鬼滅の刃 if episode:悟空 【焔は絶えず】   作:暁を拝む者

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謎の赤子を拾った愼寿郎は家に連れて帰り一時的に育てることにする。
その後、お館様のもとへとつれてきた愼寿郎だが、そこで衝撃的な言葉を聞くこととなる。
~第二話:二刀の炎刀~


第二話:二刀の炎刀

「僕には、この赤ん坊が普通の人の子であるようにしか見えないよ。」

 

「お館様!?」

 

お館様の一言に槇寿郎は驚く。

その間も暴れ続ける赤子をなんとか押さえつけながらその理由を訪ねる。

 

「この子は元気があり余っているようだけど、人を喰らおうとしているようには見えない。」

 

そういうと暴れる赤子を抱き上げる。

槇寿郎は危ないと叫び声をあげるがお館様は優しい笑みを浮かべながら赤子を見つめる。

赤子は始めこそ暴れていたが、しばらくすると暴れることをやめてお館様の目を見つめる。

 

「ふふっ。いい子だ。」

 

お館様は大人しくなった赤ん坊を槇寿郎へと渡す。

槇寿郎は自分ではどうやっても大人しく出来なかった赤子がおとなしくなっているのを目を丸くして見つめる。

赤子はお館様の手を離れると少しの間は静かにしていたもののすぐに暴れだしてしまった。

槇寿郎はお館様になぜ落ち着かせることが出来たのかを問うがお館様は分からないと答えるだけだった。

 

「…この子を鬼殺隊の隊士として、育ててはくれないかい。槇寿郎。」

 

槇寿郎は一瞬考えるような素振りを見せるが。

すぐにまっすぐとお館様を見つめながら

 

「わかりました。」

 

と承知の意を示す。

お館様はまた優しい笑みを浮かべる。

しかし、次の台詞はあまり穏やかだとは言えないような内容の言葉だった。

 

「ただし、尻尾は切ってしまった方がいいかもしれないね。」

 

唐突なことに槇寿郎は戸惑いを露にするが、それを分かっていたのかすぐにお館様は説明し始める。

 

「この子が大きくなり、鬼殺隊として様々な地へと向かったとき、人々の中にはその尻尾をみて怖がる人、蔑む者、心許ない言葉を投げ掛ける者がいるだろう。」

 

人は尻尾をもたない。

正確に言えば人間は進化の過程で尻尾を必要としなくなり、不要とした。

猿の尾を生やした人間など、普通の人が見れば気色悪がってしまう可能性もある。

まだ尻尾を認識する前に尻尾そのものを切断してしまった方がこの赤子のためかもしれない。

 

「…分かりました。」

 

槇寿郎は少しためらいを見せるもその真意を理解して返答する。

お館様はそんな槇寿郎に謝罪を行うも、槇寿郎は先ほど一瞬見せたためらいなど一切感じさせないまっすぐな目でお館様の言葉を受け止める。

やがて槇寿郎が屋敷を出るとお館様は晴天の空を見上げる。

 

「あの子は将来きっと鬼殺隊として大きな成果を挙げてくれる。そんな気がするんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

~数年後~

 

 

「はっ!……はっ!……はっ!」

 

「ほっ!…ほっ!…ほっ!」

 

大きな屋敷の庭では、2人の少年の掛け声が聞こえてくる。

庭に目をやると、2人の少年が竹刀を構え素振りをしていた。

静かな庭には、2人の少年の掛け声と竹刀の風切り音のみが響き渡っている。

 

「2人とも、今日も朝から元気があってよいな。」

 

そんな2人の後ろから声が聞こえてくる。

2人が振り替えるとそこには一人の鬼殺隊の姿があった。

 

「「父上!おはようございます!」」

 

2人は振り替えるとすぐに元気な挨拶を送る。

すると槇寿郎は優しい笑みを浮かべながら同じように挨拶を返す。

槇寿郎は2人の素振りを近くで観察しアドバイスをかけていく。

 

「杏寿郎、肩に力が入りすぎているぞ。もっと楽に振りなさい。」

 

「はい!父上!」

 

杏寿郎は言われた通りに少しリラックスをして素振りを続けていく。

次は、

 

「当寿郎、素振りのペースが少し早いぞ。もう少しゆっくり振りなさい。」

 

「…。」

 

「…?当寿郎?どうしたんだ?」

 

「ん?オラのことか?」

 

当寿郎は自身が呼ばれたと言うのになぜか首をかしげて疑問の浮かぶ顔で槇寿郎を見つめる。

なぜ呼ばれたことに疑問をもつのか槇寿郎には全く全く理解できなかった。

 

「あぁ、煉獄当寿郎。そう呼んだんだぞ?」

 

そう呼ばれた当寿郎は少し考えてから衝撃的な言葉を口にする。

 

「オラ、トージュロウなんて名前じゃないぞ?オラ、悟空だぞ。」

 

「…なに?」

 

その台詞に槇寿郎は目を丸くする。

自身が与えた名ではなく、全く聞き覚えのない新しい名前を言われたため何が起こったのか一瞬理解が出来なくなる。

隣で刀を振っていた杏寿郎も目を見開いている。

 

