アサルトリリィ  LOST FLOWER   作:入江友

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今回投稿分でストーリー構成の区切りをつけるために、かなり詰め込み気味の内容になっています。



第16話 誰が為の四者会談(5)

 

 結梨を理事長室に残し、咲朱は咬月の姉、すなわち高松祇恵良のもとへ移動するべく姿を消した。

 

 その現象は、現れた時と同じく縮地S級の発動によるものであることは間違いなかった。

 

 唐突に一人少なくなった理事長室を静寂が支配している。

 

 ややあって、最初に口を開いたのは祀だった。

 

「『高松先生のお姉さん』って、まさか――」

 

「理事長に直談判しに行った……」

 

 途切れた祀の言葉を史房が引き継ぎ、さらに眞悠理が言葉を継ぐ。

 

「大した行動力ですね。さすがに一柳隊から強引に夢結さんを引き抜こうとしただけのことはあります」

 

「感心している場合ではないでしょう、眞悠理さん。

代行、私たちは何もしなくていいんですか?」

 

 渋い顔で眞悠理を見てから、史房は咬月に確認した。

 

 咬月は複雑な表情を浮かべ、それに似つかわしい割り切れない答えを吐き出した。

 

「今の白井君の行動を制止するのは、我々にはできないだろう。

 

以前はあれほど積極的な方針を前面に主張する性格ではなかったと思うが……彼女の意見にも一理あるのは認めなくてはならない」

 

「いくら私たちの大先輩で、教導官になっていたかもしれない人とは言え、ちょっと図々しすぎませんか?」

 

「確かに以前の白井君とは相当に印象が違っていた。

しかし彼女が白井咲朱本人であることは間違いない。

経験が人を変えたとしか今は言えん」

 

 咲朱が去り、残された結梨に心配そうに声をかけたのは祀だった。

 

「結梨ちゃん、この後ですぐに検疫、いえメンタルとフィジカルのチェックを受けましょう。

さっき咲朱さんは何か仕込んでいったかもしれないわ。

シェリス先生に連絡しないと」

 

「さっきって?」

 

「咲朱さんが消える前に、結梨ちゃんの額にキスしたでしょう?

単なる別れの挨拶ではない何かがあったのかもしれないわ」

 

「何か……」

 

 結梨はまだ要領を得ない表情のままだった。

 

「美鈴様はレアスキルを使って夢結さんの記憶を操作していたんでしょう?

同じようなことを咲朱さんができても不思議は無いわ。

これまでの出来事で何かが思い出せなかったり、思い出そうとすると頭が痛くなったりはしない?」

 

「べつにそんな感じはしないけど……」

 

「それに、咲朱さんは一柳隊と戦った時、相手の身体に触れずに指先一つで金縛りを掛けていた。

あの人がどんな未知の能力を持っているか分からない以上、用心するに越したことは無いわ。

代行、すみませんが私と結梨さんは先に退室させていただいてよろしいでしょうか」

 

「分かった。シェリス教導官には私から連絡しておこう。

一柳君、秦君と一緒に検査室までレアスキルで移動してもらえるかね。

徒歩で移動すると、途中で誰かに君の姿を見られる恐れがある」

 

「うん。祀、行こう」

 

 結梨は祀の手を取ると、先程の咲朱と同じく瞬時に姿を消した。

 

 咬月は保険医兼教導官であるシェリス・ヤコブセンに電話で連絡を終えると、咲朱が示した提案を再び論じるべく、史房と眞悠理に向き直った。

 

 議論は眞悠理の発言によって再開された。

 

「反G.E.H.E.N.A.主義ガーデンである百合ヶ丘と御台場は、いわば同盟関係にあるガーデンです。

現在、その御台場がG.E.H.E.N.A.の実験場になっているとあれば、百合ヶ丘が支援戦力を投入することに正当性はあると思います」

 

 理事長室に残っているもう一人の生徒会長である史房は、何らかの形で御台場を支援すること自体には肯定的だった。

 

 史房は眞悠理の発言を引き継ぐ形で、自らの考えを説明する。

 

