火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す   作:Dice ROLL

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黒バスでゾーン見て一瞬、自分も?と思ったことあるのは僕だけじゃないはず。クロスオーバーとかで抜かれると大体「しまった!」って感じのリアクションになるんですけど、チェンジオブペースは「うっわ…」って感じになるんですよね。…わかる人いるかな


25話 死力

3Q、誠凛ボールでのスタート。前半との違いにここで桐皇側も気づいた

 

「ハンドラーが火神やない?」

 

本来の誠凛のバスケは、ナチュラルな司令塔が二人いることを活かした変幻自在のバスケ。その周囲を優秀な一芸を持った選手が囲うことで真価を発揮する。そして、伊月がハンドラーを務める今のスタイルは、火神をオフボールで使える為、より彼はオールラウンドな才能を発揮できる

 

「ドライブ!?させへんで…っ!違う、これはピックアンドロールや!!」

 

ピックアンドロール。秀徳戦でも見せた、ハンドラーとスクリーナーによる連携。だが、これはピックアンドロールではない。バスケの連携技術の中でも最も基本的な部類に入るが故に応用技術も幅広い。通常のピックアンドロールであれば、スクリーンに入った火神も伊月と共にゴールに向かうが、このプレーではスリーポイントラインまで下がる

 

「…ピックアンドポップですか!」

 

桐皇、原澤監督は気づいたが、選手達は間に合わなかった。スリーポイントラインでガラ空きの火神に伊月が『鷲の目』を使ってピンズドのパス。ドフリーのスリーを冷静に沈め57点差

 

「やっぱり、前半の誠凛じゃない!火神君をこんな風につかうなんて…」

 

前半の誠凛のバスケは、普段の桐皇のバスケと同じ。ただ絶対的なエースが個の力で破壊するだけ。しかし、後半のファーストプレーは、火神と伊月を交互に囮にした連携。前半ではあり得なかった

 

「…リョウ、ボール寄越せ」

 

「…は、はい!」

 

桐皇にも、前半にはなかった戦力がある。その男が、全身全霊、死力を尽くす。気づいたときには、すでにネットが揺れていた

 

「さあ、入ったで。…青峰の『ゾーン』や」

 

これが、桐皇の最終手段。絶対的なエース青峰が、自身の才能の全てを行使する。その分並大抵の体力消費ではないが、そんなことを言っていられる点差ではない

 

「なんだ…今の」

 

「『ゾーン』…っすね。人間はその体から出せる力をフルで使うと耐えきれないんすよ。出せて8割って言われてます。だけどゾーンに入ると残りの2割も使えるようになる…その分消耗も激しいんすけどね。ただ、普通狙って入れるようなもんじゃないっす。やっぱり…腐っても『天才』だな、青峰大輝!」

 

青峰のこの試合初得点。そして、青峰が通用したという事実が折れかけていた桐皇メンバーの心を奮い立たせる

 

「…まだ、一人で全部やろうってか。それじゃダメなんだよ、青峰」

 

誠凛の攻撃、火神と青峰の1on1…

 

「引導を渡してやる、その考えに。バスケはチームスポーツだぜ」

 

では無い。火神のドライブ、『ゾーン』に入った青峰はこれに反応した。しかし、火神の狙いは単独の突破では無い。ハーフタイムに、大事な事を教えてくれた『相棒』へのパス。火神は、自らが出したパスの行方も、さらにそれを受けた黒子がどうするかも、一切見ていない。ただどうなるかを確信しているかのように、全力のジャンプ。『ゾーン』により高められた反応速度で、これを止めようと青峰もブロックに向かうが

 

「確かに、スピードは凄えよ。でも、どんだけ速くてもここは届かねえだろ?」

 

黒子も、火神の思惑を察しこれに応えた。このパスならば、青峰以外の選手には触れる事はできない。その青峰も届かない場所に『相棒』はいる。『加速するパス』、ボールを掌底でぶん殴るという荒技で加速したそのパスは、寸分の狂いなく火神の手に渡った。そして、アリウープダンク。その圧倒的な高さで、青峰の上から叩きつけた。そして後に残ったのは『ゾーン』に入った青峰が止められなかったというどうしようもない事実

 

「ナイスパス!黒子!!」

 

「流石です。火神君」

 

二人は拳を重ね合わせた。黒子テツヤにとってはトラウマでもある、もう心配のいらない『相棒』のサイン。ギャラリーの黄瀬と緑間も、今のプレーには賛辞を送る

 

「まさか、青峰が自力で『ゾーン』の扉をこじ開けるとは思わなかったが…火神と黒子、それすらも超えるか」

 

「前半の火神っち、めちゃくちゃ凄かったっすけどやっぱ違和感あったんすよね。自分でも言ってたっすけど、あいつはやっぱりスコアラーじゃなくてオールラウンダーっすね」

 

