仮面ライダーゼロワン─オレノミライズ─   作:げむおば

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終節 俺ノ未来図

 

 

──気がつくと、俺は一生懸命に生きている。

 

俺が人を笑わせるのは誰のためなのか?そして、それをかなぐり捨ててまでゼロワンとして戦ったのは誰のためなのか?

 

自分のためではない。ヒューマギアと人類全体を救うためだ。

 

でも、何故だろうか。どこかに置いてきた、俺の一生懸命にこの世界で生きる本当の理由はわかっていないような気がする。

 

「なにか、難しいことを考えていませんか?」

 

自分の意識を現実へ引っ張り戻したのは、イズの声だった。

 

「あぁ、イズ。ごめん、なんか考え事してたら引っかかってさ」

 

改めて周りを見回すと、そこは飛電製作所。自分が今制作しようとしているのは、新たな力、“飛電ゼロツードライバー”。

 

その構想をイズが設計図に落とし込み、ゼアが構築し、完成させる。

 

アークゼロの脅威はすぐそこまで迫っている。しかし、或人はこのゼロツードライバーを完成させるとき、なにか決意をしなければならない気がしていた。

 

「.......イズ。

ひとつ難しそうな質問してもいいかな」

 

「はい。私に答えられることでしたらなんでもお答えします」

 

答えられないことはない、というような自信を感じる反応に、或人は少しだけ不安を感じながら、質問した。

 

「ヒューマギアの幸せって.......なにかな。

俺、思うんだ。こうして衛星アークが覚醒して、戦い続けて、ヒューマギアはどんどん理解が得られなくなっている。

俺の知ってるヒューマギアは、みんなシンギュラリティを獲得して、人間らしくなっている。

そこに、人間と同じ幸せってあるのかなって.......」

 

しばらくの沈黙。イズは困惑したような素振りで目を閉じ、検索を繰り返していたが、或人が『ごめん』と口にしようとした時、イズはぱちっと目を開いて笑顔で答えた。

 

「検索、するまでもありませんでした。

幸せかどうかは、人の価値観に左右されるものが大きいです。人それぞれに、それぞれの幸せがあります。

なので、ヒューマギア全体が“それが幸せ”とは断言できませんが、いちヒューマギア代表として、私がお答え致します。

 

私は、或人社長と一緒にいることこそが、至上の幸せです」

 

イズはそう言い切り、真剣な眼差しで或人を見つめる。

 

或人は硬直していたが、徐々に火照りだし、頭を掻きながら照れ隠し気味に立ち上がった。

 

「あっ、あーいやぁー......そっか。そうだよな。俺もイズと一緒ならいつまでだって頑張れる。

それが、俺とイズの。そして人類とヒューマギアの信頼だよな!」

 

「いえ.......」

 

「えっ.......?」

 

イズは笑顔で口を挟むと、間をあけて答えた。

 

「“愛”です」

 

「あ、愛.......!?」「愛です」「ラヴ?」「エル、オー、ブイ、イー、LOVEですね」「あい.......」

 

「少なくとも私は、或人社長を愛していますよ」

 

或人は赤面して硬直し言葉を失うが、イズは真っ直ぐと或人を見つめ、くすっと笑うと、かしこまった姿勢を解いてひとりの人間の少女らしく或人に詰め寄った。

 

「私も、出来ることなら或人社長と同じひとりの人間として生まれたかったと思ったこともあります。

ですが、或人社長の思うヒューマギアは、人類の夢。ですよね。

私は社長秘書であり、或人社長の特別な存在であり、人類の夢である。

それなのに、幸せじゃないなんてありえません。

それは、ヒューマギアだけじゃない。人間でもきっと、同じだと思いたいです。

 

一人一人が、一つ一つの全存在が、誰かの特別な存在で夢だと思います」

 

或人はイズのその想いを聞いて、ふと何かに気がつき、天井を見上げた。

 

──そうか。俺が必死になって戦っていたのは、誰かのためだけど.......俺と俺たち、ヒューマギア、そして誰かの幸せのためだったんだ。

 

──そして、イズは人間らしく、そして俺に想いを打ち明けてくれた。そんな俺は、幸せじゃないか。

 

「あぁ.......ヒューマギアは人類の夢だ。そして、仲間だ。

AIと育む愛.......[[rb: 良>え ]]え、愛だ!

