火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
高尾和成、『鷹の目』と呼ばれるコート全域を俯瞰できるという能力を持つ。これが意味することは、黒子のミスディレクションを受けたとしても、常に全体が見えているため見失うことがないということである。だが、黒子もこの『目』の対策をしていない訳ではない。なぜなら同じチームに同系統の能力を持つプレイヤーがいるからである。それが伊月俊、『鷲の目』と呼ばれる彼の能力は、範囲でこそ高尾に劣るものの、見えている空間をより正確に把握することができる。そして本来、黒子の『目』対策は一度自分に集中させることで視野を狭めるというものだったが、この世界においてはそんな遠回りは必要ない
「黒子!」
伊月は、マークを振り切れてない黒子にパスを出した
(なんだ?焦って判断ミスったか?まあいい、スティール…!?)
高尾の目論見は叶わなかった。彼の見えすぎる『目』は、気づいてしまった。自分の進行方向に壁があることに
「火神!?なんでスクリーンに!?」
黒子のパスは日向の手に渡る。得意のスリーを沈め点差を広げた
「…まさか、お前も持ってんのか」
「こっちのセリフだよ。こんなホイホイいるもんかね…、伊月先輩だけでもびっくりしてたんだぜ。俺の場合は結構集中しないとできないしな」
ギャラリーにいた、奇跡の観察眼の持ち主も今起きたことの意味を理解していた
「ま、やっぱそうっすよね。あんにゃろ、視野が広いとかそんなレベルじゃなかったんすね。持ってるんだ、コートを俯瞰できる目を」
「まじかよ、それは秀徳にとっては最悪だな。黒子を完封できる予定が崩れた訳だ」
「まあ、いないよりはマシだと思うっすけどね。鷹、鷲ときて今度は何になるんすかね」
「何でもいいだろ、そもそも鷲が『空の王様』って呼ばれてんじゃねえか」
「なるほど、誠凛には王様が二人いるんすね」
笠松の指摘通り、ここから秀徳の流れは徐々に悪くなっていく。まず緑間、シュートを打てる状況が作れない。単に身体能力的にも追いつかれるという不利な状況だったのだが、その上火神はスクリーンの位置や他のプレイヤーの動きも完璧に見切ってくる。大坪にボールが入った時はある程度形になるのだが、それでも要所で黒子のスティールが飛び出してターンオーバーを重ねていく。ディフェンスは更にひどい。火神が直接にボールに絡む機会は少ないのだが、黒子の変幻自在のパス回しだけでも十分な脅威である。本来は止められていたかもしれないが
(くそっ、いるだけだってのに何て威圧感だよ…。火神大我…)
そう、真に優秀なエースは使われなくても強い。オフボールランやスクリーン、時にはパス回しにも参加した。更にここで、誠凛ベンチが動く。水戸部に代えて土田を投入した
「23番の次にタッパがある8番を代えた?ぱっと見180はなさそうだが…」
「カントク、本当に大丈夫なんですか?」
「ええ、高さこそないけど平面のディフェンスなら土田君は抜群よ!火神君がインサイドに参加できない以上、そこに入れられたらどうせ勝てないなら割り切っちゃった方がいいわ!」
この作戦が功を奏した
「くっそ、何だこいつ、全然押し込めねえ…」
「どうした?そんなもんかよ!!」
「木村!よこせ!!」
木村から宮地へのバンドオフ…だが
「な!抜けねえ…っ!」
「その程度で俺を抜けると思ってたのかよ。舐められたもんだな!!」
ディフェンスにおいて一番重要なものは何か。パワー?スピード?連携?全て違う。答えは気合である。断じてふざけてる訳ではない。バスケットボールは他の球技に比べて一試合で入る得点の量が極端に多い。故に、どうしても守備に全力で打ち込める選手は少ないのだ
◆◇◆
「なあ、火神。俺がチームの力になるには何をしたらいいかな?俺、バスケは高校からだし、背がべらぼうに高い訳でもないし、シュートも得意じゃない…何かできること、ないかな?」
「でも、土田先輩リバウンド取れるじゃないっすか。体の強さとか、スクリーンアウトとか色々できなきゃ…」