「そのようだな。今のプレーにしても、ドライブ、パス、視野の広さ、スピード、跳躍力、ありとあらゆるバスケットボール選手としての能力が詰まっているのだよ」

 

「『ゾーン』に入っても、『王の時間』は攻略できなそうっすね。そもそも単独でどうにかなるもんじゃ無いのかもしれないけど」

 

「『王の時間』…か。『キセキの世代』の中でも、最強の守備力を持っていた紫原や、『天帝の目』を持つ赤司ならどうするだろうな?」

 

「さあ…、少なくとも中三の頃のまんまなら話にならないんじゃ無いっすか」

 

ここから先試合展開は、さして語るようなこともない。『ゾーン』に入った青峰のオフェンスにより、桐皇もある程度点が取れるようになってはいたが、真の意味で『オールラウンダー』として覚醒した火神の指揮するオフェンスを止めるビジョンすら見えない状態だった。なんとか点差だけは広げられまいと奮闘するが…

 

「こいよ青峰、最後に付き合ってやるよ」

 

火神と青峰の1on1。ここにきてエースの真っ向勝負

 

(『ゾーン』に入ってどれくらい経った?もう限界は近えはずだ。なら、ここで全部ぶつける!!)

 

「…青峰君、楽しそう」

 

『ゾーン』、己の全てを発揮できる状態。そうでもなければ勝負にすらならなかったという前代未聞の相手。永らく求め、求め、求め続けた、『ライバル』もしくは『壁』。ついに、現れたのだ

 

(昔、テツが言ってたっけか…「青峰君より凄い人なんて、すぐ現れますよ」って。その通りだったなチクショウめ。もし、あれからずっと練習してたなら、今日遅刻なんてしなかったら。きっと、今日はずっと楽しい試合ができたんだろうな。…今更言っても仕方ねえ。俺にできることは『今』やれる事をぶつける事だけだろうが!!)

 

『ゾーン』にも深度がある。その底に青峰は到達した。渾身のドライブムーブ。ストリート由来の派手な動きを削ぎ落とした、シンプルなフェイクと最高速度と最低速度の差が極端に大きい異次元のチェンジオブペース。そのドリブルをもって火神を…抜いた

 

「抜いた!」

 

「どうや!かましたれ青峰!!」

 

しかし、『天才』青峰大輝は、自らが意地で『王様』からもぎ取ったかに見えた勝利は、砂上の楼閣だった事を知る。チェイスダウンブロック。後方から追いついたブロッカーがシュート後ろからブロックするスーパープレー。しかし、今これが起きたということは…

 

(火神…こいつは、『ゾーン』に入った俺より速いってのか…)

 

「カウンター!」

 

勝負は決しても、試合は終わらない。獅子搏兎、『王』はけっして手は抜かない。ガラ空きのゴールにダンクを叩き込んだ

 

◆◇◆

 

試合終了を告げブザーが鳴った

 

(負けか、完敗すぎて涙もでねえ。一周回って清々しいくらいだ)

 

「火神…悪かったな」

 

「…お前がバスケ好きならさ、今日から真面目にバスケやれよ。それで俺は許してやる。…後は黒子と話してきな」

 

「…テツ、まずはごめんなさいだな。お前にも色々当たっちまった」

 

「…もう、いいですよ。3Q最後のプレー、本当に凄かったです」

 

「火神に比べりゃ大したことはねえよ…ありがとな、テツ。火神と会わせてくれてよ」

 

「それはボクは関係ありませんよ」

 

「かもな、でもテツがいなかったらこんな風に意味のある出会いにはならなかったような気がすんだ」

 

「そうですか…」

 

もう傲慢な青峰はそこにはいない。彼もまた一人の挑戦者に戻ったのだ。まだ高校一年生、挑む相手がいるくらいが丁度いいのだろう

 

「おい、青峰!なんだその面は。まだ決勝リーグ二試合残ってんじゃねえか。勝ち抜いてこいよ、そしたらすぐインターハイでやれんだろうが」

 

「ああ、言われなくても。首洗って待っとけ!」

 

「…今度はお前が俺に言うんだな。ああ、俺たちは負けない。お前が負けねえなら必ずやれるよ。ほら、早くチームの所に帰れ!」

 

青峰大輝と桐皇学園高校は、この敗戦を糧に成長していくのだろう。上に上がいると知り、慢心を捨てた彼らはまだまだ強くなる

 

次回、同窓会?

 

 

 




黄瀬や緑間に比べるとかなり短いですね。遅刻ダメ絶対

今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか

  • 原作初期通りの「幻の六人目」
  • 原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
  • あえて守備にブッパしたスティール王
  • それ以外(メッセージかTwitterで)

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