火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す   作:Dice ROLL

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原作火神の素走りより速いドリブルスピード、後に対ジャバウォックの代表に選ばれる高尾を圧倒する技術、未来が見える能力、これだけを持った選手が『ゾーン』に入ってやっと今作の火神君と地上戦ができるようになります()


34話 限界と覚醒

「へぇ…誠凛はサイズを落としてきたね」

 

「ほんとだ、火神以外180ないんじゃない?どう思う室ちん?」

 

「考えられる選択肢は三つだね。根武谷君を捨てたか、封じる算段が立ったか、眼中にないか」

 

「眼中にないってのは?」

 

「僕も詳しいわけじゃないけど、『ゾーン』っていうのはかなり体力を消耗するはずだ。3Q終盤を見るに、赤司君は完全にパスを出す気もなければ統率のとれた守備を行う気もないようだ。であれば、自力で突破する手段が多彩にあるわけじゃない根武谷君の脅威は前半ほどではない。ということは、彼の『ゾーン』が持たなくなるまで点の奪い合いができれば勝機はあるかもしれない。…もちろん赤司君よりずっと長く『ゾーン』を維持してるタイガがどのくらい粘れるかは分からないけどね」

 

「うーん、よく分かんないや。でも、誠凛はノーリスクじゃいられないってことでしょ?」

 

「そうだね、点数以上に不利ではあると思うよ。でも、そんな状況をひっくり返すことができるからバスケは面白い」

 

◆◇◆

 

4Q最初の洛山の攻撃は予想通り赤司の単独突破。一度目のクロスオーバーで火神の体勢を崩すとクイックリリースで3Pシュートを放ち、これを決めた

 

「ちっ、ダブルクロスオーバーに対応しようとしたらスリーか…。『天帝の目』、いい加減にしろよ全く」

 

「火神君、落ち着いていきましょう」

 

「黒子、大丈夫だ。頭はクールに心はホット、タツヤも言ってたな」

 

続く誠凛の攻撃は、人々からすれば見慣れないフォーメーション。しかし、海常の選手と緑間だけは見覚えがあった

 

「5アウト!ここで持ってきたっすね…。いや、黒子っちが入ってるってことは、4+1アウトの方っすか!」

 

「たしかに、あれはうちとの練習試合以降見せてねえってことは洛山にもデータがない可能性はあるな。でも、黒子は仕事できんのか?洛山にはミスディレクションのタネが割れてるんじゃなかったのかよ?」

 

「多分、そこは大丈夫っすね。今までとはパターンを変えてる…目線でやってたのは仕草で、仕草でやってたのは視線誘導で…みたいな感じっすね」

 

「じゃあ、最低限土俵には立った訳だな」

 

4+1アウト。通常の5アウトはスラッシャー兼パサーの火神以外全員が中距離以上のシュートを打てることによって真価を発揮する戦術である。ではなぜ、黒子というシュートが一切打てない選手が入っているラインナップでこれを行うのか。その理由は…

 

(精彩を欠いた甘いパス…そこなら届くぞ火神大我!)

 

赤司の守備範囲内で放たれたパス。しかも、赤司が『ゾーン』に入る直前に誠凛が洛山を止めた時と同じシチュエーション。チームのナンバーワンシューターに向けられたパス。『天帝の目』など使うまでもないような愚策…かに見えた

 

「なっ…!テツヤ!!」

 

あと数瞬で赤司の手に収まるはずだったボールは、黒子の手によって起動を変えられ、反対サイドで待つ小金井の元へ

 

(緊張するな…、絶対に外せないシュート、しかも全国の大舞台で…。でも、ツッチーも水戸部も頑張ってたんだ!俺だけ何もできないで帰れるかよ!!)

 

「いいループなのだよ。スピンにもブレがない」

 

当代最高のシューターが褒め称えたシュートが描く放物線は見事ゴールを撃ち抜いた

 

「よっしゃあ!!」

 

「ナイッシューです!小金井先輩!!」

「よく決めたな、コガ」

 

「いやーシュートもだけど、本当にこのパス心臓に悪いよ…」

 

今のワンプレーで何が起こったのかを正確に把握できた人間はこの空間で一人だけ、かつての『相棒』青峰大輝

 

「なるほど、考えやがったなテツ」

 

「青峰君…今のプレー、なんで赤司君のディフェンスを掻い潜れたの?」

 

「赤司は『天帝の目』抜きにして視野もとんでもなく広いが、『天帝の目』自体は一人にしか使えねえ。その一人も『ゾーン』に入った火神だぜ?そんな状態でテツまで止めようったって無茶な話だ」

 

「あれ、でもかがみんの未来が見えるんならテツ君に向けたパスまでバレちゃうんじゃないの?」

 

「ああ、だからテツは完全に独立して動いてやがる。火神も他のチームメイトも敢えてテツの事は無視して動いてんのさ。そんでアイツが独断でパスコースを変える」

 

「なるほど…それなら赤司君一人じゃ止められない!」

 

4+1アウトが明確に5アウトより優れている点は、火神が突破しきれない状況からでも強引にキックアウトが成立すること

 

「それなら、スリーを止めればいい話だ。そう何度も通用すると思うなよ火神」

 

「それはどうかな?」

 

その後赤司が1on1から2点を返す。それに続く誠凛の攻撃は、同じく4+1アウト。しかし、前回のプレーで赤司はその内容を把握している

 

(火神がパスを出した、テツヤの位置は…そこか。ならばそこから通せるパスコースを塞ぐ!)

