Fate/Grand Order 並行世界戦闘摂理解析システム#コンパス 作:星の開拓者
プロローグ intro.1
「令呪を持って命ずるーー」
宙に浮かんだ男が、告げた。
「セイバー、アルトリア・ペンドラゴンーー
アーチャー、ギルガメッシューー
ルーラー、ジャンヌ・ダルクーー
ライダー、ニコラ・テスラーー。」
「互いが死ぬまで、殺し合え。」
悪夢のような殺し合いは1週間続いた。人類最古の英雄王、ギルガメッシュが生き残り、その彼もまた、令呪によって自害するように命じられてしまった。
他にも召喚されたサーヴァントはたくさんいたが、争いに巻き込まれまいと逃げるもの、その恐ろしさに動けなくなるもの、さまざまだった。しかし、その場にいる誰もが理解していた。「この殺し合いに巻き込まれたら、確実に己は死ぬことになるーー」と。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「相棒、あいや、マスター。お前さんも末恐ろしいこと考えるね。」
隣にいた男が告げた。彼は、僕と契約している唯一のサーヴァントだ。
「一体なんのことかな。」
「あいつらの殺し合い、なかなか見ものだったぜ。見せ物としては完璧すぎるくらいだ。もっぱら、俺は巻き込まれるのはごめんだけどよ。
ーーしかしマスター、お前さんの行動力ってか認識力ってかスゲーよな。この世界に召喚された瞬間に、すぐに状況を把握し、一番厄介な敵勢力になるであろう奴らをすぐに見抜いて、殺し合いをさせる、だろう。おまけにVoidollの電源ボタンまで落としちまってよ。」
俺が落としたかったのにな、ちぇっ。と隣の男が悪態をついた。
「この戦争で最強クラスのサーヴァントが互いに殺し合うーー見せしめには丁度いいだろう。そして、そんな催し物をやっていたら、Voidollがを止めに来ることは容易に想像できたからね。その隙をついて電源を落とせば簡単な話さ。」
僕は彼に種明かしをした。彼は口角を下げた表情をしていて、いかにも納得をしていないようだった。
「でもまだVoidollはこの戦争から消えたわけではない。あくまでアルトリア、ジャンヌ、テスラ、ギルガメッシュの4人が消えただけだ。令呪もこの通り使い果たしてしまったしね。他にも問題は山積みなんだ。」
「まあ、ソルのジジイとか、忠臣とか、クソチビ兵長とか、マリアちゃんとか、強えーのは腐るほどいるしな。マルコスなんかも頭がいいから隅に置けないぜ〜。」
「その中だと、リヴァイ・・・彼の戦闘力は確かに厄介だなーー。
でもねアサシン、他に厄介な奴はいる。そしてそれは、僕にとって最大の脅威になりうる。」
「あァ…岡部倫太郎、だったっけ?アイツ、そんなに強そうに見えないけどな。」
「確かに、彼はサーヴァントとしては未熟で貧弱だ。では逆に質問をしよう。なぜ僕は彼をそこまで問題視すると思う?」
隣の男はわざとらしく考える素振りをした。
「う〜ん、俺ちゃん的にはばしゅっと一発ぶち込めばすぐに殺れると思うんだけどな〜。」
「考える気ないだろ、アサシン。まあいいや。答えを言うとね、岡部の持つ宝具にあるんだ。」
「うーん、俺ちゃん天才すぎていまいちピンと来ねえなあ。説明プリーズ。」
「僕の見立てでは、彼の宝具は『時間を超越する』、最悪の場合『世界を再構築する』くらいの能力がある。最もなぜあんな貧弱な霊基の人間が、そこまで大層な宝具を持っているのか、よくわからないんだけど。」
僕は軽くため息をついた。
「まあ、その岡部って奴を見つけたら、俺ちゃんがザクっとばしゅっと殺っちまえば、万事解決、ってところか。
あ、てかマスター、お前が殺せばいいじゃん。」
アサシンは指で銃を作り、ばーん、と打つ真似をした。
「何を言っているんだい。僕は手を汚すつもりはないよ。そういうのは君の仕事だろ?」
「ふーん…。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
僕は世界を変えられると本気で思っている。そのためのカードは、既に揃っている。この世界に根付いている空想樹。「彼」が用意した聖杯。 そして「僕」が用意した蜘蛛の糸。白紙化してしまった世界を、この電脳世界で上書きすることによって救うのだ。そうすればこの世界を作った「彼」だって報われるのだからーー。
あれ、これは僕の意思?
「おーい、マスター?」
それともこれは「僕」の意思?
僕は一体誰と話ていたんだっけ。
「彼」って誰だったっけ?
「どうしたの、アサシン。」
「お前、今ニヤけてたぞ。」
笑う?この僕が?
笑うなんて、いつ以来だろう。
その瞬間、かつての仲間だった人たちの笑う声と、僕を呼ぶ声が蘇ってきた。
これは「僕」の記憶?それとも「彼」の記憶?
まあ、どっちだっていいんだけど。
でも、そうだ。この戦争は、ほとんど僕に勝利が約束されたものであって、世界は、もうじき「僕」のものになる。
「彼」の苦労と犠牲にしてきたものは報われる。それならば。
「そうかい。でもなんでもないよ。アサシン、僕たちもそろそろ行動を始めないとね。」