スタイリッシュな双子の兄貴になりました   作:クリカラ

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第14話 運命って誰にでもあるよね

 

 

 

 

「大きい穴ってのは観てる分には夢が広がるな」

 

 決してエロい意味ではない。

 女体に隠された神秘がそこに在る。

 

 スマン。ぶっちゃけ手がかりが見つからなくて下ネタに走ってる。

 何で俺はこんな事をやっているのだろうと、一周回って疑問に思わなくもない。

 

 コレも全部乾巧って奴の仕業なんだッ!

 ......さあ、どうしたもんかねぇ(賢者タイム)

 

 俺は市街地にぽっかり開いた地面の穴を眺めながら、下らない考えを巡らす。正直な話この地に訪れたのは間違いだったろう。クリフォトが存在した事件中ならいざ知らず、完全に崩壊した後に訪れた所で得られる情報など無に等しい。事実、現在まで成果らしきものは得られていない。

 

 ユリゼン擬きが発生した場所がレッドグレイブなのは理解するが、あんな悪魔(モノ)が偶然で出現する筈はない。魔帝ムンドゥスの信奉者が召喚しただのダンテは言っていたが、その情報も疑わしい。まあ情報を齎した人物こそが事件の根幹を握っているのは確かだろうが。

 

「ならやっぱり、そいつに接触する所から始めなくちゃならないな」

 

 そう言って踵を返すが、いい加減鬱陶しくなった視線の主(・・・・)に苦言を呈する。

 

「いつまで俺を観察するつもりだ」

「―― 私に気付いていらしたのですね」

 

 未だ撤去されていない瓦礫の陰から姿を現す一人の男。

 美形でありながら顔に浮かべた醜悪な笑みによって、存在そのものに不快感を覚える。

 

「はっ、あんな少女を使って接触を避けた割には簡単に顔を出すんだな」

「その節は大変申し訳御座いませんでした。私如きがルシファー様にお声を掛けるなど恐れ多く、恥ずかしながら幼子に頼んでしまったのです」

 

 文面を見れば謝っている感じに聞こえるが、そんな殊勝な事を考えていないと顔を見れば一目で分かる。胡散臭さで言えば、今まで対峙してきた悪党の中でもトップレベルだろう。

 

 軍の補給基地を離れて少し経った後、こいつにつけられている事はすぐに分かった。同時に先の少女が何らかの形でこいつに関わった事も理解する。その事が少し気になった。

 

「お前、さっきの子供(ガキ)に何かしたのか」

「いえ特に害などは加えておりませんが、それが何か?」

 

 俺の質問に男は素直に返答したが、それが真実なのか今の俺には分からない。

 モヤモヤした気持ちを抱えたが、そんな甘い考えは不要だと断じ思考から消去する。

 

「―― 別に、何でもない」

お優しいのですねぇ......誓って、少女に危害は加えていないと断言いたしますので、どうぞご安心ください」

 

 さっきまでの笑みと違い、今男が浮かべている表情は思いの外綺麗なモノだった。

 胡散臭い男がこちらを思いやって発言した事に、些か面食らう。

 

「意外だな。お前は外道の類だと感じたが違うのか」

 

 攻撃的だと自覚しつつも言葉を改める事はしない。

 俺の指摘に男は至って真面目に答える。

 

「―― 正義を行う為なら、小を捨てて大に就く事に迷いはありません。しかし切り捨てないでもよいのであれば、無理に捨てなくても宜しいでしょう?」

 

 模範的な回答だ。好感が持てると評しても良い位だ。

 しかし、その欲に塗れた瞳が全てを物語っている。

 

「つまり、目的の俺以外は今の所どうでもいいって訳か」

「―― その通り。あくまでも私の目的は貴方様だけ」

 

 最初から分かっていた。この男は俺に会いに来ただけ、他の事柄は些事なのだ。

 こんな奴と比べられるのは嫌だろうが、若干似たような気質を持った人物と会った事がある。

 所謂、俺の追っかけ(ストーカー)って奴だな。

 

「俺に執着する理由は何だ。お前がユリゼン擬きを作った張本人か。洗いざらい答えろ」

「ふふふっ、貴方様にそうやって問い掛けられていると形容しがたい気持ちを抱いてしまう」

 

