アサルトリリィ  LOST FLOWER   作:入江友

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無駄に分かりにくい説明回は今回で終わりとなります。
前回と今回の話は、結梨ちゃんの能力に自分なりの理屈付けをしておきたかったためです。
読みにくいと感じられたらすみません。


第6話 夢枕(3)

 まず、僕から君への問いかけをする前に、君が持つ能力の特異性について今一度整理しておきたい。

 君の気分を害してしまうことがあるかもしれないが、ひとまずは黙って聞いていてほしい。

 

 さっきも言ったように、君は普通のリリィとは全く別の次元でマギを操ることができている。

 ちょうどあの海上のギガント級ヒュージがマギに操られず、逆にマギを操って砲撃をしてきたように。

 普通の人間とリリィの間に絶対的な差が有るのと同じく、普通のリリィと君との間にも絶対的な差が有る。

 

 およそマギが介在するものなら何であれ、君にはその動きと仕組みが手に取るように理解できているに違いない。

 君がギガント級ヒュージからの砲撃を全弾回避できたのも、ヒュージの体内にあるマギの動きを読み取って、発射前に反応できていたからだ。

 そうでなければ、ろくに実戦経験の無いひよっこのリリィである君が、あの砲弾の雨をかいくぐって敵の懐に飛び込めるわけがない。

 

 レアスキルの複数同時発動、ヒュージネストのマギを自らのものとして利用、ヒュージの動きを予測、いや正確には予知した上での戦闘行動。

 これらはすべて、君がマギを自由自在に感じ取り、操れることを意味していると僕は考える。

 

 それは攻撃や回避だけではなく、回復においても同様だ。

 あのギガント級ヒュージを君が撃破した後の爆発は、TNT火薬に換算して推定で数キロトン、戦術核にも匹敵する規模だった。

 おそらく砲撃のためにネストから供給された大量のマギがヒュージの体内に蓄えられていて、それが誘爆したためだろう。

 いかにリリィと言えど、そんなものに無防備で巻き込まれれば、ただでは済まない。

 たとえ撃破と同時に防御結界を展開したとしても、相当の負傷は免れない。

 にもかかわらず、君があの海岸で発見された時、衣服はすべて失われていたが、外傷は全く無い状態だった。ありえないことだ。

 

 だが、君の身体は特別製だ。

 並みのリリィなら確実に絶命してしまうような負傷でも、そんなことは君の場合、何の参考にもならない。

 同時に複数のレアスキルを発動して狂化の欠片すら見られなかったのも、同じ理由だろう。

 なぜ君が普通のリリィに出来ない事をいとも簡単にやってのけるのか。

 答えは簡単で、君の身体がそのように出来ているからだ。

 鳥に向かって、あなたはどうして空を飛ぶことができるのか、と問うようなものだ。

 

 私がヒュージの細胞から作られたから?

 

 気を悪くしたならすまない。でもこれは事実だ。

 君は遺伝子情報の上では、99.9%の割合で人間だ。

 だとすれば、人としての個体差と見なされる残り0.1%の部分に、その特別さの原因が存在している。

 人かヒュージかを判断する上で、不問に付されているその0.1%の中に。

 どうする?もうこれ以上のことは聞きたくないかい?

 

 ううん、かまわないよ。もっと話を聞かせて。

 

 ありがとう。では話を続けよう。

 あの時、君の身体はとても助かる見込みの無い状態で、生きているのが不思議なほどだった。

 それはヒュージへの攻撃にすべてのマギを使い果たし、爆発の防御に回すマギが全く残っていなかったからだろう。

 僕が君の身体とネストのマギを繋げることを提案したのも、確証があってのことじゃなかった。

 ただ他に何も可能性が無かったから、その方法を提案したに過ぎない。

 しかし結果として君は生還し、今またこうして僕と会話している。

 実際には肉声の無い意思だけのやり取りを、会話といっていいものかどうかは別にして。

 

 君はヒュージネストのマギを利用して、自らの身体を回復、もっとはっきり言えば『レストア』することに成功した。

 ネストのマギを攻撃に利用できるのなら、回復に利用できたとしても何も不思議は無い。

 そしてネストからの距離が開いて、ネストのマギを使えなくなって以降は、それまでに自分の体内に取り込んだマギを使って『レストア』を続けた。

 君が海岸で特務レギオンに発見された時、体内のマギがほとんど尽きていたのは、それが原因だろう。

 リジェネレーターもZも無しに、こうして君は自らの傷ついた身体を完全に回復した。

 

