鬼滅の刃 if episode:悟空 【焔は絶えず】 作:暁を拝む者
そんな2人に突然のアクシデントが舞い降りる。
それは、珍しくとても静かな夜の話だった。
あまりに静かな、落ち着いた世界の上で淡い輝きを放つ数々の星々が広がっていた。
その吸い込まれそうなほどきれいな星空からはまるで星が落ちてきそうなほどに近く感じ取れた。
それを縁側で一人の赤ん坊を抱き締めながら一組の夫婦が肩を寄せ合いながら見つめていた。
「スゴくきれいな夜空ですね。
「あぁ、そうだな。
2人は少しだけ冷たい夜風を受け、互いを暖めるかのようにより一層近づき合う。
すると夜空に一筋の流れ星が流れていく。
流れ星は消える前に願い事を三回言えば願いが叶うと言われるほどに縁起がよいものだ。
そんな流れ星を見つけると母親は手元に抱く赤ん坊へと目を向ける。
目線の先では小さな赤ん坊がすやすやと寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ていた。
父親も赤ん坊へと目線を向けて右手でおでこをそっと撫でる。
2人の願い事は一致していた。
((どうか、この子が健やかに育っていくように。強き子として。))
そう願いながら赤ん坊を見つめる。
やがて視線を流れ星へともどすと流れ星はまだ消えてはいなかった。
否、それどころかむしろ大きくなっていっていた。
流石に違和感を覚えた2人はその星を観察する。
すると流れ星はやがてさほど遠くない森の中へと落ちていく。
遠くの方で大きな音が轟く。
槇寿郎は手元に置いてあった刀をもつとすぐに立ち上がる。
「槇寿郎。決して無理はなさらずに。」
「あぁ、すぐに戻るさ。」
槇寿郎は真剣な目付きのままで夜の闇の中へと突き進んでいった。
森の中であるにもかかわらず、槇寿郎はとても人間だとは思えない速度で駆け抜けていく。
(鬼の気配は感じない…。さっき降ってきたのは鬼か?それとも鬼の攻撃?)
【鬼】
そのような存在がこの世界では確認されている。
夜な夜な人里へと姿を表し、人間を食らう化け物。
それから人々を守る存在【鬼殺隊】その一員である…いや、頂点とも言える柱の一人がこの槇寿郎だ。
恐ろしい速度で駆け抜け、数分と立たぬうちに流れ星の落下地点へとたどり着く。
そのにあったの落下の衝撃で壊れたであろう丸い球体だった。
「こ…これは…。」
あまりに非現実的な目の前の状況に目を丸くする。
刀を抜き、警戒しながらその球体へと近づいていく。
目の前の球体は、どうやら機械のようで壊れているのかパチパチと火花や電気が散っているのがわかった。
そんな最中近くからなにかが聞こえてくる。
「びゃああああーーーー!!!!」
「!!」
槇寿郎は刀を構えながら瞬時に声の方へと移動する。
まるで小さな子供の鳴き声のように聞こえた。
槇寿郎は間に合うことを祈りながら声のもとへとたどり着き視線を集中させる。
そしてそこには………
小さな小さな赤ん坊の姿があったのだった。
【鬼滅の刃 if episode:悟空
【第一話 謎の子】
「…、…っ…?」
思考回路がこんがらがり停止する。
なぜこんなものが落ちてきた?
なぜ子供がこんなところに?
なぜここに落ちてきた?