 悪寒を感じる。身の危険を感じると表現すれば適切だろう。

 俺は未だ名前すら知らない男に瞬時に形成した幻影の討魔剣(ミラージュエッジ)を突き付ける。

 謎の男は自身の状況を理解していないのニコニコと笑みを浮かべている。

 

「―― 何なんだ、お前は」

 

 男へ殺気交じりに問い詰める。

 そんな俺の姿は可笑しかったのかクスクスと笑う男。

 

「そんなに警戒しないで頂きたい。私は貴方様の味方です」

「生憎とこっちはこれ以上お前の話に付き合うつもりは無い。簡素に答えろ、お前は誰だ」

「はぁ......悲しいですね。やっと憧れの貴方様に会えて私は......っ!」

 

 戯言を抜かしている様だったので、目覚めの鋭い突き技(スティンガー)を放つ。

 剣は抵抗なく男に突き刺さった。なのに、血の一滴さえ流れていない。

 

「ちっ、やっぱりそう簡単に殺せ(やれ)ないわな」

 

 相手の身体から剣を引き抜きつつ若干距離を取る。

 男は刺された腹部を撫でながら気色悪い笑みを見せつける。

 

「私との語らい(あいびき)をこの様に散らすのは如何なものと愚考しますよ?」

「ほざくな変態」

 

 幻影の類か条件付きの無敵か。予想通りの結果は残念だが仕方がない。

 今はこの男から情報を聞き出そうとルシファーは考えを改める。

 

「3秒。3秒やる。俺の前から消え失せるか名前を言え」

「そうですね。まずは自己紹介から、私の名前はサタンです」

「......サタン(・・・)だと?」

「ええ、素晴らしい名前だと思いませんか?」

 

 サタンと名乗った男は誇らしげに自身の名を告げる。

 俺はその名を聞いて苛立つ。

 

「お前、自殺願望者だったのか」

「何故です? 私の名に問題が?」

「大問題だろう。ルシファーである俺にサタンを名乗る奴なんて悪趣味すぎるだろ。偽名じゃなく本名だとしてもその名前はねぇだろ」

 

 眼前のふざけた男に冷めた目で告げる。

 実際そうだろう。ルシファーにサタンと告げるなど、こちらをバカにしている。

 

 こちらの世界だって前世と同じ歴史が在る。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にルシファーの名前はあるし、サタンの名前だって存在する。つまり、この男は三大宗教において最大級の悪魔の名前を親に付けられたのだ。笑いを通り越して呆れてくる。

 

「お前の親はお前の存在が疎ましかったのか。それとも俺を煽る為だけにその偽名を使ったのか。どっちにしろ、俺をおちょくってんのは確かだな」

「この名は私の本名です。現に証拠もちゃんとありますよ」

 

 そう言って男は懐から一枚の免許証を取り出してこちらに見せつける。

 確かに名前の欄にサタンと記載されている。まあ俺に真偽の判別は分からん。

 

「それが偽物の可能性も否めないがな」

 

 吐き捨てるように俺は告げるが男は表情を真っ赤にする。

 俺の発言は許しがたいらしい。

 

「この名は偽名ではありません! 如何にルシファー様と言えど見過ごせませんよ!」

 

 そう言って見つめ合い事数秒、俺は色々と面倒くさくなって投げやりに告げる。

 

「はいはい俺が悪かった。用件は何だ」

 

 俺の言葉にパッと表情を明るいものへと変える。

 その光景に犬が尻尾を振って喜んでいる幻覚を見る。マジで色々と疲れているな。

 

「信じてくれたのですね⁉」

「面倒になっただけだ。さっさと用件だけ言って失せろ」

 

 素っ気なく告げるが警戒は別段解いていない。

 しかしそんな素っ気ない態度でも嬉しかったのか、勝手に一人でベラベラと喋り出した。

 

「済みません。ルシファー様に出会えた嬉しさでつい舞い上がってしまっていた様です。貴方様の怒りを買った愚かな私をお許し下さったこのご恩は忘れません。何なりとご命令をお告げ下さい。愚民である私の力で可能な限りお手伝いを致します。差し当たって忠誠の証として貴方様の靴でも磨き(なめ)ましょうか? 他意はないですが正直靴ペロしt......いえ、この様な整備も行き届いていない区画にやって来たルシファー様の御身体に埃など付くのが我慢ならないのです。つまり、私が何を言いたいのかと言うと、etc......」

