スタイリッシュな双子の兄貴になりました   作:クリカラ

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他作品とのクロスオーバー物なので、興味がない方はブラウザバックを推奨


番外編
鬼之壱話 お前も鬼の力を得ないか


 

 

 

 

―― これは、ルシファーが魔界から人間界へ移動した際に起こった出来事

 

 魔界と人間界の境界は粗い網目のようなものであり、強力な上級悪魔などは自らの強大な魔力が仇となって自由に行き来できない。ただ特別な手段を用いれば上級悪魔も魔界と人間界の出入りを自由に行える。

 

 上級悪魔に分類されるルシファーは、この問題を思いの外楽にクリア出来る術を生まれた時から持っていた。それは母であるネヴァンから引き継いだ、自身を蝙蝠に分離させる能力である。

 上手く用いれば、時間が掛かろうとも手間もなく魔界と人間界を行ったり来たり出来るのだ。

 

 しかし、今回(・・)はそれがあだとなってしまったようだ。

 ルシファーはいつもの様に自分の身体を無数の蝙蝠へ変化させ、魔界から人間界へと移動する。

 

「ん?」

 

 無数の蝙蝠となった彼は、思考回路もまた無数に分割されたものであり、一匹一匹の思考能力はお世辞にも高いといえる代物では無かった。網目を通る際に違和感を感じても、若干の疑問を持つだけで彼はその先へと深く考えず進んでいく。

 

 ルシファーは気にしなかったがこの時、世界を跨ぐ際に生じる歪みが通常とは異なるモノだった事を、後に彼は思い知らされる。

 

 多少の時間が掛かったが人間界へ蝙蝠を移動させる事に成功した彼は、彼等を集約させ瞬く間に元の人間形態へと戻っていく。そして漸く、自分の身に何かが起こった事を知る。

 

出力(ちから)が低下している? いや、これは分裂した力(こうもり)が幾らかいなくなったのか?」

 

 すぐさま逸れた蝙蝠達に連絡を取りつつ、自身が通り向けた次元の通路を調べる。しかし其処に先程感じた違和感は既になく、いなくなった蝙蝠達とも連絡は取れなくなっていた。

 

 ルシファーは只ならぬ事態を感じながら、現状打てる手立てはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で、力の大部分である本体(あちら)と切り離された分裂体(こちら)も、残りの蝙蝠達を集めて人間形態をとり人間界へと降り立っていた。こちらも同様に原因の確認を行ったが結果は同じく不明。

 

 こちらのルシファーも、正直お手上げ状態だった。

 そして何より、視界に映り込んだ景色に困惑していた。

 

「此処は、何処だ?」

 

 確かに其処は人間界だった。周囲に立ち並ぶ建造物を観ても近くを歩き回っている人間を観ても此処が正しく人間界だと教えてくれる。

 しかし、彼には見覚えが無かった。

 

「いや、待てよ。此処は......」

 

 見覚えが無いと断じていたが、よく周囲を見渡すと少し遠くの方に門らしきモノが見えた。

 多少遠くから見てもその巨大さはすぐに理解できた。何せ、門の下を通過する人や車が余りにも小さいからだ。その巨大な門を視界に収めた時、彼の脳裏にある名前が浮かび上がった。

 

「まさか、アレは凱旋門(・・・)? つまり、此処はフランスなのか?」

 

 世界でも有数な建造物として知られる、フランス・パリのエトワール凱旋門であった。

 そして注意深く周囲の人間達が話す言葉を聞いてみると、聞き慣れた英語ではなく他国の言語であるフランス語が耳に入ってくる。

 

 漸く彼は自身が出現する場所を大きく間違えた事を悟る。

 だが同時に、魔界の境界を潜り抜ける際に感じた違和感はコレだったのかと納得もした。本体(あちら)と連絡が取れない原因は分からないが、同じ人間界(・・・・・)なら合流はそう難しいものではないと考える。

 