と疑問が数々の頭に浮かんでは、その問いに答えを見いだせないまま次の疑問が浮かんでくる。
しかし、様々に浮かんでくる疑問の全てを上回るような1つの衝撃が槇寿郎へと襲いかかってくる。
それは、赤ん坊の尻にくっついている【とあるもの】だった。
「こ…この赤子…尾を生やしている…!」
見た目は完全に人の子であると言うのに、その尻には猿のような尾っぽが揺らめいていた。
現実離れした現状に困惑しつつも泣きわめく赤子を警戒しながらも腕に抱き抱える。
すると赤子はさらに大きく泣きわめきながら槇寿郎の腕のなかで暴れ始める。
突然のことに槇寿郎は赤子を手から落としそうになるが力を込めてなんとか踏みとどまる。
しかし、手元で暴れる赤子はとても力が強くとても普通の人間には思えなかった。
大人の人間であってもこの赤子の動きを押さえることは困難だろう。
しかし、槇寿郎は違った。
鬼殺隊に入る人間たちはある特殊な技能を身に付ける必要がある。
それが槇寿郎に人間離れした力を身に付けさせる。
すると赤子がいくら暴れても槇寿郎の腕の中へとがっしりと捕まれ逃げられなくなる。
槇寿郎は目の前の赤子を見つめながら正体について再び思考を巡らせる。
(この尾っぽ、そしてこの力…。こいつは恐らく普通の人間ではない。鬼のようにも思えるが…気配が鬼ではない。邪悪な気配は【ほとんど】感じられないが…。)
槇寿郎は赤子を左手で木へと押さえつける。
そして右手で腰に差してある刀へと手を伸ばし抜く。
そして赤子の喉元へと刃を突きつける。
「貴様は鬼か?それとも…。」
警戒しながら赤子へと問いかける。
赤子に言葉が通じるはずなどない。
槇寿郎にもそんなことは理解できていたが、それでももしも鬼であればと言う可能性を捨てることはできない。
問いを投げて赤子の反応を確認するが、赤子はただただ苦しそうにもがくだけで槇寿郎に何かしらの攻撃を仕掛けるようには見えなかった。
十数秒が経過し、状況が進展しないことを確認すると槇寿郎は腕の力を抜いて刀を鞘へと戻す。
赤ん坊は地面へと落ちるとそのまま気を失って動かなくなる。
(人ならざる気配を持つこの赤子を放っておくわけにもいかぬか。)
気を失った赤子を片手で抱き上げるとそのままスゴい速度で自信の家へと戻っていく。
数分もしないうちに家へとたどり着くと瑠火は槇寿郎の帰りを同じ場所で待っていた。
「戻ったぞ。瑠火。」
「あなた。それで、さっきの光の正体は?」
瑠火は夫の無事を確認するとすぐに原因を追求してくる。
彼女もまた、鬼殺隊にいる槇寿郎同様に強い志、そして眼をもっていた。
槇寿郎は問いかけにたいしてすぐに状況の説明を行った。
目で観た機械やクレーター、そしてその手にもっている赤子を一つ一つ丁寧に、しかし簡潔に説明していく。
赤子の説明を耳にした瑠火は目を丸くしながら槇寿郎に抱き抱えられる赤子へと視線を移す。
気を失ってるため、いまはおとなしく普通の人間の子供であるようにしか見えなかった。
ある1点を除いては…
「その猿の尻尾さえなければ本当に人間の赤子と何ら変わりあるようにはみえませんね。」
「あぁ、見た目はそれだけの違いだ。しかし、こいつの持つ気配は人間のものとも鬼のものとも違う。それに、とても赤子とは思えない力で暴れたりした。正直…鬼に近しい存在だと考えている。」
「では、なぜその場でこの子を切らなかったのですか?」
瑠火の問いに対して槇寿郎はすぐに返答することはなかった。
少しだけ考えてからゆっくりと口を開く。
「お前にも、聞きたかったのだ。こいつがどう見えるかを。」