 

しかし、黒子もまた赤司がスティールを狙いにきていることを察知すると強引に体を捻り、ゴールに向かってボールを弾いた。その先には、火神大我

 

「地上戦じゃ分からねえが、(ここ)は俺の領域だぜ!」

 

炸裂するアリウープ。身長173cmの赤司では、絶対に届かない世界

 

「させるかぁ!!」

 

しかし、根武谷永吉はこれに追いついていた

 

(止める!何もできねえままで終われるか!)

 

だが、吹き飛ばされたのは根武谷の方だった。さらに、無常にも鳴り響くホイッスル。ディフェンスファウル、バスケットカウントワンスロー。三点プレーの成立

 

「どうだオラァ!!」

 

火神が吠える。これで二点差まで詰め寄った。75-77

 

(黒子テツヤ…俺の劣化版だと思っていた、シュートもドライブもできない雑魚だと思っていた…!だが、『幻の六人目』としては遠く及ばねえ…)

 

そう、この作戦は黒子の判断ミス一つで成立しなくなる。ハンドラーとしてもフィニッシャーとしても最も目立っているのは火神だが、今の誠凛のハンドルを握っているのは黒子テツヤだ。そして、赤司の『ゾーン』によって洛山に傾きかけた流れは再び拮抗する

 

(クソッ、なんとか赤司の役に立とうとしたが、寧ろ足を引っ張っちまった…取り返さねえと…)

 

「永ちゃん!ダメだ!!」

 

『ピーッ!!』

 

「オフェンスチャージ、白8番」

 

最悪のオフェンスファウル。だが、無理もない。集中を僅かでも欠いた状態なら、虎視眈々と忍び寄る『影』には気づけない

 

「黒子、最高の仕事だ!」

 

「木吉先輩のおかげです」

 

そう、このファウルで根武谷は四つ目。後一つで退場である。もう、攻めたプレーはできない。この状況を作ったのは彼のファウルを引き出した木吉の功績と言えるだろう

 

「…なるほど、眼中にない方かと思ってたけど、裏で封じる準備もしていたんだね」

 

「うん。まあ、あったまった状態で黒ちんは避けれないでしょ」

 

しかし、これで唯一火神と空中戦ができた根武谷がまともにプレーできなくなってしまった。よってここからは完全な殴り合い、お互いの攻撃を止めることができず時間が過ぎていく。次に流れが動くとすれば、両エースの『ゾーン』が切れた時。しかし、その瞬間までもが劇的に訪れる

 

「赤司君がスリーを落とした!?」

 

「…切れたな、赤司の『ゾーン』」

 

「赤司君が自分の『ゾーン』の限界を見誤ったってこと?」

 

「いや、恐らく赤司は『ゾーン』で勝負を決めるつもりだったんだろうが、点差をつける事はできず、チームメイトはファウルトラブル。そんでもって本気で止めようとしても止めれない誠凛の攻撃。そういうのの積み重ね、要するに『ストレス』だな。こいつが案外体力や集中力を蝕んでくるもんだ」

 

「青峰君、バスケのことになると頭使えるんだね…」

 

「どういうことだ、さつきぃ!!」

 

だが、『ゾーン』が切れたのは赤司だけではなかった

 

「アウトオブバウンズ、白ボール!」

 

「っ!火神っちがパスミス…これは…」

 

「まさか、ほとんど同時に切れるとはな」

 

火神もまた限界を迎えていた。ここまで、時には単独でチームを支え続けてきたのだ。いくら彼の肉体が優れているとはいえ、無茶をし過ぎているのは明白だった。ここで、誠凛はタイムアウトを取る

 

「…火神君、もう限界ね。交代よ」

 

「待ってください…。派手な動きはできなくても、俺の本来のスタイルはゲームメイカーです。パスで、オフェンスの組み立てで、必ず貢献できます!だから、残してください」

 

「…悔しいけど、勝つ為には、火神君を下げる訳にはいかないわ。お願い、無茶だけはしないで。約束できる?」

 

「必ず!てっぺんまで行くんだ、こんなところでくたばってらんないっすよ!!」

 

◆◇◆

 

(僕は誰だ?)

 

赤司征十郎が、初めて味わう敗北。チームを捨て一人で戦い、己より遥かに早くから『ゾーン』に入っていた男とほぼ同時にゾーンが切れ、尚敗れようとしている

 

(僕は…誰だ?)

 

『お前は俺の弱さだ』

 

「!?」

 

『俺は勝つことで、繋ぎ止めようとした。かけがえの無いものを。俺達の罪は決して消えはしないだろう。敗北するならそれもいいと思っていた。…だが、やはりそうもいかないようだ…』

 

赤司征十郎の雰囲気が変わった。先程のまでの鋭さや、危うさが無くなったような変化。そして

 

「お前達、すまない見苦しい姿を見せた」

 

「「「「!?」」」」

 

(征ちゃんが謝った!?私たちに…?)

 

「もう一度、力を貸して欲しい。自分から切り離しておいて何をと思われるかもしれないが、誠凛に勝つために」

 

黛千尋は、己を見出した冷徹な男のこんな表情を知らなかった

 

「…誰だ、お前?」

 

「…誰とは心外だな。俺は赤司征十郎に決まっているだろう」

 

次回、決着の時は近い




いよいよ、です

今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか

  • 原作初期通りの「幻の六人目」
  • 原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
  • あえて守備にブッパしたスティール王
  • それ以外(メッセージかTwitterで)

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