火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
あの桐皇学園との試合から三週間が経った。『キセキの世代』のいない高校など、今の誠凛の前では勝負にすらならない。残りの二試合も圧勝で締め、誠凛高校は東京都一位の看板を引っ提げインターハイ出場を決めた。ちなみに、残りの二校は桐皇学園と『王者』泉真館である。そして、今日は練習後にビッグイベントが待っていた
「ちょい、日向君」
「ん?カントク、どうした?」
「…どうも、アイツが帰ってくるみたいなのよ。さっきメールきた」
「まじか!?え、今日?」
「うん。練習終わりに顔出すってさ」
「…そうか」
『アイツ』、たびたび話題に上がってはいたが、去年の誠凛高校の決勝リーグ進出の原動力となった高校No.2ビッグマン、木吉鉄平である
「はい!みんな集合!!」
「「「「「はい!!」」」」」
「今日はお疲れ様。しっかりダウン取るのよ。で、ダウン取りながらでいいから聞いてちょうだい。一年生は初めましてだと思うけど、ちょっと怪我してて参加できてなかった二年生がいるのよ。だけど、次回から練習に合流するから今日は顔見せよ。ほら!入ってきて!!」
皆がストレッチなどをしながら体育館の入り口に顔を向ける、ややあって姿を見せたのは190cmはあるだろう身長に、柔らかい笑顔を浮かべた…なぜかユニフォームを着ている男だった
「木吉鉄平、ポジションはCだ!二年生は久しぶり、一年生のみんなはよろしくな!」
「なんでユニフォーム着てんだダァホ!」
「いった!酷いぞ日向!!…まあ、久しぶりの体育館だからテンション上がっちまってな」
「木吉先輩!」
「おー、『先輩』。いい響きだ…。で、なんだ?火神?」
「あれ?どうして俺の名前…?」
「ああ、リコからは聞いてたし、ビデオも見せて貰った。不甲斐ない先輩がいない間にチームを支え続けてくれてたんだな。ありがとう。…で、おうむ返しになるが、火神はアメリカにいたんだろ?なんで俺の名前を?」
「高校選んでた時に誠凛の試合見たんすよ。いいCだなと思ってたんす。でもいざ入学したらいないんで心配してました」
「…お前、いいやつだな〜」
木吉と火神は即意気投合。楽しそうにバスケ談義を始めていた
「ゴール下からでもパス捌くスタイル、どこで思いついたんすか?初めて見た時はびっくりしたっすよ」
「もともと俺はパスが好きでな、でもチーム事情的にCやるしかなかったんだが、コガが『ゴール下の司令塔になればいいじゃん!』って言ってくれてな」
「なるほど…小金井先輩の直感力というか、凄いっすね」
「…あいつ、もう馴染んでやがる」
「まあ、鉄平らしいじゃない」
「木吉先輩、本格復帰はいつ頃っすか?」
「夏から!…といいたいが、試合勘も無いし体も思うようには動かんだろう。申し訳ないがインターハイでは力になれるかどうか…」
「力になりますよ!!試合に出て無くても、木吉先輩がいるだけで俺たちは気合入りますから!!万全な状態で、冬に暴れてやりましょうよ!」
「か、火神。お前は本当にいい奴だなぁ〜」
「うわっ…と、手、デカいっすね。だからあんなプレーが…」
『鉄心』木吉鉄平、復帰。ただし怪我明けにつき試合には出ない模様
◆◇◆
「…なんかいいっすね、みんなでバス乗って移動するのって」
「…まあついたら地獄が待ってるけどな」
誠凛高校男子バスケットボール部、夏季合宿決行。部費の関係や、インターハイの出場がある為今年は見送ろうとしていたのだが…
「合宿?よし、学校として支援しよう。はえある誠凛高校初の全国大会出場を決めた部活なんだ。お金のことは気にせず思う存分行ってきなさい」
校長と理事長の全面協力を得ることで前者は解決。後者に関しては…
「あれ!?期末みんな成績いいじゃん。どうしたの?」
「木吉先輩が教えてくれました!英語は火神、国語は黒子が」
木吉鉄平の初仕事は、学年トップ5に入るその頭脳でチームメイトを追試、補習から守ることだった。結果、夏休み前半も心置きなく練習に励むことができるようになった為、前倒しで合宿を行うことにしたのだ。そして、その到着初日はビーチバスケ
「やっべえ、走りにくい…」
「おい黒子!バウンドパスだすな!!」
「届…いたあ!!」
「火神はなんでダンクできてんだ!!」
ボールが弾まないのでドリブルはできない。必然的にパスワークが重要になってくるのがビーチバスケの特徴である。また、砂の上を走ることは想像以上に難しい。普段使わない筋肉を総動員し、無駄のない体の使い方をする必要があるのだ。ちなみに、バスケットゴールはリコの父、相田景虎が運んできてくれた。部員達には
「娘に手を出したら…殺すぞ」
とありがたい言葉。火神には…
「お前が火神大我か…。今は誠凛を、だがあえて先に言わせてくれ。日本のバスケを頼むぞ」