 これまでに発現した君の能力の説明は、こんなところだろう。

 さっきも言ったように、いま君に話しかけている僕は、かつて生きていた川添美鈴そのものじゃない。

 君の意識が知りたいと願っていることを、君の無意識が僕の姿を借りて説明しているだけだ。

 

 マギに蓄積されていた情報そのものは、君の意思で自由に引き出すことはできない。

 人が好きな時に好きな内容の夢を見ることができないように。

 君は自分が何者なのか、自分には何ができて、何をなすべきなのか、と考え続けているんじゃないか?

 それに応えるために君の無意識が夢の形をとって、君が望む情報を君に提供しているんだ。

 

 僕がこの場で君に問いたい事も同様に、君がこの先どのように生きていきたいかという事だ。

 君には極めて特別な能力がある。それをどう使うかは、結局のところ君次第だ。

 君は何のためにその力を使いたい?あるいは敢えて力を封印して生きていくかい?

 自らの危険も顧みずにギガント級に単独で突撃した君のことだ、後者は無いだろう。

 

 だからと言って、その身を公然と晒し、一柳隊の一員としてヒュージと戦うわけにもいかない。G.E.H.E.N.A.の目があるからだ。

 それに加えて、君の持つ強すぎる力はバランスブレイカーになりかねない。

 一柳結梨は、一人のリリィとして余りにも強すぎる。傑出している。

 皮肉にも、その事実が君の置かれている状況を、きわめて困難なものにしている。

 

 今の君は、いわば世界一の強力無比な剣だ。

 君の生存が明るみに出れば、誰もがその所有者になりたがるに違いない。

 

 他のガーデンが引き抜きを目論む程度は序の口で、非合法な手段に訴えてでも君を我が物にしたい組織や国家があることまで想定しておかなければいけないだろう。

 勿論その筆頭がG.E.H.E.N.A.であることは言うまでもない。

 

 それゆえに君の存在が公になった場合、君に生きていてもらっては都合が悪いと考える者さえ存在するかもしれない。

 鳴かぬなら殺してしまえ何とやら、くれぐれも用心することだ。

 

 そこまで美鈴の声が語った時、結梨は自分の意識が急速に覚醒へと引っ張られる感覚を覚えた。

 

 ……そろそろ僕の出番は終わりのようだ。

 次がいつになるか、そもそも次の機会があるかどうかも分からないが、それまでにはさっきの問いへの答えを用意しておいてくれると嬉しい。

 それではまた、ごきげんよう、一柳結梨君。

 

 ありがとう。また逢えるといいね、ごきげんよう、美鈴。

 

 急激に浅くなる眠りの中で、結梨は美鈴の声に別れを告げ、やがて意識は覚醒した。

 目を覚ました結梨は、自分がいつもの通りロザリンデに抱かれてベッドの中にいることを確認した。

 結梨が少し身動きすると、ロザリンデも目を覚まして結梨の顔を見た。

 もの言いたげな目で、じっとロザリンデを見つめる結梨に、ロザリンデが話しかける。

 

「どうしたの?怖い夢でも見た?」

「ううん、怖い夢じゃなくて、不思議な夢だった」

「不思議な夢?」

「うん、夢結のお姉様が出てくる夢」

「夢結って、二年生の白井夢結さんのこと?」

「そうだよ、夢結のお姉様の美鈴っていう人」

 

 それを聞いた刹那、ロザリンデの身体が一瞬こわばった。

 ぎこちない口調で苦しげに結梨に問いかける。

「……結梨ちゃん、どうしてその人を知ってるの?その人は二年前に亡くなっていて、結梨ちゃんと面識は無いはずなのに」

 

「ロザリンデ」

 結梨はロザリンデの問いには答えず、

「私、ロザリンデたちと一緒に、G.E.H.E.N.A.に苦しめられてるリリィを救いたい。

私もロスヴァイセの強化リリィ救出作戦に参加したい」

 そうはっきりと言い切った。

 

 

 

 

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