―― しかし、事態は彼の理解を大きく超えるモノとなる

 

 凱旋門を視界に収め此処がフランスであると確信したルシファーは一旦の落ち着きを取り戻す。何故この様な結果になったのか未だ不明であるが、場所さえ分かれば後はどうとでもなると考えた彼は気分を変えようと空を見上げた。空を視界に収めると彼的には気持ちが和らぐからだ。

 

 そして見上げた空には、白い雲、青々とした空、空飛ぶ化け物の軍団(・・・・・・・・・)、の姿が在った。

 

「......はっ?」

 

 彼の困惑を置き去りに時は進む。

 

 青空を駆ける巨大な飛行型の化け物の腹から、人間に近しい別種の化け物が無数に降り注ぐ。

 周囲の人々はこの現実離れした光景をただ茫然と眺めていた。

 

 人間、脳に入ってくる情報量が多いと命の危険が迫っていても、咄嗟の判断で行動できない者が結構いるのだ。現にオープンカフェで優雅にコーヒーを飲みつつ雑誌を読んでいた、姿見からして20代から30代のスーツを着こなした女性は、目の前に化け物が降って来て腰から日本刀らしき刀を抜く姿を視界に収め、やっと自身に迫る命の危険を感じ取る。

 

 今まさに逃げようと椅子から立ち上がり、化け物に背を向けた彼女の背後には化け物の刃が既に迫っていた。彼女は一秒の時も待たずに死ぬだろう。彼女自身でさえ本能では分かっていた筈だ。

 

 しかし化け物の短い断末魔により、その死の瞬間は終わりを迎える。

 その場を去った彼女は気付かなかったが、化け物が居た場所に青紫色の剣(・・・・・)が突き刺さっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まさに現在(いま)のフランス・パリは、混乱の極みへ達していた。

 

 絶え間なく湧いてくる化け物の軍団。

 騒動の鎮圧に赴いたフランス対外安全保障総管理局(通称DGSE)。

 

 人外との戦闘を想定した組織ではないが住民の危機に四の五の言っている状況ではない。すぐに軍隊を展開し、化け物達の掃討を開始する。

 部隊を率いる隊長のフィリップも、部下達と共に横並びになりPDWの最新型FN P90を構える。

 

「撃てッ‼」

 

 彼の号令で化け物達へ向け一斉に射撃を開始する。貫通力に優れた弾を使っているだけあって、一体一体であるが着実に化け物達の数を減らしていく。

 

「なんなんだ、コイツ等ッ‼」

 

 その成果に油断してしまったのか、フィリップは隊列より一歩踏み出して果敢に攻め立てる。

 そんな彼のすぐそばに化け物が姿を現す。

 

「■■!」

「ッ⁉」

 

 眼前の敵に集中するあまり、近くに迫っていた敵を見落とすフィリップ。

 彼を斬り殺そうと化け物は刀を振るう。

 

「ぐあっ⁉」

「隊長‼」「大丈夫ですか⁉」「しっかりしてください‼」

 

 斬られた衝撃で軽く吹き飛ばされる。血だらけになったフィリップに部下達が駆け寄る。

 彼が抜けた穴を埋める為、若干隊列を乱して応戦するDGSE部隊。

 

「ぐぁっ⁉」「あぁっ‼」「うぉっ‼」

 

 しかしそれが不味かったのか、隊員の抵抗も虚しく一人また一人と打ち取られ、あっという間にフィリップ一人だけが戦場に取り残される。

 

 怪我で立ち上げれなくなった彼はそれでも諦めまいと懸命に後ずさりながら化け物へ銃を撃つ。だが一人で放つ弾幕は制圧力が無く、化け物の進行を止める事は出来なかった。

 化け物との距離が残り僅かになったその時、彼の後方から声が聞こえてくる。

 

「―― 今、行くぞ!」

 

 フィリップの背後に立ち並ぶ車を大型バイクで乗り越えて現れた男【ジャック・ブラン】。

 彼もまた部隊の部員であり、応援要請を聞きつけて現場まで急行する。

 