「俺なんかには勿体無いっすよ」
「お前以上の素材など、向こう100年出てくるものか」
こうして午前中はビーチバスケ、午後は体育館練習。飯を食ったらまた練習。朝は早朝練ととんでもない密度で二日目の朝食を迎えた
「…やばい、死にそう」
「コガ!気をしっかり!!」
「大丈夫だ!人はそうそう死なない」
筋肉痛の体を引きずり食堂に向かっていると、思わぬ出会いが
「あれ?緑間君?」
「黒子!?なぜお前がここにいるのだよ」
「合宿です」
「なぜお前らと日程が被るのだ…。例年より早い時期に来たからなのか…」
「よう!緑間、高尾!あれからどうよ?」
「火神か…久しぶりだな。もちろん、俺たちも黙って見ているわけがないのだよ。冬にはお前たちを倒す!」
「いいねえ…あ、カントク!すいません、すぐ行きます!」
「ほら、早く早く!せっかくご飯作って貰ったんだから…って秀徳さん?」
こうして、合同練習が決まった
「木吉、待っていたぞ」
「大坪さん。お久しぶりです」
「一年経ったが、もう一度聞こう。うちに来る気はないか?木吉鉄平」
「すいません。もう、俺には居場所があるんで」
「…そうだな」
当然、この練習も壮絶なものとなった。まず、緑間。火神に対抗心を燃やし、とんでもない密度の練習を敢行。これに火神もしっかりと応え、なんならちょいちょいアドバイスまでしていた
「折角シュートの択増やしたんだから、パスとかドリブルも挑戦してみたらどうだ?例えばなんだけど…」
「…なるほど、確かにそのムーブは実用性がありそうなのだよ」
ライバルをしっかり育てていた。もちろん、他のメンツも負けてはいない
「すっげえな、秀徳の練習。メニューは濃いし、ミスはしないし」
「だな。火神がいたから勝てたが、俺たちの地力ではまだ及ばんな」
「及ばんなじゃねえぞ9番!1on1のディフェンス付き合ってくんねえか?」
「宮地さん…ですよね?俺でよければ!」
「ああ、宮地だ。お前の名前は?」
「土田です!…ふぅ、かかって来いやぁ!」
土田と宮地は、練習後に無限1on1を始めていた。お互いの最大の武器を磨き合う実に有意義な時間になった
「木吉、やはりまだ感覚は戻らんか。この後、ゴール下の動きのコーチングをして貰う予定なんだが、一緒にどうだ?」
「いいんですか大坪さん?ぜひお願いします!」
このように、それぞれの選手がお互いを誘い、切磋琢磨していく。体力作りや基礎を固め、応用につなげていく。この合宿は大成功に終わった
「ありがとう火神。おかげでいい練習ができたのだよ」
「ああ、こちらこそだ。LI○E交換しようぜ。また意見交換できるしさ」
「ああ、フルフルでいいか?」
◆◇◆
「インターハイのトーナメントが決まったわよ!!」
「来たか…!で、どんな感じだ?カントク」
「初戦は大仁田高校ね。栃木の強豪校で、全国ベスト4の経験もあるわ。大型PGの小林君がエースよ。…でも、問題はその後なのよ」
「その後?」
「うん。うちは東京一位とはいえ、全国初出場だからノーシード。で、うちの組のシード枠、つまり二回戦で当たるのは洛山高校、去年の優勝校で『キセキの世代』の主将、赤司征十郎がいるわ」
「まじかよ…」
「しかも、そこで勝ったとして!三回戦は大番狂わせが無ければ陽泉高校!『キセキの世代』紫原敦がいるところなのよ」
「陽泉高校!?」
「どうしたの?火神君?」
「…そこ、俺の兄貴がいるっす」
「火神の兄貴!?」
「うわぁ、どんなバケモンなんだ…」
「え、それと『キセキの世代』がいるってこと?やばくないそれ?」
「…とんでもない死の組だと思ってたけど、更に凄いことになってるみたいね…」
「ちなみに、その先は?」
「準決勝は正直わからないわ。最有力候補!みたいなところはないのよ。その代わり決勝は恐らく桐皇学園か海常のどっちかね」
「『キセキの世代』がいるとこ三回倒さないと優勝できないってマジ?」
「カントク、クジ運死にすぎだって…」
「決まったもんはしょうがないっすよ!どうせてっぺん目指すんだったら全部倒すんだから関係ないっすよ!!」
「火神君の言う通りよ!みんな、気合入れていくわよ!」
「…うっし、腹括るぞお前ら!」
「「「「「おう!!」」」」」
こうして、彼らの夏が始まる
次回、開幕
インターハイでも出してあげたいのは山々ですが、流石にコンディション調整間に合わないでしょうということで
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
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あえて守備にブッパしたスティール王
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