火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
決勝リーグ進出を決めた誠凛高校。一部部員にとっては難関だった定期試験もなんとか突破し、決勝リーグに向けての準備を始めていた
「決勝リーグの日程、決まったわよ!初戦は桐皇学園!」
「まーた『キセキの世代』か」
「正直疲れるよね」
「間違いない」
「でも、楽しみっすね!『キセキの世代』のエース、どんなやつなんだろう…」
哀れ火神、自分とは絶望的に合わない人間のことを、あろうことか楽しみにしてしまっていた
◆◇◆
誠凛高校には、体育館が使えない日にプールを借りて体力づくりをする習慣があった。プールでのトレーニングは重力の影響が少ない為、負荷が陸上とは異なるものになり、鍛えづらいところを鍛えることができるのだ。現在は絶賛スクワット中である。ちなみに浮上する時にも水の抵抗がかかる為めちゃくちゃきつい。そんな中、聞き慣れない声が屋内プールに響いた
「面白い練習ですね」
ほとんどの部員の口付近まで水位がある為、ピュアな男子高校生達は思いっきり水を吹き出した。女性的な魅力に溢れたそのスタイルを惜しげもなく晒すビキニスタイルの水着を着た美女がそこにはいた
「桃井さん?」
「黒子知り合い!?」
「…どちら様?」
「えっと、なんて言ったらいいのかな…。テツ君の彼女です。決勝リーグまで待てなくなって来ちゃいました」
「…テツ君?」
「黒子テツヤ君」
「「「「「「どえええええええ!?!??」」」」」」
「へえ、案外良い女捕まえてんだな。黒子」
「違いますよ火神君。中学時代のマネージャーだった人です」
(決勝リーグってことは、次の対戦校なの?)
「あ!テツ君!!久しぶり〜、会いたかった!!」
そしてハグ。何とは言わないが形が変わるほど押し付けられていた
「苦しいです。桃井さん」
(((((何が何だか分からんが、黒子死ねば良いのに)))))
部活に励み、恋愛を切り捨ててきた漢たちの悲痛な心情である。ちなみに土田はめちゃくちゃ可愛い彼女がいる。火神は精神年齢的に同世代を恋愛対象に見れていない
「ちょ、なんで黒子?冴えないし薄いしパッとしないし」
とうとう口に出てしまった。モテない男は辛い
「え、そこが良いんですよ〜。でも試合になると別人みたく凛々しくなるところとか、グッときません?」
ここでは口にしなかったが、好意を持つきっかけになったのは黒子がアイスのあたり棒をくれたことだったりする。断じて安い女ではない
「だから…ほんとはテツ君と同じ学校行きたかったの…。けど…けどっ!!」
「桃井さん、プール内は響くので大声は控えてください」
「全く、なによ。ちょっと胸が大きくて可愛いからって、みんな慌てすぎよ。ねえ日向君?」
「…うん。そうだね」
視線は完全にあらぬ方向へ向かっていた。どことは言わないが
「チラ見してんじゃねえ!!」
「ぐぼぁ!」
強烈な右フックが日向の左頬を打ち抜いた。その勢いは日向がプールに落下するほどである
「日向さん死んじゃいますよ!」
「え、なんで俺の名前を?」
「知ってますよ〜。誠凛バスケ部キャプテンでクラッチシューター、日向さん。『鷲の目』を持つ司令塔、伊月さん。無口な仕事人でフックシューター、水戸部さん。野生的な守備職人、土田さん。流れを変えるオールレンジシューター、小金井さん。…『王様』火神君。そして、ギリギリBの監督リコさん」
「ふっざけんなぁあ!!!」
「…『王様』って言ったか?なにそれ」
「知らないんですか?『キセキの世代』をねじ伏せた、アメリカ帰りの超新星。攻守共に試合を支配することから『王様』って呼ばれ始めてるんですよ?火神大我君」
「へえ、『王様』か。なんの因果かねえ」
火神は内心喜んでいた。憧れ続けたあの人と、同じ二つ名がついたのだから
「…桃井さん、やっぱり青峰君と同じ所に行ったんですか?」
「…うん。テツ君と一緒の学校に行きたかったのは本当だよ?けどアイツ…ほっとくと何しでかすか分かんないからさ」
◆◇◆
何かと真面目な誠凛部員。なんとか煩悩を追い払い、その日の練習は終わった
「決勝リーグ進出、おめでとう」
「ありがとうございます。桃井さんの所もですよね?」
「あれ、言ったっけ?」
「さっき、決勝リーグまで待てなくなってって、言ってたじゃないですか」
「あはは、そうだっけ?」
「はい」
「…だから、次会う時は違うベンチだね」
「はい」
「あと、ビデオでみどりんとの試合見たよ。凄い良い試合だったし…火神君、彼本当に凄いね。びっくりしちゃった、あんな人がいるんだなーって」
「ボクもです」
「テツ君も?」