返ってきた答えに、瑠火は考えるまもなくすぐに返答する。
「私は鬼ではないと思いますよ。この子は…。」
その答えに槇寿郎は少しだけ眉を動かす。
しかしそれ以上なにかを追求するわけでもなく瑠火のとなりに腰を下ろす。
「そうか…。なら少しの間様子を見ることにしよう。」
槇寿郎がゆっくりと話し始めると瑠火は槇寿郎の目をまっすぐに見つめる。
「お館様へ既に鴉は飛ばした。一度この赤子をつれてお館様にお会いし、決めていただくつもりだ。それまでの間は…オレがこの子の様子を見よう。」
「槇寿郎さんに子守りなんて出来ますか?」
瑠火は少し鋭い目付きで槇寿郎を見る。
槇寿郎はその鋭い目にまっすぐに向き合って答える。
「当たり前だ!それに、この赤子の力は瑠火では到底押さえられん。オレでなくてはうまく行かないだろう。」
「…分かりました。ならばお任せします。」
「うむ!」
そんな短い会話を終らせると、少し夜空を見上げてから猿の尾を持つ赤子を含めた四人で床へとついた。
「おぎゃあああああああああああ!!!!」
「うむ!ミルクか!」
「おぎゃあああああああああああ!!!!」
「む?違うか?ならば眠いのか!」
「おぎゃあああああああああああ!!!!」
「こら!暴れるな!これも違うのか…。それならおしめか!」
「おぎゃあああああああああああ!!!!」
「だから暴れるなと…!」
子守りはできると意気込んだ槇寿郎であったが、恐ろしいほどの力と元気をあわせ持つ尻尾のある赤子に悪戦苦闘を強いられていた。
なぜ泣いているのか様々な手を試していくが、高い高い、変顔、木製の玩具、音の出る玩具と多くのものを試すが全く泣き止むことはなく、暴れることをやめることもない。
「うむ、どうしたものか…。思い当たるものは全て試したがどれもダメ…。なんとか寝かせて、寝ている間に藤の家にあずけて任務を終わらせようと思ったが…寝るどころか暴れられては預けるわけにもいかぬ。」
いまだ暴れる赤子を片手でつまみ上げながら思考を巡らせる。
この時点で子守りがなんたるかをわきまえてなどいない気もするがそれを追求するものはいない。
(…もういっそのこと、この赤子を抱えたままで戦うか…?)
そんな突拍子もないことを考えていると、近くから悲鳴が聞こえてくる。
すぐさま悲鳴の聞こえてきた方向へと全力で走っていく。
曲がり角を抜けた瞬間、視界には二つの生物が映りこむ。
ひとつは着物を着た10代の少女の姿、そしてもう一つは少女のに倍近くあるであろう体格に4本の腕をあわせ持つ異形だった。
異形は少女に襲いかかろうとしている瞬間だった。
その大きな4本の腕で逃げ道を塞ぎ、人の頭より大きく開く口を存分に開いて食らおうとする。
「させん!!」
槇寿郎は暴れる赤子を一度空へと投げ飛ばす。
そして右手で刀の柄を握りしめる。
「炎の呼吸、壱の型!」
力強く一歩を踏みしめると、瞬きをする一瞬の間で異形との距離を積める。
たった一歩で数十mあったであろう距離を縮める。
「不知火!!!」
そのまま目に求まらぬ速さで刀を振り抜き、異形の頸を切り落とす。
頚を切り落とされた異形はそのまま力無く倒れ込み、まるで燃えていくかのよう塵へと変わっていく。
「大丈夫か?お嬢さん。」
「あ…あの…はい。」
すぐそばで倒れ込む少女に問いかける。
少女はすぐに返事をするが腰が抜けたようで立ち上がることが出来ない。
槇寿郎はそれをすぐに察すると、少女をすぐに抱き上げる。
そして、落下してくる赤子を受け止める。
赤子は先ほどまで暴れていたにも関わらずいつの間にかか笑顔で笑っていた。
(…なぜだ?)