 ジャックは飛び出した勢いのまま、バイクを化け物へぶつける形で飛び降りる。

 横になったバイクは、何体かの化け物を巻き込みながら吹き飛ぶ。

 

「ジャック!」

 

 フィリップの呼び声にジャックはすぐさま彼の傍らまで移動し銃を化け物へ構えた。

 そしてドドドッと的確に銃を撃ち、残り少なくなった残党をジャックが殲滅する。

 

 殲滅した後も銃を構え周囲を警戒するジャックだったが、後方に下がったフィリップの呻き声を聞いて彼の傍まで駆け寄る。容態を確認するが傷が思いの外深く、早く手当てをしないとマズイとジャックは判断する。何とか助けようと声を掛ける。

 

「しっかりしろ、フィリップ!」

「お、俺に構わず逃げろ......ジャック」

「そんな事出来るか! 一緒に逃げるぞ!」

 

 こちらの呼び掛けに意識を朦朧とさせながらフィリップが告げるも、ジャックは冗談と一蹴し彼に肩を貸して身体を起こさせる。フィリップを安全な所まで非難させようと何とか足を進めるが、化け物達がすぐさま出現し彼等の行く手を阻む。

 

「クソッ‼ また出やがったのか!」

 

 ジャック達は壁際に追い込まれる形で化け物に包囲される。

 いよいよ彼等の身が危うくなったその時、周囲を囲っていた化け物へ剣が飛来。

 

 青紫色の透明感がある剣が身体に突き刺さり、僅かな断末魔を上げて消滅。

 呆気に取られるジャックを余所に次々と化け物は消滅していく。そしてこの惨状に相応しくない陽気な声と共に、二人の前に一人の男が姿を現す。

 

「よっ、まだ生きてるかい。軍人さん?」

 

 偶然居合わせた英雄の子(ルシファー)が、気紛れに助けに来たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―― 見知らぬ化け物を、現在進行形で狩ってます(比喩ではない)

 

 なんか知らぬ間にフランスに飛ばされたと思いきや、化け物が空から降ってくるなんて俺の運勢悪すぎない? てかコイツ等何なのマジで......悪魔じゃねえのは分かるけどそれ以外は分からん。

 

 とにかく人間を襲ってるから敵認定して殲滅してるけど、どうしよう。なんか終わる気配が全然ないんだけど、無限湧きとかじゃねえだろうな。そんな無理ゲー嫌なんだけど。

 俺が適当に敵を狩り続けている間に国が軍隊を手配したらしく、其処彼処で応戦し始める。でもこの状況が好転に向かっている様には到底思えなかった。

 

「ありゃあ、ジリ貧だわな」

 

 少々の敵を殺してもまたすぐに出現する敵側に対して、此方は着々とだが押されて始める。

 現に少し目を離した隙に、小隊が壊滅状態に陥っていた。

 

 付近の敵を斬り捨て、なるべく早く救助に向かうルシファー。

 その際に身体が普段より重く感じる事に舌打ちを洩らす。

 

「(出力(ちから)は普段の半分......いや、それ以下か)」

 

 久しく感じなかった重さ(よわさ)に、面倒くささを感じる。だが文句を言っても始まらないと思い無駄な考えを頭の中から排除する。

 ルシファーの視線の先には、負傷した隊員とその彼を庇いながら戦う二人の男が見えていた。

 

「救える命は、救っとくか」

 

 ルシファーは幻影剣を敵の数だけ用意して射出。狙いは外さず一撃必殺で敵を仕留めていく。

 彼が到着した頃には、敵も綺麗に片付いており隊員二人も無事だった。

 

「よっ、まだ生きてるかい。軍人さん?」

 

 こちらの陽気な声に助けられた男の一人であるジャックが視線を向ける。

 救出してくれたのがルシファーだと理解した彼は、先程の状況を踏まえて言葉を蒸らす。

 