「何を言っているのだ?当寿郎!当寿郎は当寿郎だよ。ですよね!父上!」

 

「あ…あぁ。」

 

槇寿郎は杏寿郎の言葉に曖昧な返答をする。

槇寿郎の顔には明らかな焦りと不安がにじみ出ていた。

 

「う~ん、オラ確かに悟空って呼ばれてた気がするんだけどなぁ…でも、当寿郎ってのも呼ばれた感じするしいいか。」

 

「…。」

 

槇寿郎は当寿郎が赤子の頃のことを思い出す。

ずっと暴れていてばかりでちっとも槇寿郎の言うことなど聞かずに喚いている位元気があり余っている子であった。

そんな赤子が今のように落ち着いて剣術の指南を受けるまでになれたのはある原因があった。

当寿郎がまだ赤子の頃、あまりに暴れるため富士の家に預けることが出来ずに家にいる瑠火にも預けるわけにも行かず、赤子を抱き抱えたまま任務を行っていた。

しかしある日、いつものように暴れる赤子を連れて任務を行っていたときだった。

崖を移動していたところを鬼に襲われてしまい、背負っていた赤子の当寿郎を崖の底へと落としてしまう。

槇寿郎はすぐさま鬼を斬り倒し、崖の下へと急ぐが当寿郎は頭から落下していて、強く頭部を打ち付け出血を起こしていた。

槇寿郎はすぐさま藤の家に連れていき、治療を依頼したが、意識は戻らず2週間もの間生死の境を彷徨った。

しかし、何とか意識を取り戻し無事に槇寿郎のもとへと帰ってくるのだが、その時には以前のような狂暴性は無くなり槇寿郎や瑠火のために行動するような優しい子に変わっていた。

当寿郎は2人の本当の子供ではない。

杏寿郎と違い、当寿郎はあの夜に拾ってきた子供だ。

槇寿郎はもちろん、杏寿郎や千寿郎との血の繋がりもない。

 

(もしかしたら…オレが拾う前の、本当の両親がつけた名前か?)

 

槇寿郎にそんな考えがよぎる。

幼き頃から呼ばれ続けたために自然と頭のなかに刷り込まれていたのかもしれない。

そう思いながら槇寿郎は当寿郎に向き合う。

 

「当寿郎、お前の本当の名前は悟空、と言う名前なのか?」

 

槇寿郎はまっすぐに当寿郎と向き合う。

当寿郎はそんな槇寿郎を不思議そうな顔をしながら見つめ返す。

そして少し考えてから

 

「う~ん、わかんねぇや。オラはそうだった気もするけど、当寿郎って呼ばれてたのも覚えてる。」

 

と曖昧な答えを返す。

愼寿郎は困ったような表情を見せると、それに気がついた当寿郎が再び言葉を紡ぐ。

 

「…当寿郎ってのは父上がつけてくれた名前なんだよな?なら、オラは当寿郎でいいよ。」

 

そんなことを言う当寿郎のを見つめる愼寿郎。

当寿郎は嫌な顔など一切せずに、元気な笑みを満面に浮かべていた。

 

(当…寿郎。まだ幼いと言うのに、優しい子だな。)

 

迷って言葉を発さなかった愼寿郎がようやく口を開く。

 

「当寿…いや、悟空。そう呼ぶこととしよう。」

 

悟空を見つめながらそう言う。

悟空は目を丸くしながら愼寿郎に問いかける。

 

「いいのか?」

 

「あぁ、当…悟空にそう呼ばれていた記憶があるなら、きっとそれが以前のご両親が付けてくださった名前だろうからな。」

 

「そっか…。ありがとな、父上!」

 

悟空はそういわれるとさっきと変わらぬ元気な笑みを愼寿郎に向ける。

愼寿郎はその笑みにつられて笑顔を見せる。

そして右手を上げると悟空の頭の上へと持ってくる。

そしてそれは手刀の形を作るとまっすぐと悟空に振り下ろされる。

ゴツンと一撃悟空の頭には手刀もといチョップが下される。

 

「いって!?何すんだよ父上!?」

 

「目上の人、年上の人にはちゃんと敬語を使いなさいと言っただろう?」

 

「あ…。す、すみませんでした父上。」

 

「よろしい。」

 

自分の間違えを指摘された悟空はすぐに正しく直して謝罪する。

そんな様子に満足したのか愼寿郎は短く返事を返すと立ち上がる。

そんな2人の様子をわけもわからず見ていた杏寿郎はついに愼寿郎に質問を投げ掛ける。

当寿郎の名前が悟空とは一体どういうことなのか?

