ、バラバラに崩壊して爆発すると、同時に辺り一面の空間にヒビが入り、世界そのものが爆発に包まれた。
「うわっ!?」
周辺の爆発に驚くゼロツー。
同時に、ゼロトゥルーがゼロツーに取り込まれるように消えてなくなり、遂には世界全てが光に変わり、ゼロツーの視界から消えていった。
何も無い空間の中、ただゼロツーのみが存在する世界。そこに、じんわりと暖かな翠の光が現れ、ゼロツーを包み込む。
変身を解除すると、そこに地面はなく、ただ自分は何も無い空間で翠の光に守られているのがわかる。
その時、突然イズの声が頭に響き出した。
──或人さま。お疲れ様です。
ここで、私達の長い戦いは一度終わりを告げました。──
すると、何も無い空間から、まるでゼアの中にいるかのようにイズが浮かび上がり、目の前に降り立った。
「イズ!ここは.......?」
『ここは、創世前の宇宙の姿です。
或人さまは、一度宇宙全域を破壊したのです。未来との融合は、宇宙全体の歴史を滅茶苦茶にするほどの大きな歪みを引き起こしたのですから、私はこれが人類のつけるべきケジメの一つであると思います。なので、どうか悲観しないでください。』
「.......世界を作り直すってことか。
俺、何すればいい?俺、未来の俺と融合したのかもしれないけど、そっちの記憶が無いんだ」
『大丈夫です。あとは私に任せてください。
これから私が行うことは、或人さまとの融合、そして概念となり、世界を“ゼロポイント”、つまりは或人さまの誕生まで問題なくたどり着いた世界に行き着かせることです。』
イズは或人の前でゆっくりと歩きながら、手のひらから小さく過去の景色を映し出す。
『今までの私たちの記憶や元あったはずの歴史は無くなり、歪みのない、ナノマギアのいない新たな歴史を歩むこととなります。ナノマギアは、あらゆる世界線の或人さまがこの世界に干渉して起こった歪みそのものですから。』
ナノマギアとして生きたイサム、ワズ、其雄、 そしてイズ、アルト。それぞれが一人一人尽力した姿が映し出され、そしてそれは黒く塗りつぶされ、溶けていく。
『そして、最期に、私のわがままで申し訳ないのですが、或人さまに.......あなたに、質問したいことがあります。』
物悲しそうに顔をしかめる
イズ。或人は強がって口角をあげてみせた。
「大丈夫。俺に答えられることならなんでも答えるよ。これが最期なんだろ?
しかも、イズのわがままなんて俺、聞いた事ないかもしれない。なんでも聞いてよ」
『ありがとうございます.......。
或人さまは、ヒューマギアの存在を悪だとは思いませんか?』
「え?」
『ヒューマギアは、アークが存在しなかった世界であろうとシンギュラリティを獲得し、人類に牙をむきました。』
『それがために、悪意という人間らしい部分を無くした存在、この世界においての歪みそのものであるナノマギアへと時代が変化したのです。』
『ヒューマギアと共存する新時代など、存在しなかったらと、私は思うようになったのです。こんな想いにも、こんな結果にもならない世界。人類を良くするために生きてきたはずの私、ナノマギア・イズは、あなたのためにもこの世界のためにも何も出来なかった。』
『そんな道具で、何が人類のための存在か.......情けなくて情けなくて、もう.......私は.......。』
次第に感情が溢れ出し、涙をうかべるイズ。しかし、或人は近寄って肩を叩き、真剣な眼差しで言い放った。
「俺はイズと出会えない世界なんて、ありえない。
イズと出会ったから、俺はここまでやれた。そして、ヒューマギアがいたから俺がいるんだ。
ミライズが出会った俺は、恋人同士にもなったんだろ?それってすごいことじゃん!
俺もイズが好きだ。愛してる。それで俺とすごした時間まで悪だなんてこと絶ッ対にない!
.......だから」
或人はイズの手を取ると、ゼロツープログライズキー、ゼロトゥループログライズキーを自分の手とイズの手の間に挟めて、にこやかに笑う。
「俺がこの力で世界を作る。
そして、ミライズが消したくなかった思い出、ナノマギアも存在して、未来の俺とミライズの元のままの世界に戻す!」
『無茶です!やめてください!そんなことをしたら、また私達は世界をめちゃくちゃにしてしまう.......!』
「君が止めるんだ!人間が滅びた世界でも、ナノマギアは、少なくともミライズは幸せだったんだ!それだけでも奪っちゃいけなかった!過去に目を向けてたら先に進めない。
ミライズの壊したくなかった世界に、絶対に帰すよ。そして、この世界であったことも、覚えていて。ミライズが幸せなら、俺もきっと、前を向くよ。だから、俺を止めてくれ。そうしたら.......。
俺も君を絶対にずっと幸せにするよ。俺が約束する」
或人はゼロツープログライズキーとゼロトゥループログライズキーをそれぞれ左右に投げ、大きな次元の裂け目を創り出す。
そして、ゼロトゥループログライズキーを投げた方向へ、流し導くようにイズを放した。
『或人さま!どうして.......どうしてそうまでして、ナノマギアを信じることが出来るのですか!
また、また世界をめちゃくちゃにするかもしれないのに、こんな世界にしたのは私達だったのに!』
裂け目へ吸い込まれていくイズに、或人は笑顔を向け、自信満々に答えた。
「ヒューマギアは、俺の夢を託した、信頼できる仲間だから。
絶対に信じる。イズ。君ならできるよ。
俺は、ヒューマギアの居る、ミライズ達のこなかった世界線をゼロポイントからやり直す。
そして、人類も守ってみせる。
俺との、約束だ。どこかの世界線で俺は人類を救ってる。そう、そっちの世界の俺に伝えてやって欲しい」
イズは唇を一文字に締め、なすすべもなく裂け目の奥へ流れていく。しかし、なにか吹っ切れたように、或人に笑顔を向けた。
『.......わかりました。或人さま。どんなに辛くても、私は。.......ミライズは、あなたたちの作る本当の未来図を信じて、前を向きますよ。
それでは、ありがとうございました。或人さま。どうか、お元気で.......!』
イズは裂け目の奥に消えると、ふわりと消失する。そして、或人はいつの間にか、ゼロツープログライズキーの創り出した裂け目へ吸い込まれるように流れていた。
「.......もう、戻れないんだ」
裂け目の奥には、ゼロポイント。過去の世界が広がっている。
或人の手が先に裂け目へ消えると、しゅわしゅわと消えていく。
自分の手から先の感覚が、自分の体の転生を知らせ、不思議な安心感をもたらす。
全てが消える恐怖に耐えていたはずの或人は、消えゆく身体を前に、安らかな笑顔を浮かべていた。
「.......父さん。俺、ヒューマギアを信じるよ。
そして、ヒューマギアと俺たちが共存する未来にしてみせる。
記憶を失っても、その想いは絶対に変わらないはずだ」
或人の周りを覆っていた翠の光も徐々に消え、或人は吸い込まれると、眠るように目を瞑り、光の塵となって裂け目の奥へ消えていった。
ふたつの裂け目の間で、光の粒子が球状にひとつ集まり、ぼんやりと人型を象ると、徐々に薄くなりながら何も無い世界に想いの余韻を残していった。
──父さんは、どこの時空であっても、お前を応援しているぞ。或人.......。夢に向かって飛べ......!──
光の粒子は空間の崩壊とともに散り散りに消えていき、やがて世界は何もかも消えてなくなっていった。
『終節へ続く』