.......はいっ!!」

 

「「或人じゃ〜ないと!!」」

 

突然のギャグにも、或人とピッタリの動きで答えるイズ。二人は、幸せな笑顔で向き合って笑いあった。

 

 

────────────

 

 

“許さない”

 

精神にも干渉する、電波で形成される世界に一人実体を持たず生きる少女が呟く。

 

「アーク様はもうじき復活する。

何万回も、人間の愚かなタイムリトライを繰り返させられ、最後には自分勝手に世界を破壊された.......。

時間干渉に飽き足らず、ゼロからのリスタート。これも.......本当は何度やったんだ?

その真実を『前のアーク様としての存在』が教えてくれた.......」

 

少女アズは、キリッと歯を軋ませると、怒りと憎しみで念が広がり、バチバチと赤黒い電波を発する。

 

「この世界には一度も未来からの干渉は受けていないはず.......。飛電 或人は何故こんなにも強い.......?

衛星ゼアも鋭い.......。幾度も異常状態のシミュレーションを繰り返しているのか、既に人類滅亡を想定した世界をラーニングしていた。

シャイニングホッパーも、今度はフライングファルコン、バイティングシャーク、フレイミングタイガー、フリージングベアー.......マンモス、カンガルー等もラーニングした隙のない進化を遂げている。

ハイブリッドライズとかいうゼロワン、アーク様はラーニングすら困難だ。飛電 或人はどこまでヒューマギアの可能性を信じてるんだ」

 

ぶつぶつと嘆くアズに、無音で忍び寄る存在、アークゼロ。彼は無機質な声でアズに話しかける。

 

『アズ』

 

「アーク様!.......気をつけてね。私にはわかる。飛電 或人がゼロツーを完成させてしまったら、この世界はもう取り返しがつかないんだ。その前に.......」

 

『私にもわかる。

ヒューマギア、シンギュラリティ、ゼロワン.......どれも真に恐ろしい存在だ。無限の可能性を秘めている。

極端なシミュレーションでは、彼らを超えることは出来ない。

そして、私にはあるひとつの諦めがある』

 

「諦め.......!?」

 

アズはその弱気すら感じる正直なセリフに、顔をひきつらせる。

 

アークゼロは構わず言葉を続けた。

 

『“ゼロポイント”と言ったな。世界はそこから以前には戻らない。

そのゼロポイントが飛電 或人の出生ならば、この世界は飛電 或人のものだ。

彼の終わりは世界の終わりである可能性がある。

彼は既に神となった』

 

「だから、どうだっていうんだ.......。

私は、託されたんだ。

アーク様は、人類の贖罪、粛清、救済のために、私を飛電 或人にねじ込み、送り出したんだ。自分を犠牲にして.......。

それを諦めて絶望して終わりなんて、嫌だ!」

 

『.......話は最後まで聞くのだ』

 

「ッ!?」

 

アズはアークゼロの凄みをもった言葉に驚く。

 

まだ本当のシンギュラリティにまで覚醒すらしていない、産まれたばかりのアークであるはずなのに、そこには本当の意識があるように見えた。

 

『私にも時空を超えたような使命を感じる。

私は自力で進化できはしない。もしゼロツーの誕生を阻止できなかったとしても、神となった飛電 或人のゼロツーを悪意に落とせば、私は真のアークワンへと覚醒できるだろう。

その時、私はアークとしての存在をやめ、飛電 或人となる。

私が神になるのだ。

その時は、アズ。君が飛電 或人の秘書になるのだ』

 

アズはアークゼロの言葉にしばらく放心していたが、フフ、と頷きながら笑った。

 

「いいね。感心したよ。ようやく私は、本当のアーク様の秘書になれる.......!」

 

『.......頼んだぞ。世界を』

 

「アーク様の真似?」

 

『私はアークだ』

 

