ヘングレ殺し愛   作:喜楽尊架

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依頼に私の好みをぶち込んだ設定で書きました。初投稿です。温かい目で見守って頂けると嬉しいです。


シロップのお悩み相談 〜ヘンゼル感情吐露〜

 『ヘンゼルとグレーテル』は、長く続いた飢饉によって困ってしまった親が口減らしの為に僕とあの女を捨てるお話。そして兄妹が、兄妹の絆とやらを駆使して苦難に打ち勝つお話。

 だがボクにとっての真実はそうじゃない。

 ボクはヘンゼルではあれど、兄ではなく忌々しいあの女の姉で、仲睦まじく絆ごっこなどする気は微塵もない。そんなことをしようとする自分が目の前に入れば、あの女共々切り刻まないといけなくなる。

 あの女は愛しい妹なんかじゃない。

 壊したいんだ。この刃をお腹に刺し込んで、ぐちゃぐちゃにかき混ぜて、痛みで歪むあの女の顔を嗤ってずっと見ててやりたい。

 それからまだ沢山やりたい事はあるけど、一番はあの女の血を沢山浴びたい。だから最後はこの刃であの女の首を切って、飛び散る血を見てもう一回嗤うんだ。

 

 あの女は、グレーテルは、ボクを殺そうとしている。あれはボクに殺されたくないからなんかじゃない。死にたくないという思いからくる抵抗なんかじゃない。ボクと同じ目的。そう、ボクを殺す事が目的。

 ボクと同じ。グレーテルはボクを見て、ボクを殺したがってる。

 ああ、違う。間違えた。ボクだけを殺したがってたのに。

 

 ボクだけを殺したがって、ボクだけを見てたのに。殺意が籠ったあの目で、ボクを見てたのに。

 それなのにあの目は、今はボクだけに向けられてない。

 失敗作が集まるこの世界では、ヘンゼルもグレーテルもボクら以外に沢山いる。

 だから、グレーテルはボク以外のヘンゼルも殺す。

 

「え? つまり、何が言いたいのか? そんなのは決まってる。ボクのグレーテルにはボクだけを見てボクだけを殺しに来て欲しい。お菓子の魔女、ボクの話ちゃんと聞いてくれてましたか?」

 

 ボクは今までの話をお菓子の魔女にしていた。お菓子の魔女の名前は……シロップとかいうらしい。まあ、ボクにとってはお菓子の魔女で充分だけど。

 この頃イライラが溜まっていたから、たまたま図書館でお茶会をしていたお菓子の魔女を、ボクが見つけて話を聞かせている。相談したい相手を探していたから丁度いい。

 

「つまり、他のヘンゼルも、グレーテルもボクが殺すので、ボクと同じストーリーのグレーテルにはボク以外を殺させないで欲しいんです。」

 

 ボクを殺しにくるのはいい。どうせ、グレーテルにはボクは負けない。ボクがグレーテルを殺すのだから。でも、失敗すると分かっていても行動する愚かしさを嗤ってやらないといけない。

 だから、ボク以外を殺そうとするなんて余計な事はしないで、ボクだけを殺そうとすればいいのに。

 

「いやいやいやいや、え、ちょっと待って、何で姉妹で殺しあってんの、怖いんだけど。てかアンタ私を殺す兄妹と同じヘンゼルじゃない!! なんで相談聞かされてんの? その後殺しにくるの? 怖い、無理、今すぐ逃げたいんだけど!」

「うるさい。ボクはお菓子の魔女なんかに興味ないです。グレーテルを殺すのを邪魔さえしなければ、ね? だから、協力しろ」

 

 お姉さんぶっている癖に、図書館で静かにも出来ないのか。いきなり喚き散らしたりして品がない。他のアルターに聞かれたい話でもないのに大声で喚かれるのは迷惑だ。他にアルターもいないし、今回はいいけど。

 

 話を戻して。

 この頃、グレーテルがボクを殺しに来ない。それがムカつくのだ。このイライラをどうにかしないと、最後にボクのグレーテルを殺すという先生との約束を破りそうだ。

 

「ああぁ、もう! 邪魔しないわよ、協力する、します、させてくーだーさーい! どうにでもなれ……」

「もっと早くにそう言ってください。じゃあ、とりあえずどうすればいいと思います?」

 

 やけくそ気味にお菓子の魔女はYESを口にする。

 脅しのように、お菓子の魔女は捉えていた様だが、ボクとしては頷いてもらえて少しホッとしている。ボクだけではこの問題を解決出来ないからだ。

 ボク一人で出来ることなどたかが知れてる。あのグレーテルにボク以外殺さないでと頼むのか?

 死んだって嫌だね。

 ボクだけでは解決出来ないなら、ボク以外に手伝わせればいい。この女はちょうどいい。

 

「どうすればって……あのアンタとよく似たグレーテルの行動を制限したいのよね?」

「そうです。が、よく似た、とか一緒くたにするのやめてもらっていいですか? グレーテルと一緒にされるなんて気持ちが悪くて皮膚を掻きむしりたくなるじゃないですか」

「あ、ハイ」

 

 一瞬、殺しかけた。危ない危ない。一応、手伝ってくれると言っているのだから、殺したらまた最初から誰かを捕まえなきゃいけない。それにここは図書館、殺しは御法度。そんな面倒は嫌だ。

 

「えーっと、頼むのがいやなら……え、えっと……あ! お菓子少なくなってるわね、お茶も冷めてるわ。お菓子何がいい!? 新しいお茶と一緒に持ってくるから!」

「…………じゃあクッキーがいいです」

「うんうん、クッキーね。お茶も入れ直すから待っててね、待ってるのよ? 答えも考え中だから待ってなさい!?」

 

 涙目で紅茶を入れに行く、お菓子の魔女。変なの。なにか解決策が見つかればいいんだけど……。まあ、見つからなければ他の奴に相談してみよう。

 

 物が倒れた様なすごい音が、お菓子の魔女が行った方向から聞こえたが、目の前の冷めたお茶を飲んで聞こえないふりだ。

 あのお菓子の魔女は役に立つだろうか、そんな疑問が芽生えるけど、今は目の前のお菓子とお茶が美味しいので考えなくてもいいや。

 

「あぁ、グレーテル。早くお前を殺してやりたい

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