「でも、それは同時に百合ヶ丘が積極的にG.E.H.E.N.A.の『実験』を妨害する姿勢を表明していると、G.E.H.E.N.A.からは解釈されるわ。

 

これまで百合ヶ丘は原則として、強化リリィの救出を対G.E.H.E.N.A.戦略の主軸として進めてきた。

 

ただし、御台場がG.E.H.E.N.A.の標的にされているとなれば、百合ヶ丘としても、これまでより一歩前に出る対応を迫られることは間違いない。

 

百合ヶ丘がこのまま静観を決め込んで、御台場がルドビコのように崩壊すれば、さっき咲朱さんが言ったように百合ヶ丘が次の標的にされてもおかしくない。

 

御台場女学校は東京御三家の一角だけど、同じ御三家のルドビコ女学院が現在どのような状態になっているかを鑑みれば、百合ヶ丘としても、ただ手をこまねいて状況の推移を見守るわけにはいかないでしょう」

 

「かと言って、百合ヶ丘がレギオン単位で御台場にリリィを派遣し、常駐させれば、G.E.H.E.N.A.が政府機関を使って社会問題化させるのは目に見えています。

 

大方、リリィ脅威論と絡めて反G.E.H.E.N.A.主義ガーデンの戦力や権限を削減させる方向へ持って行こうとするでしょう。

 

従って、可能な限り少ない人数で、最大限の戦力を投入できる形が理想です。

それも世間に名が知れている有名リリィではない方が望ましい。

となれば、必然的に候補となるリリィは極めて限定されます」

 

 史房の発言を踏まえた上で、眞悠理は自らの意見をさらに展開し、咬月に意見を求めるかの如く視線を送った。

 

「それで白井君は、一柳君を支援戦力の切り札として御台場に派遣すべきだと主張したのだな」

 

「しかし、結梨さんをG.E.H.E.N.A.の実験場となっている御台場へ派遣することは、非常な危険を伴うのではありませんか?」

 

 史房は眉間にしわを寄せて、結梨の派遣に慎重な姿勢を示している。

 

「白井君の話していたことは、北河原君がエレンスゲのリリィから聞いた内容――一柳結梨の可能性があるリリィへの関与を事実上禁止する――と一致している。

 

であるなら、理屈の上では一柳君が御台場女学校にいることをG.E.H.E.N.A.が知ったとしても、手出しはしてこないと言えるが……」

 

「その禁止がいつまで有効なのかは不明です。

一時的なものか恒久的なものか、今の段階では全く分かりません。

そんなものをあてにして、切り札を失うことになれば取り返しがつきません」

 

 慎重論を崩す気配の無い史房に、咬月は反論する理由を持たなかった。

 

「……二人の話し合いが終わるのを待とう。

今この場にいる我々は最終的な意思決定者ではない。

この件についての各人の賛否は、姉の判断を確認してからでも遅くは無い」

 

 一人のリリィの死活にかかわる問題であるがゆえに、その是非を自分たちだけで決定することは重すぎると咬月には思われた。

 

 百合ヶ丘女学院の理事長である高松祇恵良から連絡が来るのが先か、咲朱が理事長室に戻るのが先か、理事長室を重苦しい空気が支配した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 祀を伴って、結梨が特別寮のミーティングルームに戻ると、待ち構えていたかのように琴陽が部屋の入口で出迎えた。

 

「お帰りなさい、結梨さん。咲朱様は御一緒ではないのですね」

 

「うん、咲朱は理事長代行先生のお姉さんのところに行ったよ」

 

「そうですか。では咲朱様がお戻りになるまで、今しばらく中で待ちましょう」

 

 そこで琴陽の視線は、結梨の隣りにいる祀に向けられた。

 

「そちらのリリィは、東京で一柳隊と一緒にいた……」

 

「2年生の秦祀です。夢結さんは私のルームメイト、梨璃さんは私の弟子、そして結梨さんは私の娘なの」

 

(最後のは違うと思うけど……)

 

 ロザリンデと結梨は期せずして同じ突っ込みを心の中で発した。

 

 一方、琴陽は祀の自己紹介を特に気にしない様子で、自らの紹介を始めた。

 