「はい。初めて会ったときは、昔の青峰君みたいだなって思ってたんです。でも、彼は違いました。環境が良かったのもあるかも知れませんが、きっと彼はどんなことがあっても腐らない。大人びてて、周りがよく見えてて、試合になると熱い、そんなボクの『相棒』です」
「…そっか」
◆◇◆
同日、桐皇学園
「うぃーっす」
「「「「「こんちゃーす!!!」」」」」
「あら?青峰は?」
「勝手にどっか行きました。てかいつものサボりっすよ」
「はぁー、しょうがないやつやなあ。のう、桜井?」
「え!?あ、はい、…すいません」
「はぁ?」
「自分、クラス一緒なんで…止めたんですけど、ダメで」
「いや、ええよ別に」
「あと、桃井もいないっすけど」
「別にええよ、アイツの場合はそれが仕事やん?」
このやけに濃い連中、『暴君』桐皇学園バスケ部である
◆◇◆
「私は、テツ君とやってた頃の青峰君のバスケの方が好きだったなぁ…。一人でバスケをするようになって、チーム内で孤立して、試合に負ければ変わると思ったんだけど…けどアイツは負けない。一人になっても、誰も止められないのよ。…あっ、ごめんね!どうも昔の話になると暗くなっちゃって」
「変わりますか?青峰君を止めたら」
「え、でも…」
「青峰君の強さは知ってます。でも、ボク一人で戦う訳じゃないですから。桃井さん、火神君は青峰君より強いですよ」
「…!」
「約束します。青峰君に勝つと」
選手がどう成長するかまで見通す桃井の分析力。しかし、彼女は秀徳戦以外のビデオを入手できていなかった。故にまだ気づいていない。いや、気づけない。火神大我の『個』としての強さに。あの試合、彼は終始司令塔に徹していたのだから。そして、一番近くで見ていたからこそ、『キセキの世代』を超える選手が現れるなど、到底考えられなかったのかも知れない
◆◇◆
いつものストリートコートに火神はいた。今日はプール練でボールに触れていなかった為、シュートやハンドリングの練習に来ていたのである
(あー、外用のボールもそろそろ買い替えないとな…。皮が剥がれてきてら)
シューティングを続けていると、不意に後ろから声がした
「よう、火神大我、だろ?相手しろ、試してやるから」
「ああ?誰だてめえ?」
突然現れてこの物言い、正直かなりイラついていた
「なんで俺の名前を知ってるかは知らねえが、お前は何者だよ。名乗りもしないで何様のつもりだ?」
「お前の気分とか聞いてねーよ。俺が相手しろっつったら相手しろ。ま、名前くらいは教えてやるよ。青峰大輝だ」
「…!名前は聞いてるぜ。けど、そんな上からもの言われて素直にハイなんて言う訳ねえだろ」
「おいおい、だから聞いてねえんだよ。グダグダ言ってねえでやれ。誰も勝負になるなんて思ってねえよ。言ったろ?試してやるって。俺より強いやつとか、存在しねえもん探してる訳じゃねえんだよ。俺の退屈を、お前がどれだけ楽しませられるかって話だ」
「…はーっ、黄瀬もそうだったが、『キセキの世代』ってやつは癇に障るな。お前は格別だけどよ。…失せろ」
「あ?」
「俺はバスケをリスペクトしてる人間なら、今はまだ下手でも一緒にバスケする。そういうやつとするバスケは俺も楽しいからな。でも、俺は試合以外で絶対関わりたくない人種が三ついる。才能に胡座かいて練習しないやつ、好きでもねえくせにバスケを舐め腐ってるやつ、バスケを好きな人間を嘲笑ってるやつだ。てめえはトリプル役満だよクソッタレ。試合会場以外で二度と面見せんな。虫唾が走る」
「なんだてめえ…つまんねえな〜。こんなもんに本気になって楽しいかよ」
「とことん救えねえカス野郎だな。退部届書いて待っとけ。決勝リーグでどうせやるんだ。負けた後にまだバスケしたかったら付き合ってやるよ」
「…チョーシこいてんじゃねえぞ!!…ちっ、興が冷めた」
コートを去る青峰を見て、火神は苛立ちを抑えきれなかった。もし、後数秒長く青峰がそこにいたら、火神は間違いなく殴りかかっていただろう
(黄瀬も緑間もまだ面白えやつだったが、アイツだけは許せねえな)
…もし、桃井が正確なデータを取れていたら、こんなことにはならなかったのかも知れない。だが、起きてしまったことは取り返せない。この邂逅は、歴史に残るとんでもない試合を生むことになる
(取り敢えず黒子にメール送ってどんなタイプの選手か聞くか…てめえの得意な土俵でぶっ潰してやるよ…)
次回、普段優しい人を怒らせると怖いよね
火神、怒髪天。青峰の明日はどこだ
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
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あえて守備にブッパしたスティール王
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