火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す   作:Dice ROLL

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一度完結まで読んでからこの辺に戻ると青峰がクソ野郎すぎて耐えられなくなってしまいます


23話 蹂躙

いつものストリートコートからほど近い火神の自宅に、黒子と火神はいた。『青峰について教えろ』とメールが来たので『何かあったんですか?』と返したところ、かなり虫の居所が悪そうだったので直接話すべくストリートコートに向かった所、立ち話も悪いからと火神が迎え入れたのだった

 

「コーヒーでいいか?茶切らしてんだ」

 

「大丈夫ですよ。ミルクお願いします」

 

自慢のコーヒーメーカーを起動する。数分してこだわりの一品が完成した

 

「青峰君について…ですよね、何かあったんですか?」

 

「さっき会った」

 

「!」

 

「黄瀬と緑間とやって、『キセキの世代』の実力はある程度理解した。正直、どいつもこいつも才能の塊だ。そん中でエース張ってたんなら相当な実力があるんだろうが、あのクソ野郎がそうとは思えない…。だから聞きたいんだ、青峰大輝がただのクソ野郎なのか、訳ありなのか」

 

「…『キセキの世代』も、最初は同世代の中で頭ひとつ抜けている程度の選手たちでした。でも、みんな才能を開花させて、急速に成長していきました。青峰君は誰よりも早く、そして突然に開花しました。元々はバスケが大好きで、自分が勝てないような相手に挑むことを全力で楽しんでいた彼は、横に並ぶものすらいない状況に少しずつ腐っていきました。…彼は言っていました、練習なんてしたらまた実力の差が開いてしまうと」

 

「…ふーん。ま、一言言わせてもらうが…調子こいてんじゃねぇぞボケ!!強くなりすぎてつまんなくなった?こんなバスケ後進国でちょっと結果残したくらいでほざきやがって…。わり、言いすぎたな。余計だった」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

「黒子、青峰ってのはどんなスタイルなんだ?」

 

「突き抜けたスコアラーです。アンストッパブルスコアラーと呼ばれるくらいでした」

 

「へえ…よし、黒子。ボコして目覚まさせんぞ。バスケ舐めんじゃねえってとこ、きっちり教えてやろうぜ」

 

「…はい」

 

この後、二人は連携についてを中心に、バスケについて語り明かした。そしてお互いのバスケ愛を理解した。だが、青峰を改心させようとする火神の決意は、最悪の形で裏切られることになる

 

◆◇◆

 

試合当日、桐皇の控室にて桃井は頭を抱えていた

 

「えぇ!?青峰君がまだ来てない!?」

 

「ああ、何度かけても出えへんのや」

「あんの野郎…!」 

「すいません!僕が不甲斐ないばっかりに…」

 

「…っ!わたし、かけてみます!」

 

何回かコール音が鳴った後、通話が繋がった

 

「!出た」

 

「…ん、はい?」

 

「何やってんの!今どこ?」

 

「何って…学校で寝てた」

 

「寝坊!?」

 

完全に沸点を超えてしまった桃井に代わり、主将の今吉が電話を取った

 

「青峰、後どれくらいで来れる?」

 

「あ、今吉さん…まあ、後半には多分」

 

「頼むぞおい…。相手はあの誠凛なんやぞ」

 

「はっはー!またまた、あんな雑魚倒すのに20分でも多すぎだって。じゃ、前半は適当によろしく」

 

通話が切れる。青峰大輝、遅刻確定

 

◆◇◆

 

試合開始前、アップの時間になった。両チームコート上に姿を現す。…しかし、火神にとって、今日一番会いたい相手だけがどこにも見えない

 

「あの、青峰はいないんすか?」

 

「…遅刻だよ、あの自己中野郎は!」

 

桐皇スタメンの二年生、若松がこれに答えた

 

「…は?」

 

「すまんのお、ワシらもあいつのことはまるで制御できんのや。後半辺りには来るて…だから、うちらはまあ前座や。お手柔らかに頼むわ」

 

「…いいっすよ、そういうの」

 

「?」

 

「どんだけやるかは知らねえが、今ここにいない奴よりいるあんたらの方がよっぽど優れたバスケットボーラーっすよ」

 

「!?」

 

火神の雰囲気が変わった。話を切り上げアップに戻る

 

「…あいつ、まるで人殺しそうな目しとるな」

 

「青峰にムカついてんのは俺らもっすけど、対戦相手であそこまでキレてるやつは初めて見ました…」

 

明らかに異常な火神の雰囲気にチームメイトも異変を察した

 

「火神?どうした?」

 

「青峰の野郎、遅刻だそうです」

 

「!?、まじか…」

 

「大丈夫か?火神?」

 

「大丈夫っす。相手のキャプテン、自分らのことを前座だっつってたが、挽回できねえまで突き放して世界一間抜けな主役にしてやる…」

 

