火神に憑依したっぽいのでバスケの「王様」目指す 作:Dice ROLL
残り時間3分。点差を考えれば逆転は十分に可能である。だからこそ、福田は迷っていた。
(パスよこせって…。お前に何ができるんだよ。そんなことよりなんとか火神にボール入れる方法考えた方がいいんじゃないのか?)
正史を上回る活躍を見せた火神に期待してしまうことは必然であった。福田は火神に視線送る、すると…
(アイツに渡せ!!)
視線のサイン、なんなら分かりやすいように指差しまでしていた。
(お前が言うなら…分かったよ!せめてボール取られんなよ)
瞬間、ゴール下の降旗は驚愕した。自らの手の中にボールがある。だが選手としての本能でなんとかシュートを打つことはできた。
「「「「「え?」」」」」
「入っ…!?はぁ!?今どうやってパス通った!?」
「わかんねえ、見逃した」
その後も魔法のようなプレーは続く。気がつけばフリーの選手にボールが渡りシュートが決まる。火神に3人がつきっきりになっている以上、これを止める術は無かった。
「どうなってんだ一体…」
「気がついたらパスが通って決まってる…」
万事休す。ついに痺れを切らした土田が火神のマークをほんの一瞬外した。いや、外してしまった。黒子のタップパスは狙いすましたかのように火神の手元に収まった。
(最高だよ…!お前!!)
自らが信じた男が、想像を遥かに上まわる素晴らしい結果を残したのだ。ならば自分も魅せる時だ。ダブルチームを一歩で置き去りにした。黒子のパスでフォーメーションが崩れた今の2年生ではヘルプが間に合うはずもない。リングまでは完全にフリーレーンだ。
「…えっ?」
周りの選手はみな困惑した。あとダンクを決めるだけだったはずの火神が下投げでボールをゴールに向かって放ったからだ。
(しかも弾道は低い…こんなのバックボードに当たって跳ね返るだけ…まさか!?)
人より優れた目を持っている伊月は数瞬早く察することができたが、彼にできることは何もない。力強く、そして高く跳躍すると、跳ね返ってきたボールを空中でキャッチ、両手で頭の後ろまで振りかぶるとリングに向かって豪快に叩き込んだ。
「「「「「「「うぉぉおぉおおおお!!!!!!!」」」」」」
「バックボード使って一人アリウープ…」
「しかもボスハンドのトマホークか」
「試合中にダンクコンテストおっぱじめやがった」
そしてこのプレーで一点差。残り時間は1分。試合は決した。
(火神君も本当に凄い。けど黒子君も負けてない!!存在感の無さをいかしてパスの中継役に!?しかもボールを触っている時間が極端に短い。元帝光中のレギュラーでパス回しに特化した見えない選手…噂には聞いてたけど実在するなんて…!!『キセキの世代』幻の6人目!!)
「バカっ!」
小金井のパスミス。すかさず黒子がスティールで掻っ攫う。誰も追いつけない…彼を除いて。
「黒子!!」
火神大我である。黒子もこの声に反応する。レイアップに行くかに見えたが、ビハインドザバックでボールを地面に叩きつけた。跳ね上がったボールの行先は当然火神の手の中である。新たな時代の到来を告げるように、全国の天才達に見せつけるように、そのアリウープダンクはリングを揺らした。
「「「うわぁぁあぁ!!俺たちが勝ったぁ!?」」」
降旗、河原、福田が同時に叫んだ。対戦相手の2年生は呆れたように呟いた
「ははっ、まあ味方なら頼もしいってとこか…」
ただ一人、火神だけは涙を堪えていた。
(ああ、あれだ、あれなんだよ。アイツは…黒子テツヤは諦めなかった、絶望しても、打ちのめされても、なおバスケットボールに向き合い続けた、前の俺がなれたかもしれない姿だ。…悔しいな、俺はもう一生アイツには勝てない。『才能』ってやつに打ちひしがれて、とうとう欲しかったものを全部持ってる身体まで貰っちまった今の俺には…。…影か…。俺みたいなズルした奴にとっては、眩しすぎるよ…。黒子テツヤ)
◆◇◆
あの日のストバスコートに二人はいた。
「ありがとう黒子。めちゃくちゃ感動したよ」
「感動、ですか。そんなふうに言われたのは初めてです」
「ははっ!だろうな」
(一度諦めるギリギリまで行ったことある奴なんて、この歳じゃそうそういないだろうよ)
「なあ、キセキの世代ってやつは、どんくらい強ーんだよ?」
「…天才ですよ。少なくとも、火神君を見るまでは今年の優勝は彼らの進学した高校のどこかが頂点に立つと思っていました」
「?」
「今は、負ける気がしないです。彼らは才能は持っていても努力ができなかったり、チームとして勝利を目指すことができなかったり、勝利以外のことを考えられない人達です。…君が負けるはずがない」
「じゃあ、先ずはそいつら自慢の才能ってやつに胡座をかけないようにしてやるか」
「というと?」
「全員倒して日本一になるっつってんだ。じゃなきゃ面白くならなそうだ。甘えてる奴らに喝入れてやるよ」
「…ボクは、彼らにボクのバスケを認めさせようとしていました。でもそんなことはどうでもよかった。君みたいに、ただ直向きにバスケが好きで、努力し続ける人と、ボクは日本一になりたい」
「なりたいじゃねーよ。なるぞ」
「…!はい」
火神が拳を突き出す
「?」
「グータッチだよ。こっちでもやるだろ?」
黒子は微笑んだ。彼にとって深い意味を持つこのサインを心置きなくできる相手が今目の前にいる。王様の眩い光によって、影はどこまでも深くなる。重なった二つの拳は、そんな未来を予感させた。
このテーマで書きたかったことが一つ書けました。ちなみに原作でいくとやっと1話が終わったところです。…マジ?
今後の黒子はどうしていくべきだと思いますか
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原作初期通りの「幻の六人目」
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原作終盤の自力で攻めれる攻撃フォルム
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あえて守備にブッパしたスティール王
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