「私は咲朱様と行動を共にさせていただいています、戸田琴陽です。

秦様も私と同じゼノンパラドキサS級の使い手と聞いています。

もしよろしければ、是非この後で私と手合わせを――」

 

 琴陽が言い終える前に、彼女の背後で咳払いの音が聞こえた。

 

 琴陽が振り返ると、その目に映ったのは苦虫を噛み潰したようなロザリンデの顔だった。

 

「琴陽さん、あなたは私に幸恵さんの役回りを演じて欲しいのかしら」

 

 幸恵の名を耳にするなり、琴陽は直立不動の姿勢を取り、深く頭を下げた。

 

「申し訳ありません。つい気がはやってしまいました。

手合わせはまたの機会にします」

 

「いえ、誰彼構わず手合わせを申し込むこと自体が問題なのだけれど……」

 

 ズレた答えを返す琴陽にロザリンデは困惑したが、気を取り直して祀に尋ねかける。

 

「ところで、どうして祀さんは結梨さんと一緒にここへ来たの?」

 

「ちょっと結梨さんにメンタルとフィジカルのチェックを受けてもらいました。

結果はオールグリーン。

スキラー数値も50のまま変化なし、その他もすべて前回検査時との有意差は無し。

どこにも不自然な点は見られませんでした」

 

「メンタルとフィジカルのチェック?何のためにですか?」

 

 きょとんとした顔で琴陽は祀に尋ねた。

 

「理事長室で咲朱さんが結梨さんの額にキスしたから」

 

「それがどうかしたんですか?」

 

「咲朱さんが何か良からぬことを仕込んで行ったんじゃないかと、用心のためにね」

 

 祀の返答を聞いた琴陽は、いかにも心外そうに頬を膨らませた。

 

「咲朱様はそんなことはなさいません。

私たちは悪の秘密結社ではありませんよ。

もし咲朱様が結梨さんに何かをなさったとしたら、それは結梨さんと私たちの双方に利があることに違いないです」

 

「それならいいのだけど。

あの人も手の内を全部見せる気は無さそうだから、その点が今一つ信用できないのよね」

 

「私は咲朱様のお考えになっていることは詮索しないようにしています。

ただ咲朱様の進まれる道に最後まで御一緒できることを願うだけです」

 

 しかし、その咲朱は夢結の心を自分のものにすることには失敗した。

 

 いかに超越的な能力を有していても、咲朱とて全知全能の存在ではない。

 

 人間らしい感情もあれば、策略に失敗することもある。

 

 それゆえ、咲朱に対する琴陽の認識に、ロザリンデや祀が簡単に同調するわけにはいかなかった。

 

 ロザリンデは話題を転換し、琴陽のCHARMについて改めて問い正す。

 

「ところで琴陽さん、あなたが持ち込んだCHARMのことだけど、咲朱さんと結梨さんが戻ってきたら理由を話すと言っていたわね。

 

咲朱さんはまだ戻らないけれど、先に理由を聞かせてもらえるかしら?」

 

「はい、承知しました。

今ケースに入っているCHARMは、私が東京で使っていたもので、第3世代のトリグラフという機体です。

よろしければ、結梨さんに使っていただきたくてお持ちしました」

 

 琴陽はソファーのそばに置いているCHARMケースを持ってくると、両手で結梨に手渡した。

 

「私に琴陽のCHARMをくれるの?」

 

「そうです。新宿御苑で結梨さんと手合わせした時、私はグングニル・カービンを使っていましたが、その後このCHARMに変更したんです。

 

あの時に結梨さんが使っていた第4世代の精神直結型CHARMは、近接戦闘には不向きなように感じました。

 

それを補うために、このトリグラフを使ってもらえたらと」

 

「ありがとう。でも、私にこのCHARMを渡したら、琴陽の使うCHARMはどうするの?」

 

「咲朱様が新しく用意して下さいますので、それについてはご心配なく。

このトリグラフは円環の御手が使えなくても、分離させて両手で扱える優れものなんですよ。

二刀流でも二丁拳銃でも自由にできますよ」

 

