火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
「…黄瀬、どうした?」
「いや〜、一個前にとんでもない試合見せられたから、まだ震えが止まらないっすよ」
「いい加減切り替えろ。俺らの相手だって簡単じゃねえぞ」
「分かってるっすよ。…青峰っち、俺がバスケ始めるきっかけをくれた人っすからね」
「うおおおお!テンション上がってきた!!頑張(り)ますか(ら)!!マジで、頑張(り)ますか(ら)!!」
「はあ?うるせえし、ラ行が言えてねえし何言ってるか分かんねえよ!森山!この馬鹿どうにかしてくれ!!」
「そんなことより…笠松」
「あ?」
「日向のブザービーター…あれを見てから、疼きが止まらない!試合はまだか!」
「…もうすぐだ。勝つぞ!お前ら!!」
◆◇◆
「負けねえっすよ、青峰っち。初勝利、死んでも貰うっす」
「あぁ?随分威勢いいじゃねえか黄瀬。今まで一度でも俺に勝ったことがあったかよ?」
「まだ無いっすけど…あんな試合見せられて、今日勝たなくていつ勝つんすか」
「…やってみな」
黄瀬涼太にとって青峰大輝は憧れの存在である。容姿端麗、スポーツ万能。その大きすぎる才能が故に、自身が本気で打ち込もうものならすぐに競う相手はいなくなった。そんな彼にとって、初めて見つけた『真似できないくらい凄いやつ』が青峰大輝である
(あの頃は『いつか』超えたいなんて思ってたっすけど、もう『いつか』じゃない…『今』だ)
海常ボールで試合が始まった。まずは笠松がハンドラーを務める
「行ってこいよ、エース!」
笠松はなんの迷いもなく黄瀬にボールを預けた。いきなり、誰もが待ち望んだエース対決。これが『キセキの世代』同士の初対決
「征ちゃん、この二人のマッチアップ…どう思う?」
「純粋な身体能力やスキルで言えば互角と言っていい。だが、現状は青峰が一枚上手だ。青峰は黄瀬にはない『オリジナル』のスタイルを持っている。海常がこの試合で勝つ可能性があるとすれば、黄瀬がその壁を越えられるかだ」
黄瀬が動く。ワンフェイク挟んでドライブ突破を狙う。一度は抜き去ったかに見えたが、青峰がバックチップ
「くっそ…!」
「相変わらずツメが甘いな。そんなんで抜けたと思ってんのかよ」
そのボールを今吉が拾いカウンターの展開。前線の若松から桜井へボールが渡り
「すいません!」
「クイック…随分と早いな」
これが決まった先取点は桐皇学園
「貴方もだと思いますが…僕はさっきの試合で心が震えました。自分と同じシューターが、試合を決めた。あの試合のクローザーは、『王様』でも、『キセキの世代』でもなく、唯の一人のシューターでした。だから、負けません!」
「いい顔だな9番。だが、俺だってそうだ。日向…誠凛の4番も、お前も、俺から見れば年下だ。そう簡単に負けてやるつもりはないさ」
火花散るシューター陣。続く海常の攻撃は、少し意表をつく形となる
「きーちゃ…黄瀬君がPG!」
「なんだ?火神の真似事か?」
「ま、アイツに教えてもらったって意味ではそうかもしんないっすね。…でも、簡単には止めさせないっすよ、ご賞味あれ」
次の瞬間、アリーナに轟音が響き渡る
「あんにゃろ、俺の『雷轟のドリブル』じゃねえか」
先程よりも格段に鋭いドライブで突破にかかる。しかし、完全に振り切ることはできていなかった。青峰大輝の日本屈指のアジリティはこの程度ではかわしきれない
「そんなもんかよ?黄瀬!」
「なわけ、距離が取れればいいんすよ。今の俺は
ここで、黄瀬はキックアウトを選択。スリーポイントラインで待つスナイパー、森山の元へ
「ナイスパスだ、黄瀬!」
森山の変則フォームを初見で止めるのは至難の技である。海常が三点を返した
「なによあのフォーム!あれで安定する意味がわからないわ…」
今のプレーに桐皇学園は面食らっていた
「誠凛と練習試合をしたという話は聞いていましたが、ここまで早くスタイルを変えられるものですか…」
「…それが、黄瀬涼太です」
桐皇学園と海常高校は決定的に違う点がある。それは、桐皇は未だにスタイルを変えることができていない点。今まで、作り上げてきたスタイルを、たった一度の敗戦でその年の夏に変更するというのは簡単ではない。その博打に打って出たのが海常である
「なんだ!?黄瀬、今度はC!?」
司令塔として攻撃を指揮したかと思えば次の攻撃ではゴール下の多彩なステップやフェイクで得点を奪った
「…オールラウンダーか。だが黄瀬、それじゃあ結局火神の出来損ないだぜ?」
「分かってるっすよ…まったく」
(青峰っちの言う通りだ…。とりあえず今は点が取れてるけど、青峰っちを止める手段は相変わらず無いし、いつか慣れられたら止められそうっすね…。それまでに、見つけるしか無い…『俺だけ』のスタイル)
黄瀬の予感は的中する。代わり映えのない個人技主体の桐皇のバスケだが、青峰を止められるディフェンダーがいない現状では絶大な威力を発揮していた。点の取り合いが維持できていればいいのだが、どんな体勢からでも100%決めてくる青峰が相手では、どうしても点差は開いていく。殴り合いの様相を呈しているこの試合だが、前半は64-57、海常は7点ビハインドでハーフタイムを迎える
◆◇◆
ハーフタイム、点差以上に厳しい現実を黄瀬は悟っていた
(やっべえ、全然ダメだ…。今まで『模倣』しかしてこなかったから『俺』だけのスタイルとかさっぱりだ…)
「すいません…ちょっと外の空気吸ってきていいっすか?」
「ああ、すぐ戻ってこいよ」
アリーナ外、テラスのようになっているエリアで黄瀬は風に当たっていた
「ん?電話…火神っち!?…っと、もしもし、どうしたんすか?」
『どうしたもこうしたもあるか!なんだあのプレーは!!』
「うわっ!声でかいっすよ〜。試合見てくれてたんすね…」
『テレビでな。で、なんだあのプレーはって聞いてんだよ。何ごちゃごちゃ余計なこと考えながらバスケしてんだお前は』
「余計なって…。このままじゃ青峰っちは止めらんないし、俺は自分のスタイル見つかんないしで…」
『は?お前、『模倣』とかいう大層なスタイル持ってんじゃねえかよ』
「いやいや、できることができるだけで、できないもんはできないんすよ。他の『キセキの世代』とか、火神っちとかのプレーは俺には…」
『ばーか。そのできないってラインはお前が勝手に決めたもんだろうが。できるに決まってんだろ。俺が保証してやる』
「で、でも!青峰っちみたいなスピードは出せないし…」
『はぁ…。丸のまんま『模倣』しろとは言ってねえよ。『スタイルの模倣』ならどうだ?青峰の真骨頂は最高速度が速いことじゃねえだろ?』
「!!…サンキュ、火神っち。おかげで目覚めたっすよ」
『なら全部ぶつけてこいよ。俺にリベンジするんだろ?だったらお前も勝てよ』
『天才』黄瀬涼太。バスケ歴が最も浅い彼の進化は、想像を絶するスピードで加速していく
次回、猿真似の向こう側
時間制限付きとはいえ黒バス界最強選手覚醒のフラグが立ちました
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
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あえて守備にブッパしたスティール王
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