槇寿郎はその事に困惑しながらも、少女に家の場所を聞きそこまで送り届けようとしたその矢先。
「ぐがぁぁぁぁぁぁああああ!!!」
「まだもう一匹鬼が残っていたか!」
突如として壁を吹き飛ばして異形が現れる。
それに対してすぐさま後方へと飛び上がり、距離をとる。
槇寿郎は少女を一度地面へと下ろし刀を抜く。
「いいかい。必ずここにいるんだ。ここから動いたら危険だ。いいな?」
「は…はい…。」
槇寿郎は少女の方を向かずに少し強めの語彙でここに居ろと命じる。
少女は顔を真っ青にしながらもなんとか返答する。
赤子が暴れていないいまであれば上に投げ飛ばさずとも戦える、そう考えて刀を抜こうとする。
しかし、
「がぁあ!!!ぐぎゃあぁぁあーーーー!!!」
「なに!?」
このタイミングで何故か赤子が暴れだす。
刀を抜こうとしたタイミングだったため思わず目線を赤子へと落とす。
するとそれと殆ど同時に鬼と呼ばれた異形は槇寿郎に向かって突撃してくる。
槇寿郎は暴れる赤子を遠ざけてなんとか刀を抜く。
すさまじい衝突による風圧や衝撃があたりに撒き散らされる。
自身の2倍…いや、3倍はあるであろう異形の一撃を片手で受け止める。
受け止めた刀にさらに力を加えると、異形の腕はまっぷたつに切り裂かれる。
異形はすぐに後ろへと飛び上がり距離をおく。
異形を警戒しながら視線を赤子へと落とす。
なぜこのタイミングで暴れたのか?
「ぐぅう゛う゛う゛う゛ぅぅ~!!」
「これは…。」
ただ暴れているだけではなく、赤子は威嚇していた。
それはいま彼を抱えている槇寿郎にではなく、目の前にいる自身よりもはるかに巨大な異形に向かってであった。
(鬼を…敵だと認識してるのか?…いや、それならオレが抱えているときも暴れやしないか。)
一瞬だけ思考を巡らせるとすぐに視線を鬼へと戻す。
それから刀を持ち、腰を深く落とす。
鬼と槇寿郎は互いに向き合い構えを取り合う。
互いに見合った時間などほんの一呼吸にすぎない時間である。
しかし、両者にはその時間で十分であった。
次の瞬間、少女と赤ん坊の視界から鬼と槇寿郎の姿が消える。
赤ん坊はいつのまにか空中に浮いている感覚を覚える。
すでに槇寿郎の腕はそこにはなく空中に静止していて、いまにも落下を始めようとしているのが分かる。
少女は目の前の不可思議な状況に目を丸くする。
そして次に少女と赤ん坊が目にしたのは、頸を切り落とされた鬼の姿と、刀を振るったであろう槇寿郎の姿であった。
少女は状況の整理が出来ずに口をずっとパクパクと動かすばかりである。
崩れていく鬼の姿に釘付けになっていると、耳元で誰かの声がする。
「大丈夫か?」
急いで振り返るとそこには先ほど鬼を切った剣士が立っていた。
腕には赤ん坊を抱えた状態でだ。
「あっ…えっ、と…。」
「ん?まだ、腰が抜けてたてないのか?それなら…この子を少し頼めるかい?」
そういいながら抱える赤子を少女へと渡す。
赤子は寝息をたてながら少女の腕のなかに静かに受け渡される。
すると槇寿郎は少女を抱き抱え、すさまじい速度で少女から教えてもらった家へと走る。
少女が立てるようになったことを確認してから家の中へと帰し、その後別の町へと再び鬼退治へと走り去っていく。
赤ん坊を抱えたままではあったが、その圧倒的なまでの実力と赤ん坊が寝ていたこともあり鬼を倒すことに時間を必要とはしなかった。
数日が立ち、槇寿郎はある人物の前に膝をつく。
「やぁ、槇寿郎。いまそこにいる赤ん坊が、例の子だね?」
初書きです。
この作品は悟空が無双する話ではなく、あくまで初めから鬼滅の世界の住人として育てられたらと言う話です。
そのため、かめはめ波や舞空術といった悟空の代名詞が出てきません。「それ悟空である必要ある?」と思う方もいらっしゃると思います。
もし、「もしそれでもいいよ」と思ってくださる方や、「むしろ面白そう」と思ってくださる方がいれば少しでも読んでいただけると嬉しいです。
社会人ゆえ亀さん更新になると思いますがよろしくお願いします。