こうして、試合開始の時間を迎えた。ジャンプボールに入る前に、火神が今吉に話しかけた

 

「すいません、青峰のキャリアハイ、何点っすか?」

 

「えーと、こないだの試合が83点やったで」

 

「ありがとうございます…」

 

そして、試合開始の笛が鳴る…

 

◆◇◆

 

青峰大輝は退屈していた。自分の最も愛した競技で競い合う相手がいないという事実は、常に彼の心を空虚にしていた

 

(あー、流石に寝坊はまずったな…。ま、腹黒眼鏡たちもそこらの雑魚よりはマシだし、なんとかなんだろ)

 

青峰も青峰なりに、チームのことは認めていた。徹底した個人技を主体とするチーム方針、そんな環境でレギュラーに選ばれている面子は当然一筋縄ではいかない精鋭達である。しかし、前半残り34秒、ようやく会場に到着した青峰は信じられないものを見た

 

「は?71-19だ?何が起きてんだ…」

 

自らのチームが、2Q終了間際で52点差で負けていると言う事実は、俄かには信じられないものだった

 

「おうてめえか、やっときたな。で、どうすんだ?」

 

戦意を失ったもの、畏怖するもの、羨望するもの、困惑するもの、そんな数々の視線の先にいたのは、つい先日会ったあの男

 

「てめえ、何しやがった火神!」

 

「あ?バスケに決まってんだろ」

 

桐皇ベンチから苦虫を噛み潰したような声が聞こえてきた

 

「青峰君…でなさい…」

 

「おいさつき!何がどうなってやがる!!」

 

「…ほぼ火神君一人に…ここまででもう53得点9リバウンド2アシスト」

 

まだ、恐らく現実として受け入れることはできていないだろう。だが、己の渇きを自覚したあの日から、焦がれつづけた『モノ』がそこにあるのかもしれないと、自覚できない期待と共に青峰大輝はコートにたった

 

『桐皇学園、メンバーチェンジです!』

 

「…よおテツ、久しぶりだな」

 

「はい、お久しぶりです」

 

これ以上の会話はない。今、二人の、いや会場全体の関心は火神大我に集まっていた。そして、試合再開。桐皇学園の攻撃、彼らはもはや縋るしかなかった。エースのアイソレーションに

 

(敵として目の前に立たれれば、嫌でも分かる…火神大我、久しぶりに見るまともな勝負ができそうな相手!)

 

青峰が仕掛ける、手加減は無しだ

 

「うお、すっげぇ、なんだあのドリブル!?」

「あれはストリートスタイルか!」

 

「相変わらず、キレッキレっすね。青峰っち」

 

「ああ、中学の時よりキレが増しているようにすら見えるのだよ」

 

『キセキの世代』かつての青峰のチームメイトにして、火神と戦ったこの二人も試合を見届けにきていた

 

「でも…ダメっすね、抜けない!」

 

青峰渾身のドリブルムーブ、彼の天衣無縫とも呼ぶべきストリート仕込みのドリブルテクニックにチェンジオブペース、全てを駆使しても突破できない

 

「クソッタレがあ!」

 

上体を倒して後ろにジャンプする。『型のないシュート』天才的なボール感覚とシュートタッチにより、スリーポイントエリア内のどこから、どんな体勢からでもゴールを奪えるという埒外のシュート能力。初見でブロックするのは至難…だが

 

「高…すぎるわ…」

 

火神は届く。その規格外のジャンプ力とディフェンスアビリティは、青峰ですら突破できなかった

 

「アップもサボってまともに動けると思ってんのか?」

 

攻守交代、誠凛得意の速攻で決めるかに見えたが、火神がブレーキ。前半の残り時間20秒を使い切る狙いだろうか。いや、それもあるだろうが真の狙いは青峰との1on1。格の違いを見せつけること

 

「…上等だ」

 

野生、青峰は、その獣の如き反応速度と予測力を以て火神を止めようとする

 

(どうきやがる、フェイクに引っかかればこいつのジャンプシュートはまずブロックできねえ…集中しろ…)

 

だが、火神はノーフェイクでのドライブによる突破を選んだ

 

「!?…舐めん…な…」

 

が、追いつかない。青峰にとって、自らが全力を出して尚追いつけなかった経験など、いつまで遡るだろうか。青峰を置き去りにした火神のダンクで、前半は終了した。2Q終了時点で55得点9リバウンド2アシスト。個人の力に絶対の信頼を置く桐皇学園を、その個人の力で蹂躙した

 

次回、勝利ってなんですか

 




2Qで55得点。伝説のブラックマンバが残した偉大な記録です

今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか

  • 原作初期通りの「幻の六人目」
  • 原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
  • あえて守備にブッパしたスティール王
  • それ以外(メッセージかTwitterで)

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