 

「――――――」

 

 サタン(仮)がその後も何か色々と言っていたが正直ドン引きモノ。幸福感に満たされたが如く高揚とした表情でこちらを見つめている。まさに変態、正直死んでほしいと思った。

 

 改めて男の姿を視野に入れる。

 毒々しい紫の髪に顔は美形寄りの30代から40代の見た目。年齢はもっと上かもしれない。

 服装は白い背広を着こなし、そこら辺を歩く一般人と見比べたら異様にしか映らない存在感。

 

 うん。コイツ、絶対今回の事件の黒幕だわ。直感以上に視覚に訴えかけてくる怪しさの塊の様な人物。ぶっちゃけ斬り捨てても問題ないと感じる。今は殺せ(やれ)ないがな。

 

「私は想うんです。その世界は愛に満ち溢れている。だってそうでしょう? 貴方様の存在こそが証拠。救世(しんわ)の神など存在しないかもしれませんがルシファー様は幾度も人類を救った救世主としていま私の目の前に居る。語り継がれる御伽噺としてではなく、今この瞬間に人間界へその姿を顕現されている。あぁ、こんな奇跡が起こっているのに世界は何故貴方様の存在を認識していないのか理解に苦しむ。人々よ、どうかこの奇跡を享受してほしい。それはそうとルシファー様。そろそろ私に忠誠の証として靴を舐めさせて頂いてもよろしいでしょうか? いえ、空より広い海より深い考えをお持ちの貴方様の判断を仰ぐのが最善など、頭が足りない私とて理解しています。ですが! ですが余りにも焦らされると私の気の持ちようとしましてもじれったく感じるのです。いえこれはこれで放置プレイと捉えて興奮を覚えない事も無いのですがやはり貴方様の承認を得た上で行為に及ぶのが私側も気持ちい......もとい互いの気持ちを知れる良い機会だと愚考する訳ですよ。はい」

 

 マジでこの場で斬り殺せないかなコイツ。一秒たりとも一緒に居たくないんだけど......

 苦々しく思いながら俺は変態に対応する。

 

「はい、じゃねぇよ。この変態ゴミムシ野郎。マジ死ね」

「おっふ。我が神からの罵声(きもち)が心に痛い(ひびく)。ぶっちゃけ興奮する」

「――――――」

 

 大金を用意したら、金欠(ダンテ)辺りが殺してくれないかな。

 そんなバカな考えを巡らす。すいません、嘘つきました......結構本気(ガチ)で考えています。

 

 俺の気持ちを知ってか知らずか、サタン(仮)は話を進める。

 

「ルシファー様との語らいは私の心を癒します」

「俺は癒されるどころか勢い余って憤死しそうなんだが」

「そこで、もっと私の事を知ってもらおうと私の居城に案内します」

「応、早く教えろ。お前の事を斬り殺したくてウズウズしてんだ」

「えっ⁉ 私に会いたくてウズウズしている⁉ やはり私達を相思相愛だったんですね‼」

「ねえ、お前の耳は正常に機能してんの? 腐ってんの?」

 

 会話ってドッチボール状態だとこんなにイラつくモンなんだな。この年になって理解できた。

 サタン(仮)......もうただの変態でいいや。変態は懐かしの場所を告げる。

 

「―― マレット島へお越しください。そこで貴方様をお待ちしております」

「マレット島だと? あそこはダンテが吹き飛ばした筈......」

「私の居城(ラボ)はあの島の地中深く。彼の者(ダンテ)が破壊した場所ではありません」

 

 ”ではお待ちしております”と再度告げた変態は、その姿を霧の様に消失させる。

 そしてその場に残された俺は ――

 

「あれ、コレって俺変態(アイツ)に会わなくても別にいいんじゃね? 無視しようかな......」

 

 割と変態(サタン)が変態過ぎた為、再度会う事に躊躇いを覚えていた。

 

 

 

 




色々書き直したりして投稿が遅れました。普通にすいません

書き直した割に低クオリティと自分で感じるのですが、いつまでも投稿しないのもどうかなと思い投稿しました

一度、本格的に書き直しを行えたらなと感じつつも、このまま完結までいった後にやろうかなと、面倒くさがっている自分がいる状態が続いています
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