愼寿郎は悟空のことについて要点だけをかいつまんで説明した。

悟空が瑠火から生まれた子供ではないこと、煉獄家の実の子供ではなく拾い子であることを話した。

杏寿郎はその事実に困惑するわけでもなくただただ受け入れていた。

悟空もその事実をまるで気にしている様子はなく、普段と同じ態度で聞いていた。

 

「当寿郎が…私と血が繋がってなかったのですね。」

 

「オラは当寿郎じゃなくて悟空だぞ。」

 

「あぁ、そうだった。悟空だった!」

 

「おう!」

 

そう互いを確認し合うような会話をしたあと、それを気にすることもないようにお互いに竹刀の素振りを再開する。

 

(強い子達だ。)

 

愼寿郎はそう思いながら自分の妻である瑠火のもとへと戻っていく。

そして瑠火の腕に抱かれている赤子の頭を撫でる。

 

「あの子達はあの歳でありながら、もう強い心を身に付けているよ。強い子だ…あの子達は、もっと強くなるよ。」

 

愼寿郎は期待に染まる目を2人の我が子に向ける。

瑠火も柔らかな笑みを浮かべながら2人の我が子を見つめる。

 

「えぇ、杏寿郎も当寿郎も強くなりますよ。」

 

「あぁ、そうだった。当寿郎のことなんだが。」

 

愼寿郎は当寿郎が言っていた記憶の片鱗について瑠火に話をする。

自身の名前を思い出したかのように話し始めていたことを。

 

「…良かった…【貴方が崖から叩き落とした時に】全て忘れてしまったわけではなかったのですね。」

 

瑠火は笑みを浮かべながら愼寿郎を見つめる。

しかし、その笑みは決して柔らかなものなどではなく、背筋が凍りつくほど冷たいものだった。

愼寿郎は身体中に鳥肌が立つのを感じながら必死に弁明をする。

 

「そ、それはすまなかったと言ったではないか!?あの時は鬼に突然襲われたって!故意にやったわけではないんだ!それに、あのあと、あの子は優しく、親孝行になったのだから結果的には…。」

 

「結果的には?」

 

「…!!」

 

愼寿郎の必死の弁明も意味をなさなかった。

結果的には、と言ってはならないことを口に出しかける。

しかし瑠火のさらに冷たくなった笑顔が愼寿郎の口を開くことを許さない。

もはや何を言っても瑠火に怒られるようにしか思えない、そう覚悟した愼寿郎だったが少ししてその緊張の糸は解かれることになる。

 

「はぁ…。あの子が全てを忘れずに昔のことを…本当の自分のことを少しでも覚えていてくれた、それだけでもよしとしましょう。」

 

そういいながら先ほどの優しい目を2人に向ける。

腕に抱き抱える赤子を撫でながら。

 

「千寿郎、貴方も強く、優しく。」

 

そう言いながら千寿郎と呼ばれた赤子の額に口付けをする。

愼寿郎はそんな様子を同じく優しい目をして見つめる。

そして、瑠火の腕から千寿郎を代わりに抱き抱える。

 

「瑠火、少し休むといい。寝ている千寿郎ならオレでも世話できる。」

 

そう言われた瑠火ははじめはなにかを言おうとするが、そのなにかを口にすることなく自分の中に飲み込むと、「分かりました。」と短く答えたあとお礼を言ってから布団の中へと入って行った。

そんな瑠火を少し心配そうな目で見つめる愼寿郎。

愼寿郎は腕の中で眠る千寿郎を起こさないように杏寿郎と悟空の素振りを遠くから眺める。

2人とも真面目に特訓をしており才能も高く見えていた。

特に悟空の方は体の動きを覚えるのがとても早く、動きそのものは殆ど完成していると言っても過言ではなかった。

そんな様子を確認し、いまはなにかを指摘する必要も指導する必要もないと判断した愼寿郎は別の部屋に行き、あるものを取り出してくる。

それは古びた一冊の書物だった。

先ほどの部屋へと戻ってくると、2人の様子が見えるように縁側へと座りながら持ってきた書物を開く。

そこには、炎柱ノ書と書かれていた。

炎柱である煉獄愼寿郎、そしてその家系である煉獄の家は代々炎柱として鬼を滅し続けて来た一族であり、その記録が受け継がれているものがこの炎柱ノ書なのである。

ここにはかつて戦ってきた鬼の情報、十二鬼月、炎の呼吸の型など様々な記録が記されていた。

愼寿郎はここに記されている内容を新しいものから順に読み進めていた。

現炎柱である愼寿郎とてまだ未知の鬼とも戦う可能性が十二分に存在する、そんな時のために過去にあったことを確認しておくことも大切なのである。

 

(…十二鬼月、上弦の肆。この鬼についての記録があるが、この代の炎柱が殺されたこと以外が分からない。上弦の鬼の情報はやはり少ないな…下弦であればある程度の記録や討伐の記載があるもだが…。それほどまでに強いのか上弦の鬼は。)

 

そんな考えを巡らせ、険しい顔つきで書物を読み進める。

やがて、頁をめくる指が止まりある箇所で目を見開いてとまる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はたつ。

 

 

「彼らを柱として迎えようと思うのだけど。」

 

杏寿郎と悟空は鬼殺隊の柱合会議に参加していた。

 

 

 




大分遅くなってしまってすみませんでした。
近頃疲れがとれずに大変になってきました…
世の中コロナで大変ですが皆さん負けないように手洗いなどの基礎をしっかりやっていきましょう!
次回は、2人がついに柱になる?
ちなみに作者は煉獄零巻を持っていないので、大分原作とずれてしまう可能性があります。
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