「アンタは一体、それにさっきの剣は......?」

「そんな事より、お連れさんの方は大変なんじゃねぇのか?」

 

 ルシファーの返しにジャックはフィリップへと視線を向ける。

 そこには先程よりも表情を悪くした彼の姿が在った。

 

「大丈夫か、フィリップ!」

「あぁ、今の所はな......」

 

 返答も先程より弱くなっていた。

 時間がないと感じたジャックはルシファーを後回しにして、フィリップを助ける事を優先する。

 

「さっきは助かった、ありがとう! また後で話そう!」

 

 そう告げてその場を去るジャックとフィリップ。

 ルシファーは彼等を見送りながら、再度出現する化け物に無言で幻影剣を飛ばす。

 

「さて、じゃあ狩りの続きでも......んっ?」

 

 二人が無事に逃げ出せた事を確認したルシファーは狩りを再開しようとする。

 しかし、そんな彼の視界に謎の光が飛び込む。

 

 半球型に光を放つそれは、次第に光る強さを弱めていきやがて消滅する。

 その代わりに光の中心部には、ある一人の男が立っていた。

 

「―― 此処は、何処だ......?」

 

 男は周囲を見渡しながらそう呟いた。

 彼は男性が喋った語言(にほんご)に懐かしさを感じるが、それ以上に彼の格好について物申したかった。

 

 それは男の姿が、日本の戦国時代を彷彿とさせる格好であった為だ。兜は付けていなかったが、立派な武士甲冑を身に付け腰に打刀と脇差と差した姿は、現代ではまずお目にかかれないだろう。右手に付けた籠手は奇妙な物だったが、それ以外は日本武士といえる恰好だった。

 

 ルシファーが男の格好をそう判断していると、こちらの存在に気付いた彼が近づいてくる。

 そして先程の口にした疑問を今度はルシファーへとぶつけてくる。

 

「おい、此処は何処だ?」

「......もう少し、友好的に聞けないのか」

「っ! 日ノ本の言葉が分かるのか⁉」

 

 男は彼の容姿を見て言葉は通じないと思ったのだろう。日本語で返され逆に驚いていた。

 しかし、すぐに自身の不躾な質問に非を感じ謝罪する。

 

「済まない。いきなりこんな所に飛ばされて困惑していたんだ。先程の言葉は唐突過ぎた」

「まぁ俺も別に怒ってはないさ。ただ、少しアンタの存在に驚いただけだ」

 

 男が丁寧に返してきた為、ルシファーもそれなりの対応で接する。

 

「さっきの質問の答えだが、此処はフランスのパリだ」

「ふらんす? じゃあ此処は南蛮の地なのか?」

 

 男はルシファーの答えに周囲一帯を見渡しながら状況を把握していく。

 ルシファーも彼の存在が気になって質問を投げ掛ける。

 

「南蛮......随分と時代がかかった言い回しだが、アンタは一体 ――」

 

 話の最中、ルシファーを中心とした半球型の何かが出現する。

 それは男が突然現れた時と同じ様に、何の前触れもなく現れた。

 

「「―― 何ッ⁈」」

 

 ルシファーと男がその異常に対応する間もなく、半球型のそれはルシファーを飲み込み消滅してしまう。後に残されたのは、呆然と立ち尽くす一人の武者だけであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気付いたら、見知らぬ森でルシファーは一人突っ立っていた。

 

 いやいや、フランスに飛ばされた時から状況を一切把握しきれていないのに、更に複雑な状況に俺を追い込むのは止めろマジで。

 

 そうぼやく彼だったが、この場に留まっても事態は好転しないと判断し無難に足を進めていた。期待を込めて本体(あちら)と連絡が取れないか一度は試してみたが、結果は散々だった。

 

 若干気落ちしながら歩くルシファーの耳に、剣戟の音が響く。

 すぐ近くで聞こえてきたそれに、事態の進展を願いながら足早と歩を進める。

 