 得意げな表情でトリグラフの機能を説明する琴陽だったが、ロザリンデは彼女の説明に水を差した。

 

「待って、トリグラフの最低起動スキラー数値は55だったはず。

結梨さんのスキラー数値は50だから、トリグラフは起動できないわ」

 

 しかし、琴陽はロザリンデの言葉を聞いても動じる様子は無かった。

 

「それも心配無用だと思います。

咲朱様の見立てでは、結梨さんは可変スキラー数値のリリィである可能性が非常に高いとのことです。

複数のレアスキルを同時に使用できるのも、第4世代CHARMを難無く扱えるのも、それが一因ではないかと」

 

「そんな荒唐無稽な。可変スキラー数値のリリィなんて聞いたことが無いわ」

 

「複数のレアスキルを使えるリリィも聞いたことありませんよね。

でも現実に結梨さんや咲朱様はそれができています。

それなら、可変スキラー数値もあり得るとは思われませんか?」

 

「……この場ですぐに認めるわけにはいかないけど、仮説としては否定できないわね。

ただ、このトリグラフは実質的に『御前』から受け取ったCHARMとして扱うことになるわ。

だから工廠科で機体の確認は徹底的にさせてもらうけれど、それで構わないわね?」

 

「はい、構いません。

完全に分解して、部品の一つ一つまで確認していただいて結構です。

G.E.H.E.N.A.製のCHARMと違って、妙な負荷のかかるパーツは一切使用していませんから」

 

 堂々と胸を張る琴陽だったが、その時、開けられたままのドアをノックする音が一同の耳に聞こえた。

 

 全員が入口の方を見ると、いつの間にか特別寮に戻って来ていた咲朱が、そこに佇んでいた。

 

 咲朱の姿を目にするや、すぐに琴陽が歩み寄って言葉をかける。

 

「咲朱様、お帰りなさいませ。

百合ヶ丘の理事長とのお話は無事に終了したのでしょうか」

 

「それをこの場で口にするのは控えておくわ。

早ければ明日中にでも、百合ヶ丘のガーデンから関係者に情報が伝えられるはずよ」

 

 咲朱の表情からは、交渉の結果をうかがい知ることはできなかった。

 

 その件については、ひとまず棚上げすることにして、ロザリンデは咲朱に確認しておかなければならないことがあった。

 

「咲朱さん、あなたが結梨さんの額に口づけしたことには、何か特別な意味があるんですか?」

 

「そんなことを気にしていたの?

あれは私から結梨への、ちょっとした贈り物のようなもの。

あなたが気にかけることではないわ」

 

「やはり何か仕掛けたんですね。一体何をしたんですか」

 

 咲朱は結梨が自分の顔を見つめていることに気づいて、わずかに微笑を浮かべて結梨に向かって説明を始めた。

 

「今のあなたは、これまでより色々なことができるようになっているはずよ。

その力をどう使うかは、あなた次第。

せいぜい上手くやってみせることね」

 

「たとえば、どんなことができるようになったの?」

 

「一つには、あなたの中に眠っていたレアスキルに関する能力をアンロックしたわ。

あなた自身が望めば、いつでも発動できるようにね」

 

「私が今使えるレアスキル以外にも、新しく使えるようになったレアスキルがあるってこと?」

 

「あなたは以前、梨璃と同じレギオンにいたのだから、当然カリスマのレアスキルもコピー済みよね?

ひょっとしたらラプラスも使えるのかしら」

 

「私はカリスマやラプラスを使ったことはないよ。

使えるかどうかも全然分からない」

 

「正直なのね。一柳隊のリリィと一緒に訓練していたのなら、彼女たちのレアスキルは理論上すべて使えるようになっているはずよ。

後はあなたの気持ち次第。

それ以外にも幾つかの能力を解放しているけど、それは見てのお楽しみとしましょう」

 

 すべてをこの場で明らかにしようとしない咲朱に、ロザリンデは彼女を全面的に信用する気にはなれなかった。

 

「ありがとうございます、とは言いません。

あなたにも相応の打算があった上で、そのようなことをしたのでしょうから」

 