「それじゃ意味ないんだ。前にちょっと話したけど、今は怪我してるんだが木吉っていうCがいるんだ。あいつは俺なんかよりリバウンドもゴール下の技術もずっと高いし、タッパもある。それにお前がいれば、これ以上リバウンドしかできない選手なんていらないだろ」
「…なら、ディフェンスのスペシャリストはどうっすか?」
「ディフェンスの?」
「はい。向こうのプロにもいるんすよ、得点力は無くてもとにかく守備で貢献するプレイヤー。正直、今の誠凛はディフェンスが得意な選手はいないので、その木吉先輩が帰ってきてもGからFにつけるディフェンダーは絶対必要っすよ」
「…なるほど、それなら俺でもやれるかも知れない…。火神、俺に守備を教えてくれ!」
「うっす!まずはとにかく気持ちっすね!そこだけは負けないようにしましょう!!」
◆◇◆
「まあ、悪かねえけどよ、俺を抜きたきゃ火神くらい気合入れな!」
「…土田、なんでディフェンスの時だけあんな感じになるんだ?」
「それは…本当に申し訳ないっす」
根が優しい土田は火神の教えを受け、コート上では人が変わったようになってしまった
(こうでもしないと、俺は気持ちで勝てない…!)
「火神?」
それはともかく高校トップクラスの突破力を誇る宮地を、土田は完全に抑えていた。そして、見せた一瞬の逡巡を刈り取る
「っ!しまった…っ!」
「頼むぞ!!火神!!!」
(やっぱり、バスケは面白え!少し前からは信じられないくらいレベルが上がってる…!…パスは酷いけど…)
火神のダンク。普通では取れないようなすっぽ抜けたパスだったが、火神なら何とか届いた
「ナイスカバー!火神!!」
「うっす!ナイスディーです土田先輩!」
パァン!とハイタッチ。かつての自信なさげだった土田はもういない。自分の仕事をこなす職人の目だ
「あの9番、抜くにはかなり骨が折れそうだ」
「そんなにっすか?」
「ああ、最高速度はそこまでないかも知れないが、反射神経と瞬発力がある。だからきっちり食らいついてくるんだ。それに、多分自分が攻撃に絡むことはハナから考えてねえな。ディフェンスに100%注ぎ込んでやがる」
「…モン太みたいっすね」
「それより、絶対的なCがいないからってのもあるかも知れないが、機動力重視のスモールラインナップは、今後も誠凛の武器になるかもな」
序盤とは打って変わって誠凛が押し込む展開。気づけば前半終了間際にして既に17点差がついていた
(まずいな…。このままでは手詰まりだ。俺がここまで仕事をさせてもらえないとは…)
「おい、緑間」
「…なんだ?試合中に」
「何でお前は絶対入るシュートしか打たねえんだ?」
「その方がいいからに決まっているだろう。100%入るシュートとそうでないシュートなら前者を選ぶに決まっているのだよ」
「馬鹿こけ、効率厨っぽかったのに頭悪いなお前。いいか?100%入るドフリーのレイアップが2点だろ?てことはスリーが2/3で入ればそれで同じ効率なんだぜ?じゃあもっと厳しいシュートも打てばいいじゃねえか。そもそも今の秀徳はまともに2点も取れてねえんだからよ」
「…!なぜ、お前はそうやって敵に塩を送る。今から寝首をかかれても知らないのだよ」
「はっ!それでも勝つ自信があるからに決まってんだろうが。黄瀬のやつは自力で壁を破ったけど、お前はどうも頑固そうだからな。一皮剥ける手伝いくらいはしてやるよ」
「まったく、本当になめられたものだな。後悔させてやるのだよ」
「やれるもんならな」
大前提として、キャッチアンドシュートですらスリーを2/3で決める選手などいない。だが、コートのどこからでも100%とという異次元の精度を誇る緑間真太郎なら、シューターとして新しいステージへ行けるのかもしれない
次回、精密機械は天才に戻る
火神君の目、アイデア募集中です。活動報告まで是非
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
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あえて守備にブッパしたスティール王
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