 音の発信源へ向かうと、先程の武者がフランスに居た化け物達と戦っていた。

 ルシファーはその光景を見て違和感を覚える。

 

「(何か、おかしくないか? 俺の気のせいか?)」

 

 彼が思考している合間にも武者と化け物達の戦いは続いていく。

 今は考えてる場合じゃないかとルシファーも加勢しようと一歩踏み出すが、彼の右腕がいきなり光りだした事によりその歩みが止まる。

 

「―― コレ(・・)は、篭手か?」

 

 光が収まった彼の右腕には、掌全体まで装着されたグローブに近い形状の篭手が存在していた。それと同時に手の中に短い棒状の何かを持っていた。

 

 手に持つソレ(・・)を一瞬見つめたルシファーは、しならせる様に右腕を一度地面に振るう。

 すると、手に持った短い棒から光を発する縄らしき形状のモノが飛び出す。光の縄は自動で巻き戻り棒の中へ消えていく。その動作は正に鞭そのものであった。

 

 一連の動きを確認したルシファーは口元をニヤリとさせ、眼前の戦いへ視線を向ける。

 眼前の攻防はどちらも致命の一撃を打てず、一進一退の様子を繰り広げていた。

 

―― まるでそれは(・・・・・・)互いに手を抜いているかの様に(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 この時には違和感の正体を正確に把握していたが、ぶっちゃけソレは如何でもよかった。

 彼が今一番やりたい事は、新しい武器(おもちゃ)を試したいという欲求だけだ。

 

「ハァァッ!」

 

 ルシファーは手始めにフランスを攻めていた、4本足の化け物を一体鞭で絡めとる。

 次に絡めた敵をハンマー投げの要領で振り回し、周囲の敵を巻き込みながら一緒に吹き飛ばす。

 

『ガァァァァッ⁉』

 

 諸共吹き飛ばされた敵は、周囲に生えた木々に身体をぶつけて消滅していく。ルシファーはその光景に目もくれず、相手を鞭で絡めて次の動作に移っていた。

 

 鞭で絡めた敵に回転を加えて空高く放り投げた後、自身も空に向けて跳躍。空中を上昇しながらクルクルと横に回転する敵の更に上を陣取る。上昇する敵が丁度真横に位置した時、強力なかかと落としで相手を地上へと叩き落す。

 

「もう一丁いっとけ、オラァッ!」

『アァアアァァッ⁈』

 

 化け物は彼が放った技により、流星を想わせる速さで地上に激突。地面に衝突した際の衝撃で、更に周囲の化け物も吹き飛び消滅していく。なお、かかと落としを喰らった個体は地面に衝突したその瞬間に爆発四散した模様。

 

 最初と比べて随分とスッキリした戦場を見つめた後、ルシファーはある一点を眺める。其処にはルシファーが戦い始めた頃に姿を消した、武者の姿が在った。

 

「――――――」

「オイ、そろそろ正体を明かしてもいいんじゃねぇか?」

 

 不気味に佇む武者に、ルシファーは挑発的に問い掛ける。

 彼の言葉に従ったのか元から姿を現す予定だったか定かではないが、武者はその身体を紫染みた光へと変えて空中へ舞い上がる。光は一カ所へと纏まり、青白い炎を纏う人型へと姿を変える。

 

『お前は何者だ。人間(ヒト)ではないな』

「それはお互い様だろ?」

 

 空中を漂う人型の言葉(テレパシー)にも動じず、ルシファーは陽気に返す。

 光で顔に該当する部分(ひょうじょう)が見えていなかったが、雰囲気で相手が警戒している事を彼は何となく感じ取っていた。

 

「そう警戒すんなよ。互いに今の状況を打破しようと接触した訳だしさ」

『貴様は、現在の状況を把握できているのか?』

 

 相手の警戒を解く為に歩み寄る姿勢をみせたが、警戒を解かずにルシファーへ問いを投げ掛ける光の集合体。あちらの質問に答える形で今は話を進めようとルシファーは画策する。