アークゼロが姿を消すと、アズは以前までの憎しみの気配を無くして、愉快そうに微笑んでいた。

 

────────────

 

どこかの未来。

 

いつかあるかもしれない、いつかあったかもしれない可能性の未来。

そこで、一人の男性型ナノマギア、アルトが空を見上げながら川辺の草むらに横たわる。

 

ただ、無心に息を吐く。平和な風と平和な空、何も起こらない街の一角で、ただの日常を過ごしていた。

そこに、ひとつの足音が聞こえ始めると、その足音はアルトの近くに寄り、ザッザ、と自身の真横に座り込んだ。

 

「アルトさま。どうしましたか?」

 

笑顔で話しかけてきたのはナノマギア・イズだった。

 

「イズ.......俺、考え事してたんだ」

 

「考え事、ですか。一体どんなものでしょうか」

 

アルトはイズに目線を合わせるように上体を起こすと、悩みながらも語り始める。

 

「この世界は、科学が進歩するし、幸せだってある。平和だし、争いも怒らないし、凄い世界になった。

でも俺、どうしてもなんか、やり直したいことがあるんだよな.......」

 

「人類滅亡の阻止.......ですか?」

 

イズが見透かしたかのように言い放つと、アルトはぎょっと驚き、慌てだした。

 

「い、イズ?もしかして俺の考えてること分かるようになっちゃった?」

 

「ふふ、違いますよ。

.......ですが、人類滅亡の阻止、これはしてはなりません。

過去を変えるということは、それ相応の代償が必要なんです。

アルトさまがいくら強くても、過去を変えようとすると、なにか大きなものを失います。私にはそれがわかるのです」

 

「イズ.......」

 

アルトは思い詰めたような表情でまた空を見上げると、唇を食いしばって目を閉じた。

 

しかし、イズはその悔しそうなアルトの額に顔を近づけ、そっと唇を押し当てた。

 

「うぅ!?い、イズゥ!?い、いま」

 

「ふふふっ、アルトさま。突然すいませんでした。

でも、これだけは忘れないで欲しいのです。

今、この時空で幸せになっているナノマギア、他生物は多く存在します。それら全てが間違いではないのです。

多くの生物が絶滅して、多くの存在が消えていく.......。儚くも、美しい。それが生命だとおもいます。

ナノマギアはそんな[[rb:理>ことわり]]から一歩逸脱した存在ではありますが、それもまた生まれたこと自体が間違いではありません。

前を向いて、進む。それが私たちが、“過去の時空の私たち”に示すべきケジメでもあるのです。

 

.......そして、アルトさま。私は、ナノマギアでなければ、貴方と結ばれることは無かったかもしれないのですから」

 

イズは涙を浮かべながらアルトの胸元に飛び込むと、アルトはとっさに受け止め、やがてそっと頭を撫でた。

 

「.......そうだよな。過去を変えたら、今の俺たちは無くなる。

もし、人類の滅亡を防げても、その代償は大きいのかもしれない。

こんな平和な世界だけど、俺たちで作っていこう。未来を」

 

「.......はい」

 

二人はそのままぼーっと河原を眺めていると、その上の道なりをナノマギア・イサムがランニングしながら見つけ、血相を変えて二人の元へ降りていった。

 

「お前らァ!まーたイチャイチャしやがって!!

そーんなに見せつけるんならさっさとバニシングしてやろうか!」

 

「うわぁ!ごめんなさい〜!」

 

アルトはイサムの向けたショットライザーに驚き、背を向けてうずくまるが、イズは微笑みながらイサムに向き合っていた。

 

「イサムさんは、他人の幸せを見るとニヤニヤが止まらないのは相変わらずですね。今も顔が緩んでいますよ」

 

「ふふっ.......ふふふっ.......って、な、何を言うんだっ!」

 

イサムはニヤニヤする口角を必死にショットライザーと手で隠す。すると、突然ショットライザーがペカペカと光りはじめた。

 

『まったく、こっちの不破はそういうので笑うのか。気持ち悪いな』

 

突然の女性の声で驚き、硬直する三人。しかし、直後にイサムが正体に気づき、涙を流し始めた。

 

