火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
誠凛と洛山、海常と桐皇学園の激戦から一夜明け、今日は三回戦当日である
(毎日試合ってのはエグいスケジュールだよなインターハイ…)
文字通り死力を尽くした一回戦、火神もクールダウンに徹し、体力回復に努めたとはいえ万全とは言えない状態だった
「全員同じ条件でやってんだ、言い訳はできねえよな」
自分に言い聞かせるように呟くと、ホテルを出た。およそ二年ぶりとなる『兄』との再戦。疲労感とは裏腹に次第に自分のテンションが上がっていくのを感じていた
◆◇◆
「ついに、タイガと試合か…」
氷室辰也にとってもそれは同じである。初めて会ったときは周りに馴染めていない様子だったので思わず話しかけた。そんな彼も今や背丈は追い抜かされ、自分が教えたバスケも気づけば互角の戦いをするようになった。直接会うのは二年ぶり、『弟』はどれだけ成長しているだろうか
「楽しみだね…アレックスにも、いい試合を見せたいな」
昨晩会った師匠を思い出す。アメリカから帰国してすぐに日本で会うとは思っていなかった。弟子思いの優しい師匠である。格下を叩いただけの自分達とは違い、誠凛高校はかなり疲労が残っているだろうが、手を抜くつもりは毛頭無い。決戦に向けて集中力を研ぎ澄ませていた
◆◇◆
両チームアップの時間に入る前に、二人の兄弟は握手を交わしていた
「タツヤ!…あー、なんて言っていいかわかんねえや。今日はよろしく!!」
「うん。お互い悔いのない試合をしよう、タイガ。俺からもよろしく!」
かつて縁があったのはこの二人だけではない
「黒ち〜ん。赤ちんに勝つとは思ってなかったよ」
「紫原君…なんというか、雰囲気変わりましたね」
「う〜ん。室ちんに会ってからは、なんていうかバスケが楽しいって思うようになったよ。だからかな?」
「…彼には感謝してもしきれないですね。今日は勝ちますよ紫原君」
「負けないよ。俺達も強いからね」
◆◇◆
「最後に、陽泉高校についてもう一度おさらいよ。ちょっと前まではフィジカルと身長差を活かした圧倒的な守備力で相手を封殺するチームだったけど、ある選手の加入で少し事情が変わったわ。背番号7、氷室辰也。火神君のお兄ちゃんね、どんな選手?」
「うっす。…1on1スコアラーとしては最高峰です。ステップワークやフェイクの使い方が『芸術的』の域です。そして、少しでもスペースを与えれば確実に決めてくるシュート力もあります。なにより、相手の守備範囲を正確に把握していてどこまでスペースを作れればシュートを打てるかっていう己の『絶対領域』を完璧に理解している選手です。向こうでは『Mellow』なんて呼ばれてましたね」
「め…ろう?何それ?」
「円熟しているとか、人柄が柔らかいとかそういう意味ね。しかし火神君がアメリカいた頃から『Mellow』なんて言うあだ名が付くなんて…」
「練習量はとんでもないですよ。円熟してるって思われるだけの努力に裏打ちされた実力を持ってます」
「ディフェンシブなチームに突然スーパーエースが加入したって訳だな…ズルくね?」
「日向、それうちが言えたことじゃない」
「そして、もう一人。『キセキの世代』のC、紫原敦。身長208cm、ウィングスパン229cmの恵まれ過ぎた体格に恐ろしいまでの運動性能。わかりやすく強い選手よ」
「紫原君ほど、大きくて速い選手はなかなかいないと思います。中学時代後期はオフェンスはサボりがちだったんですが、どうもその悪癖もなくなっているみたいですね」
「腕、長すぎやせんか…」
「身長に対して110%以上のウィングスパンは世界的に見てもトップクラスっすね」
「ちなみに、氷室君も197cmあるわ。スタメン平均身長はなんとびっくり196.8cm!!」
「ポイントガードの福井は176とかだろ?それでそんなとこまでいくのかよ…」
「インサイドはやり合ったら負け確定だな。スピードと外から崩すしかねえ」
バスケットボールというスポーツにおいて、最も『恵まれた』という言葉が似合う才能は『身長』だろう。そういう意味では、陽泉高校は最も恵まれた選手を集めた高校と言えるだろう
