『あ、やっと出た。年寄りを待たせるなんて酷いのぅ』
「すんませんね、誰かさんのせいで買ったばっかのスマホ地面に落としちゃって、無事ヒビが入りまして。責任取ってもらえます?」
『何故じゃ?!』
向こうの声がデカすぎてきーんとする耳を押さえ、絞り出すように言う。
「とりあえず、休暇明けにまた連絡するんで……用があるならそれまで待ってってことで…………」
『駄目じゃ!!!』
「なんでお前が決めんだよ」
『育ての親同然のわしに向かってお前と?!何処で育て方を間違えたんじゃ、とほほ…………』
「あ〜〜〜〜ほんっとにうぜ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!」
思わずスマホを投げ出しそうになるけど、そこはぐっと堪えた。画面が更にバキバキになったらたまったもんじゃない。ランクルスに罪はないから、さっきからぎゃんぎゃん騒いでる博士に修理代を払わせようと決意した。
「んで、なんですか用って」
『聞いてくれるのか?!』
「さっさと聞いてさっさと切りたいんで」
『わしの孫のことで相談があっての』
「それじゃあ切りますね」
『アオバ!!!!!!!!!』
「そのボリュームのデカさ何処から来るんですか?……あのですねぇ、いくら可愛いお孫さんでもしつこく付き纏われたらブチギレるでしょ?やめた方がいいと思います」
『わしが嫌われてる前提で話を進めるな!!!!』
「おや、てっきり孫に嫌われてるからなんとかしてほしい〜っていう相談かと」
『違う!!!!!』
電話越しにぷんぷん怒ってるが、これがいつもの俺と博士のやり取りだ。多分これを他の人が見たら卒倒するだろう。主に俺の失礼さと、この人のキャラの違いに。
この人……ガゼル博士は論文もいくつか出してるし、様々なポケモンの謎を解き明かそうとしている団体の重役を務めている有名人だ。ポケモン研究の第一人者と言われているオーキド博士とは旧知の仲であるらしく、研究所でたまに駄弁っている所も見かける。
近所に住んでた変わり者のじーさんであり、なんだかんだで俺のことを気にかけてくれた恩人でもある博士。調子のりそうだから本人には絶対言わないけど。
まぁそんな博士を思う存分からかえたし、そろそろ本格的に話を聞く姿勢に入る。
「……分かりましたよ、そろそろ本題に入りましょうか。博士もたくさんからかえましたし」
『それ言う必要あったか?』
「ありました」
『……うむ?』
「あーいや、気にしなくていいんで。話進めてくださいな」
『む……それではそうしようか』
不本意そうに、博士が相槌を打った。
そして、す、と一瞬で雰囲気が変わる。
彼は、どこか苦しそうな様子で俺にこう言った。
『……孫を、助けてやってほしい』