 

「凶暴な怪物が突如出現。それに連動し過去から未来へ飛ばされて来たような日本武士(サムライ)が現れる。そして逆に過去らしき場所に飛ばされた俺。飛ばされた先で不思議な力を入手。これだけの要素がてんこ盛りで、逆に分からない方がどうかしてんだろ」

 

 当然の様に彼は話すが、こんな状況下に置かれて理解を示せる方がどうかしている。

 というか彼も先程まで状況を把握出来ていなかったのに、何故ここまで堂々と言えるのか。

 

 相手側がその言葉をどう受け止めたのか知り得ないが、答えは沈黙ではなく対話であった。

 

『―― 異国の者よ、人ならざる者よ。これから語る我の言葉をよく聞くのだ。此処はお前のいた時代から遡る事500年前の日本であり、今まさに幻魔が世を支配しようとしている瞬間(とき)なのだ』

 

 ルシファーは沈黙によって話の先を促す。

 こちらの意図が伝わったのか、人型の光は話を続ける。

 

『今から10日後、お前と同様に我ら鬼の一族に選ばれた明智左馬介が、幻魔王織田信長を倒すべく本能寺で戦を起こす。元の時代に戻りたければ、左馬介と力を合わせ信長を倒すのだ』

 

 人型の光――鬼の一族はそう締めくくり、ルシファーへの話を切り上げる。

 

―― 化け物の名【幻魔

―― 幻魔と争う種族【鬼の一族

―― 鬼の力を持つ者【明智左馬介

―― 幻魔王【織田信長

 

 これだけの情報が出そろえば、此処がどういった世界なのか記憶(ぜんせ)が薄れていても理解できた。

 そして、この状況下で彼が選べる選択肢は一つだけだ。

 

「事情は理解した。良いぜ、その話乗った」

 

 しかし、ルシファーの顔には笑みが浮かぶ。

 その笑みは彼の弟、双子の兄であるバージルがよく見せる獰猛な笑みにそっくりであった。

 

 鬼の一族はルシファーの表情に一抹の不安を感じたのか、掌から小さな生き物を取り出す。

 それは背中に黒い翼が生えた小さな少女だった。

 

『カラス天狗よ、この者が信長を倒すまで手助けしてやるのだ』

 

 ”監視も含めてな”。ルシファーに気づかれないよう、少女の心にそう直接伝える。

 その意を汲み取りカラス天狗と呼ばれた少女はルシファーの元へ飛んでいく。

 

『我が与えた鬼の力、存分に振るうが良い』

 

 鬼の一族は用は済んだばかりに早々と消え去ろうとする。

 そこにルシファーが何気なく声を掛ける。

 

「アンタ、俺の正体を知りたかったんだよな。だったら最後に教えといてやるよ」

『......何?』

 

 彼の言葉を聞いて、鬼の一族は消えるのを中断しその場へ留まる。

 逆にルシファーの方がもう用は済んだとばかりに、その場を立ち去りは始めていた。

 

 既に背を向けて歩む彼は、背中越しに自身の正体を告げる。

 その様子はまるで、今日の献立を子供に告げる程度の気軽さだった。

 

―― 俺は、普通(ただ)の悪魔だよ。厄介な双子(あくま)の兄貴分をやってる、普通(ただ)の悪魔さ

 

 幻魔の陰謀渦巻く世界へと流れついたルシファーは、何を観るのか?

 

 

 

 




という訳で、鬼武者3とのコラボでした

この企画で書こうと思った主な理由は、原作の鬼武者で武器取得シーンが簡易的なスパーダ一家の家訓「新しい武器はその場で試せ」に似ていたからです

ぶっちゃけそれ以上の深い理由が無く、突貫工事過ぎたなと今は反省しています



ちょっとリアルが忙しくなりそうなので投稿が止まるかもしれませんがご容赦ください
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