◆◇◆
「ほら大ちゃん!試合始まっちゃうよ?」
「さつき…、お前なんで呼び方戻したんだよ…」
「いいじゃないそのくらい。あ、ほら!丁度ジャンプボール!」
「おー、火神が負けたか。流石は紫原だな」
陽泉ボールで試合が始まった。火神の高校キャリアで初めてのジャンプボール敗北である。そして、陽泉の攻撃は氷室の1on1。ジャンプボールに跳んでいたため火神の戻りが遅れていることによりマークに付いたのは日向
「悪いね。タイガ以外に止められるつもりは無いよ」
あまりにも芸術的なフォームから繰り出されるプルアップスリー。思わず日向はディフェンスについていることも忘れ、見惚れてしまっていた
「よっし!!」
「ナイッシュー氷室!」
「OKマークの指をこめかみに当てるセレブレーション…。変わんねえな、タツヤ!」
人差し指と親指で輪っかを作り、小指、薬指、中指をこめかみに当てるセレブレーション。元々は火神がやっていたのだが、これを見た氷室がえらく気に入りそれ以降は彼の代名詞的なジェスチャーになっていた
「お返しだ、いくぜタツヤ」
「久しぶりの1on1だね。来い!」
ドライブ…と見せかけたジャブステップ。これに氷室が釣られてスペースができた。迷う事なくスリーを放つ。氷室の十八番のムーブである
「…やられた。まさかそれから入るとはね」
「お返しだっつったろ?」
続く陽泉のオフェンスはまたしても氷室。しかし、今度は火神がマークに付いた
「やらせねえぞ…きっちり止めてやんよ」
「タイガも本当に上手くなったけど、俺だってあの頃のままじゃないさ」
先程の火神のプレーを受けて、手本を見せるかのようにジャブステップを仕掛ける。複数回のステップの後、ついに火神が『絶対領域』の外へ出てしまった。すかさずミドルシュートを沈める
(相変わらずとんでもない精度だ…。ジャブステップにしたってそこまで珍しい技術じゃない。でも、大きいステップや小さいステップ、角度なんかも一つ一つ変えてきやがる。しかも一個でも引っかかったら御陀仏か)
ここで、誠凛も仕掛ける。堅守からセットオフェンスで点を取るスタイルの陽泉に対して速攻が武器の誠凛。氷室がシュートを放つと同時に火神は陽泉ゴールに向かって走り出す。ネットをくぐったボールをすぐさま黒子がサイクロンパス、火神の手元にボールが渡った
「なんだ!?コートをぶった斬ったぞ!!」
「まるでレーザービームだな…」
しかし、陽泉の守護神にして高校最強ビッグマン。紫原敦が立ちはだかる
「戻り速えな!どうなってんだよ」
「室ちんが打ったら大体入るからね〜。緑ちんも自分のシュートでやるでしょ」
「そういや、緑間もやってたな。じゃあ、勝負といこうぜ!」
鋭いクロスオーバーで突破を狙う。流石にこのスピードは未体験だったのだろう。紫原も反応が遅れた。しかし、ゴールをまさに奪おうとしている火神に対してブロックが間に合う
「させないよ…!」
しかし、この勝負は火神の勝ちだった。なんと空中で紫原の接近に気づくと完全に右手ワンハンドダンクの構えだったが、無理矢理左手を添えてダブルクラッチでブロックを躱し、もう一度右手ワンハンドダンクでフィニッシュした
「あっぶねえ、お前の体勢が完璧だったら怪しかったぜ」
「も〜、どんだけ空中で動くのさ」
(しっかし、タツヤの相手しながらコイツもどうにかしないといけないのか…。これは骨が折れるな)
「すっごい…かがみん、昨日あんなにヘトヘトだったのに」
「流石に本調子とはいかねえだろ。まああいつの8割なら大体の選手よりは上だがよ。…とは言え、あの7番と紫原が相手だ、8割じゃ厳しいかもな」
両エースが点を取り合う立ち上がりになったが、このまま終わるような試合ではない
次回、紫原敦の真骨頂
プロローグの段階からずっと出したかった氷室さんをやっと出せて満足です
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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