「小気味いい反応ね。特務レギオンのリリィはそのくらいでなければ。

心配しなくても、大切な特異点のリリィを損なうようなことは決してしないわ。

むしろ、結梨が生き残る可能性を少しでも上げるために、私にできることをしただけよ」

 

「咲朱、ありがとう。

私も、私にできることをしてみせるから。

そのための力だから」

 

「次に会う時まで、必ず無事でいなさい。

そしてできればいつの日か、一緒に高みを目指しましょう。

琴陽、もう結梨に伝えておくことは無いわね。

後の事は百合ヶ丘の判断に委ねましょう」

 

「はい、咲朱様。

結梨さん、それではこれで失礼します。

ロザリンデ様と秦様もお元気で」

 

「またね、琴陽。今度はリリィの任務と関係ないところで会えるといいね」

 

「その日が来るのを楽しみにしています」

 

 咲朱と琴陽は三人の目の前で姿を消し、ロザリンデと祀は緊張が解けたように大きく息を吐き出した。

 

「今日はあの人に振り回されたけれど、さっきの様子だと理事長と喧嘩別れしたわけではなさそうね」

 

「はい、何らかの合意は形成されたと考えていいと思います。

内容は……早ければ明日にでもガーデンから説明があると、咲朱さんが言っていましたね」

 

「それまでは、あれこれ考えても仕方ないわね。

今すべきことは、まずこのトリグラフの件をガーデンに報告して、工廠科への確認申請を準備するくらいか……」

 

「私は理事長室に戻って、ここでの内容を報告します。

結梨ちゃんは、いつも通りの生活をしていてね。

レアスキルのアンロック云々は、明日以降に理事長代行やシェリス先生と相談しながら確認を進めましょう」

 

「うん、私は自分の部屋に戻るけど、さっきのことは碧乙と伊紀には、まだ話さない方がいいの?」

 

 結梨がロザリンデに確認を求めると、ロザリンデは小さく頷いた。

 

「そうね、今日はまだ止めておきましょう。

祀さんから理事長代行への報告が完了して、ガーデンから情報共有の承認が出るのを待たないといけないわ」

 

「分かった。それじゃいつも通り、碧乙と一緒に勉強してる」

 

 何事も無かったかのようにミーティングルームを出て行く結梨の後ろ姿を見送りながら、ロザリンデと祀は彼女の前途に幸福が待っていることを願わずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の午後、結梨とロザリンデの二人は、特別寮のミーティングルームに高松咬月と出江史房を迎えていた。

 

 昨日はローテーブルを挟んで、咲朱と琴陽が結梨たちと向き合っていたが、今はその席に百合ヶ丘の理事長代行とブリュンヒルデが座っている。

 

 ソファーに腰を下ろすと間もなく、咬月は感情を殺した表情で結梨に話を切り出した。

 

「一柳君、この場を借りて君に話しておかなければならないことがある」

 

「うん、何?」

 

 気負った様子も無く、結梨は普段と変わらない口調で返事をした。

 

「君の同意を得た上で、君に御台場女学校へ一時編入してもらいたい」

 

 それが昨夜、白井咲朱と高松祇恵良の両者が至った結論であることを、結梨とロザリンデははっきりと理解した。

 





ということで、次回から結梨ちゃんは一時的に御台場のリリィになります。

この展開は、現在進行形の舞台が御台場のみであること、ラスバレのメインストーリーが東京方面を中心に展開していること、の2点から決めました。
(ルド女と一柳隊の舞台は現時点では完結扱いと考えています)

また、公式でもラスバレと舞台の情報がクロスオーバーしつつある状況を踏まえて、現時点で舞台にのみ登場している人物も、ラスバレの世界線に存在しているものとしています。

この小説を書き始めた当初から、結梨ちゃんが百合ヶ丘を離れて他のガーデンに移る展開は考えていました。
が、それはG.E.H.E.N.A.に追われる逃亡者のような立場を想定したものでした。

実際には積極的な戦略として御台場に一時編入する形になったので、結果オーライではないかと思っています。

くどいようですが、鬱展開になる予定はありません。
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