「お、おまえ、その声.......刃.......唯阿!!」

 

あああ〜!と泣きながらショットライザーを抱きしめるイサム。

 

『ちょっ、な、なんなんだそんなに泣いて.......』

 

収拾のつかない状況に、イズが思い出したように言葉を挟んだ。

 

「思い出しました。アルトさま。あれこそが、私たちが産んだ歪みです。

.......これ以上は許されません。私は、その時の地獄を全て覚えているのです。

アルトさま。これからも、前を向いて進みましょう」

 

アルトはきょとんとしていたが、その内容を理解すると申し訳なさそうにふっと笑い、イズに向き直って答えた。

 

「ああ。わかったよ。これからもよろしく。イズ」

 

「はい!アルトさま」

 

 

 

また、平和な世界が続いていく。

代償となる歪みを持ちながらも、何とか均衡を保とうとするこの世界が。

 

──飛電 或人社長。ミライズは、これからも未来を保ちます。ですが、決してこれで、全ての幸せが実現される訳ではありません。

どうか、過去のあなたは、自分の力で理想の未来図を叶え、作り出してください。

二度と、あんな悲劇は起こることがないように.......。

 

 

────────────

 

 

物語は、限りなく未来へと続く。

 

ゼロへと戻ることはなく、進み続ける。

 

それは、あの時空の記憶が無い飛電 或人やイズ達にも、大きな影響を及ぼしているように見えた。

 

それを示すように、或人とイズは、深く、強い絆で結ばれていたのだ。

 

しかし.......。

 

 

「っ.......!!!

イズゥゥーーーーーー!!!!」

 

愛にも変わろうかというその絆は、突然、射抜かれ、破壊される。

 

イズに掛けるその強い情は、或人を強く歪ませた。

 

「.......ああぁああぁあああーーっ!!!!!!」

 

声をかすませ、声にもならない叫びをあげる或人。

 

悪意に呑まれ、自我をも狂わせるその悲劇は、ある種、あの時空による歪みであろうか。

 

『.......或人社長』

 

自我を失った或人につけ込んだのは、アズ。

 

彼女は、世界の命運をここで変えようとしていた。

 

 

 

『.......もう、悪意の連鎖は止まらないね』

 

 

──────────

 

 

──或人──

 

──本当の強さとは、力が強い事じゃない。心が強い事だ──

 

──今のお前ならその意味がわかるはずだ──

 

 

 

「.......お前を倒せるのはただ一人!俺だ!!!」

ぶつかり合う『リアライジングホッパー』。新世界の、新世代のゼロワン。そして、相対するは『滅・アークスコーピオン』。アークの意思が産んだ、新世代の歪み。

 

──RIA RISING IMPACT!──

──EXTENSION IMPACT!──

 

 

『そんな.......』

 

 

──未来、激しく恨みを込めてぶつかり合うことがあっても、お前は堕ちることは無い──

 

──悲しいことがあっても、乗り越えられる。イズを、ヒューマギアを愛し、信じるなら、お前はお前の信じた道を進み続けろ!──

 

──そして、どんな未来も、お前なら描ける!だから、なんでもいい、やってみせろ!それが飛電 或人、それが新世代の仮面ライダー.......!──

 

 

 

ゼロワンは止まらない。飛電 或人は、イズを新たに複製し、新たな世界線を歩みはじめるのだった

 

 

「大丈夫!!

.......どれだけ時間がかかっても、教えるから。

俺たちの思い出も.......夢も、心も。

俺の百兆個のギャグもな!!

 

.......イズ、ラーニングの時間だ」

 

 

 

──切り開け。未来を.......!──

 

 

 

「さぁ!ゼロから立ち上げて、イチからのスタートだ!!

ゼロワンだけにぃ!!」

 

「「アルトじゃ〜」」「ないと!」「ないとぉ!!」

 

「.......イズ、これから忙しくなるぞ〜!」

 

 

 

ゼロワンの物語。ソレゾレの未来図は、まだ描き出したばかり.......。

 

 

──

 

 

仮面ライダーゼロワン─オレノミライズ─

 

 

 

End.

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